13日目に琴奨菊と稀勢の里があまりにみっともない負け方をしたので、小稿に精いっぱい皮肉を書いた。13日目で4敗になってしまった2人より、3敗で浮き上がってきた2人、あるいは雅山を加えた3人の方に肩入れしようかという嫌みを書き連ねたものである。
それが効果的だったなどとは考えないが、13日目から見たら、別人のような生きの良い相撲を、問題の4敗勢が取って見せてくれた。その気になればできるじゃないか、一体何を考えているのかと、真顔で聞きたくなるような相撲だった。
まず稀勢の里だが、栃乃若を問題にしなかった。下から下から押し上げ、突きを交えながら攻め込んだ。その間にはのど輪攻撃が交じっていたのだから、一方的に攻め込んだようなものである。問題の大関昇進は、この栃乃若戦の勢いを見れば、あと一番、必死の戦いを展開すれば、なんとかなりそうだと思うが、どんなものだろう。ここまで追い込まなくても、とっくになんとかなりそうだったのにと考えたりする。しかし、ここまで追い込まれたから、声援は一層大きくなっている。言ってみれば、日本中を味方にしているような戦いなのだ。
13日目のすっきりしない戦いは、琴奨菊にとっても、これではならないものだと思えたのだろう。豊ノ島戦では、生きの良い琴奨菊が戻ってきていた。勝つ負けるは別の問題として、こういう戦いぶりを見せてくれなければ、琴奨菊の相撲を見た満足感には到達しない。
攻め込んでいく勢いの激しさ、強さとともに、こういった相撲でなければ豊ノ島を何もできない苦しさに追い込めまい。そして、それがまさに琴奨菊の相撲なのだと思う。 (作家)
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