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2006-11-12

新大陸-千絵ちゃんとぼく-

ぼくはNIKITAを観る。フランス映画。暗殺者。女スナイパー。ぼくは女装して、NIKITAを演じる。NIKITAは悲しい定めにある。重い宿命を背負っている。
ああ、NIKITA。ぼくはきみのために泣こう。きみの歌を歌おう。ああ、NIKITA。きみの胸には釘が刺さっている。ぼくはなんとかして釘を抜く。
NIKITA。きみは生き返る。ぼくはNIKITAに新しい名前をつける。千絵ちゃん。そう呼んでみた。千絵ちゃんは、ハイと返事をしてベッドから起き上がる。ああ、よく寝た。欠伸をする。ぼくは千絵ちゃんのために濃いお茶を煎れる。千絵ちゃんはやっと目を覚ます。
千絵ちゃんとぼくは散歩に出る。絹の道。シルク・ロード。横浜まで続くこの道。ぼくは幼い頃、この道を知った。以来、この道はぼくの毎日の散歩コース。
横浜まで歩いて行った。中華街。そこで炒飯とフカヒレと杏仁豆腐を食う。
お茶はプアール・ティー。
港の見える丘公園を歩きながら、アイスクリームを食う。外人墓地を廻って、山下公園を歩く。汽笛が鳴る。正午だ。船が出る。出航。ぼくと千絵ちゃんは船に乗る。
遠いAmericaまでの豪華客船の旅。ナイト・クルーズ。太平洋は永遠に広い。海溝が深く刻まれている。ぼくと千絵ちゃんはその上を泳ぐ。マンボウが一緒に泳いでいる。泳げたいやき君が一緒に泳いでいる。太平洋。遠く深い海。いつか着くだろう、新大陸。そこにぼくと千絵ちゃんの住む希望の土地がある。いつか辿り着くまで、ぼくと千絵ちゃんは死んだりしない。そのことだけはよく知っている。よく分かっている。


shiroyagiさんの投稿 - 22:04:46 - 0 コメント - トラックバック(0)

大草原の小さな家-千絵ちゃんとぼく-

ぼくは考える。レスリー・チャンが生きていたらと。
男たちの挽歌。チョウ・ユンファーと兄弟分でカッコイイ。
ぼくを例えるなら、チョウ・ユンファーではなくて、レスリー・チャン。
ぼくは連続して、弾丸を撃ち続ける。チンピラは何発もの銃弾に血を流し、大地に倒れる。
ぼくは故郷のtokyoに還る。ひとりきりで。そこでは銃は使わない。
千絵ちゃんとふたりで、大草原の小さな家。ふたりで住む。
平和な日常。銃の代わりに鍬を使う。穏やかな毎日。ぼくと千絵ちゃんは一日中、お茶を飲みながら、ふたりして話して過ごす。
陽が暮れる。ぼくと千絵ちゃんは、ランプに灯を灯し、長い夜をふたりで過ごす。ベッドに入り、ランプの灯りを消す。ライムライト。暗くなって、ぼくと千絵ちゃんは深い眠りに落ち込む。深い深い眠りの底に落ちていく。
朝、目が覚めると、朝。空は広い。大きくて深い。土の香りがする。ああ、大地の匂い。いい香りだ。ぼくは大きく息を吸い込む。
千絵ちゃんはまだベッドの中に眠っている。ぼくは静かに千絵ちゃんを起こす。耳に息を吹きかける。千絵ちゃんは、うーん。まだ寝ていたい。ぼくは千絵ちゃんの寝床に入り、体を包み込む。愛している。キスをする。桃色の頬に。千絵ちゃんは目を覚ます。
ふたりで、牧場に行く。白ヤギの世話をする。夕方まで。白ヤギは眠る。草を食みながら。
ぼくらは大草原の小さな家で夕食をとる。トウモロコシのスープと麦パン。
食べ終わると、アッサム・ティーを飲み干す。
ふたり、ベッドに入る。眠りが訪れる。やがて月が出る。月は眠りのサイン。月を枕に、ぼくと千絵ちゃんは眠り込む。やがてやがて、遠い朝がやって来るまで。ぼくらは眠り続ける。眠り続ける。

shiroyagiさんの投稿 - 21:33:27 - 0 コメント - トラックバック(0)

タラ-千絵ちゃんとぼく-

風と共に去りぬ。Gone With The Wind。ぼくはレット・バトラー。大地はタラ。どうしてこの地を去れようか。千絵ちゃんを残して。千絵ちゃんの愛したこのタラの地。豊富な緑と水が溢れる土地に、千絵ちゃんは生まれた。
おぎゃー、おぎゃー。その時、ぼくは14歳だった。千絵ちゃんはぼくを見て、生まれて、一番最初に笑った。ばぶー。
今では、千絵ちゃんは、ぼくに、Je t`ameと叫ぶ。愛している。ぼくを。いつまでも。forever。
ぼくは千絵ちゃんに、きっと必ず帰ってくるからと約束して、遠い旅に出る。タラからは冥王星ほど離れた、銀河系の果て。世界の終わり。end of the world。
ぼくは一頭の白馬に股がり、銀河を駈ける。太陽系を股切る。白馬は疲れも眠りも知らない。白昼。一晩中。走り抜ける。
ぼくは目的の某木星に辿り着く。2001年宇宙の旅。某木星から何者からかメッセージが送られてくる。ぼくは超電波で知る。秘密基地を見つける。
異星人が朝飯を食っていた。ぼくも一緒にご馳走になった。納豆ご飯。豆腐のみそ汁。おかわりして、便所に入る。用を足して、タラの地へ還る。
千絵ちゃんの待つ、タラ。Americaの不毛の土地。そこにぼくの故郷がある。だからぼくは帰らなければならない。はるばる、木星から。白馬を駆って、銀河を駈けて。太陽が支配する宇宙の空の下、ぼくはタラに還る。ぼくの名は、レット・バトラー。

shiroyagiさんの投稿 - 20:51:37 - 0 コメント - トラックバック(0)

ホテル・カリフォルニア-千絵ちゃんとぼく-

ある晴れた秋の日に、銀座に映画を観に行った。カサブランカ。ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマン。千絵ちゃんと観に行った。ある秋晴れの日に。
映画館を出ると、ぼくは、ボギーになっていた。白い麻のスーツを着込んで、ぼくは渇いた砂の大地を歩く。千絵ちゃんと。イングリッド・バーグマン。
ぼくらはカフェに入る。エスプレッソをぐいと飲む。二杯。続けて。
店を出る。スター・バックス。空を見上げて。秋晴れ。太陽が眩しい。渇いたモロッコの大地。砂の城。千絵ちゃんとふたりで古城に住む。キング&クイーン。憧れて。古代のギリシャ。アテネ。哲学者の町。考える人。ロダン。そこでぼくらは何も考えない。享楽の時間。過ごして、過ごす。
朝が来る。ぼくらは眠りから覚めない。昼が来る。ぼくらの睡眠を妨げるものはない。夕が来る。ぼくらはやっと起きる。
朝飯を夕に食う。ハンバーグランチ。日比谷の喫茶店で。食い倒す。店主は音を上げる。ぐーの音も出ない。ぼくらは勘定を踏み倒し、店を出る。
ホテルにチェック・インする。ホテル・カリフォルニア。イーグルスの甘いメロディが流れている。
ぼくらは愛し合う。夜更けまで。
朝が来る。ぼくらはホテルを出る。彷徨う。夜中。ふたりで、飛行機に乗る。カサブランカ行き。23時59分発。東京行き。
今夜、ふたりは戻らない。どこにも戻らない。ホテル・カリフォルニア。そこにぼくと千絵ちゃんは住んでいる。いつまでも、いつまでも、住んでいる。

shiroyagiさんの投稿 - 19:01:22 - 0 コメント - トラックバック(0)

急ぐ

時がない。もはや急いでいる。わたしにはもう時間がない。
早く。速く。しないと、時間がない。
だから、あなた。迎えに来て。
わたしはここにいます。
迎えに来て。
時がない。
時。
もうわたしには何もない。
あなた以外。
何もない。
迎えに来て。
時がない。
時。
ない。
時。
とき。

shiroyagiさんの投稿 - 18:40:38 - 0 コメント - トラックバック(0)
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