「細工は流々仕上げをご覧(ろう)じろ」という慣用表現がある。工夫を十分凝らしたので、あとは結果をご覧ください―といった意味だ。自らが施した細工、工夫に対し、自信満々であることを誇示する言葉である
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大阪ダブル選を制した「大阪維新の会」代表の橋下徹さん。選挙の終盤にはこんな心境だったのかもしれない。任期の残る府知事の仕事を投げだし、任期満了に伴う市長選に出馬した。知事後継には維新の会の同志を立てるという“手づくり”選挙だった
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ダブル選の大仕掛けは功を奏した。「今のままでいいのか、変えるのか」といった二者択一を迫る訴えも、有権者の心をつかんだように見える。大阪府と市役所の二重行政でいいのかと問いかけ、「大阪都」構想を売り込んだ。投票率はともに前回を上回り、とりわけ市長選は17ポイントも伸びて60%台に乗った
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現状の維持か、打破か。こう問われたら、暮らし向きが楽でない人、将来に不安を抱える人は、後者を選びたくなるのではないか。ぼくらは年金がもらえるか分からない、国を変えてほしい―。維新の会に1票を投じた若い男性の言葉が印象に残っている
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「今回の民意は重い」。当選後、橋下さんは何度も強調した。でも勘違いしないでもらいたい。都構想への賛意が示されたというより、迷走する国政への失望や怒りが背後にあるのではないか。勇み足は戒めたい。