被写体コントラスト(subject contrast)に影響を及ぼす因子は、
(a)被写体の厚さ
(b)線減弱係数(実効原子番号、密度、X線質)
(c)造影剤の使用
(d)散乱線の有無 などがある。
焦点の大きさ、管電流、増感紙は被写体コントラストに影響しない因子である。
フィルムコントラスト(film contrast)に影響を及ぼす因子は、
(a)増感紙の使用
(b)フィルムの種類
(c)フィルム濃度(黒化度)
(d)現像処理(現像温度、時間、処理液の組成) などがある。
X線写真コントラスト(radiographic contrast)を改善する方法には、
(a)管電圧を低くする(X線質)。
(b)付加フィルタを薄くする(X線質)。
(c)ガンマの高いフィルムを用いる。
(d)増感紙を使用する。
(e)高グリッド比のグリッドを用いる(散乱線)。
(f)可動絞りで撮影範囲をできるだけ絞り込む(散乱線)。 などがある。
焦点の大きさ、撮影距離、管電流、撮影時間はコントラストに影響しない因子である。
| X線画像コントラスト |
X線画像の投影歪みには、拡大による歪み、位置による歪み、形状による歪み、照射角度による歪みの4つがある。b
X線束中心線がフィルムに垂直入射する場合において、拡大歪みは拡大率が大きい程大きくなり、位置歪みと形状歪みは照射野内の周辺で最大となる。
また、歪みは撮影距離が短く撮影範囲が大きくなるほど増大する。
焦点被写体間距離をa、被写体フィルム間距離をbとすると、拡大率Mは、
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M=1+ ―――
a である。
焦点被写体間距離と被写体フィルム間距離が同じの場合は2倍拡大像が得られる。
【例題】
拡大撮影で50μmのX線管焦点を使用した場合、ボケの許容を0.2mmまでとすると最大拡大率は何倍が限度か。 解:5倍
b
H=F・――― = F・(M−1)
a である。
【例題】
焦点−背面肋骨間距離40cm、背面肋骨−フィルム間距離30cmの幾何学的配置において、2mm焦点のX線管を使用して胸骨の近接撮影を行うと、背面肋骨のボケは何mmになるか。 解:1.5mm
拡大率1.5倍の撮影で、半影は0.3mmであった。焦点−被写体間距離を変化させないで拡大率2倍の撮影を行うと半影は何mmになるか。 解:0.6mm
X線撮影の領域では、コンプトン効果が支配的である。
散乱線は一般に前方散乱、側方散乱、後方散乱(背後散乱)に分類される。
画質低下の原因となるのは前方散乱である。
被写体から発生する散乱線によりカブリが生じ、そのためにX線写真コントラストや鮮鋭度が低下する。
可動絞りはX線管からの焦点外X線を除去する。
焦点外X線の低減は鮮鋭度の向上に効果がある。
散乱線の発生を減少させる方法は可動絞りを有効に用いて照射野を最小限に小さくする方法、圧迫により被写体の厚さを薄くする方法、低電圧にて撮影する方法がある。
また、後面増感紙の後に鉛板を貼ることにより、撮影台からの後方散乱線を除去できる。
これらの方法は散乱線除去効果をあげることができる。
散乱線除去法として、グリッド法とグレーデル法(エアーギャップ法)がある。
グレーデル法は被写体とフィルムとの距離を15〜20cm離して、被写体からの散乱線を除去する方法である。
散乱線を除去するのでコントラストは向上するが、被写体とフィルムが離れるため、像の拡大に伴うボケが大きくなり、鮮鋭度が劣化する。
グレーデル法は、高圧撮影、拡大撮影に応用されている。
被写体の動きにより鮮鋭度が低下する。
鮮鋭度は増感紙の使用により低下する。
鮮鋭度は高感度増感紙(感度が高い)ほど悪くなる。その理由は、感度を高くするほど蛍光体の粒子径が大きくなることや、蛍光体層が厚くなるからである。
一般に、鮮鋭度と感度は相反する。
増感紙・フィルムが密着不良のときMTFは低下する。
X線の斜入によりボケが増大し、鮮鋭度が低下する。
それぞれの不鋭の要因を集計したものがその撮影系の総合不鋭Utである。
総合不鋭は一般に2乗和の平方根で表示されている。
粒状性は画質を損なう原因となるもので、粒状性の評価はSelwynによって研究された。
粒状性に関する画像の性質も鮮鋭度と同様なフーリエ解析によって取り扱うことができる。
視覚的測定による表示方法は心理的粒状性、物理的測定による表示方法は物理的粒状性(粒状度)という。
モトル構成寄与率が最も高いのは量子モトルであり(70〜80%)、粒状性に大きく寄与する。
粒状性は感光材料の感度に依存し、高感度システムほど量子モトルの影響が大きくなり、低下する。
同一濃度のX線写真では、粒状性は高線量(低電圧)で撮影した方が向上する。
総合感度が同一であれば、粒状性は高感度増感紙と低感度フィルムの組み合わせの方がよくなる。
粒状性は濃度により変化する。
同一感度の感材システムでは、増感紙のMTFが高くなると、低い場合に比べて、RMS値やWS値は大きくなるので、一般に粒状が目立つ。
フィルムのガンマが大きいほど、すなわちコントラストが高いほど、RMS値は大きくなり、粒状性は一般に悪くなる。
粒状性の優劣は低コントラストの信号検出能に影響する。
粒状性は低温現像処理をすると向上する。
粒状性に関係する因子には、X線光子数、ハロゲン化銀結晶の大きさ、増感紙の蛍光体組成、現像液の組成、写真濃度などがあり、定着液の組成は粒状性に関係しない。
コントラストとは、隣接した箇所における明暗の対比を表す量である。
X線写真コントラストは被写体コントラスト(線コントラストradiation contrast)とフィルムコントラストから成立している。
被写体コントラストは、被写体を透過してきたX線の強弱の差である。
被写体コントラストは、被写体の厚さやX線質等に左右される。X線の波長が短くなるほど吸収による減弱は少なくなるので、コントラストは低下する。併せて、吸収よりも散乱の効果が大きく寄与するので、さらにコントラストは低下する。
フィルムの種類や現像処理によって特性曲線の形が変化するので、フィルムコントラスト(γ値)は、変化する。また、特性曲線の形はS字状なので、写真濃度によっても変化する。
X線管より放射されてくるX線は被写体と平行ではないため、フィルムに形成される画像は、拡大や歪みを生じる。
半影は焦点が点でなくある面積を有することと、被写体が立体構造を持ち、理想的に被写体フィルム間距離を0にできないために生じる。
人体を構成している各種臓器、器官などがX線の進行方向にあれば、それらが重なり合って、合成したX線像となり、目的部位の障害となる。これを重積効果という。
接線効果は被写体の目的部分に対して、X線束が切線の状態で放射したとき目的部分の輪郭を強調した像を作る現象である。
散乱線含有率とは、全X線中に含まれる散乱線の割合である。
照射野が小さければ小さいほど散乱線含有率は小さくなり、散乱線の影響が小さくなる。言い替えれば、必要範囲内に照射野を絞ることが、画質を良くすると同時に、被曝線量を軽減することになる。また、被写体厚が厚い程散乱線含有率は大きくなる。
グリッド法はグリッドを被写体とフィルムの間に設置して散乱線除去をする方法である。
鮮鋭度とは、X線減弱を異にする隣合った2つの部分の境界がどの程度明瞭に区別できるか、その度合いである。人間の眼がボケとして感じない許容量は0.2mm〜0.3mmであるので、不鋭が0.3mm以下なら、鮮鋭と感じる。
幾何学的不鋭に関する因子は,
(a)X線管球焦点の大きさ:小さくすると鮮鋭度はよくなる。
(b)FFD(focus film distance):大きくすると鮮鋭度はよくなる。
(c)FSD(focus skin distance):大きくすると鮮鋭度はよくなる。
感光材料による不鋭とは、主に増感紙を使用したときの不鋭で下記の2点がある。
(a)増感紙の構造的なもの: 入射光の乳剤中での散乱(イラジエーション)、入射光が乳剤層を透過してベースで反射(ハレーション)し乳剤層に入射することにより鮮鋭度は低下する。
両面乳剤のX線撮影用フィルムは片面乳剤フィルムに比べ、片面で100%吸収されず反対側の乳剤に到達する(クロスオーバー)ためフィルムの鮮鋭度は悪くなる。 また、微粒子のフィルムや増感紙を用いると鮮鋭度はよくなる。
(b)感光材料の密着不良によるもの。: 増感紙とフィルムの密着をよくすると鮮鋭度はよくなる。
(a)管球焦点の大きさ: 小焦点を用いると解像度は向上する。
(b)グリッド: 散乱線を除去することにより解像度は向上する。
(c)撮影距離: 距離を長くすると解像度は向上する。
(d)被写体コントラスト: 被写体コントラストがよいと写真コントラストがよくなるので解像度は向上する。
粒状性(度)は二次元にランダムに分布している画像の、粒状構造の状態、性質で、フィルム面上でみられるざらつきである。
X線管が焦点から発生する現象、およびX線光子が物質に吸収される現象はランダムであり、統計的法則に従うものである。
X線管焦点から照射されたX線がスクリーン・フィルムに到達するとき、X線光子密度は、場所によって異なる。このX線光子密度の変動を統計的ゆらぎという。