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きょうの社説 2011年11月27日
◎湖沼再生で連携 多様な価値を生かしたい
木場潟と河北潟の水質浄化に向けた小松市と金沢、かほく、津幡、内灘の計3市2町の
組織の連携は、ふるさとの湖沼再生につながると期待される。県内では能登の世界農業遺産認定などで里山里海への関心が高まっているが、湖沼が持つ多様な価値を生かす取り組みも強めたい。木場潟公園で行われた初の交流会では、11の環境保全団体の関係者が水生植物を活用 した浄化の取り組みなどについて意見交換した。湖沼の環境保全は行政だけでなく、地域住民の協力が欠かせない。今回の両潟流域の組織の連携を機に、県内の関係機関が成果や問題点を共有して、それぞれの活動に反映してほしい。 木場潟や河北潟などの湖沼は、地域住民の暮らしに密接に関わっており、水質浄化など の取り組みを通じて、身近な自然の大切さを感じることができる。清掃活動や自然体験、潟の歴史を学ぶことも、ふるさとの自然を考える環境教育になる。 湖沼は水生生物や野鳥などの多くの生物を育む場でもある。日本の生物多様性保全にと って特に重要な場所として、国際環境保護団体、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンは、県内から河北潟や片野鴨池(加賀市)、南加賀地方などを選んでいる。 昨年は北國新聞社と日本野鳥の会石川、日本鳥類保護連盟県支部が河北潟周辺や片野鴨 池、邑知潟(羽咋市)などで野鳥の生息実態調査を行い、「野鳥の楽園」と知られている石川の湖沼の役割と豊かな自然を守る意義が再認識された。 木場潟公園では探鳥会が開催されることになっており、今後も住民が自然に触れる機会 を多く設けることが大切である。住民の身近な環境への関心の高まりは保全活動の原動力となり、例えば、ごみの不法投棄防止や野鳥の鳥インフルエンザ感染の監視など、行政だけでは限界のある対策に地域の力が発揮されることになるだろう。 木場潟や河北潟周辺は、自然のなかでウオーキングなどを楽しむ健康づくりの場として も注目を集めている。暮らしを豊かにする「親水空間」を大いに活用したい。
◎共通番号制度 利点伝える努力をさらに
国民に番号を割り振り、社会保障や税関連の行政サービスに活用する共通番号制度で、
民主党が制度設計の提言をまとめ、法制化の準備が本格化した。社会保障と税の一体改革は、政府、与党の議論が難航する気配だが、だからといって番号制度の準備を先送りする理由にはならない。この制度は負担と給付の関係を明確にし、社会保障の機能強化に役立つ情報基盤だからである。制度の目的や利点については国民に十分に浸透しているとは言い難い。2015年の運 用へ向け、政府が来年の通常国会に法案を提出するなら、安心して使える制度設計とともに、利点を分かりやすく伝える一層の努力を望みたい。 制度の最大の課題は情報漏えい対策である。民主党の提言では、運営を監視する第三者 機関は、公正取引委員会と同様に政府から独立して強い権限をもつ「三条委員会」とし、個人情報を扱うインターネット上のシステムについては情報流出の懸念を指摘した。 省庁に従属しない機関が個人情報保護に責任を担うのは安心感につながる望ましい方向 性としても、提言は情報流出対策になお課題が残ることを示している。 番号制度は年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野で適用される。利点 としては、世帯ごとに医療、介護、保育などの負担を合算し、一定額以上は払わなくてもすむ「総合合算制度」や、低所得者の負担を軽くするため減税や給付金を支給する仕組みなどが挙げられている。 政府はシステムの安全性を繰り返し強調してきたが、原発で言われてきたような「絶対 大丈夫」という言葉はもはや説得力をもちえない。行政官庁へのサイバー攻撃など新たな不安材料もある。個人情報に関する不安の解消は情報社会の避けて通れない課題である。 国民に理解を求めるには、不都合な面もさらけ出して議論を促す姿勢が大事である。否 定しきれない負の側面があっても、それを上回るメリットを国民が実感できれば支持は得られるだろう。行政の都合でなく、国民に役立つという視点からの説明がもっとほしい。
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