「…あァ?」
まだ少し眠気が覚めていない頃、
幼い少女に起こされた少年、一方通行がもう一度問う。
「だから、ようつべでとっても良い曲見つけたの
って、ミサカはミサカは貴方と喜びを分かち合いたいが為に
起こしにきた!!」
グッと打ち止めに手を掴まれ、リビングまで引っ張られる。
YouTubeでいい曲見つけたとか意味不明な理由で
起こされた一方通行はすこし不機嫌な様子だ。
「これなのコレ
ってミサカはミサカは貴方の耳にイヤホンをつけてあげる。」
一方通行の耳に流れた曲は、どこかで聞いたような
意味の分からない気持ちの悪い曲だった。
『__________♪』
「こンな曲聞くなら勉強してろ。」
一方通行は歌の途中だが、
イヤホンを外し言い放つ。
打ち止めはまだグチグチ言っているが
無視して部屋に戻る。
自分の部屋に入りドアを閉じると、吐き気がした。
さっきの曲のせいか気持ち悪い。
うっとさっきより強い吐き気が襲う。
頭が痛くなってきた。フラフラと足元が狂う。
おかしい。頭に直接くるような気持ち悪さ。
これは………、
「…う、あje@xnqphatsunemiku」
ドアに持たれかかっていた少年は
全身の力が抜けたようにするりと床に倒れ込んだ。
「…なンなンだよ」
硬く目を閉じていた少年が目を覚ます。
まだ少し頭が痛む。
あのガキは無事か…と、ふらつく足で
リビングに向かう。
そこにいたのは……、
「…あ、おじゃましてます。」
膝の上に打ち止めを寝かせ、
困ったような様子で挨拶をしてきた、
緑の眩しいくらいに綺麗な髪をツインテールにしている、
どこかでみたことのあるような少女だった。
「誰だテメェ…」
相手の態度とは正反対に、威嚇するように言う。
すると少女は怯えたように、名を名乗った。
「…わ、私、ミクっていいます…。は、初音ミクです。」
聞いたところで分からないだろうと思っていたが、わかった。
初音ミク、知っている。クソガキがいっていた気がする。
それよりも、相手はこちらに危害を加える気はなさそうだ。
ミクと名乗った少女は打ち止めを抱きかかえると
こちらに歩いてきた。
「可愛い妹さんですね」
ぷちっ。さらに不機嫌になる一方通行。
「どうやったらこのクソガキと俺が兄妹にみえンだ…」
しかし、そういいながらも本当は、
嬉しかったのだった。
それを察したのかミクの方も、
少し笑顔で、違うんですか、と返せた。
そして打ち止めをソファに寝かし、言う。
「それにしてもこの娘大丈夫ですかね、
なかなか起きませんが…」
しかし、その事に関しては心配はいらなかった。
なぜなら一方通行はミサカネットワーク、打ち止めに
代理演算をしてもらっている。
もし打ち止めが危険な状態なら
自分にも何らかの影響がでるはずだからだ。
「放っときゃ起きる。」
そう言うと余計にミクは心配そうな
目でこちらを見た。
一方通行もこういうのには弱いらしく
困った様子を見せる。
沈黙が訪れたとき、ようやく少女が目を覚ます。
「……あれ、ミサカはいつの間に寝てたんだろ
ってミサカはミサカはまだ眠い目をこすりながら
身体を起こしてみる…。
ってあれ!?貴方の隣にいる女の子はもしや…
ってミサカはミサカは期待を膨らましてみたり。」
ミクは困った顔でこちらを見てから
打ち止めに頭を下げた。
「どうも、初音ミクっていいます。よろしくね。」
ミクがそういうと小さな少女は
15歳前後であろう少女に抱き付いた。
「わあ、ミクだあ!ってミサカはミサカは
喜びを隠しきれずに抱き付いてみた!
ねぇ、本物かどうかチェックしてみたいので
歌って!ってミサカはミサカはお願いしてみる。」
急な頼みだったので少し驚いたようだったが
うん、いいよとミクは返し歌い始めた。
『メルト _______♪好きだなんて____♪
_________ _____
_______好きなの♪』
余りにも綺麗な歌声だったので少し驚いた。
身体が痺れた。どういう感情なのかは分からないが、
もっと歌って欲しいと思った。
そう、今思うと俺はあの日からみくみくにされていた。