きょうのコラム「時鐘」 2011年11月29日

 大河ドラマ「江」が終わり、早くも来年の「平清盛」が脚光をあびている。本屋には平家の関連本が並び、能登の平家ゆかりの里でもイベントが動き出した

漫画家の藤子・F・不二雄さんが愛用したワープロに「平家物語」と題した上下2巻の原稿があったという。子どもむけの大河ドラマに挑戦したのかと思って見ると…。「その家は平家(ひらや)だった。平家の下は地下だった」。それでおしまい。人を食った「平家」ならぬ「平屋(ひらや)」物語だった

平家といえばおごりの象徴だが、平屋は原っぱの広がる昭和の懐かしさが浮かぶ。一つの文字を見ながらこれほど違ったことを思う人がいるのが面白い。原稿は川崎市の藤子ミュージアムに展示されている

現在の「平屋」と言えば被災地の仮設住宅だ。先ごろ復興構想会議が「政府の復興は遅すぎる」と首相に苦言を呈した。与野党の調整に時間を掛け過ぎとの指摘だった。冬が近い。仮設住宅の防寒対策が急務である。おごりのない野田内閣だが、低姿勢と、権力の行使が下手なのとは別問題だ

復興のためのスピード感ある権力行使に、だれが文句を言うだろう。