2006-11-24
WE WILL ROCK YOU-千絵ちゃんとぼく-
千絵ちゃんとぼくは、新宿コマ劇場で、ロック・ミュージカルQUEENのWE WILL ROCK YOUを観て来た。踊って、歌って、足を踏み鳴らし、ペンライトを振った。
帰りに、歌舞伎町の風林会館パリジェンヌでスパゲティを食べた。
食後に、コーヒーを飲んだ。とても美味しかった。
その後、ホテルで休憩して、体を休めた。
外に出ると、もう夕暮れだった。
家に帰る京王線に乗り込んだ。
ぼくはipod80GB。千絵ちゃんはipodシャッフルで互いにQUEENを聴いた。WE ARE THE CHAMPIONS。電車の中で、足を踏み鳴らしながら、QUEENを聴いた。
電車が最寄りの駅に着く。
駅を出ると、ちょうどバスが来ていた。
千絵ちゃんとぼくはバスに乗り込み、バス共通カードを差し込む。
最寄りのバス停に着く。
バスを降りる。家に向かう。玄関には、灯りが灯っている。
鍵を開けて、家に入り、千絵ちゃんは千絵ちゃんの部屋、ぼくはぼくの部屋に入って、身支度を解く。
夕飯はカレーライス。
ぼくはお替わりをした。千絵ちゃんは半分残した。
どうしたの。ぼくは千絵ちゃんに訊くと、千絵ちゃんはI FEEL SO BADと言う。ぼくは困って驚いて、千絵ちゃんを抱えて、ベッドまで運んだ。
千絵ちゃんはすぐにぐっすりと眠った。
ぼくはしばらく千絵ちゃんの寝顔を眺めていた。
ぼくは自分のベッドで、マーガレット・W・ブラウンのぼくにげちゃうよを読んだ。
読み終わって、サイドテーブルのランプを消して、眠った。深い眠りが訪れた。
夢を見た。こんな夢。おしまい。
このお話もこれでお終いです。
2006-11-23
ALL OF MY LIFE 未完成-千絵ちゃんとぼく-
止まれ。いかにもお前は美しい。
ぼくは信号を黄色で、横断歩道を渡ろうとする千絵ちゃんに、大声で叫んだ。
千絵ちゃんはびくっと驚いて、ぴたりと白線の前で止まった。
ぼくは千絵ちゃんを優しく抱きかかえて、囁いた。駄目だよ。黄色で渡っちゃ。千絵ちゃんは泣きそうな顔をして、ぼくの胸に飛び込んできた。
ぼくは千絵ちゃんを大事に守った。
夕暮れになりかかっていた。
ぼくと千絵ちゃんは日比谷の小さなカフェに入って、カプチーノで体を温めた。
その後、銀座の映画館でニュー・シネマ・パラダイスを観た。ぼくと千絵ちゃんは思わず泣いてしまった。
涙を潤すために、レストランでかぼちゃのスープを飲んだ。
もっと体を熱くするために、ぼくと千絵ちゃんはシティ・ホテルで抱き合った。千絵ちゃんは涙を流して、悦んだ。ぼくも泪を潤ませて、先端を熱くした。
ぼくと千絵ちゃんは朝までシティ・ホテルで時間を潰した。
翌朝は穏やかな小春日和だった。
ぼくと千絵ちゃんは手をつないで、日比谷公園を散歩した。
その夜は、THE DIVINE COMEDYのライブが渋谷のクアトロであった。
1998年12月18日。忘れもしない。
THE DOORSのTHE ENDでライブは始まった。SOMETHING FOR THE WEEKENDで盛り上がり、THE CERTAINTY OF CHANCEで黙り込んだ。
深夜の渋谷センター街は人混みで一杯だった。パブの客引きや酔っぱらいの学生。
ぼくは煙草のライターのオイルが切れてしまい、煙草を吸うことができなかった。
ぼくは千絵ちゃんと一緒に、火を貸してくれる人を探した。
ひとりの大学生が火を貸してくれた。ぼくの煙草に火をつけてくれた。大学生は言った。友情に火を。ぼくはLIGHT MY FIRE,THANK YOU。と応えた。大学生は満足そうに人混みの中に消えていった。
ぼくと千絵ちゃんは凍えながら、クアトロの前の階段に座り込んでいた。
始発を待つために。また、NEIL HANNONを待つために。そう、NEIL HANNONに会うために。それがぼくの目的であり、すべてだった。ALL OF MY LIFE。ぼくはNEIL HANNONに会うために生きていた。ぼくの本当の生を生きるためにNEIL HANNONに会うことが必要だった。
だからぼくはNEIL HANNONをひたすら待った。ぼくをすべてのことから解放してもらうために。ぼくを自由にしてもらうために。ぼくを、自由に。自由に。
そして、千絵ちゃんと永遠に結ばれるために。結ばれるために。
2006-11-21
暑い夏の午後-千絵ちゃんとぼく-
千絵ちゃんとぼくは早起きした。6時30分に布団を出た。
朝焼けの中、都立長沼公園に散歩に行った。
昨日の雨がまだ木の葉に残っていて、地面は雨に濡れていた。
千絵ちゃんとぼくは木の葉を踏みしめながら、公園を歩いた。
天気は晴れだった。清々しい朝の声が耳に聞こえる。
千絵ちゃんとぼくは木の葉の声に耳を澄ました。
森の声が聞こえる。
とても静かに、とてもクリアに。
公園のベンチは雨で湿っていた。
ハンカチで拭いて、ベンチに座った。
丹沢の山々がよく見えた。千絵ちゃんとぼくは山並みを見つめていた。
時が過ぎ去って行った。時間を忘れた。
気がつくと、10時だった。
千絵ちゃんとぼくは遅い朝食を食べた。トーストにハム。それにコーヒー。
食事が終わると、八王子へ散歩に行った。
行きつけの中古レコード・CD屋ヨネザワ。jazz喫茶のはり猫。
昼飯は、都立南多摩高校の前の東花飯店で、ランチセットを食べた。
喫茶店ねずみのことで、珈琲酒を飲んで、家に帰った。
夕暮れが赤く美しい。絹ケ丘の丘の上で、暫し見とれていた。
家に帰ると、まず風呂に入った。湯船に体が浸かる。気持ちがいい。
部屋に戻り、DVDで『ラストタンゴ・イン・パリ』を観る。
欲情した。千絵ちゃんをベッドに誘い、激しく愛し合った。
夜の帳が下りた。月を見に、ベランダに出た。きれいな月だった。
千絵ちゃんとぼくはしばらく月を眺めていた。
その後、ベッドに入り、ぼくはドン・フリーマンの『くれよんのはなし』を読んで、千絵ちゃんはフィービとセルビ・ウォージントンの『せきたんやのくまさん』を読んだ。
読み終わり、ベッドサイドのランプの灯りを消して眠った。
暖炉の火が残っていた。石炭の匂いがまだ部屋に残っていた。
千絵ちゃんとぼくは深い眠りに誘われていった。
素敵な穏やかな晩だった。
翌朝、目を覚ますと、また散歩に出た。絹の道。横浜まで続くこの道を鑓水まで歩いて、バスで帰ってきた。
夕食を食べ、テレビのドキュメンタリを見て、ベッドに入った。
石炭の匂いがまだ部屋に立ち込めていた。
石炭が誘眠剤になっていい気分で眠った。いい睡眠だった。深くて重い眠りだった。朝まで目覚めることはなかった。こんなにいい気分で眠るのは久しぶりのことだった。
翌朝は、電車に乗って九段下まで行った。千鳥が淵が美しい。水面が緑色に光っていた。なぜかそれを見てぼくは涙を流してしまった。今までの澱のようなものが一切流し落とされていた。
千絵ちゃんとぼくは千鳥が淵に別れを告げ、靖国神社に参拝した。英霊の魂が眠るこの社にぼくは心打たれた。8月15日のことである。
忘れもしない。暑い夏の午後だった。蝉が大きく鳴いていた。暑い夏の昼下がりだった。忘れもしない。8月15だった。もちろん大東亜戦争の終戦記念日である。
2006-11-19
LOVE ME DO-千絵ちゃんとぼく-
ぼくと千絵ちゃんは池袋の文芸座にジャッカルの日を観に行った。とてもよく晴れた日曜日の午後だった。
客はぼくと千絵ちゃんのふたりと中年の男がひとりだけ。
男は上映中ずっと眠っていた。こんな楽しい映画なのに、眠るなんて大した男だと思ったら、フレデリック・フォーサイスだった。ぼくは眠っているフォーサイスを起こして、アドレス帳にサインしてもらい、握手してもらった。
千絵ちゃんはフォーサイスの名前を知らなかった。ジャッカルの日の原作者だよと教えると、びっくりと驚いた。ぼくのほうがよっぽど驚いたよ。千絵ちゃん。心臓が止まるかと思った。やれやれ。
一息入れたくて、近くのRICK`S CAFE AMERICANに入った。エスプレッソを二杯飲み下して、RICK`Sを出た。映画のハシゴをした。時計仕掛けのオレンジ。ビッグブックが面白い。SINGING IN THE RAIN。雨に打たれて、ぼくの心臓はどきどきに凍った。キューブリック、やるなあ。もう降参。参った、参った。スタンリー、お前は漢だ。漢だよ、お前は、まったくお前という男は。
気晴らしに、ビリヤードを打った。ハスラー。ぼくはポール・ニューマン。千絵ちゃんがトム・クルーズ。豪華客船でクルージングしながら、玉を突いた。ナインボール。9の玉がコーナーに入ると、ゲームは終了。ビギニング・ラックで千絵ちゃんを打ち負かす。やったよ、やった。THE WINNER AND THE LOOSER。どちらが勝者なのかぼくは知らない。千絵ちゃんも知らなかった。千絵ちゃんときたら、フォーサイスの名前も知らなければ、何にも知らない。まったく、なんでこんな女とつきあっているのか、自分でもわからない。まあ、結局、千絵ちゃんのことが大好きなんだけどね。I LOVE YOU DO。LOVE ME DO。お願いだから、ぼくを愛して。ぼくを愛して。この限りない無限の夜の闇に懸けて、ぼくは千絵ちゃんの愛を勝ち取りたい。ずうっと、そう思っていたんだ。そう、ずうっと。この夜に懸けて。
MOONLIGHT-千絵ちゃんとぼく-
千絵ちゃんとぼくは、千葉県佐倉市にある川村記念美術館に、スイス生まれの彫刻家、アルベルト・ジャコメッティの展覧会を観に行った。その日はすごい雨で、車のワイパーを激しく回して、首都高4号線を走り抜けた。
彫刻は、痩せ細った、ブロンズの塊。魂が込められていた。
矢内原伊作の肖像画が壁に掛けられていある。とても苦しんでいる。哲学者、矢内原伊作、もう死人である。
千絵ちゃんとぼくは、哲学の道を歩きながら、道徳について考えた。
結果、答えは何も見つからなかった。ひとつだけ、煙草を道端に捨てちゃあいけないということが分かった。
千絵ちゃんとぼくは、SOUND OF MUSICの世界にパラレルした。エーデルワイスが白く咲いている、山並みが美しい。ドレミの歌が聞こえてくる。ぼくと千絵ちゃんは、ドレミの歌を歌い上げる。ドーナッツがレモンになってみんなになる。そしてファイトがまたドーナッツに戻る。その繰り返し。
千絵ちゃんとぼくはご満悦だった。
ご機嫌で、ランチを食べる。シエスタをする。ベッドでごろごろする。眠る。昼寝。ぐーぐー。歯軋り。ぎーぎー。のこぎりを引いたような音がする。それでも眠り続ける。
そのうち、月が出る。下弦の月。美しい。MOONLIGHT。照らされて、UNDER THE MOON。ぼくと千絵ちゃんは踊り狂う。終わりのないカーニヴァル。サンバを踊る。ホッホー。叫ぶ。月に向かって狼のように吠える。野良犬のように哭く。
やがて朝が来て、夜のゴミをすべて太陽が焼き尽くす。
太陽に照らされた地上とその海は美しすぎる。千絵ちゃんとぼくは降参する。寝込む。ベッドで眠り続ける。ずーと、ずーと眠り、続ける。