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2006-11-13

アダージェット(グスタフ・マーラー)-千絵ちゃんとぼく-

アダージェット。12分59秒。ジョルジュ・ドンがひとり椅子に座っている。やがて音楽の調べととも立ち上がり、ひとり舞う。
悲しそうに。しなやかに。穏やかに。
ぼくと千絵ちゃんは寂しそうにジョルジュ・ジョンを見つめる。ジョルジュ・ドンは床に寝転がり、立ち上がり、舞う。
ぼくと千絵ちゃんは釘付けになる。苦しい。
ぼくらは舞台から逃げ出して、カフェに入った。コーヒーの匂いが立ちこめている。
エスプレッソを頼み、テラスの椅子に座る。ギャルソンがエスプレッソを運んでくる。チップを渡して、ぼくらはエスペレッソを飲み干す。
カフェを出て、家に帰る。暖房を入れ、部屋を温める。毛布に包まる。
やがて夜が来て、ぼくと千絵ちゃんはベッドで眠る。朝までぐっすり、眠る、眠る。

shiroyagiさんの投稿 - 07:24:33 - 0 コメント - トラックバック(0)

ボレロ-千絵ちゃんとぼく-

ボレロ。ジョルジュ・ドンが赤い丸い壇の上で、ひとり踊る。第五ポジション。
壇の周りを男たちが取り囲む。何を考えているのだろう。わたしは物思いに耽る。
ジョルジュ・ドンは踊り続ける。14分51秒。
手のひらを両手、下にして、時々ピルエットを回り、くるりと回転する。
ぼくと千絵ちゃんはジョルジュ・ドンを見て、戦慄を憶える。もう忘れない。ぼくと千絵ちゃんは舞台を跡にする。
14分51秒はやがて終わる。ジョルジュ・ドンは、赤い舞台の中央で跪く。黒いパンツを履いた、上半身裸の男たちになぶられながら。ジョルジュ・ドンもまた上半身裸、黒いタイツを履いていた。
千絵ちゃんとぼくは、カフェに入り、とりあえず、エスプエッソを注文した。少し心が落ち着いた。二杯目はウォッカ。続けて三杯飲んでも酔わなかった。月夜が明るい。月は寒々とこちらを見ていた。ぞっとするような月だった。

shiroyagiさんの投稿 - 07:14:50 - 0 コメント - トラックバック(0)

愛が私に語るもの(グスタフ・マーラー交響曲第3番、4番〜6番)-千絵ちゃんとぼく-

愛が私に語るもの。それはダンス。十人で踊る、前衛舞踊。
ジョルジュ・ドンが私に語りかける。ノブキ、お前は大丈夫かい。
夜が私に語りかけるもの。それは闇。月夜の晩、私は翻弄する。夜の深さに。夜の重さに。ジョルジュ・ドンが私に語りかける。ノブキ、お前は平気かい。
天使が私に語りかけるもの。天空の隙間から落ちてくる、大天使ガブリエル。ガブリエルと私は握手をして別れる。天の隙間にガブリエルは還っていく。ジョルジュ・ドンは私に語りかける。ノブキ、お前は寂しくないかい。
愛が語りかけるもの。ギリシャの神殿から神々が姿を現す。神々は口々に言う。お前は一体誰を愛しているのか。私は答える。千絵ちゃんです。神々は笑う。千絵ちゃんはお前のことなど愛してはいないぞ。私は言い返す。それでもいいんです。私の愛は一生千絵ちゃんに捧げられました。それでいいんです。ジョルジュ・ドンが私に語りかける。ノブキ、大丈夫かい。私は答える。平気だよ。慣れっこだから大丈夫。平気だし、寂しくない。だから安心して、ドン。冥界へ還ってね。
夢だった。朝起きると、汗びっしょりだった。でもこう思った。またジョルジュ・ドンに会いたいと。私はそう考え、また深い眠りに落ち込んで行った。深い眠りだった。

shiroyagiさんの投稿 - 06:57:34 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-12

約束-千絵ちゃんとぼく-

ぼくは泣こう。お前のために。ぼくは嘆こう。自分のために。ぼくは愛そう。自分自身を。
ぼくは千絵ちゃんの家に迎えに行く。千絵ちゃんはおしゃれをして、玄関のドアを開ける。ぼくは、おはよう、あいさつをする。千絵ちゃんははにかむ。手をつないで公園に行く。公園には誰もいない。ぼくと千絵ちゃんはベンチに座る。ベンチは冷たい。腰を下ろす。足が震える。がたがたする。千絵ちゃんとぼくは手をつなぎ、頬を寄せて、暖をとる。温かい。温もりがほんのりぼくの顔に残る。甘いキスをする。甘くて甘い、長くて永いキスをする。
ぼくと千絵ちゃんは、歩道橋を渡り、街に出る。
街はクリスマス・イルミネーション。輝き、ぼくと千絵ちゃん。影を造る。ぼくと千絵ちゃんはひとつのカフェに入る。カフェは空いている。
隅の席に落ちついて座る。カンパリ・ソーダとカンパリ・オレンジを頼む。ソーダがぼくで、オレンジが千絵ちゃん。 
カンパリを飲み干し、ほろ酔い気分。いい気分。カフェを出て、一軒の名画座に入る。観た映画は、欲望という名の電車。マーロン・ブランドとヴィヴィアン・リー。ぼくと千絵ちゃんは映画に酔った。
名画座を出て、一軒の場末のバーに入る。
バーボンをロックで頼む。ダブルで。一気に飲み干す。またオーダする。
一気に飲み干す。チェイサーにソーダを頼む。バーボンとソーダを交互に飲む。千絵ちゃんは酔った。ぐらんぐらんだ。頭が目が回る。ぼくは千絵ちゃんを支える。
ぼくと千絵ちゃんはバーを出て、千鳥足でホテルに向かう。空室。ランプを見つけて、キーのボタンを押す。エレベーターを三階、押し、部屋に入る。
キングサイズのベッドに転げ込み、戯れ合う。暫し戯れ合って、眠る。
深い夜がぼくと千絵ちゃんを包み込む。優しい夜に包まれて、ぼくと千絵ちゃんは深く眠る。深く深く眠る。きっと朝が来たら、目を覚ますだろう。
ぼくと千絵ちゃんの未来が明るく約束されいるように。約束。ぼくと千絵ちゃんの神へ誓い。神聖なる唯一の黙示録。約束の時は近い。近い。

shiroyagiさんの投稿 - 23:42:55 - 0 コメント - トラックバック(0)

遠い太陽-千絵ちゃんとぼく-

バウンスkoGALSを観る。女子高生の援助交際。渋谷。原宿。六本木。援助して回る。ぐるぐる回る。目が回る。
ぼくと千絵ちゃんは渋谷で美人局。ホテルでオヤジを狩る。オヤジ狩り。最高に気持ちいい。
オヤジは裸で逃げる。ぼくと千絵ちゃんは笑う。ホテルで眠る。気持ちがいい。何回も眠る。泊まる。朝まで。延長料金を払う。
朝の道玄坂は気持ちがいい。朝の空気を吸いながら、坂を下り渋谷駅へ向かう。始発を待つ。ベンチで眠る。
始発が来る。乗る。眠る。着く。降りる。家に帰る。また眠る。飯を食う。
納豆ご飯。豆腐の味噌汁。
渋谷へ行く。オヤジ狩り。美人局。同じことの繰り返し。毎日が続く。秋の夜空。暗闇に星がふたつ光る。涙を流す。夜空は悲しい。悲しいから、ぼくと千絵ちゃんは星を見ない。月を見る。月は優しい。優しく包んでくれる。夜の帳がぼくと千絵ちゃんを抱え込む。ぼくは千絵ちゃんと一緒にベッドに入って眠る。遠い太陽が朝日として、日が登るまで、ぼくと千絵ちゃんは、深く深く眠る。また月が出るまで、ずっと眠る。

shiroyagiさんの投稿 - 22:54:01 - 0 コメント - トラックバック(0)
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