«Prev | 1 | 2 | 3 | ...| 23 | 24 | 25 |...| 123 | 124 | 125 | Next»

2008-10-31

寝室

景子の心は乖離する

花の香の如く身体を離れた景子の気持ち うわの空

ただ、わたしの水が欲しいのだと言う

水をあげると、こくこくとコップで飲み干す

そうしてまたベッドで眠るのだ

もう一人の景子、ひよりに愛を告げる

それは景子への愛を裏切ったことになるのだろうか

景子であろう ベッドに横たわりほほ笑む景子の頬を、右の手で撫でる

わたしの眠り姫は、もうこのまま目を覚ますことにないようで

手が冷たい。

そのあまりにも遅すぎる鼓動と呼吸の気配に

生の営みをかんじるのはさびしいものだ

わたしは心の衝動を抑え切れずに、景子という名のひよりの口をふさいだ

誰にも知られることのないであろう愛を、わたしの口はささやく

ひよりという名の景子は眠っている

にもかかわらず、ありがとう、うわ言をつぶやいた

わたしはたまらく、感情をこえて涙を流した

景子にひよりが宿ってから初めて

わたしは夜の静けさに愛おしみを感じた

そして朝日を浴びる時

景子がひよりであろうと景子であろうと

この女性に一生を捧げると決めたのだ

いつもより一層 景子の寝顔が美しく思えて




shiroyagiさんの投稿 - 21:40:23 - 0 コメント - トラックバック(0)

2008-10-30

CONTROL

Joy Divisionのヴォーカル、イアン・カーティスの伝記映画『CONTROL』を観る。
冒頭、イアンが自分の部屋のベッドで寝ころびながら、煙草をくゆらす。レコード・プレーヤーには、David Bowieの『Aladdin Sane』が「Drive in Saturday」を流している。
このシーンを見た瞬間、この映画好きって思った。
が、続けて観ていくと、話はかなり暗い。
癲癇の発作に襲われ苦しむイアンが見ていて辛い。
たまに笑えるシーンもあるのだけど、暗い。
でも、音楽は最高にいい。ライブ・シーンもいいし。上手く他のミュージシャンの音楽やエピソードを使ってるなあって思った。
個人的には、「Love Will Tear Us Apart」「Transmission」が好き。

イアンの死後、残ったメンバーが結成したNEW ORDERが、内向的なサウンドのJoy Divisionから、ダンサブルなバンドへと変化し、世界的に大ヒットを飛ばしたのは、皮肉にも思えた。
でも、NEW ORDERも大好き。今、GLASGOWでのライブDVD観てます。『CONTROL』のサントラもゲット。当分、イアンの悪夢から離れられそうにありません。(笑)

イアン・カーティス、享年23歳


shiroyagiさんの投稿 - 00:34:14 - 0 コメント - トラックバック(0)

2008-09-23

素敵な紙芝居

ぼくが小さい頃、学校の近所の公園に、放課後、紙芝居屋さんがやって来ていた。
毎週水曜日が、紙芝居の日だったんだけど、ある日、紙芝居屋さんはやって来なかった。
翌週も、そのまた翌週もやって来なかった。
ぼくはもう、紙芝居のことは忘れてしまっていた。
そんなある冬の日曜日。
ぼくは父さんに連れられて、映画に行った。
何の映画だったかは憶えていない。外国の映画だった。
白黒のスクリーン。
ただ一つだけ、記憶にあるのは、映画のラスト、きれいな女の人が湖に飛び込んで、死んでしまったことだ。
子どもながらに、それを美しくも感じながらも、水はぼくにとって、死を意味するようになった。
ぼくはそれ以来、水が怖くなって、近所の里山にある池や用水路で遊ぶのも止めてしまった。
そんなぼくの楽しみは、本を読むことだった。
父さんの書斎に、こっそり入って難しそうな小さな活字だらけの本を眺めるように読みあさった。
その内、わからない漢字も段々覚えていって、本の内容が理解できるようになっていった。小学校6年生くらいになっていただろうか。
学校から帰ると、真っ先に書斎に入り、まだ読んでいない本を探して、(と言っても、ほとんどの本は背表紙で知っているだけで、中身は読んでいない)、本を開くのが習慣になっていた。
そんな日が続いた金曜日。なぜだか、その日が金曜日だってことは、今でも忘れずに憶えている。
一冊の大型本を適当に開くと、そこには、ぼくが本当に子どもの子どもだった頃の情景であり、憧憬が一面にあった。
紙芝居屋さんと、それを取り巻くあめ玉をくわえた子どもたちのモノクロ写真。
その頁を見た瞬間、なんでだか、両の眼から涙がこぼれ落ちた。
ぼくが写っていたのだ。
半ズボンにランニングのシャツを着た、痩せこけた一人の少年。紛れもなくぼくだった。
そこに、ぼくの生きた証しがあるって思った。
ぼくは、しばらくその写真を眺めてから、そっと本を閉じた。
それ以来、ぼくは書斎に行くことはなかった。
なぜだかわからない。ただ、彼処にぼくが本当に存在したってことが、不思議にぼくの心を安定させた。
そしてぼくはまた、友だちたちと里山で、ウサギを追ったり、水たまりで、ドジョウを取ったりするようになった。
毎日外でいっぱい遊んだぼくは、疲れて本を読むことはなくなった。
ただ、あの一枚の紙芝居屋さんの写真だけは、いつまでも心の奥深く、生き生きと、瞼の奥に焼き付いていた。
一つ書くのを忘れていたことがある。
あのモノクロ写真写真の下には、説明書きがあって、日本で最期の紙芝居屋さん、と書かれてあった。
忘れるに忘れられない、子どもの憧憬が彼処にあったのだ。


shiroyagiさんの投稿 - 21:59:06 - 0 コメント - トラックバック(0)

2008-09-05

大好きな沖縄

ぼくが通勤で使っている最寄りの駅に、毎月大体月末、琉球物産市がやって来る。ぼくはそれが楽しみで、毎月物産市に通っている。
市を開いているおばあちゃんはまるで、KHKの朝の連ドラ『ちゅらさん』に出ていた平良とみさんみたいで、笑顔がかわいい。
ぼくが買うのはいつも決まっていて、沖縄バヤリースの果汁10%のシークワサーと亀の甲せんべいとサーターアンタギー(沖縄風ドーナッツ)で、仕事帰りのバスの中、大きなビニール袋を提げて家に帰る。そんな習慣がもう何か月か続いている。
シークワサーは、そんなにカブガブ飲むものではなくて、少しコップの半分くらい飲むのが調度いい。シークワサーの後、トマトジュースを飲むのもお気に入りだ。柑橘系のちょっぴり酸っぱみのある濃厚な味わいが堪らない。
亀の甲せんべいは、とっても大きくて、そのまんまガブリつくと、せんべいのかけらが、床にぼろぼろと落ちてしまうのだけど、そのままガブリつくのが、一番おいしい。いり塩の効いたしょっぱいせんべいには、やっぱりシークワサーが合う。コーヒーと一緒に食べる時もあるけど、やっぱりシークワサーとが一番いい。
サーターアンタギーは、あまり甘くないさっぱりとした団子のような形をしたドーナッツで、少し粉っぽいところがまた、気に入っている。
ところが先月は、体調の関係で物産市に行けなかった。
家人に頼んで取りあえず、お目当ての物は買ってきてもらったが、やっぱりあのおばあちゃんと会うのが楽しみだ。いつも行くと帰り際、「来月はいつ来るんですか」と訊くのが習慣となった。そして、携帯のカレンダーに予定をいれている。
この市には、食べ物だけではなく、絵はがきや沖縄の歴史を書いた冊子なんかも置いてあって、興味深くて、眺めているだけで楽しく、ついつい長居してしまう。
ひとつ買おうか悩んでいる品があって、それは果汁100%のシークワサーの原液で、サラダのドレッシングに使ったり、薄めて飲んだり、焼酎なんかで割ったりするとおいしいらしい。ちょっと値段は張るんのだけど、禁酒しているぼくは、それを使い切る自信がなくて、買いあぐねている。
今月は、またあのおばあちゃんと、少しの楽しい会話をしながら、物産市に行きたいなあと思っている。
そんなぼくは実は、沖縄へは行ったことがなく、一度行く予定を立てたことがあるのだけれど、1週間前に急なキャンセルを入れた苦い思い出がある。日本では、一番行きたいと思っている沖縄。行った友だちはみんな一様に、「いいよー、沖縄」と口を揃えたように言う。
大げさな言い方だけど、近い将来、本物の沖縄を満喫したい。


shiroyagiさんの投稿 - 14:51:55 - 0 コメント - トラックバック(0)

『BERLIN』-亜紀ちゃんとぼく-part2-23

ぼくはどこか知らない街へ行くと、必ず本屋とCD屋を探して入ることに決めている。
ある日のこと、ひとりC線に乗っている時、トイレに行きたくなって途中下車した時。
O駅で降りて、ぼくは速攻改札をPASMOで抜け、駅前のタリーズに入った。店の奥の左側にトイレがあった。ぼくはすかさず、ノブをひねった。が、開かない。だれかが入っていたんだ。
ぼくはもう、堪らなくて、ドアを2度叩いた。が、どうしようもなくなって、ぼくは額に汗を垂らしながら、タリーズを走って出た。
タリーズを出て、直感で右に曲がった。正解だった。マックがあった。今度は大丈夫だろう、そう思って、マックの2階に上がり、階段を上がって左奥にあるトイレに向かった。が、なんてことだろう。塞がっていた。ぼくは、思いっきり考えてから、と言っても3秒くらいだろう、女子トイレに入った。
無事用を足して、ぼくは気分爽快だった。
1階に降りて、カウンターでコークのMを頼んだ。一気に飲み干す。そして煙草を一気に一服した。
一息ついたところで、ぼくはいつもの癖、本屋とCD屋探しに街を探検に出た。
商店街のメイン・アーケードが駅から、真っすぐ北側に通っている。
ぼくはその通りをゆっくり歩きながら、上下左右を眺め回す。
あった。CD屋だ。看板を見ると、BERLINとある。店主は、ルー・リードのファンなのだろうか、なんて考えながら、雑居ビルの3階にある店の押しボタン式の自動ドアを開けた。
中は、クーラーが効いていて、とても涼しかった。
店の中は、一面壁が真っ赤だった。ぼくは、iPod nanoのレッドを思い出した。なんでも、福田首相も持っているって、新聞に書いてあった。U2のボノからもらったんだって。関係ないけどね。
どうやらこの店は、インディーズ系の洋楽を集めた店らしい。レーベル別にCDが並べあって、その次にアーティストのアルファベット順。
ぼくはレーベルとか全然気にしないで音楽を聴いていたから、ちょっと戸惑った。でも、なんとなくCDのタイトルを眺めながら、店内を歩いていた。
『Casablanca』というのがあって、何気なく手に取った。ちなみにレーベルは、elefant recordsと書いてある。
ぼくは、裏面の曲目リストを1曲目からじいっと見入った。どうやら、オムニバス盤のようだ。
なんと、The Divine Comedyの「Your daddy`s car」が入っていた。
「奇跡」心の中で叫んだ。他の曲を見ると、英語の曲だけじゃなく、フランス語で書かれているものもあった。なんか自分好みだなあって思いながら、ジャケットのノスタルジックな女の子3人の姿を眺めた。買おう、そう思った。
レジの方を向く。レジにはi Macが置いてあって、店員の若いお兄さんはテクノ風な感じだった。スキンヘッドに、耳にピアスを空けていた。
ダボっとしたTシャツをカッコよく着こなしていた。
「これ、ください」
「いいよ」一瞬、お兄さんがニヤって笑ったのが、分かった。笑いの意味は分からず。
ぼくは代金を支払って、店を出た。CDが入ってる袋もやっぱり赤いビニールだった。なんでBERLINなんだろう。ルー・リードなんて置いてなかったし、店員のお兄さんは、テクノ風だったし、いくら考えても分からなかった。そんな思い残りを抱きながら、ぼくは修道院に帰った。
帰ってすぐに、今日買ったCDをコンポでかけた。
よかったあ。もう1曲目からノリっ放しです。フレンチ・ポップス満開な「Au revoir」。ぼくだってこれ位のフランス語は知ってる。さよなら。フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」では、"adieu"が使われていたけど、こっちは"Au revoir"どっちも「さようなら」の意味だけれど、"adieu"は比較的もう2度と会わない人に言うことが多い、と辞書に載っていたのを前に読んだことがある。
ポップで気だるい、ヨーロッパでバカンス全開な音楽を聴いていたら、またあのお兄さんに会いたくなった。
お兄さんは店を出る時言った。「さよなら」お兄さんはあのCDを知っていたんじゃないだろうか。1曲目の意味を知っていたんじゃないだろうか。
今度会えたら訊いてみたいな、そう思った。
その話を亜紀ちゃんに電話で話したら、「素敵なひとね」って言ってた。亜紀ちゃんはロマンティストだなあ。ぼくの話をそんなに素直に信じられるなんて。ぼくはそう思った。が、口には出さなかった。
それで、明日学校で、そのCDを貸す約束をして、電話を切った。
その夜は、ずうっとそのCDをかけていた。そう、眠りに就くまで。そして、心地よく眠った。
朝は軽快にやって来た。
学校へ行くのが楽しみな、最近では珍しい朝だった。
ピエロさんも、ぼくがご機嫌なのを見て、「なんだい、なんだか楽しそうだね。ぼうや」ぼくは「なんでもないよ。行ってきます」
いつものように修道院を出た。
空は晴れ上がっていて、気持いい朝だった。ぼくの気持ちと心と通じ合ったように。

つづく


shiroyagiさんの投稿 - 06:11:52 - 0 コメント - トラックバック(0)
«Prev | 1 | 2 | 3 | ...| 23 | 24 | 25 |...| 123 | 124 | 125 | Next»