大阪府知事・大阪市長選は、橋下徹氏(42)の思惑通りの結果となった。有権者からはその改革姿勢を評価する声がある一方、イメージ優先の政治手法に懸念を示す識者もいる。
●識者
北海道大大学院の山口二郎教授(政治学)は、「閉塞(へいそく)感や欲求不満が広がる中で、『現状を破壊する』というメッセージの、中身ではなく『破壊』という言葉のイメージに府民が期待した結果だろう。都構想はどんどん中身が変わっている。実現したら社会や経済がどう変わるのかは何も説明されていない。『変えてくれるのではないか』というイメージだけで選ばれたと感じる」と指摘。
そのうえで、「国の政治が混迷する中で、地方では別の選択肢を求めるというのはしばしば起きる現象。選挙が近づき、生き残りがかかる民主党の国会議員の中には維新になびく者も出てくるのではないか。国政に与える影響は大きいだろう」と話した。
「日本型ポピュリズム」の著書がある同志社女子大の大嶽秀夫教授(政治学)は「橋下さんは典型的なポピュリスト。グローバル化が進み、東京が著しく国際化して経済も一極集中するなかで『都構想』という発想が、東京に強い対抗意識を持つ府民に受けた。メディアを利用した大阪の『強いリーダー』としての演出が、無党派層に浸透した」と勝因を分析。
さらに、「政党色のない強いリーダーが勝つのは大阪に限らない。従来の後援会に頼った固定票では、もはや多数の無党派にかなわないということではないか」との見方を示した。
評論家の大宅映子さんは、「知事としてしがらみにとらわれず成果を出した」と一定の評価をしながらも「任期途中で辞めてから攻撃的、破壊的になった。大阪の人の性質として『何かおもろいやん』というノリで投票した向きもあると思うが、あの言動は不安だ」と話す。大阪都構想については「具体的にどうすれば実現するのか道筋が見えず、『やっぱりできませんでした』となった民主政権と同じ結末にならないといいが」と語った。
●有権者
大阪市長選で橋下さんに投票した有権者に聞いた。
知事として大阪府を改革した姿勢に期待できると思った。情報を発信するので考えも分かりやすい。一番に取り組んでほしいのは二重行政の解消。知事と市長でもめているよりも、一つにして大阪都になればもっといろんなことが進むと思う。
何かにつけて大きくメディアに取り上げられる橋下さんなら、大阪も盛り上がっていい。良い変化が起きるのではないか。古いものを変える改革力もある。これまでの大阪市がやっていた通りではだめだと思った。
週刊誌などのバッシングを受けても、自分が先頭に立ってやり抜こうとする姿勢が大阪を変えてくれると思った。子供たちには今よりも良い大阪に住んでいてほしいから。
具体的に何が変わるか分かるのはこれからだと思うが、大阪都構想に賛成。変化に期待している。演説でも橋下さんはビジョンを明確に示していて良かった。大阪にもっといい街になってほしい。
大阪は平松市長で良くなってきたが、東京だけでなく名古屋にも経済で負けているのはさみしい。システムの変更で活気が出ることに期待した。大阪都構想の説明が不足しており、「ぐっ」と悪くなる可能性もあるが、リスクを冒してでも今回は橋下さんに賭けてみたいと思った。
毎日新聞 2011年11月28日 東京朝刊
ウェブサイトが15分で簡単作成、しかも無料で
「はやぶさプロジェクト」のサポートチームに参画