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2006-11-07

夢の中へ

もはやおまえにおしえることはない。そのひとは言った。そうだ、ぼくはすべてを知ってしまった。宇宙の真理、光、影、希望の裏にある闇。ぼくは知っていた。そこには希望さえない。
光り輝く闇がわたしを覆い尽くす。
暗い。その中をひとり歩く。
永遠に続く暗闇のロンリー・ロード。ぼくは希望に満ちあふれ、光の道程を往く。
そこにあるものは、死。絶対の生。死の中にある生活。わたしは想う。そこになんの意味があるのだろうか。
生きる意味があるのだろうか。わたしの生。死の中にある希望。夢、光り輝く。夢の中にきみがいる。救いだ。救世主の神様。ぼくはあなたに跪く。
嘆きの壁に頭を下げて。
祈る。沈黙の光。光り輝く闇の中、わたしは走る。突っ走る。月夜を越えて。
ぼくは行く。希望に満ちあふれ。ぼくは行く。夢の中へ。

shiroyagiさんの投稿 - 18:15:02 - 0 コメント - トラックバック(0)

逢い引き-千絵ちゃんとぼく-

月のきれいなある晩、千絵ちゃんと会った。歩道橋の上で待ち合わせした。
ぼくのほうが早く着いて、ぼくはひとりで月を見上げていた。
千絵ちゃんが団地の方から歩いてくるのがわかった。千絵ちゃんの歩き方と背格好だ。
ぼくは千絵ちゃんに歩み寄り、肩を抱いた。
しばらく、そうしている。月がふたりの背中と頭を照らしていた。
ぼくらは近くのコンビニへ行った。店内は明るく、外の暗闇が嘘のように思える。ぼくらは明るい店内で、じゃれあう。雑誌を見ながら、流行の服をチェックし合った。
アイスクリームを買い、表の駐車場のところに座り込み、アイスを食べる。
ミルクの味がする。食べ終わった殻をゴミ箱に捨て、コンビニを後にする。
どこへいこうか。ぼくは千絵ちゃんに訊いた。
千絵ちゃんはぶっきらぼうに「公園」ひと言。
ぼくらは近所の公園に行きベンチに座った。月がこっちを見ている。
恥ずかしい。ぼくは思った。何が千絵ちゃんといて恥ずかしいかって、お月さまに見られているのが照れちゃって。月がなんだか近い存在に思えた。

ぼくらは月が閉じる前に、家に帰った。千絵ちゃんを家まで送り、その足で、30分ほどかけて自分の家に帰った。
その頃にはもう空が明るくなっていた。
ぼくは静かに家に入り、自分の部屋へ行き、すぐ眠った。
朝は来るけれど、わたしの眠りは留まらず、太陽がてっぺんに登るまで、眠り続けた。昏々とした睡眠は一切夢を見させなかった。
起きてすぐ、千絵ちゃんに電話した。千絵ちゃんはもう起きていて、おはよう、おねぼうさん、と笑った声で言った。
太陽が眩しいいい空の日だった。もちろん今日も千絵ちゃんと会う。夜中にね。

shiroyagiさんの投稿 - 05:29:07 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-06

動物園-千絵ちゃんとぼく-

千絵ちゃんと動物園に行った。その日はとても天気がよく、空が澄み渡っていた。
初めに象を見た。象はゆっくり鼻を口に近づけた。バナナを食べている。
ぼくと千絵ちゃんは、バナナが食べたくなった。お腹が空いてきた。グーとお腹が鳴る。
ぼくはフランクフルトを買い、ケチャップとマスタードをたっぷりかけて、ふたりで一本のフランクフルトを食べた。おいしい。ひとつをひとりで食べるよりずっと美味しい。ぼくは感動した。涙が出た。マスタードのせいじゃない。しあわせだったんだ。うれしくて涙を滝のように流しながら、フランクフルトを食べた。隣の千絵ちゃんはおかしそうにぼくを見つめた。
ぼくは照れくさくって、涙を拭きながら笑った。どうしてだろう、涙が出ちゃう。ぼくはそう言った。
千絵ちゃんは黄色いハンカチをぼくの頬にあて、涙を拭いてくれた。ぼくの涙は増々溢れるように流れ出した。
千絵ちゃんもぼくと同じように泣き出した。
悲しくないのに涙が出ちゃう。そう言って、ぼくの涙がついた黄色いハンカチで、自分の涙を拭いた。
ふたりはしばらく黙って、象を眺めていた。
帰ろうか。ぼくは千絵ちゃんにそう言って、肩を抱いた。
夕暮れが涙に滲みそうな、きれいな空だった。


shiroyagiさんの投稿 - 22:26:07 - 0 コメント - トラックバック(0)

月の妖精

いまJAZZYな音楽を聴いている。素敵だ。
夜明け前のこの時間、辺りは静けさを増し、一層静かに匂う。
わたしは夜の精。朝になったら帰らなくてはなりません。妖精のお城。そこがわたしのおうち。日常とはかなり離れたところにあります。
でもみなさんが住んでいるところとは紙一重、近いのです。入り口さえ見つけてしまえば。
実はわたしたちはあなたを待っています。ずっと以前から。あなたたちが知らないだけで、妖精の世界では人間のことは、いつもトップニュースです。
さあそろそろ行かなくてはなりません。さようなら、人間のみなさん。日の出が上がるとともに月夜の世界へと帰るわたし。月がわたしの住処なんです。どうぞ、遠くから見つめてください。
遠い夜空を眺めるとき、十三夜でも十五夜でも、半月でも三日月でも満月でもいい。その時、わたしを思い出してください。楽しみにしています。

shiroyagiさんの投稿 - 06:51:30 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-05

今は亡きフレディ・マーキュリーを聴いている。強く激しいのに、悲しく感じた。
生きている。わたしの中では、まだフレディは生き続けている。モーリス・ベジャールのバレエ『バレエ・フォー・ライフ』の中で、やはり今は亡きダンサー、ジョルジュ・ドンとともに。
ああ、ふたりともエイズ。ふたりを死に至らしめた死の病いをわたしは憎む。
ベジャールの中のふたりは、歌と踊りとともに、永遠に生き続けている。
わたしは信じる。ふたりがあの世と言われる黄泉の国で、幸せに暮らしていることを。
きっとふたりは、そこで人生を謳歌し、歓喜の歌や舞いを魅せていることだろう。
わたしはimagineする。wonderする。そして時にcryする。それは全くsadなことではい。happyなのだ。まったくわたしという人間は。
わたしは黄泉の国を知らない。いつか行くことになるその故郷をわたしは知ろうとしない。
いまはまだ、時が満ちていないのだ。わたしが黄泉を渇望しても得られない。時はまだ到来していないのだ。わたしは納得した。
月の輝きとともに歩む時間の流れに身を任せ、わたしはひとり歩いている。ただひとり歩いているのだ。
時はまだ来ない。

shiroyagiさんの投稿 - 23:26:46 - 0 コメント - トラックバック(0)
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