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2005-01-12

デビルマンとマーズ

永井豪の「デビルマン」と横山光輝の「マーズ」は、思い出深い作品だ。共にアニメから入り、後に原作を読んでいる共通点がある。また話の結末にも共通点がある。
両作品とも、地球人ではないにも関わらず、自分の”仲間”を裏切って、地球人を、地球を守る。しかしアニメ版では、地球人を守り通す二人も、原作では、マーズは地球人の残虐さから地球人に見切りをつけ、地球を破壊する。デビルマンは愛する女を人間に殺され、人間を殺す。そしてデーモン一族に破れ、死ぬ。両作品とも、あのラストシーンは、当時中学生だったshiroyagiにとって、衝撃的な結末であった。ヒーローが地球を破壊するんて。ヒーローが死んでしまうなんて。それだけにショックを受けて何度も読み返した。
原作とアニメが全く違うことはよくあることだし、ここでは深く触れないが、原作とアニメを読み比べると、この二作品に関しては、原作が圧倒的に勝っていると思う。こういう作品こそ、今の時代に必要なのではないかと考えた。

shiroyagiさんの投稿 - 09:41:39 - 4 コメント - トラックバック(0)

2005-01-11

夢の王子様

夢の世界に もし王子様がいるのなら 僕は会いたい
そして僕は 僕のたったひとつの お願いをする

眠っている間 しあわせをください

起きている時は 歩きます
躓いた時は 起き上がります
病んだ時は 寝ながら祈ります
死んだ時は 全てを捧げます

あなたの国にいる間 僕をしあわせにしてください
僕が おやすみと言ったら 願いを叶えてください

shiroyagiさんの投稿 - 22:22:03 - 2 コメント - トラックバック(0)

2005-01-10

恋愛ハンター

職業に貴賤がないように、恋愛にも貴賤はない、これが俺の信条。俺の名は自称恋愛ハンター鷹杉翔。今日の恋愛ハントは、偶然降りた駅のキオスクで始まった。
「ケントマイルド」
「はい、ケントマイルドですね、270円になりまーす」
鷹杉は店内から伸びてきた手のひらに、ぴったり270円を差し出す。一瞬手と手が触れ合う、ビビッと電気のような刺激が体中を走る。相手の顔を見る。惚れた、惚れたよ、惚れちまったよ、お前さんに。鷹杉は口の中で囁くと、踵を返してキオスクを後にして、駅のトイレに入る。髪を整え、鼻毛、口臭のチェックをする。オーケー!気持ちいい声が自分の中から返ってくる。もう一度さっきのキオスクへ向かう。
「ケントマイルド」
「はい、ありがとうございまーす」
また、手と手が触れ合う、まるで心と心が通い合ったように。惚れたよ、惚れ直したよ、お前さんにゾッコン・ラブ、心の中で叫ぶ。またトイレに入る。シャツの脇から手を入れ、脇の下に制汗スプレーを一吹き、こっちの脇にも一吹き。ついでにパンツを摘み、股間にも一吹き。頬を両手で叩き、自分に気合いを入れ、またさっきのキオスクに戻る。
「ケントマイルド」
「はい、270円、あらさっきの人、買いだめですか」
「いや、忘れ物をしてしまいまして。一番大事なものを買うのを忘れてしまいました。あなた、あなたを下さい」
「何、おっしゃるんですか、ご冗談を、お客さん上手いわ」
「冗談なんかじゃない、本気です。君が欲しい」

キオスクの店内に、緊張した空気が流れる。時が呼吸を止めたように。

「帰っておくれ、あんたに構ってる時間はないんだよ。二度と来ないでおくれ、出てけ、出てけ、でないと警察呼ぶよ」

鷹杉は足早に逃げるように、トイレの個室に籠った。ノーはイエスの証、そう呟くと拳に力を入れる。ブリーフケースから、便箋を取り出し、ラブレターを書き出す。30分程経っただろうか、鷹杉はやっとのこと用を足し、個室から出て来た。鏡の中の自分を見ながら念入りに手を洗う。そしてキオスクへと向かった。雪の中を歩くように、足取りを一歩一歩確かめながら。
その後、鷹杉がどうなったかは誰も知らない。鷹杉とキオスクのお姉さん以外は。しかし確かなことがひとつだけある。鷹杉はその日の夕方、たまたま入った喫茶店で恋をしている、新しい恋を。
人は彼の事を、恋愛ハンターと呼ぶ。笑うなかれ、忘れるなかれ、彼の名を。彼の名は鷹杉翔、今日もどこかで恋してる。

shiroyagiさんの投稿 - 18:12:07 - 0 コメント - トラックバック(0)

2005-01-09

走れメルス

1月5日、シアターコクーンにて、野田秀樹作・演出「走れメルス-少女の唇からはダイナマイト!」を観る。以前、同じく野田が演出を手がけた「透明人間の蒸気」からファンになった。キャストは深津絵里、小西真奈美、中村勘太郎、古田新太と豪華な面々が名を連ねる。開演前、70年代、80年代のアイドル歌手の歌が会場に流れる。この作品は野田が20才の時に書いた芝居だ。そのせいか勢いが凄い。舞台中を走り回る役者達に誘われ、観客は当時の時代へとタイムスリップする。未来から過去へのタイムスリップ。これがこの芝居の題材だ。主人公達は、”こちら側”から”向こう側”へ行こうと、青春歌集という何も書かれていない詩集を手に、失われた時を、まだ見ぬ愛する人を求めて彷徨う。そんなせつない物語の中に、野田作品特有のユーモアや言葉遊びが冴える。始終爆笑の声が会場中に響き渡る。傑作と言ってもいい素晴らしい舞台でした。

shiroyagiさんの投稿 - 12:16:00 - 7 コメント - トラックバック(0)

2005-01-08

ヘルプ・ドライバー

shiroyaghiにスキーの誘いがあった。スキーはそんなに好きではないが、誘われればやるという程度に好きだった。あまり気乗りはしなかったが、今回は行くことにした。スキーの誘いは二回に一回は断っている。その頃shiroyagiは、クラブの女の子達が店が終わってから車で家まで送るバイトをしていた。店側はタクシーで返してもいいのだが、やはり安く上げたい。そこで”送り”のバイトがある。休暇の件を話すと、誰か自分の代わりを探して欲しいとマネージャーから頼まれた。真っ先に剛が思い浮かんだ。何より車好きだ。スポーツカーに乗っている。女の子を乗せるのには、ふさわしくないが、車の運転は抜群に上手い。安心して任せられる。
剛に電話すると、即答で、
「いいよ」
と気持ちがいい返事が返って来た。

剛は店が終わる12時前、店の前に車を着けた。店に入り挨拶を済ませ、車の前で、煙草をふかしながら時間を潰す。

ホステス達が客達と一緒に店から出てくるのを、眺めていた。客と一緒にタクシーに乗るホステス、一人で店から駅の方へ向かうホステス、そして三人のホステスが、黒いパンツを来た男に連れられ、店から出て来た。
「この三人をお願いね」
「わかりました」

三人から住所を聞く。後に降りる順で女の子が車の奥に乗り込んで行く。
剛はテキパキと車を運転し、一人ひとり降ろしてく。最後の子が後部座席に残った。ケバい長い茶髪をパーマにしている浅黒い顔の女だ。剛のタイプではない。女が首を運転手席側に前に出し、
「どっか行こうよ」
と言う。剛が、
「いいよ」
と、拒否の意味でこの言葉を出した。
女はそれでも、
「いいじゃん、行こうよ、まだ12時だよ」
剛は黙っている。
「ホテルでもいいよ」
ハンドルを持つ手に力が入る。
「じゃあ行こうか」
「やったー」

剛は一番近いラブホテルに車を乗り着ける。部屋を決め、エレベーターに乗ると、女の方から抱きついてきた。剛の唇を酒に酔った唇が覆う。一瞬顔を背けたくなる。体は正直に反応する。キスはさせない。部屋に入るとベッドに絡み合った体がふたつ落ちて行く。女は剛のジーンズのベルトを外し、チャックを下ろし、ジーンズを脱がす。剛は自分のTシャツを脱ぎ捨てる。女は自分から素早く服を全部脱ぐと、かがんだ姿勢になり、剛のペニスをくわえこむ。くわえながら、「私、フェラチオ上手いんだ」と言いながら、長い髪を右にかき分けた。剛は寝た状態で自分の股にある頭を抱え、髪をなでる。女が、フェラチオをやめると、
「上に乗っていい?」
と言って勝手に剛の上に股がる。女の喘ぎ声とうめき声に、逆に醒めてくる。それでもペニスだけは固くなっているのが不思議だと思いながら、自分の上で踊っている女を見上げていた。女の動きがより激しくなった、剛も我慢の域に達しつつあった。出しちゃお、そう思って、剛はコンドームも付けずに、女の膣に精液を全部ぶちまける。
あああ、女が叫ぶ。
剛は自分のペニスの鼓動を女の体温で確認しながら、体から力を抜いた。
女が剛の顔に顔を近づけてくる。
「やめろ」
キスをを拒否する。
「あったかい」
女が剛の体にまとわりつきながら、まだ声を荒げていた。剛は煙草で一服する。
「もう帰るぞ」
返事がない。体を叩いて、もう一度言う。
「おい、帰るぞ」
それでも返事がない、覗くと、静かな息をたてて眠っている。
剛はちっと口を鳴らし、ベッドの下にあるジーンズに足を通した。着替え終わると、
「俺はもう帰るからな」
女が、ううん、と返事だかなんだか分からないことを言っている。
呆れ果てた剛はそのまま部屋を後にして、ホテルを出る。車に乗り込み家に帰る。
その後店側から苦情のようなものはなかった。まあ当たり前だろう、自分から誘っているのだ。店にも言えまい。剛の気持ちも開き直っていた。

後日、剛がその話をshiroyaghiにした。shiroyagiは大笑いした。
「あのロンゲのパーマの女だろお、あれ、早紀っていうんだ。会った男には必ず誘いをかける、俺も誘われたもん、断ったけど」
「俺はやった」
自慢げに剛が言う。
「あいつやりマンだから病気移されたんじゃないの」
からかうと、剛の顔も少し曇る。
「かなあ」
「だよ」
「病院行けよ」
半分冗談で言う。

剛は結局病院へは行かなかった、痛みも膿みも出なかったからだ。流石、名前の通り剛、剛の者だ。そのネタで何度も剛をからかったが、剛は平気な顔で聞き流して、一緒に笑っていた。こういうところがshiroyagiは好きだった、ねちねちしない、細かい事に気を使わない。それでリッパに生きている、そんな剛をshiroyagiは少し尊敬していた。自分にはないもの、それを剛は確実に持っていたからだ。自分に欠けているものと言い換えてもいい。生きていく力、shiroyagiには何か男としての資質がどこか欠けていた。人間としては悪くないんだろうが、男としての魅力に欠けた。どこか中性的な印象を持たせた。実際shiroyagiには彼女もいない。別に性欲がない訳ではない、彼女が欲しくない訳ではないが、何かshiroyagiに欠けたものが、異性を遠ざけていた。友達としての女なら何人もいる。しかし恋愛の対象としての女はいなかった。shiroyagiはどこか性的未熟さを感じさせた。女とつきあったことはあるが、恋愛経験も少ないほうだ、長く続いたこともない。が、慣れると一人の方が気楽に思えるようになった。よく本当の恋愛をしたことがないんだ、と言われた。そう言われると、いつもは饒舌な舌も動きが鈍くなった。

「俺、デビッド・ボウイとか好きだからなあ、バイセクシュアルなのかあ、男と居た方が楽しいんだ」
剛にその話をしたら、
「俺は絶対お前とはしないからな」
と言われた。
「俺だって剛はやだよ」
二人で大笑いした。

その冬は、いつもの通りの冬だった。スキーして、ちょっとナンパして、毎日働いている。学校へは殆ど行かない、いつもの冬だった。車の中で、シューベルトの「冬の旅」をかけると、本当に寂しくなってくるので、この曲は冬には聴かなかった。車の中ではその頃ヴィヴァルディの「四季」を聴いていた。とりあえずこれなら冬だけでなく、春も夏も秋もある。冬が来ても大丈夫、冷えた心を音楽で慰めた。冷たい心に春が来るのを待ちながら。

shiroyagiさんの投稿 - 23:15:19 - 3 コメント - トラックバック(0)
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