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診療報酬改定:据え置きか、減額か焦点 財務省、社会保障抑制へ強硬

 財務相の諮問機関「財政制度等審議会財政制度分科会」で28日、12年度の診療報酬改定がテーマに上り、年末の決着に向けた攻防が本格化した。「増額改定」から「据え置き」へと譲歩した厚生労働省に対し、財務省はなお「減額」を譲らず、争点は事実上「伸び率ゼロかマイナスか」に集約されている。【山田夢留、鈴木直、坂井隆之】

 診療報酬は1%アップで国費900億円を要する。同分科会としては引き下げたいところ。だが、28日呼ばれた日本医師会の中川俊男副会長は「地域医療は危機的状況だ」と発言し、プラス改定の必要性を強く訴えた。

 診療報酬は手術料など医師の収入につながる「本体部分」と、公定薬価を合わせたものを指す。改定はおおむね2年に1度。前回10年度は薬価を当初見込みの医療費より1・36%(約5000億円)減らす一方、本体を1・55%(約5700億円)増やし、全体では0・19%(約700億円)増。民主党政権の意向を反映し、10年ぶりのプラス改定となった。

 同党厚労部門会議の役員らは28日、12年度も全体での増額を求めることを確認した。しかし、1%アップは1750億円の保険料増にもなり、賃下げ基調にあえぐ国民の懐を直撃する。「なぜ医療関係者だけ収入増か」との疑問も多く、22日の政府の政策仕分けでは、本体増額を認める意見は皆無だった。

 市場価格の低下で薬価は減額改定が確実。本体は増減ゼロでも、全体は薬価分だけマイナスとなる。これまで小宮山洋子厚労相は全体のプラス改定を主張してきたが、25日の記者会見では「(仕分け結果と)違うことを言い続けるのもなかなかしんどい」と方針転換を口にした。これは本体の増加幅を薬価の削減幅と同じにとどめ、全体の改定率を「差し引きゼロ」とする考えを示したものだ。

 ◇首相「マイナスはない」

 それでも財務省にとり、放置すれば毎年1兆円程度ずつ増える社会保障費の抑制は最優先課題。同省は今回こそ全体をマイナスとすることを狙う。

 財務省は本体を据え置き全体をマイナスとすれば、社会保障費の伸びを1000億円超抑えられると見込む。勤務医不足などへの対応は「開業医に偏る報酬の配分見直し」で賄うよう主張する。

 ただし、一方で同時に改定される介護報酬は引き上げを容認する構え。政府は一般会計で時限的に賄ってきた、介護職員の給与を維持する費用を介護保険財政に組み込み、恒久化する方針。これにかかる費用を補うためにも、診療報酬全体のマイナス改定を実現させたい考えだ。

 とはいえ、診療報酬に関し、野田佳彦首相は党代表選で「マイナスはない」と明言した。日医も今後与党議員らへの働きかけを強める。財務省の思惑通り進む保証はない。

毎日新聞 2011年11月29日 東京朝刊

 

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