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2011年11月29日(火)付

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橋下旋風―政党は「敗北」から学べ

大阪ダブル選で、既成政党は完敗した。市長選では民主、自民の2大政党に、共産党まで支援に回った現職が負けた。圧勝した大阪維新の会の橋下徹代表は、記者会見で「政党は政策も政[記事全文]

地球温暖化―国内対策の停滞を憂う

南アフリカで気候変動枠組み条約の締結国会議(COP17)が始まった。京都議定書の今後を考える重要な時期に、日本の温暖化対策が後退している。民主党は2年前、政権交代ととも[記事全文]

橋下旋風―政党は「敗北」から学べ

 大阪ダブル選で、既成政党は完敗した。市長選では民主、自民の2大政党に、共産党まで支援に回った現職が負けた。

 圧勝した大阪維新の会の橋下徹代表は、記者会見で「政党は政策も政治理念もないことを有権者に見抜かれていた」と切って捨てた。

 大阪での政党の惨敗といえば、1995年の横山ノック知事当選がある。あのときは東京の青島幸男知事とともに、与野党相乗りへの批判票がタレント候補に雪崩を打った。

 だが、今回は政党不信より、橋下氏への期待感が大きかったように見える。政党にとってはより深刻な事態といえる。

 閉塞(へいそく)感の漂う、ふるさと大阪をいかに元気にするのか。各党には、橋下氏をしのぐ具体的なビジョンも政策もなく、政党が力負けした格好だ。

 敵をつくり、「○か×か」で問う橋下氏の政治手法には、強引だとの批判がつきまとう。目玉の大阪都構想だけでなく、教員や公務員の規律を強める基本条例案も賛否が割れている。

 政党側は橋下氏に、「独裁」だとの批判もぶつけた。

 そんななか、投票率は近年にない高さを記録した。有権者を突き動かした理由には、いまの政治のありようへの強い不満もあったに違いない。

 民主党も自民党も、有権者の歓心を買うような甘い公約を並べたてる。玉虫色の表現で、その場しのぎを重ね、ものごとを決めきれない。

 こんな政治にへきえきした有権者が、良きにつけあしきにつけ、信念を掲げ、説得の前面に立つ橋下氏の指導力に賭けてみたいと思うのは、自然なことだったのではないか。

 いわば大阪ダブル選は、力不足の既成政党による政治の迷走から抜け出したい有権者の意思表示だった。各党は「ひとつの地方選挙」「大阪の特殊事情」などと片づけてはいけない。

 敗因をきちんと分析し、手を打たねばならない。政党政治の将来にもかかわることだ。

 橋下氏は都構想の実現に向けて、近畿一円での国政進出も視野に入れる。この勢いなら、国会でのキャスチングボートを握る可能性もある。だから、みんなの党の渡辺喜美代表や国民新党の亀井静香代表が、橋下氏に連携を呼びかけている。今後も同じような動きが続くだろう。

 しかし、各党は心しておくべきだ。政治理念や政策のすりあわせを後回しにして、橋下人気にあやかるかのような接近ならば、既成政党への失望をさらに深めるだけだ。

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地球温暖化―国内対策の停滞を憂う

 南アフリカで気候変動枠組み条約の締結国会議(COP17)が始まった。京都議定書の今後を考える重要な時期に、日本の温暖化対策が後退している。

 民主党は2年前、政権交代とともに、「2020年までに90年比で温室効果ガスの25%削減」という高い目標を掲げた。

 当時の方針は、地球温暖化対策基本法を成立させて、「国内排出量取引」「環境税(温暖化対策税)」「自然エネルギー増加」の政策3点セットを導入することだった。

 その熱意はすっかり冷めた。基本法案は2年近くたなざらしだ。排出量取引は早い段階で断念され、今秋に導入予定だった環境税も先送りされた。自然エネルギーの固定買い取り法だけが何とか成立した。

 結局、日本にはいまだに温室効果ガスを着実に減らしていく骨太の仕組みがない。排出量は景気によって変動するだけだ。リーマン・ショックによって09年度は90年比で約4%減になったが、その後、また上昇傾向にある。このままでは京都議定書の「08〜12年平均で90年比6%減」の目標達成は微妙だ。

 さらに最近では、電力会社が業界の自主削減目標の達成は難しいと言い始めた。

 大きな原因は、原発の停止で火力発電が増えていることだ。電力業界の二酸化炭素の排出量は日本の約3割を占め、その削減は経団連の自主行動計画の柱である。ここが揺らぐと、日本の削減計画全体が揺らぐ。

 温暖化をめぐる国際交渉の不調で、13年からの「議定書の第2期」設定は難しそうだ。このため政府や経済界には「あまり国内対策に力を入れなくてもいい」という雰囲気がある。

 こんな考えでは、日本で蓄積してきた対策が無駄になる。温暖化への高い意識をもつ日本の国民の思いに背くだろう。

 日本はできる対策を進め、議定書の目標を達成し、排出削減の努力を続けることだ。国内対策をきちんと進めなければ、日本が国際規制のあり方について何を言っても説得力はない。

 日本で今後、原発が減るのは間違いない。短期的には火力発電の比重が高まるのは避けられないが、原発が減る中でも二酸化炭素を増やさない社会づくりをめざすべきだ。

 この夏、効果が実証された節電に期待したい。強制ではなく料金体系の多様化などで無理なく実施できる仕組みが必要だ。

 熱も供給できる高効率の天然ガス発電の拡大や、自然エネルギーの導入もスピードをあげなければいけない。

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