@djtomoko n Ucca-Laugh -

掲載日:2011.11.09

MPDと呼ばれるパッドコントローラーとPCを駆使して、シンプル且つグルーヴィなトラックを生み出す@djtomoko。気取りのない表情豊かな歌とラップを繰り出すUcca-Laugh。セルフ配信のUSTREAM番組やTwitterから火がつき、ユニット結成から約1年でメジャーデビューの切符をつかんだ彼女たちがファーストアルバム『1 MPD n a MIC』を完成させた(11/9リリース)。彼女たちのセールスポイントは、独自のポップな言い回しが顔を出す普段着感覚の歌詞と、今っぽいのに既聴感のあるメロディアスな歌、それとズンズン体に響く太めのビート。それらが三位一体になって、ファニーでキュートな新感覚のヒップホップR&Bを生み出している。彼女たちのサウンドからイメージする形は、角張った□とか△じゃなくて、♡型。丸みとトンガリが共存しているところが魅力なのだ。明るくて、笑顔が絶えず、チャーミングな音とキャラで関係者をどんどん巻き込んでいくパワーにも優れた2人。抜群の愛嬌と求心力を持つ彼女たちを覚えておいて損はないです。


-- もともとレーベルメイトだった2人が2010年に再会したそうだけど、そのきっかけは?

Ucca-Laugh:最初は、ともちゃん(@djtomoko)のブログを2009年12月くらいに見つけて、“この人、知ってる、会いたい”と思って、2010年の年始に会ったのがきっかけ。そのとき、ともちゃんはアメリカから帰ってきたばっかりで結構アグレッシブで。私もひとりで音楽をやってたから、ともちゃん、ビートすごいんだろうなぁと思って、一緒にやりたいと思ったんだけど、相手にされなかったんですよ。で、半年くらい経ったとき、私が失恋してブワーッとなったところを彼女が見ていて、その狂乱ぶりに惚れてくれて一緒に音楽をやることになりました(笑)。

-- あはは。なんだ、それ(笑)。

@djtomko:だって、ゆかは最初、本気で音楽やる気あるのかな?っていうくらい、超ヘナヘナっぷりだったもん。クラブ行ってもすぐ携帯なくすしさ(笑)。私は帰ってきてから音楽でしかメシを食いたくないって思ってたし、音楽に対して本気じゃない人としかやりたくなくて。でも、失恋してキレた瞬間のゆかの「リベンジしてやる!」みたいな怒りが今まで見たことのない恐怖感っていうの?(笑) こいつは奥底には燃えるものがあるんだろうな、簡単には諦めなさそうだなっていうのがあったから、ちょっとやってみようかなって思ったの。

-- 結成したとき、どんなグループ像をめざしたの?

@djtomko:私は完全にプロデューサーとしてやりたかったから、プロデューサーをフィーチャーしたグループが理想だった。ただ、シンガーの女の子でプロデューサーの名前がユニット名の先頭に来るのを「うん」って言ってくれる人はいないと思ってたんだけど、ゆかはそういうのはあまりないし、しかも女の子のプロデューサー名が先頭に来てるのってないから面白いじゃん、って言ってくれて。ウチらの名前って2人の名前を並べただけじゃん。グループ名を決めたくないっていうのは最初から一致してたの。

Ucca-Laugh:そう。普通グループだったら、グループ名があって、そのグループの@djtomokoとUcca-Laughじゃん。でも、敢えてグループ名を付けないで、名前を&で繋ぐのがいいって。ふたりでひとつのグループ名にしちゃうと甘んじちゃうところが出るっていう想像がついてたし、だからこそ、インディヴィジュアルな関係を保てるユニットがともちゃんとならできるって思ったの。


-- 2人が“ともゆかサウンド”を作る上で大事にしてることは?

@djtomoko:Aメロ、Bメロ、サビ行って、Cメロ行って、ブリッジで、とかそういうのはあんまり考えてないかも。構成はシンプルに行きたいっていうのはあるかな。

-- トラックメイクでこだわってる部分は?

@djtomoko:キックとか、スネアとか、目立つところははっきりくっきりしたい。そういうのが好き。

-- 一音一音はっきり聞こえるようにってこと?

@djtomoko:うん。それぞれの素材が全部聞こえた方がいいなって。J-POPってすごい音をいっぱい重ねてるから「ここでこの音鳴ってたんだ」とか「後ろでシャカシャカ言ってるな」とか、そういうのってあるじゃん。そういうのよりは、「あ、ここでこれが聞こえる」「あ、ここでこれが聞こえる」みたいな、はっきりしたトラックの方が好みで、そこは今回、意識してました。

-- じゃあ、歌詞でポイントを置いてたところは?

Ucca-Laugh:「あなた」って表現してても、それが男と女の「あなた」ではなくて、モノであっても成立するように作ったっていうのは初めて。たとえば「日愛日未なぅ」とか、「Minna Winner」もそうだし、「ゴミ箱を空にする。」とか。そういう曲は比較的、恋愛以外にも当てはめられるように書いた。

-- 今回のアルバムは、「はじめまして、ともゆかです!」という自己紹介ソングから始まるけど、ざっくり言うと「20代女子の生活」が描かれてるよね。

Ucca-Laugh:あはは。20代女子の生活ね(笑)。確かに。

-- ダイエットをテーマにした「MAJI?!女ダイエット」とか、愛のあるセックスをテーマにした「ラヴ合ちん」とかさ。

@djtomoko:「ラヴ合ちん」で言いたいのはセックスじゃなくて、Making Loveっていうこと。アメリカだと「Having Sex」って言うのは、ただヤるだけ、みたいな意味合いで使われているみたいで。「Making Love」の方がより愛のあるセックスを表わしているみたいだから、その違いを伝えたかったの。

-- あと、「Loving Proof」っていうウェディングソングもあるしね。これは誰かの結婚式にお呼ばれして書いた曲なの?

@djtomoko:そう、友だちの結婚式に行ってきて。結婚式はやっぱり何かしら曲がかかるから、結婚式にウチらの曲をかけてもらいたいなって。しかも、この年齢だとこれから周りで結婚する人いっぱいいるだろうから、まずは作っとこうよ、みたいな。

Ucca-Laugh:そういう営業用ストックだよね(笑)。結婚したいから書いた、っていうんじゃない。だって、ウチらはしばらく結婚しなそうだもん(笑)。


-- それに、失恋ソングも2曲あって。ひとつは過去の恋への未練を描いた「ナミダの無駄遣い」。

Ucca-Laugh:これは切ない失恋ソングですよ。(交際相手と)お別れしたあと、もう戻れないっていうのに、電話したら普通に出てくれて、会っちゃったりして。で、そのときの状況にもよるけど、ごはんに行ったりとか、会ってヤッちゃったりとかあるじゃないですか。そんなことやってても結末は見えてるのにっていう、そういうダメなルーティンの表現。

-- もうひとつの「Phone #」は、ダンスフロアでの恋の駆け引きソング。こっちは想いを寄せてた人の隣に自分の友達が……、という内容。

Ucca-Laugh:これはちょっと若いよね。今はないけど、昔の自分を思い出して書いた(笑)。これ、トゥルーストーリー?

@djtomoko:トゥルーストーリーでしょ? 私の目の前で初めてゆかが泣いたときの状況に近いんじゃない?(笑)


-- 「日愛日未なぅ」も揺れる女心をちょいダークなトラックに乗せて描いた曲だよね。

Ucca-Laugh:これはセフレまたは不倫系な、曖昧な関係がテーマ。そういう関係をピントがぼけた写真にたとえて書いた。この曲は、私、大好き。

@djtomoko:私も。夜になると聞きたくなる。

-- 一方、「YT&G」は理想の女性像を描いたと言える曲。このタイトルは、ホ“ワイ”トTシャツ&ジーンズの略でしょ。

Ucca-Laugh:そう。この曲のテーマは……吉田栄作?(笑) RIKACOさんとか吉田栄作さんとか、白Tにジーンズでかっこいい、みたいな時代があったでしょ?

-- あったけど、2人はあんまり知らないでしょ。

@djtomoko:吉田栄作は若干かぶります。

Ucca-Laugh:テレビで観たこと、たぶん、ある(笑)。


-- たぶんって(笑)。

Ucca-Laugh:で、自分も大人になってきて感じるんだけど、若いときってアクセサリーでも洋服でも安いのをいっぱい買って、とりあえずワードロープがいっぱいになってればいい、みたいなところがあったんだけど、最近はひとつのものにお金を掛けて長く使えるものを買ったりとか、たくさん身につけなくても、自分が自信を持てば、それだけで何も要らないっていうことに気づいてきた感じがあるから、それを表現したかったの。

@djtomoko:内面からいい女になろうぜー、ってことですよ。


-- 「Do the Right Thing」や「B Professional」は、人として、アーティストとしての理想像を綴った曲。

@djtomoko:「Do the Right Thing」は、「こう言ってても何もやらないヤツ、多くない?」とか「ちゃんと有言実行しろよォ」みたいな人が多かったから、ちょっと歌にしちゃわない?っていう。そういう普段の会話から生まれた歌。「Bプロ」は、私がゆかに「Be Professional!」ってめっちゃ言いまくってたから(笑)。

Ucca-Laugh:プロフェッショナルになれ、って(苦笑)。

@djtomoko:2人で組む前とか、組んですぐ、ぐらいかな。(ゆかに)「Be Professional!」みたいな感じで超言ってて。自分に言い聞かせるかのように言ってたのを覚えてる(笑)。


-- ところで、アルバムを聴いていて、全体的に歌の雰囲気やメロディラインが歌謡曲的というか、濡れてる感じだなって思ったのね。Ucca-Laughの声質自体が憂い系というのもあるんだけど。

@djtomoko:私も特に「YT&G」は思った。超歌謡って。


-- なんだけれど、ビートは全体的に粗い質感でアグレッシブでしょ。そのミスマッチ感が、2人の特徴のひとつかなって思ったんだ。

Ucca-Laugh:へー。

-- 「へー」って(笑)。あと、歌詞と音のミスマッチ感もユニークだなって。「ナミダの無駄遣い」は切ない歌なのに、妙に明るい感じのコーラスが入ってたりする。「Do the Right Thing」もちょっと説教入ってる歌詞をコミカルに仕立てる。「Loving Proof」もハッピーな結婚ソングだけど、音はファットなヒップホップっていう。そういう違和感が独特のフック、ポップさを生んでるなって。

Ucca-Laugh:まあ、普通じゃ嫌だっていうのは、すごい言ってて。

@djtomoko:そこは2人で一致してるの。たとえば「ナミダの無駄遣い」も、最初「ダーナミの無駄遣い」っていうタイトルだったし。だから、ちょっとひねくれたい願望がある。


-- そうやって自分たちで作った言葉を歌詞に取り入れるのも特徴だよね。「セックスる」とか「きっドキッと」とか。曖昧をギャル文字風に書いた「日愛日未なぅ」というタイトル表記もそう。

Ucca-Laugh:そういうのはやっていきたい。普通に(歌詞やタイトルを)読んでもつまらないしね。

@djtomoko:「ネコかぶりっ子ごっこ」とかね。会話の中に出てきて「これ、おもしろくない?」みたいなのがあるんです。

Ucca-Laugh:ウチらSkypeを有効に使ってて、本当、長いときは8時間とか喋ってて。そこから言葉の破片が出てきて、一回寝たあと、「あ、アレおもしろかったな」って書くことが多いんですよ。

-- なるほど。では、最後に2人のキャラの最大の武器を教えて!

Ucca-Laugh:親しみやすさ。社交性。もう、それだけで生きてる(笑)。あと、巻き込み力! 

@djtomoko:いろんな人に言われたもんね、人と仲良くなる才能があるって。


-- 確かに、UST番組を発端にしてZeebraまで巻き込んだしね。もう音楽界以外も巻き込み始めてる?

@djtomoko:まだないけど、会いたいよね、そういう人たちに。会う機会があれば巻き込めそうな気はする。

Ucca-Laugh:うん、一回会えば巻き込めるよね。 ——すごい自信だなぁ、それ。

Ucca-Laugh:たぶんね、『ダウンタウンDX』とかの人たちには絡めると思う(笑)。

@djtomoko:あー、そういうところいいね。タモ(リ)さんとか。

Ucca-Laugh:あー、タモさん、いいね。

@djtomoko:とんねるずとか。

Ucca-Laugh:あー、とんねるずはちょっと……。


-- なに、そのとんねるずはちょっと……っていう上から目線は!(笑)

@djtomoko:あはは。どんだけ自信あるんだよって話だよね、それ。あはははは!

 

 

<インタビュー・文 / 猪又孝(DO THE MONKEY)

 

 

 

 

リリース情報

 

djtu_j.jpg

 

1st Album
『1 MPD n a MIC』

2011.11.9 ON SALE!
TKCA-73709 / ¥2,400(tax in)



ライブ情報

『oricon Sound Blowin2011~autumn~』
11/12(土)  渋谷O-EAST

『YUME fest 東京』
11/19(土)  青山 FIAT CAFE

『Night Park』

11/26(土)microcosmos


プロフィール

@djtomoko n Ucca-Laugh
(アットディージェートモコ アンド ユッカラフ)

いままでの日本のHIP HOP、R&Bシーンにはなかったような斬新なトラックメイクセンスを持ち、ライブではMPDのパッドを叩いて変幻自在のリズムを繰り出すビート・メイカー @djtomoko(赤いパーカー)と、このソーシャル時代にフィットしたカジュアルな歌詞と心にグッと刺さるメロディを天性の表現力で歌いあげてオーディエンスを沸かせるシンガー Ucca-Laugh(青いパーカー)の2 人から成る、明るく奔放なキャラクターが持ち味のユニット。
レーベルメイトだった二人が2010 年に約5 年ぶりに再会し、USTREAM とNY のブルックリン・ヒップホップ・フェスティバル公式イベントでのパフォーマンスをきっかけに結成。そして彼女達の自宅から配信する即興ビート・メイキング番組が日本のHIPHOP 関係者の目に止まり、無名ながらもUSTREAM 累計視聴者数14000人を突破するほどの人気番組となる。
昨年12月にはNY でDJ プレミアと競演し、横浜アリーナで行われたイベント「BEAT CONNECTION」のオーディションにてベストサウンド賞を受賞。J-WAVE のナビゲーターDJ TARO のバックアップのもとに配信した楽曲がiTunes HIPHOP チャートの4 位、5位、8位と上位にランクイン。まだCD リリースがないにも関わらず「HOW WE RULE」がJ-WAVE チャート24 位にランクインし、さらに今年3 月にはタワーレコードR&B 系有力バイヤーが主催するイベントURBAN SUMMIT にMIHIRO やエリオット・ヤミンなどと共に出演するなど、業界の注目を浴びている。

 

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