美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べよう――。
料理評論家・山本益博さんが気軽に訪問できる東京の名店を紹介しながら、食のマナーも一緒に学びます。さらに、限られた条件下で料理をキレイに撮影するコツもお教えします。
第3回となる今回は、イタリア料理の新星、未来の名店を訪問しました。
本場のフランス料理がほぼ直輸入の形で日本に伝わったのに対し、イタリア料理はアメリカ経由で入ってきたため、近年までかなり誤解をされてきたフシがあります。
たとえば、スパゲティにピッツァ。スパゲティはナポリのパスタで、少なくともローマより北のリストランテでは観光客相手の店は別にして、メニューに載っていません。トマトケチャップにまみれたあのスパゲティ・ナポリタンも、ナポリでは食べられません。そもそも、ナポリにスパゲティ・ポモドーロ(トマトのスパゲティ)はあっても、スパゲティ・ナポレターナの名前を見つけることは困難です。ピッツァはつい最近まで、誰もが「ピザ」と呼んでいました。
どれもこれも、アメリカへ渡ったイタリア南部の移民が、故郷の料理を懐かしがって、アメリカの東海岸で作り出したものばかりです。
それが戦後、日本に移入されました。イタリア料理店より先にスパゲティ専門店が誕生し、ピザハウスがたちまち大人気となりました。
イタリアめがけて修業に出かけ日本に帰ってきた料理人が、街場にレストランを開きはじめたのが、今から30年ほど前でしょうか。そこでようやく、イタリア料理の実態が分かってきました。それは、トスカーナ料理やピエモンテ料理といった、地方料理の集合体がイタリア料理なのだということでした。
今年出来たばかりのレストラン「ラッセ」の村山太一シェフは、イタリア中央部ロンバルディア州、オペラ「リゴレット」の舞台で知られたマントヴァと、バイオリンの名器ストラディヴァリウスで有名なクレモナの間にある小さな村、カンネッタにある「ミシュラン」3つ星の名店「ダル・ぺスカトーレ」出身で、同店で副料理長を2年半も務めた料理人です。
ですから「ラッセ」の売り物は、マントヴァの伝統料理、つまりイタリア料理ではなく、ロンバルディア料理なのです。
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