2006-11-08
冬の旅-千絵ちゃんとぼく-
千絵ちゃんと旅に出た。東北。冬寒い厳寒の地に、電車で降り立った。時はすでに夕暮れ。辺りは薄暗くなっていた。ぼくは千絵ちゃんと手をつなぎながら宿まで歩いて行った。照明が目立つひとつの宿に寄宿する。
部屋に通され、ぼくらは落ち着く。布団を敷き、ふたり体を寄せ合い、眠る。
朝が来る。ふたりは起きる。ホールで食事をして、宿を出る。
辺りは一面の雪野原。白く銀盤は輝いている。ふたりで雪を踏みしめながら、一歩一歩重く歩く。無口だ。空が青い。
見上げる。一面の青空がふたりを包む。しあわせだ。言うことがない。
ふたりは駅に向かい、電車に乗る。シートに身を任せ、暫し眠る。
時が流れ、ふたりは目的の駅に着く。黙って改札を抜け、家に帰る。
千絵ちゃんとぼく。ふたりの旅が終わる。
God only knows
わたしは旅に出た。遠い旅に。近くではない。遠い。果てしなく遠い。それがどこまで遠いかと言ったら、言うまでもない。万年の時を重ねる。
それは限りない物語。endless story。
終わりなき旅に始まりはない。始まりは終わりであって、すべての始まりである。
すべての始まりはいづれ終末に転じ、終局となす。その時、ひとは生きているのだろうか。はたまた、ひとは、何処か宇宙の果ての欠片に住まいを持っているのだろうか。それはその時になってみないと、誰にも分からない。
ただひとつ言えるのは、その時、人類は絶滅していることだ。Tレックスののさばる大地には、有限の宇宙が存在し、あらゆる物質は化学変化する。
大地。海。山。川。平野。湖。すべての自然は破壊され、無に帰する。
その世界では、一切の言葉はなく、誰も口をきかない。
沈黙の空間には、atomが蔓延り、転々とその存在を主張する。
果てしなきその世界は、退屈で退屈でしかたがない。仕方がないのだ。
憂鬱で気ままなロンリー・ボーイ。ひとり馬に乗って、宇宙を彷徨う。
馬駈ける空間には、蹄の音が蔓延し、すべての空間を占拠する。
馬に乗るひとりの神が啓示を人類に下す。みなは平伏し、頭を地面につけて、一心に祈る。神のみぞ知る、宇宙の真理の謎がみなに解き明かされ、世界は平和に帰する。その時、ひとは初めて幸福を味あうのだ。
時を待て。神は叫ぶ。震撼する人類。黙って時を待つ。time takes a tim as soon as possible。時刻の経過の途中、ひとは黙り、沈黙の約束の地で、願いを叶える。その時みなは全身で真理を感じ取ることだろう。わたしは約束する。カナンの地で、紀元前定められた掟。これを破る者はだれもいない。nobody knows,but God only knows。これを知れ。神の命令だ。時を待て。時を。時を・・・。
同時-千絵ちゃんとぼく-
千絵ちゃんとキスをした。夕方の公園、ベンチに座って。長いキスをした。長くて永いキスをした。
夜が来た。ぼくと千絵ちゃんはそれぞれの家に帰った。
ふたりが同時にベッドに入り、同時に眠った。
同時に、朝、目を覚まし、同時に歯をを磨いた。
同時に、公園で待ち合わせをして、同時に会った。
同時にキスをして、同時に抱き合った。
いつまでも、同時は続いた。しあわせは永遠の同時に重なった。
屍
わたしは泣こう。あなたのために。わたしは嘆こう。お前らのために。死んでいく者たち。戦場に広がる豊かな死体。屍の下に屍が重なる。
生を持つ者はそこにはいない。ひとりもいない。戦場に漂う死の気配、生のかけらさえない。戦場はすぐそこにある。あなたの胸の中に。仕舞われている。忘れてはいけない。豊かな実りは屍の下にある。
体
手元がおかしい。曲がっているのだ。湾曲している。不自然に。首がおかしい。くねっているのだ。不自然に、曲がっている。
指がおかしい。反っているのだ。反対側に。
腹がおかしい。下っているのだ。腸の下に。膀胱の袂に。
足がおかしい。真っすぐなのだ。膝が曲がらない。
足首がおかしい。曲がらないのだ。真っすぐに上を向いている。
手元がおかしい。曲がっているのだ。