大王製紙前会長の井川意高(もとたか)容疑者(47)による特別背任事件で、約2年前に前会長が非連結のファミリー企業からも数十億円を借り入れ、これを知った父親の高雄前顧問(74)から激しく叱責されていたことが分かった。東京地検特捜部もこうした経緯を把握し、前会長が前顧問に気づかれないようにするため、自身が会長を兼ねる連結子会社からの借り入れに走ったとみているが、前会長は今年3月にも再び前顧問から叱責されている。
特捜部は22日に前顧問の愛媛県四国中央市の自宅も捜索しており、巨額借り入れを巡る父子間のやり取りも調べている模様だ。
同社関係者によると、前会長は一昨年、前顧問が役員を務める非連結のファミリー企業などから数十億円の融資を受けて多くをカジノ賭博につぎ込み、前顧問が「二度と会社の金を使うな」と注意した。一部は前顧問が返済を肩代わりしたという。
ところが前会長は昨年5月から今年2月、今度は自身が会長を兼務する連結子会社3社から計約22億円を別のファミリー企業を経由して借り入れるとともに、並行して連結子会社から直接約23億円を借り入れ、やはり大半をカジノで消費。前顧問は経由分に気付き、3月に再び「自分の資産で弁済しろ」と叱責した。前会長は7月までにファミリー企業の株などで約42億円を弁済した。
それでもカジノ賭博に没頭する前会長の借り入れは止まらず、4月以降、問題が発覚した9月までに、連結子会社7社からさらに計60億8000万円を引き出した。その際、7社幹部らには「前顧問には内緒にしてほしい」などと口止めもしていたという。
22日に会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された前会長が発表した「お詫(わ)び」文書は「4月以降の借り入れは父も知らなかったものであり、責任はすべて私にある」としている。前顧問は10月、毎日新聞の取材に対し、「父親として深く道義的責任を感じているが、本件(の巨額借り入れ)は意高個人の問題」と文書で回答した。
毎日新聞 2011年11月26日 2時34分
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