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2005-02-23

春の便り

我が家の庭に咲いた福寿草です。

我が家の庭に咲いた福寿草です。<br />


我が家の庭に咲いた福寿草です。<br />
shiroyagiさんの投稿 - 10:39:33 - 1 コメント - トラックバック(0)

2005-02-22

同級生 -1-

高校入学一日目、入学式の後、これからの高校生活をいかに送るかを学校側が助言指導するガイダンスがあった。
各クラスに振り分けられた新入生達は、それぞれのクラスで各担任から今後の高校生活についてレクチャーを受けた。1年B組の生徒となった勇作は性が阿部だったからか、教室の廊下側、一番前の席に座るよう指示された。担任の教師と名乗る上原は小太りで30才位の男だった。そう長くない髪をパーマにし後ろに撫で付けている。上原はガイダンスの開口一番こう言った。
「学校ではペルソナを被れ。ペルソナとはラテン語で人、人格、人物を意味する」
と野太い声で言いながら、黒板に、人・人格・人物と書き、その三つの言葉を丸で囲んだ。
「この言葉にはもう一つ大事な意味がある。これを君達に守ってもらいたい」
そうさっきより大きい声で言うと、
「仮面、ペルソナには仮面という意味もある。これを君達が学校にいる間、被って欲しい。どういう意味だか分かるか。誰か私が言っていることが分かる者がいたら手を挙げなさい」
言いながら、黒板にペルソナ・仮面と書き、生徒達を見つめた。
教室の中の子羊達、新入生は下を向くもの、周りを窺う者、無関心な者、反応はそれぞれだった。
「はい、君。名前は」
不意を突かれたように、みんなの体が上原の怒声にも似た大声でビクンとしゃっくりをした様に波打った。後ろの方で一人、席を立つ音が聞こえた。
「はい、山田久志です。先生が言った意味は、簡単に言えば、学校ではいい子にしていなさい、という意味と受け取りましたが」
「山田か、頭がいいな。その通り、先生が言ったのは学校では、あくまでも学校ではだぞ、少なくても良い子の仮面を被っていなさい。まあ、学校の外を出たらの話は追々していく。今日君達に言いたかったのは、この一言だ。山田、座っていいぞ」
山田であろう男が椅子に座る音が静かな教室に響き渡る。山田は座ると同時に咳を一つした。
勇作は、やな野郎だな、心の中で呟いた。上原か山田かは分からない、兎に角嫌な気分だった。多分両方だろう。
上原は黒板に向かい”仮面”と言う文字を丸で囲み、さっきの”人、人格、人物”とをニアイコールの記号で結んだ。
「さあ、みんなの事を教えてもらおうかな。普通の自己紹介じゃつまらない。他己紹介って知ってるか。他人の紹介をし合うんだ。みんな隣の席に座っている者と組んでそれぞれ他己紹介をしてもらう。準備に10分の時間をあげよう。時間までお互いのプロフィールを紹介しあって情報を得なさい。後で発表してもらう」
そう言うと、上原は教壇の椅子を教室の窓側に片手で持って行き、そこに座った。
教室がざわついた。隣に座っていると言われても、正真正銘さっき会ったばかりだ、挨拶さえろくにしていないのだ。戸惑いを隠せない。皆一様に不安な顔で上原を見つめていた。
「これから一年間一緒のクラスで学ぶ友達だぞ。お互いの事を理解しろ」
優しげでもあり有無を言わせないというような口調で、上原は他己紹介を強要した。
しかたない、勇作はあきらめて、隣の席に座っている女の子に声をかけた。
「名前は」
「瀬戸千鶴、です」
おずおずとした返事が返ってくる。
「同級生なんだ、敬語はいらない。俺の名前は阿部勇作。生年月日は昭和55年3月1日。血液型O型、メモ取れよ。後で他己紹介で使うんだろ」
機関銃のように言い放つと、瀬戸と名乗った女子の顔を見た。何が楽しいのかにっこりしている。
「私の誕生日、3月2日、ちぇ、一日負けちゃった。血液型は同じO型。相性いいのかな、私血液型詳しくないからわかんない」
「俺も」
まあどうでもいいけどね、お互いがそんな風に思っていただろう。そんな雰囲気で他己紹介のための自己紹介は始まったが、誕生日が一日違いという親近感からか二人の会話は途切れることなく弾む。いつの間にか他己紹介からはずれて世間話に移った頃、上原が、
「はい、それまでだ」
と大きな声を張り上げた。勇作と千鶴は盛り上がった雰囲気を中途で遮られて少し物足りなさと不満を感じたが、体の向きを変え、前を向いた。
「さあ、どこからやってもらおうかな」
上原が言いながら、教室中の顔を眺める。一瞬、勇作の目と上原の目線が合った。その瞬間、
「そこ、一番前の廊下側の二人にやってもらおう」
暫し沈黙の後、勇作と千鶴は顔を見合わせた。仕方がない、やろっか、目でお互い合図しながら、立ち上がった。勇作が口を開いた。
「僕の隣に立っているのは、さっき会ったばかりで正直な所全くわからないのですが、名前は瀬戸千鶴さんです。誕生日は3月2日です。あっ、ちなみに僕の誕生日は3月1日で一日違いなんです。ねっ」
と勇作は千鶴の目を見た。千鶴は躊躇わず、
「そうです。私の隣の人は名前が阿部勇作君。血液型はO型。あっ、私も同じO型です」
勇作が、
「趣味はなんだったっけ」
「読書です、阿部君は」
「あーん、俺も読書かなあ、強いて言うなら。あと映画も好き」
「私も映画は好きです。最近『レオン』っていう映画を観ました」
「あっそれ俺も観た。よかったよね、ジャン・レノが渋くってさ。殺し屋のクセして観葉植物を大事にしてるんだ」
「あら、女の子のナタリー・ポートマンもかわいかったわ。子どもなのにもう大人なのよ、ある意味ジャン・レノより。あのシーンかわいかったな、二人で物まねし合うシーンで、歌手のマドンナの真似して『ライク・ア.ヴァージン』を歌うの」
「それだったら、ジャン・レノがジョン・ウェインの真似するんだけど、全く似てない所が笑えた」
突然、上原の大きな声が、勇作と千鶴の楽しい会話を遮った。
「もういい。二人とも座っていい。楽しいのはいいが、他己紹介になっていないぞ、二人とも。次」
勇作と千鶴の後ろに座っている二人が他己紹介を淡々と始めた。勇作と千鶴は席に座って目を合わせた。千鶴が下をちょっぴり出し、やっちゃたね、という顔で勇作の顔を見た。勇作はちらりと千鶴の顔を見ると、顔を前に向けた。教室では他己紹介が続いていたが、勇作は誰一人の他己紹介も聞いてはいなかった。ただ腹立たしかった、怒られたのが。正確に言うと、他己紹介になっていないと言われたことか。二人はとにかく楽しく自己紹介をしあっていた。互いの話をよく聞いてそれに純な自分で答えていた。それなのに上原は他己紹介になっていないと言って、二人を遮った。この型にはめた考え方が気に入らなかった。もう勇作はこの上原という男が嫌いになっていた。そんなふて腐れた勇作とは反対に、千鶴はみんなの他己紹介を楽しく聞いていた。たまにクスっと笑ったりしている。そんな千鶴に少し勇作は遠いものを感じた。さっきあんなに仲良く話し合った千鶴が今は遠い。このガイダンスの時間も途轍もなく長い時間のように感じられた。忘れた頃、チャイムが鳴り、ガイダンスが終わった。勇作は、チャイムと同時に席を立ち上がると、トイレに行った。トイレで小便の用を足すと個室に入った。上着の内ポケットからタバコを取り出し、口にくわえ、ズボンのポケットからライターを取り出してタバコに火をつけた。一口吸った、うまい、もう二口吸うと、タバコを便器に放り投げ、水を流した。上着とズボンを両手で二三度叩いて、個室を出た。もう個室でタバコはまずいかもな、持ち物検査もあるかもしれない。明日からは用心しよう。勇作は考えながら、教室に戻って自分の席に座った。千鶴はいなかった。次の時間は席替えだった。目の悪いものは前の方へ、背が高いものは後ろに、まず分けられた。勇作は身長が178センチある。教室の真ん中一番後ろの席になった。千鶴は前から5番目位にいた。そんなこともあって千鶴とはその日もう話さなかった。次の休み時間は男同士がなんとなく溜まり合った。誰からというでいうでもなく、クラスの女子の話になった。誰が可愛いとか、このクラス可愛い子がいないとか、他愛もない話。だけど15才の少年にとっては重大な話題だった。おそらく勉強よりも。勇作は興味なさげに聞いていた。別に誰が可愛いとかどうでもよかった。特に今のところいいと思った子がいない勇作には退屈な話題だった。別にいいじゃん、そんなの、一瞬そう言いそうになったが、止めた。勇作は大きな欠伸を一つした。退屈な高校生活の第一日目だった。

shiroyagiさんの投稿 - 22:25:19 - 0 コメント - トラックバック(0)

スケーティング・パーク-1-

慶市が、初めて一人でアイススケートリンクへ行ったのは、暑い夏のある日曜日だった。
アイススケートなんて、子供を連れた家族か、若いカップルがやるものだと思っていた。それにアイススケートは冬にやるもの、この三十度を超えた真夏日に、アイススケートリンクが営業していること自体、最近まで知らなかった。新聞屋が購読者に毎月チケット等をプレゼントするリストの中に、あるアイススケートリンクの招待入場券があったのだ。そのチケットを手に入れた。
そして今、フランス語で言うなら、エ・マンタナン、ちなみに言うならシャンソンにそんな歌がある、その入場券を手にして、リンクの受付前に立っている。
受付の横には、英語でPRO SHOPと、書かれたガラス張りの三畳位のスケート用品の店があった。一番目立つショーケースの中に、フィギュアスケートの靴が並んでいた。黒いのと白いの、おそらく黒いのが男用、白いのが女用なのだろう、しかし、靴だけだ。ブレード、刃がついてない。不思議に思いながらも、しゃがみ込んで、しばらく、そのショーケースの中の黒い靴を見ていた。
受付で貸靴券を買おうと、立ち上がった。
制服なのだろう派手なウィンドブレーカーを着た、受付の25才位か、まじめそうな男に、入場券を見せて、
「滑りたいんですけど」
「フィギュアにしますか、ホッケーにしますか」
少し考えて、
「フィギュアで」
「はい、それでは貸靴券ですね、400円になります。このチケットをリンクの中の貸靴コーナーでお見せ下さい」
チケットを持ってリンクの扉を開けた。
寒い、
外は真夏だというのに、凍えるようだ。まあ氷の上を滑る訳だから、寒いのは当たり前か、でもこんなに寒いとは、そんなことを考えながら、寒さに肩を縮めて貸靴コーナーへ歩いて行った。
「25.5お願いします」
「はい」
奥に従業員が取り行くと、すぐに青色のビニール製のスケート靴を持ってきた。ブーツの上の方を掴んで、リンクサイドにあるベンチ椅子、リンクの一番奥にある処に座った。
アイススケートは昔ちょっとつきあっていた彼女と行ったきりだから五年ぶりぐらいだ。

慶市は十年前、高校一年までインラインスケートをしていた。ローラースケートの車輪が真っすぐに並んでいるやつだ。スラロームもやったしハーフパイプもやった。それでもどこかインラインを楽しめない自分に気づいていた。
何か違う、
自分が滑りたいのはこうじゃない。

よく行く家の近くのインライン滑走禁止の公園で滑った後、ベンチに座ってペットボトルのコーラを飲みながら考えた。どこか燃えられらい、ハマれない。不完全燃焼、何か苛立つ吹っ切れないもどかしさを抱えながら、マウンテンバイクに乗って家に帰るのが、いつものことだった。

ハーフパイプでバシっと決めた後、周りの連中が寄って来て、
「慶市すげーよ」
「サイコー」
「やっぱここじゃお前がナンバーワンだな、チクショー」
なんて、嵐のような絶賛を受けながらも、自分は醒めていた。
冷えたコーラを汗ばんだ体に、口を洗うように注ぎ込んだ。

「俺、帰るわ」
「えっ、帰るのかよ、まだ八時じゃん、これからが俺たちの時間だぜ」
「ああ」
気のない返事をして、ブーツを脱ぎ始めた。
重いブーツから解放された両足は、翼のように軽かった、何か解放された気分だ。近くに置いてあるマウンテンバイクに跨がると、
「じゃ」
と、周りの連中に一声かけて、電柱が照らす集合住宅街の夜道を翼のように軽くなった両足で全速力で駆けて行った。

それ以来、慶市はインラインブーツを履くことはなかった。
もう十年前のことだ。
今は就職して年も26才、ネクタイを締めた生活をしている。
が、車のトランクには今でも、カバーに入ったブーツが眠っていた。再び目覚めることのないことも知らずに、ブーツは柔らかい布団のようなカバーに包まっていた。

スケート靴を履き終えた慶市は、リンクに向かって一歩一歩と歩いて行った。
リンクには、想像通り家族連れにカップル、友達集団にホッケー、みんな同じように時計回りと反対に滑っていた。
社会と同じだな、みんな同じ向きに周ってる、どこも同じだ。だが反対周りだ・・・。
心の中でつぶやくと、
慶市は氷に上がって、すいすい滑っていった。昔やった時のままだ、もともとアイスも上手かった。スムーズに滑っていく。
しばらくすると、スピードが出したくなってきた。両足で強く氷を蹴って滑っていく。真夏にリンクに来る人はさすがに少なく滑りやすい。その少ない障害物をすり抜けて、滑っていく。
そう障害だ、俺を邪魔するものは全て。
慶市は、思った。

久しぶりのスケートで、日頃の日常でのふてくされた気持ちが吹っ飛んだ。
来てよかった、
慶市にとってスケートは過去のものだった。
なのに俺はここにいる、
来てよかった。
風を顔に受けて滑りながら、慶市は目頭が少し熱くなるのを感じた。そんな感傷的になる自分を振り払うように、カップルに、
「うまくやれよ」
家族連れと友達集団には、
「仲良くね」
ホッケーの人には、
「ホッケーもわるくないよねえ」
インラインスケートはホッケーに近い、まあホッケーの陸上版がインラインだ、まあ親戚だ。
だからフィギュアを選んだ自分を不思議に思った。

しばらくそんな感じで滑っていた。
一息入れるか、
リンクを降りる。Tシャツ一枚の慶市は、いくら体を動かしたからと言っても、体がだんだんと冷えてくる。
ここは一年中冬なんだな、
凍える体とは裏腹に、なんだか心が温まってくる。
自動販売機で温かい珈琲を買い、ベンチに座って珈琲ををすする。
うめえ、
あっと言う間に、飲み干してしまう。
横に座っていたじいさんが、
「あんた、結構うまいねえ」
話しかけてけるが、適当に相づちを打って受け流し、じいさんの声を無視してリンクを眺めていた。

その時だった、
フィギュア・スケートだ、
慶市は心の中で叫んだ。
リンクでは、妖精かお姫様のような可愛らしいドレスを着た中学生位の女の子達が滑っていた。小さな妖精たちは、踊るようにリンクの周りを滑ったり、くるくる回ってスピンをしたり、ジャンプをしている。慶市はその様子をかぶりつくように見ていた。
しばらくしてさすがに体が冷えてきたので、またリンクに上がった。リンクの中央でスピンする女の子や踊る子やジャンプする女の子たちを横目で見ながら。

後ろから声が聞こえた。
「もっと背筋を伸ばして」
なんだ、訳が分からない、
慶市は後ろを振り返った。
さっきのじいさんだ、
「何」
叫ぶ。
「もっと背筋を伸ばさないといかん」
じいさんと横に並びながら滑る。
なんか俺はじいさんの言うことを聞いておいたほうがいいんじゃないかと、直感的に思った。
背筋を伸ばして姿勢のいい格好で滑ろうとしてみた。
「そう」
じいさんが叫ぶ。このじいさん耳遠いのか、声がでけーよ。でもじいさんの言う通りに滑る。
「両手を横に広げて」
新しい命令だ。
そんなの、かっこわるいじゃん。でもやるしかない。
両手を真横に広げて、姿勢をよくして滑ってみる。
「いいじゃないの」
いつの間にか横に来ていたじいさんが言う。

疲れた、
慶市はリンクを降りた。
またベンチで、今度は温かいはミルクティーを飲む。
じいさんがリンクの中から、声をかけてきた。
「あんた筋がいいよ、また来なさい」
そう言うと、両手を広げてゆっくりと滑って行った。
ミルクティーを飲み終えると、紙コップを握り潰し、ゴミ箱に投げ込み、スケート靴のひもを一本一本とほどいていった。脱ぎ終えた靴のひもを蝶々結びに縛り、靴を返して、リンクの扉を開けて出て行った。

Tシャツ一枚でも暑い。
冬から夏に逆転か、
そうつぶやきながら、リンクの横にある駐車場に歩いていった。
日差しがやけに眩しかった。手で顔を覆い、目を細めながら歩いていく。
車のドアをワイアレスキーで開ける。車に乗り込むと、もおーと籠った熱気が皮膚にあたる。ハンドルを握ると熱い。
慶市はクーラーを全開にして、車を降りてスケートリンクを見つめていた。五分くらいか、涼しくなった車に再度乗り込み、駐車場のゲートを通って、アクセルを上げ、車を飛ばしてアパートへと向かう。

アパートのドアを開けると、熱気が顔にあたる。中に入ると窓を開け、クーラーを全開にかけて、ベッドに体を投げ出す。頭の下に両手を組んで天井を見つめていた。そしていつの間にか眠っていた。

次の週末から、慶市は毎週リンクへ通うことになる。

shiroyagiさんの投稿 - 19:02:50 - 0 コメント - トラックバック(0)

新吉の朝

ある晴れた朝、新吉は目を覚ました。今までの朝とは違う、本当の朝を起きた。新吉は流行り病で寝込んでいた。医者はもう駄目だと言った。家の者は口を閉ざした。新吉は布団の中で全てを諦めていた。そんな朝だった。身体が軽い。気分が軽いのを新吉は布団の中で、感じた。新吉は布団から起きて、母親のところへ歩み寄ると、
「おっかさん、おいらなんだか直ったみたいだ」
母親は泣いて、喜んだ。
「今回はもう駄目だと思ったよ」
そう言われると、新吉の目にも涙が浮かんだ。が、新吉は生き返った。そうだ新吉は生き返ったのだ。新吉は一度死んだ。新吉はそう思った。目覚める前の夢の中、死んだ父親が話しかけてきた。
「お前も苦労したな。よく頑張った。おらはお前が自慢だぞ」
新吉は、思わず涙が溢れ出てくるのを、止めることができなかった。
「うん。おいら辛かった。今まで口には出さなかったけど、ずっとおとっつあんが死んでから、辛かったよ」
「わかってる。わかってる」
そう言いながら父親は新吉の頭を撫でた。
「さあ、お前はもう寝ろ。おらは山に行って来るで」
新吉は頷くと布団の中で小さく丸くなった。
そして朝が来た。病いも悩みも苦しみもない朝が来た。もう離さないぞ、この日を。決して忘れるまいぞ、この朝を。新吉は、朝の光に向かって、拳を握りしめた。

shiroyagiさんの投稿 - 18:03:52 - 1 コメント - トラックバック(0)

2005-02-04

中学教師の貴子

私はある公立中学校で英語教師をしている25才の貴子。私には人には言えない秘密がある。それは教え子と関係していることだ。
一度や二度ではない。関係は、その子の卒業まで続く。そしてその子が卒業すると、目をつけていた二年生の男の子と、関係を持つ。当然、私からしかけるが、本人には気づかれない様に巧妙にしかける。私の標的は常に三年生だから、一人の男の子とは、一年間のつきあいだ。
なぜ三年生を狙うかというと、動機は単純だ。三年生位にならないと、私が男としてその子に、欲情できないからだ。あともう一つ。三年生なら、一年間で卒業していく。必然つきあいは一年間になり、後を引くことも無い。それに毎年違う男の子とつきあうのが愉しい。私をその気にさせる子が、一学年に一人はいるものだから、一人の子と三年間なんて考えられない。
今日は、卒業式だった。私の”彼”だった裕樹は、四月からは、学区内で偏差値二番目の公立高校へ進学する。英語の成績は学年でも十番以内だろう。発音ならトップ5に入る。何せ私がオーラル・レッスンしたのだから。theの発音では、上の歯と下の歯の間に、舌を挟んで発音するのだと、何度教えたことか。私が教えると、英語の成績はアップする、と言うより、させる。できるまで”ご褒美”をあげないからだ。私は、英語の成績が、元々良い子としか、つきあわない。英語を使える舌がない子は、私の範囲ではない。それに、私とつきあっていることで、成績が下がっては、私の身も危ない。私のせいで成績が落ちて、高校へ行けなかったなどと因縁を付けられ、殺傷沙汰になるのは御免だ。だから他の英語以外の教科の成績もきちんとチェックする。落ちていたら、ご褒美はあげない。だからみんな勉強は一生懸命やる。勉強のためではない。高校のためでもあるけれど、あの情熱は、私の体に向けられている。
私が特に力を入れているのが、さっきのオーラル・レッスンだ。RとLの発音は特に教え込む。
私とくちづけをしながら裕樹は、
「先生、これがLだよ。これはR。どう上手でしょ」
卒業も近くなるとテクニックは上達し、余裕も出て来る。
だが初めの頃は、全く私の口にも体にも、触れることはできなかった。私がオーケーを出さないと、私には触れられない。私の近くに居ながら、私に挑発されながら、私に触れられない裕樹は、おそらく私のレッスンを終え、私の部屋を出て、自分の家に帰ると、オナニーをして、自分を処理していたのだろう。それを想像すると、また私は愉しかった。
次の日、裕樹が私の部屋に来ると、
「裕樹君だめじゃない。昨日オナニーしたでしょ。先生そういうことすぐ分かっちゃうんだ。だって顔に書いてあるよ。僕は昨日、先生をおかずにオナニーしましたってね」
裕樹は顔を真っ赤にした。
「そんなことしてないよ」
下を向きながら、言った。
「へえ、そうなんだ。じゃそれが本当かどうか試しちゃおうかな。精液の量で、昨日オナニーしたかすぐ分かっちゃうんだから。裕樹君、ズボン脱いで。オナニー、先生の前でして見せなさい」
裕樹は泣きそうな顔をする。私はそれがまた良くって、
「先生の言う通りにしなさい」
語尾をきつくして言う。裕樹は男と言ってもまだ14才、大人の私が大声で言えば、従う。制服の灰色のスラックスを脱ぎ始めた。その下にチェックのトランクスを履いている。
「へー、今日はチェックの履いてるんだ。こないだはブルーのストライプだったよね。先生によく見せて。パンツの中身を」
裕樹はパンツを降ろしていく。ペニスが勃起しているのを私は見逃さない。
「なんで、勃起してるの。裕樹君。なんで」
詰問するが、裕樹は、はちきれんばかりに肥大したペニスを、両手で覆っている。
「その手を退けなさい。先生によく見せて」
私はさらに語気を強めて、裕樹に命令した。裕樹は恐る恐る手を退けた。
「いい子ね、裕樹君。先生によく見せて」
私はそう言いながら、裕樹のペニスに顔を近づけて、ペニスを口にくわえた。その瞬間、私の口の中に精液が発射されたのを、口の裏側が最初に感じた。私は熱くなった裕樹のペニスを強くくわえ、精液の最後の一滴まで逃さぬように飲み干す。強い脈を打っていたペニスが、段々と柔らかくなっていく。私はペニスから口を離した。裕樹がその場にへたり込んだ。
あれもいい思い出。裕樹も今日で卒業だ。裕樹はさっき遠くから私の方を見ていた。私は気づいていたが、気づいていない振りをした。裕樹には関係は卒業までだと、強く刷り込んでいた。それが、絶対の命令であるかのように。そしてみんな、私の命令に服従した。
私は、春からつきあう子を決めている。三組の崇君だ。英語の成績は学年で二十番。文法には強いが、単語力と発音がまだまだだ。私が教えなくちゃいけないことが沢山ある。
私は、珍しく卒業式に桜の咲いた校庭を、職員室から眺めながら言った。
「いい卒業式だこと」
私は誰に言う訳でもなく、そう呟いて、窓から目を離した。

shiroyagiさんの投稿 - 23:28:20 - 0 コメント - トラックバック(0)
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