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2006-11-18

耳をすませば-千絵ちゃんとぼく-

千絵ちゃんとぼくはOZの国へ旅をした。OVER THE RAINBOW。虹の彼方に。虹の向こうに。
とても美しかった。千絵ちゃんとぼくは感動の嵐に襲われた。
OZの魔法使いは普通のおじさんだった。がっかりした。脳味噌が藁の案山子とハートが空っぽのブリキの人形と弱虫のライオンは笑い転げた。
千絵ちゃんとぼくは案山子とブリキとライオンを叱った。
千絵ちゃんとぼくは旅を続けた。虹の向こう側。宇宙があった。アクロス・ザ・ユニヴァース。千絵ちゃんとぼくはスペース・シップで旅をして、途中、金星でモンブランを食べた。とってもスイートだった。千絵ちゃんとぼくはスイート・ルームでゴージャスなディナーを食べた。ドンペリを空けた。
千絵ちゃんとぼくはキング・サイズのベッドで眠り込むと、夜中の2時に目を覚ました。
月が満月だった。FLY ME TO THE MOON。千絵ちゃんとぼくはハーモニーを歌った。SOMEWHERE OVER THE RAINBOW。ラララーラララーン。ハミングした。JAZZした。COOLだった。SO BADだった。
千絵ちゃんとぼくは何もかもがご機嫌だった。
歌って、食って、眠った。ぐっすり眠った。たらふく食った。めいいっぱい歌った。もう充分。チュクップ。インドネシア語で充分。
ああ、よく眠って、よく食って、よく歌った。
千絵ちゃんとぼくの2006年宇宙の旅はもう終わった。
THE END。THE DOORSが歌った。
ぼくは煙草が吸いたくなった。ライターがない。街往くひとに煙草に火をつけてもらおうと、街を彷徨った。
LIGHT MY FIRE。ある友人が火を貸してくた。LUCKYだった。
ご機嫌でバグダット・カフェでエスプレッソを平らげると、ホテル・ローザンヌでぐっすり眠った。
スイスでフレンチを食べると、ペリエが飲みたくなった。ストアを探して、ペリエを見つけて、飲み干した。
遊星を巡った千絵ちゃんとぼくの旅が終わった。ショウは終わった。でも本当のショウは続いている。THE SHOW MUST GO ON。フレディの声が宇宙に響き渡る。千絵ちゃんとぼくは耳を澄まして、聞き入った。
子守唄。UNCHAIND MELODY。ぼくは忘れない。UNFORGETABLE。ナット・キングコールが歌った唄を千絵ちゃんとぼくは耳をすませば、いつだって聴くことができた。聴くことができた。それだけで充分チュクップ。それだけで充分。


shiroyagiさんの投稿 - 23:42:33 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-16

峠の我が家-千絵ちゃんとぼく-

ぼくと千絵ちゃんは月へ旅で出た。月面着陸。無事着陸した。
月は岩山の世界だった。
そこでぼくと千絵ちゃんは洞窟の中で愛し合った。小さな祠のなかで夢中に愛を渇望し合った。貪るような愛の交わりが終わると、虚無が訪れた。
時間どろぼうにモモが逆らって、平和な時間は思いのまま戻る。
ぼくと千絵ちゃんはゆっくりと流れた時間の中で、再び愛し合った。
無上の愛が存在した。ぼくと千絵ちゃんは至上の幸福の中にあった。
月の上で、ぼくと千絵ちゃんはセンチメンタル・ジャーニーを聴きながら、物思いに耽った。
そこにスペース・シップが現れた。ぼくと千絵ちゃんんは乗り込み、地球へ還った。
地球は海と緑に囲まれていた。
やっぱりここがいいなあ。ぼくと千絵ちゃんは言いながら、ベッドに入った。月の夢を見た。夢の中へ誘われて、ぼくと千絵ちゃんは無重力体験をした。愛し合った。浮遊する肉体。エクスタシーにある性感帯。すべてが素晴らしく感動的だった。
月は素晴らしい。ぼくと千絵ちゃんは言いながら、朝食を食べた。ライ麦パンと牛乳。
朝食を食べ終わると、草原に散歩に出た。ヤギが這い、羊が群れる高原野原。そこでぼくと千絵ちゃんは昼食を食べた。梅干しのおりぎりと水筒の烏龍茶。
夕方まで過ごすと、峠の我が家に帰った。
ベッドでドン・フリーマンの『くれよんのはなし』を読み終わると、絵本を閉じ、ランプを消して眠った。朝が来るまで深い闇に覆われて眠った。
外は満天の星空。オリオンの冬の大三角が輝いていた。ある冬の寒い夜のことだった。忘れない。寒い冬の夜だった。

shiroyagiさんの投稿 - 05:46:45 - 0 コメント - トラックバック(0)

2006-11-13

The Show Must Go On-千絵ちゃんとぼく-

千絵ちゃんとぼくは実くんの墓参りに行った。横須賀。海の見える高台に墓はある。
千絵ちゃんとぼくは横浜駅の花屋でトルコ桔梗を二十本買った。
墓前に備える花はやはり悲しい。白く咲くトルコ桔梗の花に心打たれた。
実くん。リンパ腺ガンの実くん。ぼくはいつまでもきみを忘れないよ。
きみが愛したQUEEN。フレディ・マーキュリー。ぼくがCDぜんぶ預かったからね。聴きたいときは、ぼくの家に聴きに来てね。フレディの声を聴く度に、実くんのことを思い出すから。忘れないでね。
毎年、秋には、トルコ桔梗を持って行くから。墓の前でQUEENのCDかけるから。待っててね。The Show Must Go On。ショウはいつまでも続く。実くんの命とともに。いつまでも生きる。QUEENとともに。忘れない。ぼくだけは忘れない。千絵ちゃんとぼく。一生忘れない。ショウはいつまでも続く。


shiroyagiさんの投稿 - 22:47:30 - 0 コメント - トラックバック(0)

star-千絵ちゃんとぼく-

ぼくと千絵ちゃんは、クリスマスの前に、ベジャールのくるみ割り人形を観に行った。
その日は、とても晴れていて、気持ちがよかった。
くるみ割り人形は、最高によかった。最高の気分で、ぼくと千絵ちゃんは帰った。
京王デパートのafternoon teaに寄って、パスタとレモンスカッシュを飲んだ。その後、espresso cafeでエスプレッソをダブルで二杯飲んだ。苦かった。煙草を二本吸い、時間を潰した。
その後、ホテルに寄り、二度愛し合った。千絵ちゃんはすごい感じた。ぼくも千絵ちゃんに導かれて、二度感じた。愛し合った後、深い眠りがふたりを襲った。爆睡。朝までふたりで眠り込むと、疲れがとれた。
ぼくはもう一度千絵ちゃんを愛して、ホテルを出た。
ぼくと千絵ちゃんは、銀座に出て、映画を観た。グラン・ブルー。深い海の底でぼくと千絵ちゃんは愛し合った。千絵ちゃんはいつもより激しかった。ぼくは千絵ちゃんに負けそうになった。なんとか千絵ちゃんの勢いに、二十分持ち堪えた。いつもの千絵ちゃんと違った。別人みたいだった。ジキル博士とハイド氏。千絵ちゃんの隠された仮面をぼくは見た。仮面の奥は、陰気な淫乱女だった。ぼくは辟易した。それでも千絵ちゃんを愛していた。それでも千絵ちゃんを愛し続けた。前の千絵ちゃんに戻るように祈った。
ぼくの祈りは神に通じた。願いは叶った。
千絵ちゃんは清純な純潔な乙女に戻った。ぼくは数倍千絵ちゃんを愛した。
千絵ちゃんは華麗なピアノを弾いた。ぼくと連弾した。モーツァルト。ピアノ協奏曲第15番変ロ長調。華麗で華美なモーツァルト晩年の曲。
モーツァルトが狂気の中で作った美しい調べ。ぼくと千絵ちゃんはこの曲を愛した。長く永く愛した。千絵ちゃんをぼくより二年早く死神が連れ去るまで、ぼくと千絵ちゃんは愛し合った。幸せな時間の連続だった。
時が死に至る、その時、ぼくは千絵ちゃんを冥界から連れ戻した。オルフェウス。ぼくは冥界の道で、一度も千絵ちゃんの顔を見なかった。振り返らなかった。ぼくの手に連れられた千絵ちゃんの死顔は美しいほど凍っていた。ぼくは千絵ちゃんの頬にキスをした。千絵ちゃんは生き返った。光の世界の中に、ぼくと千絵ちゃんは二度と生き返らないほど、輝かしく生き続けた。輝かしい。星。shooting star。ぼくと千絵ちゃんの星は二度と地上には落ちない。二度と地面の砂を噛むことはない。それだけは知っていた。ぼくと千絵ちゃんは、神々の神話の世界の仲間入りをし、星座になった。star。それがぼくと千絵ちゃんの名前。忘れないでくれ。ぼくと千絵ちゃんを。きみだけは忘れないで。忘れないで。

shiroyagiさんの投稿 - 21:24:41 - 0 コメント - トラックバック(0)

お乳-千絵ちゃんとぼく-

月を見に行く。遠い高原の丘の上。千絵ちゃんとぼく。ふたりは立って、月を眺める。月は青白く黄色。カニの形の灰色の影がある。
ぼくと千絵ちゃんは寒さに震えながら、黙って月を見る。
やがて、月は雲に隠れ、姿を消す。型を失くした月は虚しい。
空は黒く、沈んでいる。ぼくと千絵ちゃんは、影に怯えながら震える。
朝が来る。黙っていても朝は来る。やがてぼくと千絵ちゃんは月の明りを尻目に太陽を見る。目が潰れる。盲となったぼくと千絵ちゃんは、沈黙の中、道程を歩く。太陽が焦げ尽くす大地。ぼくは地面に這いつくばり、のそりのそりと歩く。千絵ちゃんはぼくの背中に乗り、浦島太郎。ぼくは竜宮城へ海路を往く。玉手箱。開けて見れば、赤子に戻る。ばぶー、と鳴く千絵ちゃんとぼくは、揺りかごの中。眠る。天井からぶら下げられた赤いぼんぼり。見ながら、眠る。目を開けて。
朝が来る。親はいない。どこにもいない。どこにいるのか知らない。知っていても必要ない。お乳は千絵ちゃんの膨らみから出る。ぼくは吸う。お腹いっぱい。膨らんで、ぼくは眠る。千絵ちゃんはぼくにお乳を吸われて、お腹ぐーぐー。鳴いている。ぼくはそれ見て知らんぷり。眠っている。
朝が来るまで眠っている。千絵ちゃんは眠れない夜を過ごす。ぼくはしらんぷり。でも千絵ちゃんを心の底から愛している。それは本当だ。

shiroyagiさんの投稿 - 18:33:20 - 0 コメント - トラックバック(0)
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