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2006-11-04

晴れ-千絵ちゃんとぼく-

千絵ちゃんの体が全快した。よかった、ぼくは心の底から喜んだ。
ぼくと千絵ちゃんは古い映画を見に行った。旅情。キャサリン・ヘップバーンの生きるのが、心にじーんと響いてきた。千絵ちゃんもやっぱりそうだったみたいだ。ふたりは同調し、シンクロした。
映画館を出ると、いい天気だった。空が眩しい。ぼくたちは銀座と日比谷のあいだにあるお気に入りの喫茶店で、ハンバーグランチを食べた。おいしかった。そしてふたりの会話は途切れず、笑いに満ちていた。
コーヒーを二杯飲み、店を出た。
空に少し雲が出ている。ぼくたちはデパートを何軒かはしごしながら、ウィンドウ・ショッピングした。ふたりの会話はもっぱら日常会話。特別なことなんて話さない。それが楽しい。日常の中に喜びがある。
夕飯は地元の八王子で摂ることにした。
地下鉄と京王線を使って、京王八王子の駅に着いた。
なじみの中華に入った。青椒肉絲と酢豚と玉子スープと白いご飯、それに杏仁豆腐。これが今日の晩ご飯。おいしかった。プアールティーを終わりまで飲み干し、勘定を済ませ店を出た。外は暗い。月が十三夜だ。美しい。
ぼくは千絵ちゃんを家まで送り届けるため、バスに乗った。南大沢。そこに千絵ちゃんの家がある。
家の前まで、送り届ける。扉の前で軽いキスをして別れた。次に会うのはいつだろう。一週間後か。はたまた三日後か明日か。
それを分かる者は、天をすべて知る神様だけだった。
空を見上げた。月が明るい。十三夜はいい。わたしはしばらく見とれていた。
バスに乗り、家に帰る。千絵ちゃんのことを考えながら。やっぱり明日会おう。そう心に決めた。そう決めると、心は軽くなり、足取りが軽くなった。
家路に向かう街灯の点いた道を歩く。家が見える。玄関のポーチライトが光っていた。ぼくは足取りを少し早め、鞄から鍵を取り出し、家に入った。
ただいま。かあさんにそう言うと、二階の自分の部屋に行った。着替えをして、一階に戻る。かあさんと少し話して、新聞を読んだ。世界は平和だった。それはぼくの心を映し出しているかのようだった。
ベッドに入ると、すぐに眠りが訪れた。夢も見ないで朝まで眠った。
起きると、いい天気だった。
千絵ちゃんに会おう。まず最初にそう思った。ケータイを手に持つぼくがそこにいた。空は晴れている。気持ちがいいんだ。いまがクリアーに気分上々なんだった。天気とつながっているように。それはぼくには美しいことに思えた。そして空は晴れていた。

shiroyagiさんの投稿 - 07:30:33 - 0 コメント - トラックバック(0)

冬を見つけに

夜更けに、CDをPCに挿入してituneとipodの更新をし続ける。スムーズに作業は進む。気持ちがいい。空は晴れている。あとで、散歩に出てみよう。
まだ、戸を閉め切ったぼくの部屋からは、荒井由美が流れている。心地よい。透明なユーミンの声は、ぼくを旅に連れて行ってくれた。ひこうき雲に乗っかって、ぼくはふわふわと、北海道まで一足早い冬を見に行く。
ぼくがいるところでは、まだ秋真っ盛りなので、自然と冬に足が向いた。北海道は寒いだろうか、ダウンジャケットを持って行った方がいいだろうか、いま悩んでいる。部屋の奥で1年眠っていたダウンジャケットは湿った匂いがする。なんだかなつかしい匂いだ。去年のぼくの匂い。そうなんだね。知らなかった新たな発見。それを知ってぼくは北海道へ行くんです。行ってきます。また会いましょう。

shiroyagiさんの投稿 - 07:25:47 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-03

希望

棒さんのひと言がわたしを変えた。あなたにはもっと違うものが書きたいんじゃないの。
そうだった。キーボードへ向かうわたしの指はいつもと違っていた。
希望に満ちあふれていた。書くのが愉しかった。こんな経験はいままで一度もなかった。
あらためて、希望。その二文字がわたしを変えた。
いま、わたしはキーボードに向かっている。希望を指の先に感じながら。だから明るいものが書ける。うれしい。ありがとう、棒さん、あなたに会えて、うれしいです。これからもわたしを可愛がってください。そしたら、わたしは、もっと書きます。うれしいんです。書く事が。ああ、人生の希望の神、わたしはあなたを信じます。
会えてうれしいです。神と棒さん。忘れません。いつまでも、この短い生が生涯を閉じるまで。あなたがいることを。あなたがいたことを。忘れません。いつまでも。

shiroyagiさんの投稿 - 22:23:16 - 0 コメント - トラックバック(0)

香港

沢木耕太郎の深夜特急の香港での宿に泊まった。中国返還前の話だ。
そこには人種のるつぼ、世界のカオス、宇宙の集中があった。貧しさ、生に生きる絶望を抱えながら、笑う人々。わたしはその者たちをそこで知った。
生きるのがそんなに重いのか、人生は空腹の都か、死はマンションの地下にある。そこでわたしはあるひとりの老人の死を看取った。
老人は死ぬ寸前まで笑っていた。湿った廊下に寝転がりながら、重い苦痛を体と心の精神に抱えながら。
幸せに逝ったのだ。それを見て、わたしは涙の滝を流した。
だが、わたしは不思議と悲しくはなかった。むしろ幸せだった。
老人の死は、わたしに人生の意義、重いくびきを知らしめたのだ。だから涙は悲しみではなく、むしろ幸福の絶頂の涙であった。わたしは初めて知った。それを老人に感謝した。
わたしは老人の凍った体の上に、新聞紙を十枚、掛けてやり、そこを去った。
外に出ると、そこには満天の太陽が照り輝いていた。熱い、身を熱く焦がした。不快ではなかった。むしろその熱さはわたしに生の実感を与えた。うれしかった。涙が滴り落ちた。道路に落ちたわたしの涙の池は、太陽を反射させ、黄色く輝いていた。その上をわたしは歩いて、九龍の空港へと、足を運んだ。タクシーを止め、乗り込み、車内の窓から空を見上げた。
素晴らしく美しい空が太陽を覆っていた。それを見て、わたしは香港に郷愁を感じた。

shiroyagiさんの投稿 - 21:57:07 - 0 コメント - トラックバック(0)

希望という名の絶望-千絵ちゃんとぼく-

千絵ちゃんと結婚できなかったら、結婚なんてしなくていい。今日、女友だちの真理ちゃんにそう言った。
そうなんだ、ぼくは心から千絵ちゃんしか愛していない。千絵ちゃんがいない世界は絶望の崖淵だ。だからぼくは千絵ちゃんのことしか、見ていない。でも千絵ちゃんはいま病気なんだ。痩せている。いつもはいていたスカートがぶかぶかなんだ。ぼくはそれを見て、泣きそうに涙が零れそうになった。だってぼくは千絵ちゃんを心の心の底から愛していたからだ。だからぼくは千絵ちゃんを励まそう。千絵ちゃんが、ぼくの知っている千絵ちゃんに戻るように。
そして、千絵ちゃんの体がよくなったら、ぼくは遊ぶんだ、千絵ちゃんと、思いっきり、子どものように。それまでぼくは辛抱強く待とう。それがぼくの千絵ちゃんへの愛の証の証明であり、希望なんだ。
あした、千絵ちゃんに会う。病室にいる千絵ちゃんは、紅いバラの花の飾られた個室の病室にいる。千絵ちゃんはきっとベッドで横になっているだろう。虚ろな目を天井に向けて。その目を輝かせるのがぼくのできる唯一でありたったひとつの使命。ぼくは生きる。千絵ちゃんと一緒に。生き続ける。輝かしい未来の扉がもうそこまで近づいている。その扉をぼくは開く。そこに千絵ちゃんはいる。目をうれしそうに愉しそうにきらきらさせて。だからぼくはあした、千絵ちゃんに会う。そこにいるのは幸せいっぱいの千絵ちゃんだ。ぼくはそう信じている。運命はぼくを裏切らない。そのことをぼくはよく知っている。

shiroyagiさんの投稿 - 21:19:04 - 0 コメント - トラックバック(0)
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