2005-03-08
深夜
純司は夜中目を覚ました。枕元の時計を見る。まだ五時だ。起きる時間までまだ二時間もある。目はぱっちりと覚めてしまった。二度寝はできないだろう。純司はベッドから起き上がった。ビデオでも見るか。何かいいビデオはないかと探す。一本のビデオを取り出した。ホラーものだ。最近流行りのジャパニーズ・ホラー。携帯電話に見知らぬ人から電話かかって来るやつだ。純司はビデオを見始めた。何か後ろの方から目線のようなものを感じた。後ろを振り向くが当然誰もいない。ビデオに戻る。しばらく観ていると、携帯電話が光った。携帯はマナーモードにしてあった。純司は一瞬どきっとした。恐る恐る携帯電話を取り、開く。メールだった。知らないアドレスからだった。メールには、今お前の家の前にいると、書かれていた。純司は跳び上がるようにどきっとした。
家の外を窓を開けて見るが誰もいない。純司はビデオを観る気分ではなくなり、ビデオを消した。画面が消える瞬間、人の顔のような影が見えたような気がした。純司はベッドに潜り込んで震えた。携帯電話が震えている。振動が止んだ。純司は携帯電話を取り、確認した。メールだ。さっきのアドレスからだ。メールには、今お前の部屋の前にいると、書かれていた。純司はもうたまらなくなり布団を掴んでベッドの中で丸くなった。しばらくしてまた携帯電話が振動している。今度は取らなかった。純司は布団から少し外を覗いた。自分の前に誰か立っている。黒い影がある。かすかな息づかいが聞こえた。
翌朝、起きてこない純司を母親が起こしに来た。純司は布団の中だ。声をかけるが反応がない。仕方なく布団をはがす。純司は寝ながら携帯電話を持っている。まだ起きない。母親は純司の肩を叩いた。びくりともしない。母親は訝しがり純司の顔に手を当てた。冷たかった。母親は後ろに退く。純司、純司と何度も呼びかけるが反応は無い。その時片手に持った携帯電話が光った。母親はゆっくりと手に取った。開くと、男の声がした。「おまえの息子はもらった」そう声がすると、電話は切られた。母親は気が動転してその場にしゃがみ込んだ。父親がいつまでも戻ってこないので様子を見に来た。妻の様子を見て、声をかける。
「どうしたんだ?」
「純司が殺された」
その日の午後、警察の死後解剖の結果によると純司の死因は、窒息死であることがわかった。警察は事態を重く見て、対策本部を設置した。しかし、似た連続殺人事件がその後一ヶ月間で、純司の住んでいた町で三件起こった。その後ぴたりと事件はなくなり、対策本部は何の収穫もないまま撤収された。