(危機に立つ世界経済 どうなる日本−05)
以下は2月18日、碧南商工会議所主催の新春経済講演会で、演題『危機に立つ世界経済 どうなる日本』を講演した、妖艶なエコノミスト・浜矩子の語録第五編である。
>>>○○●○<<< 内はoff-the-record
〜・〜・〜
地球規模の金余り現象については、「これは、非常に素晴らしいことだ!」と、投資銀行たちの間で言われていた時期がありました。
ここ数年来、地球経済は空前の金余りであり、空前の超低金利に置かれていました。
とにかく金利が低い、金を調達するのにコストがかからない中で、企業が設備投資をし、シェアを拡張し、金融機関も収益を上げるということで、どんどんどんどん地球経済が膨らんでゆく。
「これは素晴らしいことである!」と言って、低金利に支えられて、「グローバル経済が永遠の繁栄の道を手に入れたのだ!」と、云わんが如きものの言い方が流行っておりました。「グローバル時代の黄金期が到来した」とも言われておりました。
しかしながら、ここに大きな落とし穴があったのです。
端的にいえば、金余りであるがゆえに、超低金利であるがゆえに、カネの世界はモノの世界と決別して、訳のわからない金融商品をたくさんつくる。或いはそこに、我勝ちに投資してゆくという展開にならざるを得なかったという側面があるのです。
カネが余って金利が低いとなれば、当たり前の投資、健全な投資をやっていたのでは金融収入は稼げません。当たり前な金融商品を売っていたのではビジネスになりません。
極めて金利が低いという環境の中で金融資産をうまく運用して収益を上げたいとなれば、非常に無理をして、一風変わった金融商品を開発しないとそれはできない。一風変わったものに投資をしないとハイリターンは得ることが出来ない。
従って、世界中が低金利であるがゆえに、世界中がハイリスク・ハイリターンに突っ走ってしまった、という状況が出て来てしまいました。
通常ならば変なものに投資をするはずがない金融機関や投資家たちも、当たり前のことをやっていたのではどうにも金利が稼げないから、わかっちゃいるけれども止められない、よせばいいとわかっているけれどもやっぱり、収益を上げるためには、サブプライムローンの証券化された商品などにも手を出すという展開になってしまった。
このように、「黄金時代をもたらしてくれた」と言われていた世界的な金余り、低金利が基本的な土台となって、カネとモノの決別状況をもたらしてしまったと言えるのです。
それでは、金余りを世界経済にもたらした張本人は誰だったか?実は日本であったと言わざるを得ない。
端的に言えば、日本が6年も7年もという長い期間に亘ってゼロ金利政策を続けていたことが、世界中でカネを余らせ、低金利を世界中に蔓延させたということです。
ゼロ金利が政策として終わった後も、ご承知のとおり今だって事実上のゼロ金利から我々は脱していない。脱する間もなく、またそっちの方向に向かおうとしているわけです。
そういうことをしてきた日本はどういう国、どういう経済であるかといえば、日本経済は世界で最大の債権国です。世界で最も貯蓄の規模が大きい国でありますから、ひらたく言えば世界で最もリッチな国であるのです。その国において、10年と言っても宜しいでしょう、金利がゼロという水準にへばりついていれば、世界的に超低金利化し、超金余り化になるのは当たり前のことでございます。
と言いますのも、日本国内で金利を稼げない資金が、どんどん地球経済に向かって流れ出てゆく、国内で金利を稼げないジャパン・マネーが世界に向かって出稼ぎに出てゆく、ということがずうっと続いてきたのです。
その出稼ぎに行くジャパン・マネーが、乗り物として利用したのは、「円キャリートレード」
というやり方だったのですが、円キャリートレードという車に乗ってジャパン・マネーが世界に出てゆく、こうなれば地球経済的に金余りになり低金利になるのは当たり前だったのです。
その金余りに煽られて皆、ハイリスク・ハイリターンのほうに突っ走ってゆく、その過程でカネ回しはモノづくりから遠ざかっていくというようになってしまったのです。
そう考えれば、日本がもっと早い段階でまともな水準に金利を上げていれば、今我々はここにいないかも知れない。恐慌噺をしているという事ではないかも知れない。
そういう意味で、日本のグローバルな社会的責任は結構大きかった、日本経済はそれだけ世界経済に影響力を持った経済だという自覚をする必要が、我々にはあるので、>>> (G7で)飲んだ暮れで記者会見に臨む前に、政治家はそのことをしっかり踏まえていただきたい。 <<<
それでは、これからどうなっていくのか? 〜・〜・〜 以下、次編
浜矩子(はまのりこ)語録 目次へ
以下は2月18日、碧南商工会議所主催の新春経済講演会で、演題『危機に立つ世界経済 どうなる日本』を講演した、妖艶なエコノミスト・浜矩子の語録第五編である。
>>>○○●○<<< 内はoff-the-record
〜・〜・〜
地球規模の金余り現象については、「これは、非常に素晴らしいことだ!」と、投資銀行たちの間で言われていた時期がありました。
ここ数年来、地球経済は空前の金余りであり、空前の超低金利に置かれていました。
とにかく金利が低い、金を調達するのにコストがかからない中で、企業が設備投資をし、シェアを拡張し、金融機関も収益を上げるということで、どんどんどんどん地球経済が膨らんでゆく。
「これは素晴らしいことである!」と言って、低金利に支えられて、「グローバル経済が永遠の繁栄の道を手に入れたのだ!」と、云わんが如きものの言い方が流行っておりました。「グローバル時代の黄金期が到来した」とも言われておりました。
しかしながら、ここに大きな落とし穴があったのです。
端的にいえば、金余りであるがゆえに、超低金利であるがゆえに、カネの世界はモノの世界と決別して、訳のわからない金融商品をたくさんつくる。或いはそこに、我勝ちに投資してゆくという展開にならざるを得なかったという側面があるのです。
カネが余って金利が低いとなれば、当たり前の投資、健全な投資をやっていたのでは金融収入は稼げません。当たり前な金融商品を売っていたのではビジネスになりません。
極めて金利が低いという環境の中で金融資産をうまく運用して収益を上げたいとなれば、非常に無理をして、一風変わった金融商品を開発しないとそれはできない。一風変わったものに投資をしないとハイリターンは得ることが出来ない。
従って、世界中が低金利であるがゆえに、世界中がハイリスク・ハイリターンに突っ走ってしまった、という状況が出て来てしまいました。
通常ならば変なものに投資をするはずがない金融機関や投資家たちも、当たり前のことをやっていたのではどうにも金利が稼げないから、わかっちゃいるけれども止められない、よせばいいとわかっているけれどもやっぱり、収益を上げるためには、サブプライムローンの証券化された商品などにも手を出すという展開になってしまった。
このように、「黄金時代をもたらしてくれた」と言われていた世界的な金余り、低金利が基本的な土台となって、カネとモノの決別状況をもたらしてしまったと言えるのです。
それでは、金余りを世界経済にもたらした張本人は誰だったか?実は日本であったと言わざるを得ない。
端的に言えば、日本が6年も7年もという長い期間に亘ってゼロ金利政策を続けていたことが、世界中でカネを余らせ、低金利を世界中に蔓延させたということです。
ゼロ金利が政策として終わった後も、ご承知のとおり今だって事実上のゼロ金利から我々は脱していない。脱する間もなく、またそっちの方向に向かおうとしているわけです。
そういうことをしてきた日本はどういう国、どういう経済であるかといえば、日本経済は世界で最大の債権国です。世界で最も貯蓄の規模が大きい国でありますから、ひらたく言えば世界で最もリッチな国であるのです。その国において、10年と言っても宜しいでしょう、金利がゼロという水準にへばりついていれば、世界的に超低金利化し、超金余り化になるのは当たり前のことでございます。
と言いますのも、日本国内で金利を稼げない資金が、どんどん地球経済に向かって流れ出てゆく、国内で金利を稼げないジャパン・マネーが世界に向かって出稼ぎに出てゆく、ということがずうっと続いてきたのです。
その出稼ぎに行くジャパン・マネーが、乗り物として利用したのは、「円キャリートレード」
というやり方だったのですが、円キャリートレードという車に乗ってジャパン・マネーが世界に出てゆく、こうなれば地球経済的に金余りになり低金利になるのは当たり前だったのです。
その金余りに煽られて皆、ハイリスク・ハイリターンのほうに突っ走ってゆく、その過程でカネ回しはモノづくりから遠ざかっていくというようになってしまったのです。
そう考えれば、日本がもっと早い段階でまともな水準に金利を上げていれば、今我々はここにいないかも知れない。恐慌噺をしているという事ではないかも知れない。
そういう意味で、日本のグローバルな社会的責任は結構大きかった、日本経済はそれだけ世界経済に影響力を持った経済だという自覚をする必要が、我々にはあるので、>>> (G7で)飲んだ暮れで記者会見に臨む前に、政治家はそのことをしっかり踏まえていただきたい。 <<<
それでは、これからどうなっていくのか? 〜・〜・〜 以下、次編
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