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2011年11月28日(月)付

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大阪維新勝利―おごらず対話と協調を

40年ぶりの大阪ダブル選は、大阪都構想をかかげる大阪維新の会の勝利に終わった。市長となる前知事の橋下徹氏は、後継の知事に当選した同会幹事長の松井一郎氏とともに、府と市の[記事全文]

子ども手当―政府の財源案は乱暴だ

来年度からの「子どもに対する手当」の財源をめぐり、政府と自治体がもめている。小宮山厚労相が、地方側の負担を今年度の2倍近くに増やし、国の資金をほぼ半減させる案を示したこ[記事全文]

大阪維新勝利―おごらず対話と協調を

 40年ぶりの大阪ダブル選は、大阪都構想をかかげる大阪維新の会の勝利に終わった。

 市長となる前知事の橋下徹氏は、後継の知事に当選した同会幹事長の松井一郎氏とともに、府と市の行政の仕組みを根本的に変えると主張した。

 有権者は、経済が沈滞し閉塞(へいそく)感の強い大阪の現状打破を橋下氏の行動力に託したといえる。

 維新の公約は都構想と、教員や公務員の規律などを定める教育・職員の両基本条例、原発依存度の低下の4本柱だ。

 都構想については、選挙戦で論議が深まったとは言い難い。橋下氏は区割りや財政調整などの具体論には踏み込まず、焦点がぼけた印象はぬぐえない。

 都構想そのものが信認されたというより、「二重行政が大阪の発展を妨げている」という問題意識に共感した人が多かったのではないだろうか。

 維新は4年で都制に移し、生まれた財源で「稼ぐ自治体」をめざすという。法改正も伴う組織再編はさらに議論が必要だ。むだの排除や効率化をまず徹底し、実感できる成果を一日も早く示してほしい。

 橋下氏と維新の政治手法も大きな争点となった。

 市長選では現職の平松邦夫氏が「反独裁」を訴え、知事選でも倉田薫氏、共産の梅田章二氏が強権政治からの脱却を主張した。橋下流への疑問がぶつけられた選挙でもあった。

 維新が誕生して1年半。権力を手にするほどに責任も重くなる。強引な正面突破より政治勢力としての成熟を期待したい。

 統一地方選後、公約になかった君が代起立斉唱条例を突然提案し成立させた。こんな手法を繰り返してはならない。有権者は白紙委任したわけでない。

 市議会で維新は過半数をにぎっておらず、対話と協調はいやでも政策決定の前提となる。

 財政再建は府市ともに急務だが、予算カットや公的施設の統廃合などは、関係者との話し合いなしでは進まない。

 府の教育委員全員が反対する教育基本条例案の行方が、維新の姿勢を占う試金石となろう。

 脱原発へ向けた新たな施策を示すことができるか、注目される。大阪市は関西電力の筆頭株主。橋下氏は株主提案権を行使し発送電分離で新規参入を促したいという。手腕が問われる。

 橋下氏の個性とアピール力、激しい論戦が、高い投票率につながった。一方で独自候補を擁立できずに埋没した既成政党は、新たなうねりとなった地域政党とどう対峙(たいじ)するか、抜本的な立て直しを迫られている。

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子ども手当―政府の財源案は乱暴だ

 来年度からの「子どもに対する手当」の財源をめぐり、政府と自治体がもめている。

 小宮山厚労相が、地方側の負担を今年度の2倍近くに増やし、国の資金をほぼ半減させる案を示したことに、全国知事会などが反発している。

 今年度の「子ども手当」は国が1兆8800億円、地方が5500億円を出している。それが来年度からは対象者に所得制限を設け、かつて国と地方が1対2の割合で負担していた「児童手当」を拡充する形にする。

 そこで、厚労相は子ども手当に国費をつぎ込んできた経緯も踏まえて、1対2ではなく折半を持ちかけたわけだ。具体的には地方の負担分が9800億円程度に膨らむ。

 いかにも唐突な増額要求に見えるが、子ども手当の実施に合わせた住民税改正で、地方側は来年度は5050億円の増収が見込まれる。それを充てればすむはずだ、という理屈だ。

 これに対し自治体側は、こう反論する。

 そもそも、子ども手当は全額国費で賄うのが民主党の公約だったはずだ。自民、公明両党に押されて取り下げておいて、一方的に地方負担の拡大を言い出すやり方が信じられない。

 それに住民税は自治体固有の財源であり、増収分の使い道を国が勝手に決めるような言い方は、お上意識まる出しだ。地域主権に逆行している。

 両者の主張を冷静に比べてみれば、厚労相側がまるでケンカを売っているように見えて、乱暴すぎるのは明らかだ。

 小宮山氏は、野党が児童手当に戻したと主張したとき、子ども手当を「ちょっと姿を変えたけれど継続した」と述べた。それなのに、負担を求める時だけ児童手当の枠組みだからというのは筋が通らない。

 民主党政権は自治体にかかわる政策を企画段階から話し合う「国と地方の協議の場」を法定化し、地域主権改革の成果だと胸を張ってきた。「子どもに対する手当」はその議題にふさわしいテーマだ。子育ての現場を担う自治体の言い分に、もっと耳を傾けたらどうか。

 そのためにも厚労相は、提案をいったん撤回して、近く開く「協議の場」で、一から検討し直すべきだ。

 むろん、地方側にも柔軟な対応を求める。住民税の増収分の一部を「手当」の財源に回す余地はあるだろう。

 政府と自治体は、いかに使い勝手がよく、安定した子育て支援策をつくるかでこそ競い合ってほしい。

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