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2005-03-02

十七歳のカルテ

BS-2にて、ジェームズ・マンゴールド監督、ウィノラ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、ウーピー・ゴールドバーグ出演、「十七歳のカルテ」を観る。境界性人格障害と診断されたジュリアはある精神病院に入る。六十年代の当時の時代背景が色濃く画面を映す。女性病棟に入ったジュリアはそこで病棟に君臨するリサに会う。二人は仲良くなるが、二人の間には大きな溝があった。生きるという姿勢に対するポジティブなものが、リサには全く欠けていた。生きたいジュリアと死にたいリサ。二人を中心に病棟の現実と精神病の現実がリアルに表現される。部屋に閉じこもった友達の部屋の前で、ジュリアとリサがダイアナ・クラールの「ダウンタウン」を歌うシーンは感動的だ。誰もがなりうる病い。この映画を今の若い人達や現実に心を病んでいる全ての人達の福音となればと、タイトルロールを見ながら思った。

shiroyagiさんの投稿 - 22:14:17 - 0 コメント - トラックバック(0)

ハンス・アルプ展

3月2日、神奈川県立近代美術館葉山館にて、ハンス・アルプ展を鑑賞する。葉山マリーナや葉山御用邸がすぐ近くにある海岸沿いの風光明媚な場所にあるモダンな白い建築物、それがそうだ。海の見えるテラスのあるレストランで昼食を済ませる。
館内は閑散として人はまばらだ。客は十人もいないだろう。ゆったりとアルプの作品に触れる。アルプはフランスのドイツに近いストラスブールの生まれだ。前に列車で通過したことがある。スイスのローザンヌへ行く途中だった。金属の彫刻、ブロンズ、木。どの素材を使っても質感を生かした素晴らしい作品が並ぶ。壁に掛けられた絵やエッチング、木の板を使った彫刻作品。どれも形が違ってもアルプの作品であることが伝わってくる。海を見渡せる窓の側にシルバーの彫像が立っている。何分もその作品の前に立ち、椅子に座り、風景とその作品を眺めていた。とても優雅で贅沢な時間だった。


shiroyagiさんの投稿 - 20:28:38 - 0 コメント - トラックバック(0)

サプリメント

私はサプリメントを十種類近く飲んでいる。アメリカのユタ州にあるUSANAと言う会社の製品だ。ビタミンC、カルシウム、ケイ素、ウコン、コエンザイムQ10、αリポ酸、植物性蛋白質等その他沢山の成分をサプリメントで補給している。
私は体が丈夫ではなかった。高校生の頃から親に養命酒を飲めと言われるくらい疲れやすかった。
このサプリメントを飲んで、幾つかの効果があった。肌がつるつるになった。それこそ足のかかとまで。カミソリ負けしなくなった。二十年程まえからあった、鼻の穴の中にできていたおできのようなものがなくなった。歯槽膿漏気味だった歯茎がしっかりとした。便通が良くなった。
私は一生このサプリメントを飲み続けるだろう。できるだけ健康な体であるように心がけることは、私が子どもの頃からしつけられたことだった。栄養士であった私の母親は、ご飯を食べる度に、これは緑黄色野菜、体にいいのよなんて言った。そう育った。
現在、食物に含まれる栄養素の含有量はいちじるしく減っている。サプリメントの力を借りなくては健康な体を維持できないのは、ただの現代病と言う言葉でくくるには、説得力がないようにも思える。命ある限りできることなら健康でいたい。命ある限り健康でいたい。

shiroyagiさんの投稿 - 07:36:39 - 1 コメント - トラックバック(0)

夢の国

しんとしずまり返った夜。誰かの声を聞いたことはありませんか。私はあります。それは人間の声ではなかった。それは幽霊ではありません。妖精の声。私を妖精の国へ誘う。私は一度妖精の国へ行きました。一面が花で覆われた美しい国。妖精は羽を生やしていると言われていますが、羽はありません。ただ美しいだけ。妖精は一様に美しかった。顔も体も、髪の毛一本から足の指先までが完璧に美だった。私は美しいものが好きだ。だから妖精に選ばれ、妖精の国に招かれたのかもしれない。妖精の女王が私を晩餐会に招いた。すてきな晩餐だった。その後に舞踏会があった。私は今まで踊った事がない踊りを上手に踊りいい気分だった。女王は私を別室に呼んだ。コーマと言う紅茶に近い飲み物が出され飲んでいると、気分が平静としてきた。それを見計らって女王は私に言った。
「私の国をあなた達の国に紹介してくだい。私はそのためにあなたをこの国に招きました」
「失礼ですが、なぜ私をお選びになったのですか」
「あなたはあなたの国で一番私の国の者に似ていたからです」
「どう意味ですか」
「ただそれだけの意味です」
「わたしに何ができるでしょう。わたしはただの売れない作家に過ぎません」
「知っています。あなたの生活が苦しい事も。でももうすぐあなたの苦しみは全て癒されるでしょう。あなたは選ばれた人だから」
「選ばれると苦しみは消えるのですか」
「時に消えます。時に苦しみの業火が襲います。それはその者次第です。私の願いを聞いてくれますか」
「私は何をしたらいいのでしょう」
「別に特別な事はありません。今までのように物語を書いてください。ただしこの国のことを。この国の民のことを。この国の自然のことを。そのままに」
「答えは待ってください」
私は夢から覚めた。これは夢だったのか。随分凝った夢だこと。ベッドの脇の水差しからコップに水を注いで水を一口飲んだ。コーマの味がした。
私は書いてみようと思った。女王の頼み事ではない。あの夢の世界をありのままに。
私はその朝からその仕事に取りかかった。仕事はスムーズに何の苦労もなく進んだ。指がペンを紙の上を走らせた。そのままに任せているだけでよかった。第一作が一週間で出来上がった。私はその間一度も眠らず、一度も何かを口にしなかった。が、そんなことはどうでもよかった。なぜなら眠気も空腹も感じなかったからだ。
私が書いた文章は、次の日、世界中の書店で平積みされていた。みんながこぞって私の本を読んだ。私はそんなことはどうでもよく、次の続編を書いた。そんなことが一万回繰り返された。
私は全てのことを書いた。私は幸せだった。何の苦悩もまたは病いも私を冒さなかった。親戚や知人もまた皆一様に幸せだった。夢のような時だった。でもこれは夢ではなく現実だった。ついに来たのだ。私が望んでいた世界が。全ての人が苦しみを知らずに生きる完全な幸福な世界が。
私は随分久しぶりにベッドに入り、眠った。今度は夢は見なかった。

shiroyagiさんの投稿 - 07:06:19 - 0 コメント - トラックバック(0)

雪の日

昨日は雪だった。雪は日常の街一面を白くどこか遠い世界に変えた。ぼくは昔読んだ絵本の世界に浸っていた。題名は忘れた。とりあえずお決まりで雪だるまを作った。なぜ雪だるまには作った人の性格が出るのだろう。形、特に顔に特徴が出てしまう。個人的には情けない顔をした雪だるまが好きだ。なんだか自分みたいだ。だから目の上の眉はへの字に書いた。そのあとはそりに乗った。東京でそりに乗ったのは初めてのこと。前はおじいちゃんのとこで乗った。長沼公園の峠から下った坂を一気に滑り降りた。下の方ではおかあさんが心配そうな顔で見ている。ぼくは手を振ろうと右手を上げた。瞬間そりが左に傾いた。ぼくは雪に埋まっていた。かまくらを作ったのは生まれて初めて。中で七輪でおしるこを食べた。甘くておいしかった。今までのおしるこで一番おいしかった。食後に壁の雪を少し食べた。口がひんやりとして口がさっぱりした。ぼくらはお腹がいっぱいになったからまた遊んだ。雪合戦。ぼくはやっちゃいけないことをした。雪玉の中に小石を入れた。投げるとすごい早さで飛んで行って、こう君の胸に当たった。こう君は咳をひどくした。ぼくは心配になってかけ寄った。こう君が跪いている。ぼくはこう君の肩に手を当てて、さすった。こう君はまだ咳き込んでいる。ぼくは親を呼ぼうかと言った。こう君は苦しそうな顔で手で遮った。こう君はやっとのことで立ち上がり、ぼくの肩を殴った。仕方がないことだった。ぼくは殴られるままにしていた。だんだん肩が何にも感じなくなってきた。ぼくはもういいだろ。許してよ。こう君に向かって涙ぐんだ。こう君も涙ぐんでいるのにその時気がついた。ぼくらは肩を抱き合って泣いた。思いっきり泣いた。ごめんねこう君。こう君は泣きながら頷いた。ぼくらは家に帰った。通りの十字路でさよならをした。ぼくは雪で覆われた道を一歩一歩踏みしめながら歩いた。車の通った跡の上を歩く。車はぼくの家とは違う方に曲がっていた。ぼくは車の道と別れ、新雪を踏みしめた。きゅうきゅうと雪がなった。ぼくはおかしくって同じところで地団駄を踏むように何度も同じところで足踏みした。行進開始、ぼくは自分にかけ声をかけ、大股で歩いた。ぼくの家の電気は明るく光っていた。おかあさんがいる証拠だ。ぼくは駆け足で走った。息を荒くして玄関の前で息を整えた。ズボンに雪が一杯ついていた。ぼくはそれをジャンプしながらとって手ではたいた。ただいま、大きな声で玄関を開けた。今日のごはん何?ぼくはかあさんに聞いた。かあさんは手を洗ってきなさいと優しく言った。ぼくは洗面所で温かいお湯で顔と手を洗った。手が赤くなってじーんとした。
ぼくはなんだか幸せで顔がほころんだ。おかあさんの横に行くと、エプロンをつかんで言った。
「今日楽しいことあったんだ。聞いてくれる?」
「今はだめよ。ごはん食べながらね」
おあかさんんは優しい声で言った。ぼくはうんと言って、みんなのお箸を出したり、ごはんの準備を手伝った。

shiroyagiさんの投稿 - 05:49:10 - 0 コメント - トラックバック(0)
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