要するに、ここからはオリンパスが今から19年前に信託設定によって巨額損失を信託受益権化し、それらを自社とは異なる決算期となるように組成したファンドに沈めてしまう損失飛ばしを行っていた実態が浮かび上がる。
電撃解任されたマイケル・ウッドフォード元社長の内部告発がきっかけとなり、約20年間にわたるオリンパスの損失隠しが世に明らかとなったのは、今年10月のこと。だが金融庁は、少なくとも12年前には、実情の一端を明確に把握していたことになる。
資料にはさらに、オリンパスの信託受益権再売買スキームに対して、当時の検査当局が下した評定も記載されている。「真正売却したが、会計上、損失を計上しないケース」であり、「法律上疑義あり」という“クロ判定”である。
この損失飛ばし事件において、当時処罰の対象となったのは、スキームの提供者であるCSFBグループだけだった。リストに記載された60以上の企業、団体は損失を隠蔽していた罪を問われることはなかった。
金融監督庁の検査が銀行法の違反行為を摘発するものであり、依頼主側はその適用外だったからだ。
金融庁はだんまり
そもそも飛ばしの取り締まり自体にも障壁があった。当時は厳格な連結決算が導入される過渡期であり、時価会計の適用も徹底されていなかった。そのため、企業会計制度上、こうした抜け穴的な行為の処分は必ずしも容易ではなかった。
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