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[20003] 【チラ裏から・完結】スーパー超人大戦【カオス】
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/10/17 20:09
 最初に言っておく。
 俺はかーなーり、転生者だ。


 ……ああっ、ごめんごめん引かないで!
 いきなりこんなことを言ってごめんなさい。
 でも事実なんです。
 誰かバーボンを持ってきてくれ。

 
 俺の記憶にある限り、生まれてから二十年以上ごくごく平凡な人間として、魔法成功率ゼロな魔法使いの使い魔として召喚されたり、珪素生命の送り込んできた侵略兵器によって滅びかけた地球に平行世界の波を捕まえてクライマックスジャンプしたりすることもなく生きていたのに、気づいたら幼児になっていたんだよ。
 な、何を言ってるかわからねーと思うが以下略状態だ。


 とはいえ、前世でよく目にした転生物のように生まれた直後から前世の記憶と意識を持っていた、物を考える赤ん坊になったわけではない。
 しばらく成長して、それこそ物心が付くころになってようやく周りとの違和感に気が付いた程度の、なんら特殊な能力もない、ちょっとオタ知識が多いだけの普通の……はずの、うっすーい転生者だ。
 ごくごく当たり前にテレビのリモコンを操作して、日曜の朝早くから放送されている特撮番組を録画予約していたら両親にやたら驚かれたり、近所の子供と喧嘩になったときに完全論破したはいいものの相手には理解されず殴りつけられたり、親が買ってくれた絵本を読み終えたら今度は親が自分用に買ったミステリを読んでトリックにダメだししたりしたころになって、そういえば「こう」なる前のことも覚えているな、と自覚したしだいである。


 最初、そのことに気づいたときはそれはもう驚いた。自分がかつて何者だったのか、うっすらと覚えているものの、何が原因で死んだのかも覚えていないし、自分を生まれ変わらせた神的なものとも会った記憶がないのだから。
 まさに、どうしてこうなった。


 しかしまあそれはそれ。
 すぐに第二の人生を強くてニューゲームできるのだからと考え直し、生まれた家にふさわしいごくごく平凡な人間として育つことにした。
 元々勉強ができる方ではあったものの、特別天賦の才を持っていたわけでもないのだから、若いうちからそこそこ楽をしつつ勉強しつつ、気楽に生きていくのが良いだろう。
 平和が一番なのです。


 しかし、その際最大の懸念はこの世界。
 転生した以上、異世界に辿り着いている可能性も十分にある。
 元いた世界とは異なる歴史や法則があるかもしれないし、もしも何かの物語の世界であったりした場合は、物によると寿命がピンチでマッハになる。


 国際警察機構と謎の秘密結社BF団の戦いに巻き込まれたり、青かったり紫だったり赤だったりの巨大人造人間のパイロットにされたり、海賊もしくは海軍にあらずば人にあらずとばかりの大海賊時代に放り出されるかもしれないのだから。


 しかし幸いにして、俺が生まれ変わった世界は剣と魔法と不衛生が支配する中世ファンタジー世界でもなければ、銀河の歴史がまた一ページ刻まれるようなSF世界でも、全てを破壊し全てを繋ぎ戦わなければ生き残れない感じのバイク乗りが大戦する世界でもなく、前の人生と同じようなごくごく普通の世界で、しかも俺の生まれた国は日本であるとわかった。


 それを知るための過程で色々調べたところ、技術水準や基本的な歴史の流れも大まかなところは前の人生のときと変わらないらしい。
 日本は天皇が脈々と代を重ね、アメリカでは大統領が熱烈な指示を集め、そろそろ月や火星といった太陽系内のほかの天体へも人間が直接向かって実地調査の手が伸びようとしている、元と変わらない世界だった。


 ただ、上杉謙信やら織田信長といった有名どころの武将が女だったり、中国でかつてドキッ! 乙女だらけの三国志演戯があったらしかったり、戦国と三国それぞれの時代に現代日本人じみた名前の軍師やらカリスマに溢れた種馬が「天の御遣い」と呼ばれていたらしいことには軽く引いたりもしたが、きっとそんなことは誤差の範囲だ。
 範囲だったら範囲だ。
 三国志随一の美女であるチョウセンが筋肉ダルマだなんて、ソンナコトアルワケナイジャナイデスカ……。


 あと、現代に近くなっては、太正時代に栄華を極めた帝国歌劇団が大神歌劇団と名を変えて今も華やかなレビュウを行っていたり、数年前にアメリカで副大統領が米軍全てとともにクーデターを引き起こしたり、それを大統領が「特別なスーツ」を着込んで、たった一人で鎮圧したり、その大統領の口癖「レッツパァリィィィィィィ!」が全世界的な流行語になったりしたらしい。


 それと前後して、どこかの大学でコジマ博士なる人が莫大なエネルギーを得られる粒子を発見したという話や、火星探査を行ったヴァイキングからの映像に不細工で巨大なタコの化物みたいなやつと、気持ちの悪い殻ごと突撃するやつとかサソリみたいな形で要撃するやつとか針みたいな足でのしのし歩く巨大な要塞のような化物やらなにやらが戦っている様子があった、などという噂がまことしやかにささやかれたりもしたが、おおむねもといた世界と大差が無い。
 無いったら無い。


 日本では超能力を科学する学園都市と、世界樹と呼ばれる超でかい樹を擁する学園都市が生徒数と名声で覇を競っていたり、悪の秘密結社の存在と、それと戦う改造人間達にまつわる都市伝説が跳梁跋扈していたりもするが、驚くほどのことでは無いだろう。
 テレビでは19人姉妹の長女であると噂される美人お天気キャスターが天気予報を伝え、毎年行われる全国中学生サッカー大会、通称フットボールフロンティアの中継がスタンドバトルじみた必殺技を駆使した激しい試合の様子を流し、デュエルモンスターズという全世界的に大人気なカードゲームのプロリーグの中継番組が高視聴率を獲得したりしているが、いたって平和である。
 平和である。

 まあ、もとの世界から見たら多少すごい事件が起きているような気がしないでもない。
 空の上のほうにある観測不可能な円形の領域が存在して地球上をうろうろしていたのが、最近になって空美町なるどっかの田舎町の上空でぴたりと止まっているらしいかったり、数年前にエジプトでアメリカの上院議員がなにを思ったか自動車で歩道を爆走し多数の犠牲者を出したり、三宅島の火山の中に恐竜か何かのような形をした巨大な影が確認されたとニュースが伝えたりとか。


 さらに日本の外に目を向けてみれば、アメリカに宇宙から人型の虫のような姿をした侵略者が現れ、世界の主要都市に向かって巨大な黒いタマを転がしたものの、ホワイトハウスに向かったタマを大統領が例のクーデター事件の際に超巨大戦車にかましたジャイアントスイングでぶっ飛ばしたり、なんか知らないうちに本拠地が崩壊して、それを大統領と同じくらいの大きさの白いロボットがやったという噂が出ていたり、ニューヨークに巨大なイグアナが上陸して破壊の限りを尽くそうとしていたのを大統領が尻尾をつかんで例のジャイアントスイングでぶっ飛ばしたり。


 そんな情報が、家で取っている東西新聞と帝都新聞、さらには両親が趣味で購読しているモバイルニュース「OREジャーナル」に書いてあった。


 ……時々、この世界は決して普通でもなんでもないとか、とんでもないカオスじゃないかと思うことがなくもない。


 と、ともあれ、世界の危機に相当するような事件は今のところ起きていないし、もし仮に起きたとしてもどこぞの大統領がカップラーメンができるより早く片付けてくれそうな気もするから、ある意味前の世界よりも安全だといえる。
 安全だったら安全だ。
 せめて俺の回りは安全だ。
 



「そう思っていた時期が、俺にもありました……」
「ど、どうしたんだ?」


 今俺が生きるこの世界を思い、深い深ーい溜息をついている俺に声をかけてきたのは、友人の一人だ。


 つんつんと跳ねた髪の下に明るい笑顔を絶やさない熱血漢。
 学ランの下に着込んだシャツのセンスは常にアヤシイこいつの名前は、武藤カズキという。


「どこか具合でも悪いの?」
「だったら無理しない方がいいぞ」


 今は学校も終わった放課後であり、家の近所の喫茶店で友人連合に誘われてコーヒーと菓子などつついている最中だ。
 近隣にその名の知れた店でかなり繁盛しているのだが、店主一家とちょっとした縁があるために良心価格で色々提供してもらっている。
 ちなみにこの店の名は翠屋。
 さっき声をかけてきた二人は、この店にコーヒー豆を分けにきている、隣町……のようなところにある喫茶店、ミルクディッパーの経営者の弟で手伝いをしている野上良太郎と、その店でバイトをしている衛宮士郎である。


「大丈夫? 私、お水持ってくるの!」
「あ、ああ大丈夫大丈夫。全然平気だから!」


 そして今心配そうに俺の顔を覗き込んできた小さな少女は、翠屋を経営する夫婦の末娘である、高町なのはちゃんである。


「うわっ、これおいしい! ねえねえりんちゃん、これ食べてみなよ!」
「ああもうのぞみっ! もうちょっと落ち着いて食べなさい、他のお客さんの迷惑でしょ!?」


 何やら近くの席で女子中学生らしき少女たちがかしましくお茶しているのが見える。
 どこかで聞いたことのある名前のような気もするが、まあ気にするだけ無駄だろう。
 今までの経験から言って、そういう場合はたいていあとで関わることになるのだ。


「ねえねえもも姉、ここが翠屋さん?」
「そうよ、ゆりちゃんがすっごくおいしいお店だって教えてくれたの」


 高校生くらいの女の子と、その妹らしい中学生くらいの女の子が新しい客としてやってきた。
 二人ともやたらと美人だ。


 にわかに賑やかになる翠屋の店内。
 明るい内装とそれにふさわしい客の笑顔が満ちる、とてもよい店だと言えるだろう。


 だが。


 ……とっくにお気付きでありましょう。
 この世界、色々混じっているんです。




 このことに気付いたのは、自分が転生した人間だと自覚して割とすぐのことだった。


 なにせ、俺の住んでいる市の名前が冬木市であったのだから。
 幸い家は深山町にあったので大災害に巻き込まれることこそなかったが、当時はそれはもう町中大騒ぎだった。
 災害による被災者が溢れかえったことは勿論のこと、救助活動のため、設立されたばかりの世界消防庁から特別救助部隊「レスキューフォース」が派遣されるわ、その後この事件が世界消防庁長官である本郷猛士から世界最初の超災害認定されるわ、救助された被災者が口々に「緑のマスクに赤い複眼の人がレスキュー隊より先に助けてくれた」とかの噂が立つわ、思い返すだけでも頭が痛くなる。


 その後も、新たにコンセプトをエコとして町の復興が行われて街の至る所に風車が立ち並び、新都という名前と並んで風都という通称が使われたり、それに伴って近隣の学校の統廃合が行われ、穂群原学園、聖祥大とその付属各校、銀成学園高校、サンクルミエール学園、御崎高校が一つにまとめられ、軽く学園群と呼べる規模になった。


 数年前に翠屋の店主である高町のほうの士郎さんが大怪我をして倒れてしまい、一人店に残されたなのはちゃんを元気づけようと同級生のカズキや士郎や良太郎先輩としょっちゅう遊びに来たり、そのとき士郎さんとその事件の時一緒に仕事をしていて、この人がいなければ死んでいただろうと桃子さんに紹介されたやたらとハードボイルドなおやっさんと知り合いになったりもした。


 そのおやっさんに誘われておやっさんが所長を務めているという鳴海探偵事務所に遊びに行ったらチンピラ一歩手前でおやっさん曰く「まだまだ帽子の似合わない半人前」に絡まれたり、そいつと良太郎先輩の家でもあるミルクディッパーで出くわしたりもした。


 ……転生してすぐ、平和な人生を望んだのも今は昔。
 1年前に鳴海探偵事務所のおやっさんが殉職し、良太郎先輩の姉である愛理さんの婚約者であった桜井侑斗さんが行方不明になり、冬木市の大災害が10年前のこととなり、カズキの妹のまひろちゃんが銀成高校に入学し、なのはちゃんが小学三年生となった今、何かが起こる。
 そして、そんな彼ら彼女らと縁のある俺がそれらの事件に巻き込まれないはずもない。


 ……誰か助けてええええええええええええ!?




 そして、次々と出会う、本来ならば交わらないはずだった人たち。

「お前たち、どうして因果孤立空間である封絶の中でも動けるの」
「え、ど、どうしてって言われても……」
「きっと、良太郎とあたしは特異点だから。時間を改変する事の影響は受けないのよ」
「え、じゃあなのははどうしてなの?」
「なのはのほうは、レイジングハートのおかげだよ。この封絶っていうのは封時結界とよく似てるから」


 予想外のところからつながる、奇妙な縁。

「パピ! ヨン!」
「うわー、かっこいい!」
「確かに、プリキュアのみんなみたいだな、蝶野!」
「じゃあ、あの人も合わせてプリキュア6になるのかな、モモタロス?」
「や め て !!!」×のぞみ、カズキ、良太郎以外全員


 つながらないはずだった力をつなげ、真実を追う。

「闇の書、か。興味深い、検索を開始しよう。ユーノ、手伝ってくれ」
「はい、検索魔法と同じ要領でいいんですよね」
「大丈夫かしら、遠坂の情報網でも手に入れられなかった情報よ? 鳴海のおじさまならわからないけど、さすがにフィリップ君とユーノ君でも……」
「なあに、心配すんなって遠坂のお嬢さん。この俺、ハードボイルド探偵、左翔太郎とフィリップにかかればこんな程度ちょろいもんだぜ」


 なればこそ、得られる力がある。

「ごめんなさい、デンライナーは確かに時を越えてイマジンを追いかけられるけど、この乗車券を持った人でないと乗れないの」
「……ひょっとして、これのことかしら。遠坂の魔術的な始祖である、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが残した物の中の一つなのだけど」
「これはっ……! 期限、人数無制限の親友チケット!? チャーハンの上でオーナーと腕を組んでるこの人がゼルレッチさん!?」


 だからこそ、出会ってしまった物もいる。

「ベルカの騎士と互角だと!? 魔導師、貴様何者だ!?」
「わ、私は……」
「ふっふっふ、私こそかのキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが管理世界の魔法技術に触れて作ったはいいものの、ソッコーで準ロストロギア認定されて遠坂家の宝箱の中に放りこまれたカートリッジシステム搭載愉快型インテリジェントデバイス、ルビーステッキ! そして彼女こそ(不本意ですが)私の主、愛の魔法少女カレイドルビーなのですっ!」


 仲間だけでなく、戦ったものとすら絆を結ぶため。

「なのはちゃんがこんなに言ってるのに、話も聞いて上げないなんて……っ! 私、堪忍袋の緒が、切れましたー!」
「……それでも、私にはやるべきことがあるの。いくよ、バルディッシュ!」
「なんという魔法少女バトル! そして声かぶり! こうしてはいられません、行きますよイリヤさん! いいえ、今は違いましたね、いきますよプリズ魔イリヤ!」
「いやああああああ!」
「ちょっ、なにやってんのよルビー!?」
「すみません凛さん、やはり魔法少女はローティーンこそが至高! 20も近くなって魔法少女を名乗るなんて許されないのです!」
「……なんでだろう。すっごくムカつくの」


 全ての力を一つにまとめ。

「くっ、このままじゃまずいぞ、良太郎!」
「それでもがんばらなきゃ、モモタロス」
「くそっ、せめてウラタロスたちもいれば……」
「任せてください!」
「その声は、ライダー!? どうしてデンライナーに!?」
「私もっ、仮面ライダーです!」


 「願い」を叶える物語が、始まろうとしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 カッとしてやってしまいました、今は反省しています。
 でも、こういう人間がやるスパロボ的なゲーム出ないもんでしょうか。



[20003] 第二次スーパー超人大戦
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/07/14 20:54
 さて皆、覚えておいでだろうか。
 オレオレ、オレだよ。
 どういうわけだかは覚えていないが転生してしまい、超カオスな世界で生きることになってしまった俺だよ。


 そりゃもうカオスだよ。
 実は覚えてないだけで、無数の扉が並ぶ長い廊下のど真ん中に居座る眼鏡の銀行員みたいなおっさんに「次」とか言われて扉に放り込まれたんじゃないかと思うくらい、カオスだよ。


 今日こうしてみんなの前に再び現れたのは他でもない。
 あれから俺の身に起きたことを知って欲しいんだ。
 ……いやね、ポルナレフ状態になりそうなことばっかり起きて頭がどーにかなりそうなんです。
 だからどうか聞いてくださいお願いします。



 まず、俺が最初に巻き込まれたのはリリカルなのはと仮面ライダー電王と灼眼のシャナの事件だ。
 ……うん、「最初」なのに三つも作品名が上げられる、この時点でおかしいというのは分かってる。
 わかってるけど、これって現実なのよね。


 最近はこういうことになるだろうから可能な限り夜に出歩かないようにしていたというのに、その日俺は運悪く学校に翌日のレポートに必須な資料を忘れてしまったのだ。
 ああ、ベタだと笑わば笑え。
 俺自身、こんな物騒なことが起こりそうな時期にそんなフラグを立てるよう真似をするべきではないと思っていたのだが、やはり日々を平穏に過ごすためには普段の生活もおろそかには出来ないと考え、まだ部活動に精を出す生徒も多い学校へと、夕日が沈みかけるなか引き返したのだよ。


 ちなみに資料を見つけて帰る途中、遅刻を理由に罰掃除を言いつけられたカズキや生徒会に頼まれた仕事をしていた士郎とも出くわした。
 うん、どう見てもそれぞれの物語始まりの合図です本当にありがとうございました。


 カズキは一体いつの間に心臓ぶち抜かれたのだろうなどと思いつつも、そのことに気付いた俺は青くなって一目散に家へと引き返した。


 そして、その途中で自転車ごと木に引っかかっている良太郎先輩を発見。


 しばし呆然とした俺と、木に引っかかったまま呆然としている良太郎先輩。
 聞くところによるといつもの不幸がコンボとなって襲い掛かり、気付いたら木の上に引っかかっていたのだそうだ。
 どう見ても電王第一話です本当に以下略。


 ともあれ、たとえそうだと知ってはいても、知り合いとして見過ごせないのもまた事実。
 平然と人死にの出るほかの作品と違って電王ならばあるいは安全かという思考も働き、四苦八苦しながら良太郎先輩と自転車を地面に下ろした。
 そしてそのまま分かれても良かったのだが、既にFateと武装錬金の物語がスタートするのが確実なのはさっき知ったこと。
 このまま放っておいたら良太郎先輩のことだから、ついうっかりキャスターあたりに魂を食い尽くされてしまうかもしれない。
 そうなってしまえばイマジンを止めるものはなく、それはそれで大変なことになる。
 俺一人ついていっただけでどうなるとも思えないが、せめて無事に家に帰り着くまでは見届けたい、と着いていってしまったのだ。


 ミルクディッパーへの帰り道、冬木大橋へと近づくころにはすっかり日も暮れて、街灯がちらほらと灯り始めていた。
 道すがら良太郎先輩と話していたら、妙なパスケースを拾って交番に届けようと扉を開けたらいきなり砂漠に立ち尽くしており、見たこともない電車が目の前で止まったりする夢を見たのだそうだ。
 ……既にデンライナーとの遭遇も済ませているとは、さすが良太郎先輩。
 そんなことを話しながら、良太郎先輩と不幸が寄ってこないかあたりに注意しながら歩いていたとき、道の向こうを走り抜ける影が見えた。
 一瞬しか見えなかったが、頭で二本の髪の毛が跳ねる小さなその人影は、普段良く目にする高町さんちのなのはちゃんの姿だった。


 こんな時間に小学生の女の子が町を走っている。
 しかも何かに急かされるようなあの様子を見るに、おそらくユーノに呼ばれているのだろう。
 そーかついにジュエルシードも来たか、と遠い目をしていられたのもわずかのこと。
 隣でごそごそと音がすると思ったら、良太郎先輩が自転車にまたがっていた。


「良太郎先輩?」

「なんだか、なのはちゃんの様子が変だった。さっき翠屋にコーヒーを届けたとき、動物病院に拾ったフェレットを預けたって言ってたから多分それだと思う。ちょっといってみるよ」


 そうかいそうですかい、小さな女の子を見捨てるわけには行きませんかさすが仮面ライダーだなかっこいいぜチクショー!
 そう思ってしまったのが運の尽き。
 思わず「俺も行きます!」と叫んで走り出し、自転車に乗ってもあまり早くない良太郎先輩と二人でなのはちゃんを追いかけた。



 そして、そこで出くわしたのがジュエルシードの怪物と、イマジンだった。

 途中で良太郎先輩が持ち前の不幸を発揮し、チェーンが外れるわ側溝にはまるわ何も無いところですっ転ぶわとやっているうちに時間が掛かり、なのはちゃんに追いついたときには既に戦闘が始まっていて、しかもその隣にはハナさんらしき人とイマジンまでついていた。
 良太郎先輩となのはちゃんがお互いを見て驚いたり、そのドサクサ紛れにハナさんが良太郎先輩を電王にしたり、既に良太郎先輩の中に入っていたモモタロスがこれ幸いと顔を出して暴れたりと、あまりの事態にそばで見ていることしか出来ない俺の精神はもはや悟りも開けそうなほどの境地に達していたと思う。


 一言で表すならばそう、もうどうにでもなーれ☆


 ともあれ、そんな二人の初陣もユーノのアドバイスとモモタロスの大暴れによってあらかた方がついたころ、突如として周囲の景色が一変した。
 建物や植物の配置が変わったわけではなく、全体的に色合いが夜の闇に包まれていてなお暗くなるような不思議な光景。
 もしやと気付いたときにはもう遅い。
 俺たちの後ろから聞こえた奇妙な悲鳴に振り向けば、そこにいたのは特にこれといった特徴の感じられない男子高校生。
 まず間違いなく、坂井悠二だ。


 悲鳴を上げた理由は、別に俺たちの前に広がる戦闘直後の光景に驚いたからではなく、悠二の後ろから追いかけてくる不細工キューピー人形のせいらしい。
 あーやっぱりあいつ封絶の中でも動けるってことはトーチなんだなーと思ったのもつかの間、あっという間に不細工キューピーにつかまり、直後に現れたシャナ――このときはまだその名じゃなかったが、その後悠二がそう名づけたのでこれで通す――にぶった切られていた。


 それはもうあっという間だ。
 こんな状況を見て黙ってはいられないほど正義感に溢れた主人公体質のなのはちゃんと良太郎先輩(というかモモタロス)が驚いて固まっている間に一連の自体が終わったのだから。


 そのあと、悠二とシャナは原作にもあったように悠二の体を直し、直された悠二が混乱してわめき散らすという光景が見られる……かと思いきや。


「お前たち、どうして因果孤立空間である封絶の中でも動けるの」


 とかシャナが聞いてきた。
 なのはちゃんと良太郎先輩は何がなにやら分からない様子だったが、特異点だとか封絶が封時結界と似たものだからとかの理屈でハナさんとユーノは納得し、ひとまずケリは着いたようだった。
 そして、そこでふと気がついた。


 俺、何で動けるの?


 俺はとくに変な体質だったり魔法が使えたりはしないはずだというのに、なんでか封絶の中でも平然と動き回れていた。
 もしや俺にも何か妙な力があり、そのせいで面倒な事件に巻き込まれたり!? と人知れず戦慄していたのだが、そこに声をかけてくる者たちがいた。


「あれ、良太郎先輩?」

「あ、士郎君……とたくさんいるね?」


 そう、衛宮士郎ご一行である。



 時系列的に考えて、おそらく言峰教会へ向かう途中なのだろうが予想より人数が多い。
 原作では凛と士郎にセイバーの三人と、姿の見えないアーチャーだけだったはずなのだが、そこに二人ほど加わっている。
 よく見るつんつん頭の同級生と、顔に傷があり目つきの鋭いおかっぱのおねーさん。


 そう、武装錬金の二人組みである。
 なんかこのフレーズ続くな。


 顔を見合わせるなり、お互い面倒な事態になっているということを理解したその場の人たちは、冬木の管理者でもある凛に誘われて、一端集まり状況を整理することになった。
 ひとまず言峰教会へと、士郎が聖杯戦争のマスターになったことの報告と、それ以外にも面倒な諸々が起きていることを報告するため全員でぞろぞろとついていくことになった。


 なぜか俺も。
 こっそり帰ろうとしたところをセイバーに見つかり、斗貴子さんに止められ、シャナに睨まれ、凛に笑顔で付いてこいと言われた。


 なにこの現時点でおっかない女四天王。
 ちなみに、後にハナさんとなのはちゃんが別の意味でおっかない女としてこれに加わるのは言うまでもない。


 ともあれ、道中簡単に自分達の身に起きたことを報告しあいながら言峰教会へ向かって言った。
 士郎とカズキと良太郎先輩となのはちゃんは互いに面識があるため話し辛い空気が生まれることもなかったし、シャナと悠二についても実は悠二の母親がなのはちゃんのお母さんと友人だったらしく、そちらもそれなりに話ができたおかげで教会へつくまでに大体の事情は把握できた。
 そう言えば悠二の母親も原作ではかなり若かったらしいし、若母つながりなのかもしれない。


 聞くところによると、学校の方では武装錬金とFateの最初の事件が同時に起きたのだそうだ。


 学校に仕掛けられた結界を調べていた凛がランサーと出くわし、アーチャーと校庭でバトルを繰り広げているところに巳田とカズキと斗貴子さんが現れ、その隙にランサーは士郎の心臓をブチ抜いて逃げたのだそうだ。
 それを見たカズキが、巳田を倒すなり自分の心臓代わりの核金を譲ってでも助けようとしたのを見かねた凛が秘蔵の宝石で何とかし、事情を聞くため二人を遠坂家に招待した。


 この世界において、錬金戦団はホムンクルスの討伐と核金の回収を目的として設立された、世界三大魔術組織の一角であるエジプトのアトラス院の下部組織らしい。
 とはいえその歴史は比較的浅く、またその任務の遂行にあたっては戦闘も避けられないためにアトラス院の教義である秘匿義務からも比較的自由であり、世間的には教会の代行者などと並ぶ武闘派集団と目されているのだとか。


 そんなこんなの説明をするため遠坂邸でしばらく話をしていたらしいのだが、そこで士郎を放ってきたことに気付いた一行、このままではランサーが再び士郎を狙うかもしれないと急いで衛宮邸に駆けつければ、そこでは召喚されたセイバーがランサーを蹴散らしたところだったのだという。


 ……いやーよかった。
 この流れだと、セイバーを召喚するときについうっかりどこぞの緋天御剣流の使い手とか、月輪を飛ばしたり伸びたりできるばかでかい護式斬冠刀を振り回す乳牛姫とか召喚したりするんじゃないかとすごくビビッてたんですよ。
 凛のアーチャーもちらっと姿を現したところを見たら間違いなく英霊エミヤでした。
 片腕に怨念宿らせた足の高そうな名前の人とかでなくて一安心だ。


「なるほど、つまり士郎とカズキは心臓ブチ抜かれ仲間なのか」


 ついでに、ここまでの話を聞いて思わずそう口走ったら、当の二人は初めてそのことに気付いたようで、なぜか喜び無駄にテンション上げやがった。
 お互い一度死んでよみがえったも同然だと言うのにどうしてこんなに軽いのか。
 というか士郎は原作のほうだともっと色々無駄に抱え込んで鬱々とした奴だったような気がするのだが一体どういうわけだ。
 いや、そりゃ普段の生活ではそんなに暗かったり人付き合いの悪い奴じゃなかったけど、ここまで軽かったか?


 ともあれ、そんな風に事件直後とは思えないほどに和気藹々とした状態で言峰教会へと到着した。
 予想以上に能天気だったカズキと士郎や、モモタロス――道中良太郎先輩によって名づけられた――とハナさんとのお約束コントが一役買ってくれたのだろう。


 ともあれ、やたら豪勢な扉を開き、ある意味諸悪の根源であるクソ神父の根城へゴー。
 外国人の多い土地であるとはいえ、日本にあるとは思えないほど盛大な敷地を持った教会の内部は、外観に負けないほどに見事なものだった。
 正直建築や美術についてはよくわからないのだが、このマーボー神父と金ぴかキングのアジトが安っぽいはずもないから、多分かなりの金が掛かっているだろう。


 そして、そこで繰り広げられる言峰独演会。
 ジョージボイスがマジ美声。


 引くほどの大所帯で来たから多少は驚いたりするのかと思ったが、別にそんなことは一切なくごく当たり前のようにスルーして、士郎に聖杯戦争の説明だとか見透かしたようなことだとかを告げていた。
 ちなみに、そのときの士郎の反応。


 聖杯戦争について……
「な、なんだってー!」


 君の願いはようやく叶うとかなんとかについて……
「は? 何言ってんのこのマーボー?」


 でした。
 あれー?
 正義の味方に憧れてるから、それに伴う使命感とかなんかで聖杯戦争への参戦を決意するんじゃなかったっけ、こいつ?


 言峰教会を後にしてから、どうにも気になったので士郎にその辺のことについて聞いてみた。
 「この」衛宮士郎が正義の味方に憧れているということは普段の行動から分かっている。
 だって、以前部屋に遊びに行ったら棚にずらりとヒーロー物の本やらDVDやら並んでたし、OREジャーナルやらのゴシップ誌の仮面ライダーに関する都市伝説特集スクラップしてたし。


 その辺、チラッと聞いてみた。
 そうしたら、なんだか照れたようにほほを染めて(キモッ)言うところによると、なんでも士郎が憧れているのは「正義の味方」というよりも「仮面ライダー」なのだそうだ。
 どこが違うのかと聞いてみたら、士郎にとっての「正義の味方」とはすなわち親父さんである衛宮切嗣であり、「仮面ライダー」とは以前の大災害の際、切嗣より先に自分を助けてくれた仮面ライダーその人なのだそうな。
 なんでも、士郎も大災害の直後に被災者が口々に語った都市伝説「レスキュー隊より先に瓦礫の中から助けてくれた仮面ライダー」に実際に助けられた口なのだそうな。
 そのとき見た、自分を助けられたことを仮面越しにも分かるほど喜んでいた仮面ライダーの決してあきらめず誰かを助けようとする姿に憧れ、そちらをこそ目指すようになったのだそうな。


 なんという原作乖離。
 エヌマ・エリシュも真っ青だ。


 なんかFateという原作の物語からものすごい勢いで離れてる気がする。
 つーかすぐそばで聞いてるはずのアーチャーがどんな反応するか怖くてしょうがない。
 だって、どう考えたって「この士郎」が英霊エミヤになるなんて思えないし。


 そして士郎、お前を助けたのは多分本物のライダーだよ。
 それも一号。
 風都大災害のとき、自前のバイクで誰より早く駆けつけたのが、世界消防庁長官である本郷猛その人だもん。
 名前と姿だけじゃなくて体まで本物だったのかよあの人。


 ちなみに、さすがに人数多すぎたせいかイリヤは襲ってきませんでした。


「なんであんなにたくさんいるのよ!? シロウを襲えないじゃなーい!」


 そんな声が夜空に響いたりしたかどうかは、定かではない。



 とまあ、最初の事件に関してはこんな感じだ。
 このあと遠坂邸に集まって詳しい話をし、ここにいるメンバーで可能な限り邪魔をせず協力し、冬木の町を守るために行動しよう、ということが決定された。
 ちなみに、そのときまだ引き返せる人たちということでカズキと悠二が突き放されたりもしていたが、なぜか俺だけはそのままスルーされた。


「あれ、俺は!?」

「あら、そういえば忘れてたわ。まあいいじゃない、人手が足りなくなるんだし、協力しなさい」

「世界はこんなはずじゃなかったことばっかりだああああああああ!」


 という感じで、超なし崩しに協力者――という名のパシリ――になることが決定いたしました。



 そんなこんなで時が流れた。
 カズキと悠二もなんだかんだで活躍して仲間に入り、かなりの大所帯になっている。
 あれから、妙に髪を持ったさそりっぽい頭の女とかやたら自分を誇示したがる青いイケメンナルシストとかじゃきじゃき行ってる赤い髪のおっさんなどとイマジンが取り憑く人間を奪い合っているのに遭遇したりもした。


 どうやらそのときは怪しい三人組が人間の確保に成功したらしく、なんやかんやとやっていたら金朋ボイスの巨大な怪人が現れ、それを追ってピンクと青のやたら堪忍袋と海より広い心がキレやすい少女達が現れ、戦闘後のOHANASHIでめでたく俺たちの陣営に合流することが決定した。


 ついでに、それと前後してモモタロスがイマジンの匂いを感じて出かけてみたら実はイマジンではなくピンキーとか呼ばれる謎生物がいて、それを追ってきた女の子五人組、プリキュア5も仲間になったのでしたとさ。


 そして、既に人数数えるのもイヤになってきた俺たちの集団が集まる場所として、衛宮邸が選ばれたまり場と化している。
 なんだかんだでしがらみが無く、そこそこの広さと防備があるということでここが拠点のような扱いになり、協力関係にある人たちのほとんどが詰めかけているのだ。


 斗貴子さんやハナさんやシャナといった、基本的に宿無し……ゲフンゲフンッ! あー、旅から旅で定住場所を持たない人たちは離れの部屋を借りて住むことになった。
 今は、そんな衛宮邸の居間にほとんどの人が集まって士郎の作る昼食を待っている。
 既に己のハラペコっぷりを隠す気もないセイバーや、ことあるごとにメロンパンを要求するシャナにもめげず大量の料理を日々用意し続けている士郎の背中は、まさに正義の味方のそれである。


 ちなみに、士郎と同じくらい料理が得意なはずの凛はテレビにくぎ付けになっている。
 なんでも馬券を買っているらしく、レースの様子から目が離せないようだ。


「行け! 行きなさいハリボテエレジー! ここでお前が負けたならあたしの生活ままならないのよ! って、あぁあああああああ!?」


 ……どうやら、あまりよろしくない結果だったようだ。
 「ガムテープの剥がれる音ってなによおぉぉぉぉ!?」と魂の切り裂かれるような叫びを上げながら崩れ落ちる。
 テレビの前で悄然とorzポーズを決める凛の隣ではなのはちゃんと良太郎先輩がおろおろしながら慰め、リモコンを奪い去ったシャナが我関せずとばかりにチャンネルを変えた。


 テレビに映し出されたのは、日本屈指の知名度を誇る大神歌劇団の劇場中継。
 ただ、そこに映っているのは大神歌劇団の女優達ではなく、最近興隆著しい765プロのアイドル達だった。
 大神歌劇団の劇場である大神劇場は歌劇団のショーのための舞台であるが、同時に外部からのゲストも積極的に招き入れているため、大神歌劇団から誘いを受けることが若手女優にとっての登竜門になっているのだとか。


 数年前に北島マヤという少女が女優としての知名度を大きく上げたのも始まりは大神劇場での舞台であったし、人気の四人組ダンスユニット、クローバーなども大神劇場に見出されて人気を得たらしい。


 今テレビに映っているのは765プロの中でもお嬢様度とツンデレ度とデコの広さでは他の追随を許さないと噂の水瀬伊織。
 意外なことにシャナがとても真面目な表情でテレビを見つめていた。
 とりあえず、伊織を応援するときの掛け声「くぎゅうううう!」を教えておきました。


 ……いや本当に、こうして振り返ると今日まで色々なことがあった。


 良太郎先輩には続々とイマジンが取りつき、たまにデンライナーに行くとモモタロスからリュウタロスまで、四人のイマジンが賑やかに出迎えてくれる。
 なのはちゃんも飛行魔法を覚えてデンライナーと並んで空を飛びまわり、ライバルであるフェイトと繰り広げる激戦を見る度に己の魔術に関する認識が砕かれるのか、凛が奇声を上げている。
 以前遠坂邸に行ったときは、ぶつぶつ言いながら先祖伝来の宝箱を見つめていたので、あの箱の封印が解かれ、カレイドルビーが爆誕してしまう日も近いかもしれない。


 ホムンクルスを倒し、斗貴子さんに取り付いたホムンクルスをどうにかするために蝶野邸に乗り込んだら、蝶野の弟である次郎にイマジンが取り憑き、蝶野と決着をつけるために残ったカズキ以外でイマジンを追って過去に飛んだこともあった。
 そしたらなんとその過去というのが前回の聖杯戦争の真っ只中で、当時まだ元気だった蝶野が丁重に守られているのに対して、次郎は軽くスルーされて炎の中に取り残されていた。
 こんなことがあれば、そりゃあ兄貴を恨みもするだろよ。


 デンライナーについては、凛が例の宝箱の中に何故か入っていたゼル爺印のパスを持ってきてくれたので無問題です。
 デンライナーのオーナーとゼル爺が、皿の上に一粒だけ残ったチャーハンに立つ旗の上でがっしりと腕を組んでいる写真付きで、「俺達、マブ☆ダチ」と書いてあった。
 いい年こいて何やってんだこのおっさんたち。


 ちなみに、その時間で桜井さんらしき格好をした人影を見つけたんだけれど、「おのれディケイドぉ!」とか叫んでいたのでひょっとしたら別人だったのかもしれない。
 ……うん、ただの他人の空似だよ絶対。
 これいじょう「あいつ」まで出てきたらシャレにならないから。


 そんなこんなで事態が混沌としてきて手が足りなくなったところ、凛が応援の要請を提案。
 最初は隣の市に本拠がある魔術結社を呼ぼうとしたらしいが、そこはいろんな魔術系統が混じっている上に協会にも目をつけられているらしいのでやめたらしい。
 どんな名前の魔術結社かと聞いたら「アストラル」とかなんとか言ってたような気もするけど、忘れたから覚えてない。
 俺は何も聞いてない。


 そして選ばれたのが新都、通称風都に居を構える探偵で、こういう不可思議な荒事にも向いている、鳴海探偵事務所に協力を依頼した。
 そこでやっぱり出てくる、ちょっとした面識のあるハーフボイルド探偵、左翔太郎と事務所を継いだ鳴海のおやっさんの娘、鳴海亜樹子ちゃん。
 翔太郎がハードボイルドに決めようとしたもののこちらの大所帯に驚いて一瞬で三枚目キャラのポジションを獲得するのも、ひるまずこびこびな態度できっちり依頼料を要求する所長も元を知っている人間としては微笑ましいばかりだ。


 ともあれ現在情報がないが、風都に巣食っているはずのフリアグネの捜索を依頼したところ、ためしにフィリップが地球の本棚で検索を行った。
 さすがのフィリップも紅世の徒については知らなかったようだが、検索をしてみたら、普段は認識できないように封印された本棚の中に、紅世に関する情報もあったらしい。
 なんという万能っぷり。
 もっとも、そこにある莫大な知識に好奇心をくすぐられたフィリップが検索に没頭してしまい、その日は情報を得ることが出来なかったのだが、この様子ならなんとか成るだろうと刀を抜くシャナを俺と悠二が必死で説得し、なんとか治めるという一面も合ったりなかったり。


 気付けばずっぷりとこの事件に関わってしまっている今日この頃、俺は一体どうしたら!?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 気付いたら懲りずにやってしまいました。
 悪いのは私じゃありません、本能の赴くままに自分の知っている作品クロスさせまくる作業が楽しいのがいけないんです。
 ……こういう風に、ダイジェスト風なら結構いけるかもなんて思ってませんよ?



[20003] 第二次までのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/07/18 22:08
 一度ご要望がありましたので、今までに扱ったネタなど紹介いたします。


スーパー超人大戦

 最初に~
 仮面ライダー電王の2号ライダー、仮面ライダーゼロノスの決めセリフ改変。

 バーボン
 バーボンハウス。誰か嘘だと言ってくれ的な心情を現しております。

 魔法成功率ゼロな魔法使いの~
 ゼロの使い魔。そのうちシャナあたりが技を使うときに「エクスプロージョン!」とか叫ぶかもしれない。

 珪素生命の送り込んできた~
 マヴラブオルタネイティブ。個人的には珪素生命と言えば平成ガメラに出てきたレギオンなんですけどね。

 平行世界の波を捕まえてクライマックスジャンプ
 仮面ライダー電王OP、Climax Jumpの歌詞改変。最初に聞いたときは平成ライダーらしからぬ明るい曲調にびっくりしました。

 な、何を言ってるかわからねーと~
 ジョジョの奇妙な冒険、ポルナレフのかの有名なセリフ。おそらく転生者の彼は原作ではありえないクロスその他を見る度に口走っているでしょう。

 寿命がピンチでマッハ
 ブロント語。さんをつけろよデコ助野郎。本来は「寿命がストレスでマッハ」。

 国際警察機構と~
 OVAジャイアントロボ~地球が静止する日~。マジ名作。ただしジャイアントロボよりも十傑衆が目立つ。

 青かったり紫だったり赤だったり~
 新世紀エヴァンゲリオン。新劇場版のラミエルがぎゅんぎゅん変形するのには驚きました。

 海賊もしくは海軍に~
 ONE PIECE。あの世界の一般人て、ドラクエのストーリー終盤の街に住む人たちみたいな気持ちなんだろーなー。

 銀河の歴史がまた一ページ
 銀河英雄伝説。キルヒアイスの退場早すぎてびっくりしました。

 全てを破壊し全てを繋ぎ~
 仮面ライダーディケイドのキャッチコピー。そのうちオールライダー引き連れて出てくるかもしれない。

 上杉謙信やら織田信長といった~
 いろいろあるけど、戦極姫を想定しております。原作は間違ってもすすめられない出来らしいですが、某二次創作は「完璧」の一言です。

 ドキッ! 乙女だらけの三国志演義~
 恋姫†無双 シリーズ。一声聞いて貂蝉の声が若本の御大だと気付いた時には大爆笑しました。

 帝国歌劇団~
 サクラ大戦シリーズ。4にて大神歌劇団に改名しているので、それを採用。ちなみにこの世界において、首都は今でも帝都と呼ばれています。そのうちそれ関係のネタがもう一つ出る予定。

 大統領
 日本が誇る変態企業、フロムソフトウェアの発売したゲーム「メタルウルフカオス」の主人公、マイケル・ウィルソンJr。単騎でのカオスならば誰にも負けない。なぜなら大統領だから。

 コジマ博士~
 アーマードコア4系列より。平たく言えば、環境を汚染するミノフスキー粒子を発見した人。利用方法とかの外道っぷりはその比じゃないですが。ハートキャッチプリキュアのプリキュア大爆発はアサルトアーマーだと思います。

 不細工で巨大なタコの化物
 ウルトラマングレートに登場する、火星にいた怪獣ゴーデス。地球に来て怪獣を量産したりしたすげー奴。

 気持ちの悪い殻ごと突撃~
 マブラヴオルタネイティブのBETA。でもたぶんゴーデスと潰しあうので地球には来ないでしょう。

 超能力を科学する学園都市
 とあるシリーズ。御坂美琴がアメリカに渡り、同じく電気の力で戦うヒーローマンに喧嘩売ったり一緒に戦ったりするストーリーがこの世界にはあるかもしれない。

 世界樹と呼ばれる~
 魔法先生ネギま! ネギ君が卒業した魔法学校はロンドンの時計塔の教育組織で、特に優秀なネギくんはバルトメロイにも目をつけられていたりするかも。

 悪の秘密結社の存在と~
 仮面ライダーシリーズ。多分一文字隼人とか風見士郎は本郷さんの友達。この世界、そのうち出てくるあと一人含めて何人士郎がいるんだよ。

 19人姉妹の長女であると~
 電撃G’sマガジンが誇る狂気の企画、Baby Princess。下は0歳から1歳ずつ19人のヒロインとか、さすが12人の妹を世に出しただけあるクレイジーな雑誌です。

 フットボールフロンティア
 イナズマイレブンにおける全国大会。中学生であれなら、各国の代表レベルだとそれこそスタンド使いレベルなんじゃなかろーか。

 デュエルモンスターズ
 遊戯王。多分デュエルアカデミアもどっかにありますし、カードの精霊とかもいるでしょう。

 空の上のほうにある~
 そらのおとしもの。主人公と作者の狂いっぷりが半端じゃありません。そしておっぱい。

 エジプトでアメリカの上院議員が~
 ジョジョの奇妙な冒険第三部。そのうち仙台から奇妙なニュースがたくさん聞こえてくる予感がががが。

 三宅島の火山の中に~
 ゴジラシリーズ。昔やつがココに落されたりしました。BETAとか襲来した日にはゴジラととんでもない戦いを繰り広げることになりそう。

 アメリカに宇宙から人型の虫のような~
 アニメ「HEROMAN」に登場する宇宙からの侵略者スクラッグと、主人公ロボヒーローマン。王道物のストーリーで私の大好物。ちなみにヒーローマンのデザインはかの最強ロボ、レオパルドンらしいです。

 ニューヨークに巨大なイグアナが~
 映画GODZILA。断じてゴジラではない。

 東西新聞と帝都新聞
 美味しんぼ。ここの士郎はさっき上げたまだ出てない一人じゃありません。

 OREジャーナル
 仮面ライダー龍騎にて、主人公が働いてるところの出してるモバイルニュース。そのうちまた名前が出ます。本編とはあんまり関係ないけど。

 大統領がカップラーメンが出来るより早く~
 メタルウルフカオスの大統領は、町に仕掛けられた毒ガス装置を「カップラーメンができるより早く」片付けた実績がある

 武藤カズキ
 武装錬金の主人公。原作通りの天然ヒーロー体質。ある意味アーチャーの天敵。

 ミルクディッパー、野上良太郎
 仮面ライダー電王の主人公と、その姉さんが経営する喫茶店。コーヒーに拘りのある店で、仕入れた豆は翠屋にも分けている。

 衛宮士郎
 Fateの主人公。切嗣の毒が少し抜け、代わりに仮面ライダーへの憧れを注入。原作より少しだけ救われていますので、多分このままいけば英霊エミヤになることはないでしょう。

 翠屋、高町なのは
 魔法少女りりかるなのはの主人公と、その両親の経営する喫茶店。主人公を中心に子供のころの孤独を慰めてくれる人がいたので、割とまっとうに大きくなっています。ただ後に悪魔とか魔王とか呼ばれる資質はとりこぼしておりません。

 りんちゃん、のぞみ
 Yes!プリキュア5のプリキュアたち。この世界ののぞみは何故かスケボーとかサーフィンとかボード系の競技が得意であり、のぞみとりんは男であればフットボールフロンティアに出られただろうと言われるほどサッカーが上手です。

 もも姉とかゆりちゃんとか
 ハートキャッチプリキュア。ゆりさんは別に月影先生の娘だったりしませんし、名字を英語でシャドームーンと呼んだりライバルであるダークプリキュアの本当の名前がキュアカラサワだったりもしません。

 世界消防庁、レスキューフォース
 特撮番組「レスキューフォース」より。

 世界消防庁長官、本郷猛
 レスキューフォースにおいて長官役が藤岡弘、さんなのでその後の緑のマスク~と合わせて初代仮面ライダーから設定をクロス。

 風都
 仮面ライダーWの舞台となる架空の町。原作における風都の歴史は決して短くないようですが、この作品では冬木大災害後の復興でできた街になっています。

 やたらとハードボイルドなおやっさん
 仮面ライダーWより、鳴海探偵事務所の所長、鳴海荘吉。帽子の似合うハードボイルドな男。一応死んだことになっていますが、そのうち復活してくれそうな気がびんびんします。

 プリズ魔イリヤ
 コンプエースで連載中の「魔法少女プリズマイリヤ」と帰ってきたウルトラマンに登場する怪獣プリズ魔より。意図的誤字。

 感想コメント内の「月あたりから飛来した~」
 映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」より、約10年前に月面でウルトラマンからエースまでの四兄弟と戦ったUキラーザウルスが神戸沖に封印されており、その際エネルギーを使い果たした四兄弟は人間の姿をとって神戸で生活しています。そんな人間形態の四人を表する言葉がダンディ4。いい年こいたウルトラファンが見るとボロ泣きできる映画です。



ここから第二次

 オレオレ、オレだよ
 オレオレ詐欺。べっ、別にオリ主に名前を設定してないわけじゃないんだからねっ。

 無数の扉が並ぶ~
 平野耕太のマンガ「ドリフターズ」。島津豊久とか織田信長とか色々このおっさんによって異世界へ放りこまれています。

 その後の展開
 各作品の一話とか設定を、まとめられるだけまとめてみた。

 どこぞの緋天御剣流の使い手
 るろうに剣心

 護式斬冠刀~
 無限のフロンティアのおっぱい、楠舞神夜。牛の妖怪に求婚されるほどおっぱい。戦闘時のカットイン演出は一見の価値ありおっぱい。

 片腕に怨念やどらせた~
 もののけ姫の主人公アシタカ。弓使いって他に思いつかなかったんですよ。

 世界はこんなはずじゃなかったことばっかりだ
 リリカルなのはより、クロノのセリフを先取り。

 妙に髪を盛った~
 ハートキャッチプリキュア、砂漠の使徒の三バカ……もとい三幹部。この人たちって怪人に変身したりするんでしょうか。

 ピンキー~
 プリキュア5の謎生物。こいつらを集めると願いを叶えるニンテンドーDS……じゃなかったドリームコレットが使えるようになるとかならないとか。

 ハリボテエレジー
 JRA「公式」ゲームに登場するサラブレッド。紙箱をたたくような音がしたり接着剤の甘い匂いがただよったりするがサラブレッド。コーナーで転倒して真っ二つになったりするも、「中の人などいない!」

 765プロのアイドル達
 アイドルマスター。別にロボットに乗ったりはしません。

 北島マヤ
 ガラスの仮面。月影先生は大上歌劇団の演技指導をやっているかもしれない。

 四人組ダンスユニット、クローバー
 フレッシュプリキュア。数年前にラビリンスとの戦いがどっかであったのかもしれない。

 おのれディケイドぉ!
 仮面ライダーディケイドより、ディケイドを敵視しまくってる鳴滝さん。桜井さんとすごく似た格好をしている。そして中の人はプリキュア好きらしい。

 魔術結社「アストラル」
 レンタルマギカ。ロンドンに協会があるとかFateと設定が類似し、眼帯つけた学生社長(CV.福山潤)や関西弁の眼鏡(CV.植田佳奈)やロリ巫女(CV.釘宮理恵)や猫陰陽師(CV.諏訪部順一)がいる。



 こうして見ると、思ったより少ないですねー。



[20003] 第三次スーパー超人大戦
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/07/22 23:04
 とある日の昼飯時のこと。
 俺は冬木に数ある洋食の店の一つ「沈黙屋」にて昼食をとっていた。
 この店は来るたびに小汚い格好をした大男が「このチェリーパイは死ぬほどうめぇな!」と毎回同じものを食べて同じことを言っていたりするが、出される料理の味と店主であるライバックのおっちゃんの人柄が良いので、結構頻繁に来ていたりする。
 ちなみにこの店のオススメは「アメリカ海軍仕込みのブイヤベース」。
 今にもテロリストが戦艦をハイジャックしそうな刺激的な味である。


 手に取った新聞には温泉大好き企業である有澤重工の広告と先日行われた裁判のイラストが載っており、容疑者の後ろでコーヒーカップを掲げたバイザー付きの検事が描かれていた。
 店に据付られているテレビに映るニュースでは、かつて日本が送り出し、もうすぐ地球に帰還するはやぶさのことを伝えていた。
 業績や来歴はもちろんのこと、通信途絶が回復した直後に送られてきた画像の中に、身長40mに及ぶ人型の光が助けるように手を差し伸べる姿が映っていたとかいう噂も紹介するという中々濃い内容の話だった。


 と思っていたらいきなり画面が中継に切り替わり、メタルウルフのどアップが映し出された。
 お冷やを吹きそうになるのを必死にこらえながら話を聞けば、はやぶさの業績に感動した大統領が昨日の夜に「ちょっと宇宙まで行ってくる!」と宇宙に上がり、地球に突入して燃え尽きようとするはやぶさを掴みとって回収してくれるらしい。
 比喩ではなくマジにはやぶさの速度に同調して直接メタルウルフの腕で引っつかみ、そのまま一緒に大気圏突入する予定なのだそうな。
 インタビューしているキャスターが「さすがにそれは無理なのでは?」とか言っていたが、大統領に曰く。


「無理なことなどない。なぜなら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!」


 との力強いお言葉。
 多分物理的には無理なんだろうけど、大丈夫だ。
 だって大統領だし。
 でもとりあえずライバックのおっちゃん。
 「まったく、困った人だ」みたいな親しい知り合いに向けるような顔するのやめれ。
 今度ここ来たら店の前に自家用車のごとくメタルウルフとか置いてありそうでこわいから。




 そんなニュースを見ながらその日もそこで昼飯を食っていたら、いきなり店の扉が開き、新しい客が慌しく入ってきた。


「新たなメニュー制覇のため、沈黙屋よ、私は帰ってきた!」


 無精ひげを生やし、頭にバンダナを巻いた欧米系のやたらイケメンなおっさんだった。
 しかしあまりに騒がしかったからか、あとから入ってきた兄らしき人に後頭部をひっぱたかれていた。


「あまり騒ぐなソリッ……ジョン。こういうときは一言、こう言えばいい。ジーク・ライバック!」

「まあそういうなよ兄貴。久しぶりにこの店に来たんだ、そりゃ『食欲を持て余す』さ。なあ、親父」

「ああ、違いないな、ソリダス。ここの料理には『この世の全てをそこに置いてきた』様な味があるからな」


 その後もぞろぞろと入ってくる男達。
 どうやら先に入ってきた三人と最後に入ってきた老人は親子らしい。
 そのことが一目で分かるほど良く似た、まるでクローンのような親子だった。


 俺が自分の食事を終え、会計を済ませて店を出るちょうどそのときに四人の料理が運ばれてきたようで、いっせいに手をつけて「UMAすぎる!」とか叫んでいた。




 カランカラン、といかにも洋食屋らしいベルの音とともに店を出て、空を見上げた。
 嗚呼……、ひょっとすると、数年前にこの空をステルス核ミサイルとか飛びかねなかったかもしれないんだなぁと思う今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、俺です。




 ええもう、今のエピソードだけでも分かるでしょうマジカオスですよ。
 数年前には全世界的にインターネットが不調になって、その後お台場の海に不発の核ミサイルが突き刺さったなんて話も聞いたし。
 なんかもうこっちが逃げても向こうから混沌が這いよってくる感じなので、お守り代わりのフォークが欠かせません。
 しかしそれでも色々事情その他をオタ的視点から知ってる状態であまり溜め込むとSAN値が危険すぎるので、今日も俺の話に付き合ってください。



 以前は、鳴海探偵事務所に協力を依頼したあたりまで話したんだっけ。


 あれからも色々あったよ、それはもう。


 まず、仮面ライダーWが仲間になったことで士郎が発狂。
 どうやら電王と合わせて奴の中のライダー好きな部分に火がついたらしく、負けてられねえとばかりに強化魔術の練習に一段と精を出し始めた。
 そのうち自分の体を強化して変身とかしたりしないだろうな。


 ついでに、ルナトリガーの放つ弾丸のぐねぐねっぷりを目の当たりにしたなのはちゃんがなんだか妙な対抗心を燃やし、誘導弾の精度をさらに向上させてフェイトをビビらせていた。
 ココとナッツ、シフレとコフレ、そしてユーノを含めた淫獣連合はまとめてつぼみちゃんのおばあちゃんが園長を務める植物園に預かって貰ってます。
 コッペ様もいるからいざって時も安心だろう。


 そして、斗貴子さんとシャナが転校してきました。
 しかも士郎とカズキと悠二のいる、俺のクラスに。


 その他にも、キャプテンブラボーが現れてカズキと士郎と良太郎先輩をまとめて鍛えたり、セイバーが柳洞寺に一人でカチ込みをかけ、気付いたみんなであわてて止めに行ってアサシンこと小次郎と剣持ってる面々が激闘を繰り広げたり、魔術師としては年季の入ったキャスターがなのはちゃんたち魔法(っぽいもの)使える組をあしらったり。


 ただ、キャスターは聖杯を手に入れてどうこうとか考えてる人じゃなかったはずだから、そこらの人から魔力を奪わずに現界していられる手段があれば、あるいは懐柔できるんじゃないか、なんて悠二を見ながら思ったりもした。


 あ、忘れてたけどフリアグネは既にボコってあります。
 基本的に原作通りアラストールが降臨したりしてたんだけど、アラストールと一緒になってデンライナーも攻撃に参加してたので多分あいつチリも残ってない。
 アーチャーがちょっと微妙な顔をしていたのが、妙に印象に残る戦いでした。


 さらに、蝶野を倒した武装錬金陣営も一件落着とはいかず、人型ホムンクルスの集団であるLXEの暗躍が始まった。
 何人か人型ホムンクルスが現れたり、パピヨンが例の蝶サイコースーツで現れカズキや良太郎先輩、プリキュア5ののぞみなどごく一部以外からドン引きされてたりした。


 ……だが、士郎よ。


「蝶……ってことはまさかプリキュアの追加戦士か!?」


 とか目をきらきらさせながら言うんじゃねえよヒーローマニア。
 あんなのがプリキュアと並んでたらお茶の間の良い子号泣じゃねぇか。


 ……まあ、後にパピヨンは平然とプリキュア5の名乗りに混じるようになるんですが。


「臨死の恍惚、パピ! ヨン!」

「混じるなぁ!」



 ちなみに、何度かLXEの人型ホムンクルスと交戦したときには戦闘員的な扱いでマスカレイドドーパントが現れた。
 どうやらLXEはミュージアムと協力関係にあるらしい。
 ただでさえ厄介な敵ばかりだというのに、この上協力してるのまであるとなるとマジやばいぞ。


 どのくらいやばいって、ドクトルバタフライとテラードーパント状態のお父様がおでんの屋台で仲良く乾杯してる光景想像しちゃうくらいやばいよ。
 そういうことは死神博士とでもやりやがれ。


 そんな事件を片付けつつも、イマジンやら砂漠の使徒やらナイトメアやらの退治も続け、ジュエルシードもそこそこ集まってきたところで、アースラ登場。
 原作通り、なのはちゃんがフェイトと空中戦を繰り広げているところにクロノが現れて武力介入してました。


 その後アースラに呼ばれたときは、あまりにバリエーション豊かな俺たちの様子を見て、一応話を聞かせて欲しいと言われたので全員で行くことになった
 転送先が宇宙戦艦的なところだと知るなりカズキと士郎とついでにモモタロスはまさに少年のようにはしゃぎ、凛は科学と魔法の交差っぷりに、もう発狂寸前になっていた。
 その腹いせもあったのか、その後のリンディさんと凛の会話は思い出したくない。
 腹黒と組織にて責任者をやってる人間の会話なんて、それはもう黒々としていて辺りに瘴気を撒き散らすもんでしたから。


 結論から言うと、管理局側がこちらに協力「させてもらう」と言う形に落ち着いたらしい。
 なんでも、ゼル爺は世界を渡る中で管理局にも名を知られていたらしく、その関係者には色々融通するようになっていたのだとか。
 さすが世界に数少ない魔法使いの一人。
 オーナーとチャーハン勝負するだけが能じゃないのか。


 ちなみに、俺は何度かゼル爺と会ったことあります。
 どうやらあの人、凛がいないときを狙ってデンライナーに遊びに来ているらしく、時々オーナーとチャーハンで熾烈な勝負を繰り広げていたりする。
 そのとき俺の境遇について何か言われるかと思っていたのだが、別にそんなことはなかったぜ!
 ただ思わせぶりな目で俺のこと見るのはやめれ。
 なんか不安になるだろが。



 ついでに、そのころになるとあまり事件とは関係ないのだけれど、そろそろ仲間も増えてきたので親睦を深めよう、という話題がカズキたち主人公連合から挙がってきた。
 シャナとかセイバーとか真面目な奴らもいるからどうなるかと思っていたのだが、むしろそいつらこそ乗り気で、あれよあれよと言う間に親睦会が開かれることが決定した。


 ただし、これだけの人数で、しかも食欲旺盛で知られたセイバーやのぞみやりんやうららがいるのに食事会とか開いたら誰がやっても台所担当が死ぬことになるので、スポーツをすることになった。
 そうそう、ちなみに今あげたメンバー含めて大喰らいが多い我らがメンバーの胃袋を満たすための資金は、プリキュア5のかれんさんからの提供でお送りしております。
 水無月家まじぱねぇ。
 ただその分付き合いも多いらしく、この間は琴吹さんちのパーティーにお呼ばれしたとかなんとか言っていた。


 ともあれ親睦スポーツ会でやる種目は、ちょうどその話をしているときにテレビでフットボールフロンティアの中継をやっていたので、サッカーになった。
 ……今思えば、俺はあの時無性に感じたいやな予感にしたがって、止めておくべきだったのかもしれない。
 なぜなら……。



「とらドライブ!」

「なんの、エクスカリバー!」


 シャナがフットボールフロンティアに出場する選手バリの必殺技をかませば、セイバーが正体隠す気ないとしか思えない必殺技を返し、イナズマでイレブンな感じのサッカーが繰り広げられた。
 シャナが必殺技を使うときに後ろに浮かび上がった虎のヴィジョンはリアルな姿ではなくデフォルメされていて、まさに手乗りタイガーとも言うべき姿をしていたし、セイバーの必殺技で足から伸びる剣のヴィジョンはモロに約束された勝利の剣だった。


「止めてみせる! ゴッドハンド!!」

「はっ、そりゃこっちも同じだぜ!」\ルナァ! ジョォーカァー!/


 フットサル経験者ということでゴールを任されたりんちゃん――変身してキュアルージュの姿だったけどね?――はやたらと堂に入ったキーパー技でシュートを弾き、反対側のゴールでは腕やら足やらぎゅんぎゅん伸びる仮面ライダーW・ルナジョーカーがそれぞれ鉄壁の守りを見せていた。


「いくよ、カットバックドロップターン! そして、ゴッドノウズ!!」


 のぞみはのぞみで高く上がったボールに追いつき、どことなくサッカーとは関係なさそうな技名を叫んでくるりと回って空中戦を制してから背中に羽を生やして必殺シュートを放っていた。
 ちなみに、羽は天使のような白い羽ではなく、プリキュアらしい蝶の羽でした。


「ボールを手で持ってはいないから問題ないな?」

「ああっ、ずるい! じゃ、じゃあ私も!」

「ふっ、私の美技に酔え!」


 いまいちルールを理解してないと思しき斗貴子さんはバルキリースカートで巧みにリフティングしながら平然と歩いて相手陣地に切り込み、なのはちゃんはいくつも引き連れた誘導弾を、アーチャーは投影したある意味本物のサッカーボールを目くらましとして使って相手のディフェンスを次々かわしていく。
 つーかアーチャー、そのセリフサッカーちがう、テニヌや。


 繰り広げられる人外サッカーは白熱し、なんか絆的なものも生まれて親睦会は大成功だった。


 ……それはいいんだけど、少しは自重しろよてめぇら。
 でも面白かったから、ゲボ子ことヴィータとか仲間が増えたらまたやろう。



 そんな風にえもいわれぬ不安を抱えつつも事件をこなしていき、早坂姉弟とカズキ斗貴子さんチームが夜の学校で決着をつけようとしているときにフレイムヘイズのマージョリーが乱入し、桜花とどっちがしゃべってるのか分からなくなったりもしたが、結局なんやかんやで皆仲間になりました。
 秋水くんは修行の旅に出て、桜花はアースラで養生。マージョリーはデンライナーに乗り込んで飲んだくれているようです。



 そして、一つの事件が終わりを告げる。


 他に大きな事件が頻発しているので忘れがちではあったが、リリカルなのはのストーリーもばっちり進んでいて、ジュエルシードもあらかた集まりなのはちゃんとフェイトの決闘も行われ、その後無理矢理ジュエルシードを奪い去ったプレシア・テスタロッサの根城である時の庭園への突入作戦も敢行された。


 原作とは比較にならない戦力だったので侵攻自体は楽だったのだが、庭園の最深部で待っていたプレシアさんが、ちょっと気になることを言っていた。


「この世界なら、あるいはジュエルシード以外にもアリシアを助けてくれる何かがあるかもしれないと思ったけれど、ダメね。汚泥の詰まった杯に、私では認識できないピンキーとか言う生き物、果ては時間を狂わす化物にこの星の記憶に人の存在する力、そしてあの海に沈んだ怨念の塊……馬鹿げてるわ!」


 どうにも、プレシアさんはこの世界で起きている事態の大体を把握しているようだった。
 特に聖杯についてはその中身を知っていたことは間違いない。
 ……これはひょっとして、俺たちの敵となる陣営も意外と独立していないのかもしれない。
 例えば、マーボーあたりがそこらじゅうに聖杯の情報ばら撒いたりとか。
 今度突っついてみるか?


 ……いややめよう。
 何を考えたんだ俺は、そんなの確実に死亡フラグじゃねーか!?



 ともあれ、そんなこんなでPT事件は片付いた。
 最後の展開は原作通り、アリシアもプレシアさんも助かることはなかったから後味は決してよくなかったが、止まっていられない。
 まだ冬木で暗躍する組織や事件はいくらでもあるのだから。


 ちなみにフェイトの処遇についてはこちら預かりとなった。
 原作でも情状酌量の余地があったし、こちらとしてはなのはちゃんと仲がよく、しかも強くて一緒に戦いたいといってくれたフェイトを管理局なんぞに渡せるはずがなく、凛と桜花が中心となって笑顔の脅は……じゃなかった、交渉術で司法関係の話とかを後回しにさせた。
 リンディさんもやり手ではあるのだろうけれど、管理局にもなんかやたらと顔の聞くゼル爺権限とますます増えるおっかない女達の力によってさめざめと主張を引っ込めざるを得なかった。
 ご愁傷様です。


 とりあえず、なのはちゃんとフェイトにはたとえ赤い服の子にゲートボールに誘われても付いて行ってはいけない、と固く言い含めておきました。
 気をつけておかないと、なのはちゃんが「臓物――ハラワタ――をぶちまけろ!」されちゃうし。



 そしてPT事件が終わってすぐ、桜花達を保護してから情報こそ貰っていたものの後回しになっていたLXEのアジト襲撃が実行された。
 ほとんど全員で出張って行ったので、入口の合言葉はもちろんのこと決めポーズも全員でやらなきゃならなくなった。


 プリキュア勢は元々ポーズ決めるのがデフォルトだし、カズキとブラボーはもちろんモモタロスと翔太郎は超ノリノリで、それぞれのポーズ決めてくれました。
 他の人の例を上げると、なのはちゃんが光と闇がシンメトリカルドッキングしたようなポーズをして、シャナが刀を傘に見立てて語尾に「アル」とかつけそうな胡散臭いポーズで、セイバーは剣をまるでチェーンソーでも持っているかのように腰だめに構えてふふんとか言っていた。


 ただしそれでもやっぱり扉は開かなかったので、斗貴子さんとセイバーとシャナによって扉がブッ飛ばされていました。



 そして突入したLXE内部、ぞろぞろ出てくるマスカレイドドーパントをぶちのめしながら進んでいくと、そこにはムーンフェイスとランサーがいました。
 げっ、てことはやっぱマーボーが暗躍してるのか、と思っている間にとんとん拍子で話が進み、対ムーンフェイスにブラボー、対ランサーにセイバーを残し、急きょドクトルバタフライが襲撃に行った学校へと向かうことになりました。


「なん……っじゃこりゃあ!?」


 そして辿り着いた学校にて俺絶叫。
 ドクトルバタフライの武装錬金で方向感覚が狂い、難儀しながら辿り着いてみた学校は、俺が想像していたのよりもはるかにひどいことになっていた。


 校舎のてっぺんに据えられたヴィクターからのエナジードレインで生徒の生命力的な物が吸われるというのは、武装錬金にあった通り。
 だが実際に学校の敷地内に入ってみれば、そこはバタフライの武装錬金によるものだけではなく、別の理由でも視界がおかしくされていた。


 そう、Fateのほうのライダーのブラッドフォート・アンドロメダである。


 ……これはやばい。
 おそらくバタフライの侵攻にビビったワカメがトチ狂って起動させたのだろうけれど、ただでさえヴィクターのお食事タイムなのにそれに加えてライダーにまでこんなことされたら、それこそあっという間に生徒が干からびることになる。


 事態を察した斗貴子さんや凛の説明を受け、事態を把握した仲間たちは素早かった。
 ヴィクターに近づいて活性化したカズキは勿論、モモタロスも翔太郎とフィリップもなのはちゃんもシャナも士郎もプリキュアのみんなも、この状況を何とかせんがために戦い、バタフライの用意したホムンクルスのできそこないとマスカレイドドーパント相手にそれはもう無双級の活躍を見せた。


 当然のように現れた蝶野がバタフライを倒してくれたこともあり、ザコを掃討してカズキはヴィクターに、士郎はライダーの元へと向かって行った。


 士郎が教室の窓からブッ飛ばされたところで令呪を使ってセイバーを呼んだりしたものの、いまだホムンクルスのできそこないは数が多く、ヴィクターのエナジードレインとブラッドフォートの奏でるハーモニーは強烈で、正直俺もしばらく前から立っていられずそこらをのたくっていた。


 屋上ではヴィクターも目覚めたようだし、これは万事休すか……と、思っていました。
 その時までは。


 最初に気付いたのは誰だったのか。
 なんか知らんけど空の上の方から轟音が響いてきて、敵味方問わず何事かと見上げたら、一直線にこちらへ向かってくる光が見えた。
 隕石!? と驚く暇もあればこそ、その光はそのまま校庭のド真ん中に落下して、校舎よりも高く土砂を打ち上げた。


 もうもうと立ちこめる土煙に、戦闘も止めて見入る全員。
 しばらくして風が煙をさらって行ったら、そこに現れたのは、H字型の縦線部分が太陽電池、横線部分が本体になっている、宇宙探査機の姿。
 最近ニュースでよく見る、はやぶさであった。



 ……そういえば、はやぶさが地球に帰ってくるのは今日だと言う話だったが、ちょっと待て。
 たしかはやぶさって地球に帰ってくるときに……!


『よくわからないが、大変なことになっているようだな』


 その時その人はそう言ったらしいと、あとで凛から聞いた。
 流暢な英語とともに背負ったはやぶさをそっと地面に降ろして立ちあがったのは、特別なスーツ黒いボディ、輝くモノアイ真っ赤な目。
 ……ええ、もうお分かりでしょう。
 それではみなさんご一緒に。


「「「「「「「「「大統領だー!!!!!!?????」」」」」」」」」


「オーケィ、レェッツパァリィィィィィィ!!!!!!」



 そして始まる大統領無双。
 どうやらあの一瞬で状況を把握したらしく、量産型ホムンクルスとかマスカレイドドーパントとか、片っぱしから倒してくれました。
 さすが大統領。

 
 なんか色々とどうでもよくなってきたので、とりあえず必殺の大統領シャウトを聞けただけで良しとしますよ、もう。


「How do you like me now!!!!!!」


 大統領が明らかに入りきらない量の武器をバックパックから取り出し、冗談のような威力の火器で片っぱしからザコを散らしたりしてるうちにカズキと士郎というこの事件の主役とも言うべき二人はあらかたのイベントを終わらせたらしい。
 教室のガラスが盛大に割れると同時にライダーと思しき光が新都の方へ飛んでいったし、校舎の屋上からはヴィクターにしか見えない禍々しい光がどこへともなく飛んで行った。
 それと同時にブラッドフォートも解除され、大統領とその他によってLXEの残党とマスカレイドドーパントも一掃。


 ひとまず一件落着するのであった。



 ……ちなみに、大統領は俺たちの事情を聞いてさすがに一緒に行動することはできないものの、アメリカ合衆国大統領として可能な限り協力すると約束してくれました。
 ひょっとしたら、そのうちまたひょっこり助けに来てくれたりするかもしれないので、魔界村のレッドアリーマーを先に駆除しておいてくれたかのような安心感を得ることができた。


 ただ、帰り際に大統領がぽつりと、


『ふむ、せっかく日本に来たのだから、ライバックの店でミスター・オーガに会って帰るとするかな』


 とか言ってたように聞こえたけれど、それはおそらく俺の貧弱虚弱無知無能な英語力による幻聴だろう。
 そういえば例の沈黙屋でやたらと体格が良くて着ているシャツの背中に浮かび上がった筋肉の模様が鬼の顔に見えるおっさんがいたことがあったような気もするけれど、気のせいだよね、気のせい!


 ……とまあ、ここまでもこれからも色々大変だったのですが、今日も何とか生きてます。
 明日はどうだかわからないけどな!



[20003] 第四次スーパー超人大戦
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/07/22 23:12
 夢を見ていました……。


 じゃなかった、さっそく間違えた。
 これはなのはちゃんの台詞だったわ。


 俺ってばテレビを見ていたんですよ、暇な時。
 そのときは特に見たい番組があったわけではないので、適当にチャンネルを変えていたんです。
 北海道のほうをメインに展開しているワグナリアとかいうファミレスチェーンのCMがなぜか流れていたり、旅番組が南米のギアナ高地を取材してたら、テーブルマウンテンの上にメカメカしいシルエットの人型っぽいものが見えたということを伝えていたりとか、チャンネルを変えながらボーっと見ていた。
 そしたらふと目に着いたのが、最近話題のドラマ。


 帝都を舞台に繰り広げられる特撮じみたバトル物であるにもかかわらず、番組開始時のナレーションによれば「奇跡のラブストーリー」らしい。
 主人公の元に続々と巨乳の美少女たちと幼女があつまり、「幾久しく」とか言っちゃうので2ちゃんねるの実況板はとりあえず番組が開始されたら1スレ「もげろ」のコメントで埋めるのが礼儀という代物だ。
 噂によると実はドラマではなく実際に今帝都で起こっている「セキレイ計画」の参加者の一人をストーキングしてドラマ仕立てに編集したものだとも言われているが、例によって真偽のほどは定かではない。
 でもこの国の首都でもある帝都には帝都新聞があるのはもちろんのこと、御剣財閥の本拠地とかもあったりするから、あながち間違いではないかもしれないから怖い。


 ちなみにこの番組のスポンサーは番組開始時のナレーションを務めている、モモタロスに似た声の社長の製薬会社MBIと、世界に羽ばたくスマートブレインと、日本の鉄道関係ほぼ全てに関わっている旋風寺コンツェルン。
 旋風時コンツェルンは社長が超イケメンで、自家用列車が今にも人型に変形しそうなカッコよさで有名だ。


 ああ、スマートブレインはこの世界にばっちりあるけど、心配しなくていいよ。
 この会社の社長は555の村上社長じゃなくて太平洋戦争から帰ってきた船坂軍曹だから、死んだ人間が蘇ったオルフェノクの会社なんかじゃ……あれ?


 そんな感じで多少の不安を感じつつもドラマを見ていたら、唐突にテレビからアラーム音が鳴り、地震速報が伝えられた。
 沖縄のほうでちょっとした地震があったらしい。
 津波の心配はないようだが、そう言えば最近あのあたりで地震が妙に多いような。
 この前衛宮邸でテレビを見ていた時も同じようなことがあり、その時は凛が、


「あー、また『ナインテイルズ』かー。まあ今はそれどころじゃないから妖怪は光覇明宗と猛士に任せましょ」


 とか言っていた。
 そのうち「ナインヘッドドラゴン」とか言い出さないことを祈るばかりです。


 なんかもう、この世界に俺の安らぎの場所はないんじゃないかという気がしてきました。
 毎度俺の愚痴のような話に付き合っていただきホント感謝感激ですどうも。


 例によって嫌になるくらい色々ありましたんで、どうか俺の精神の均衡のために話を聞いてください。





 前回起こったヴィクターとライダーの学校襲撃事件を終え、俺たちが真っ先に向かったのは新都だった。
 なにせ手負いのライダーを逃がしてしまったため、これ以上放っておいたらまたどこぞで学校と同じようなことをされるかもしれないというわけで、すぐさま全員でライダーの飛んで行った方に向かい、決戦を行った。


 とはいっても、原作のセイバーのように苦戦することはあんまりなかったんだけどね。
 そもそもこっちの人数が多い上に、ビルの壁を駆け上がりながらの戦闘なんてするまでもなく空飛べる組が普通にいましたんで。
 ライダーは封絶張られて(こっちが)被害を気にしなくていい状況で壁上りしながら、なのフェイ組の魔法とデンライナーからの砲撃とハードタービュラーに乗ったWと炎の羽を生やしたシャナに追い回されて、多分涙目になってたことでしょう。
 仮面の下の涙をぬぐえ。


 で、ビルの屋上に上ったところでやけっぱちになってペガサスを召喚し、宝具も使って大暴れしてしばらくこちらを翻弄したものの、セイバーがかましたエクスカリバーを喰らってぽてりと落ちてきました。
 どうやら割と無軌道に暴れていたせいで、原作のような真っ向勝負にならずにかすっただけで済んだらしい。


 それがきっかけでセイバーの正体がアーサー王と分かり、一同に驚きが走ったりするかと思いきや、そういえば戦国時代は戦極姫状態だったし、三国志なんてドキッ☆ 乙女だらけの~状態だったんで、そういうのもこの世界ではよくあることらしくみんなあんまり驚かねーでやんの。
 

 てなわけで、ワカメともども御用。
 ワカメの持ってた令呪をボッシュートした上で、ライダーさんも(強制的に)仲間にしました。


 ……とりあえず、「ライダーの名前はどうするべきだろう。仮面ライダー……なにがいいかな?」とか聞いてきた士郎ははたいておきました。
 ついでに良太郎先輩、いくらライダーが蛇だからって「仮面ライダー……王蛇はどうかな」とかノって答えないでください。
 何でセンス悪いのにそんなところだけばっちりなんですか。
 万が一その名前採用されたらライダーが「イライラするんですよ……っ!」とか荒んじゃうでしょーが。




 ともあれそうしてやっと一件落着だ、と思って衛宮邸に引き上げてきて、みんなそろって眠りに着いた。
 道場やら離れやらを使って一応男女に分かれての雑魚寝だったのだが、道場に放り込まれた男性陣よりも、人数の多い女性陣のほうが大変なんじゃなかろーかとは思わないでもなかった。


 まあ、俺はまだやることがあったんで寝なかったんですが。


「アーチャー、いるか?」

「……何の用だ」


 そう、こいつと話しておかなきゃいけないんですよ。


「面倒事は嫌いだから単刀直入に聞く。お前はカズキのことをどう思った?」

「……」


 今回の一件での、カズキについて。


 カズキは今回、カズキ自身と同じく黒い核金を体に宿したヴィクターと接触することで、同じようなものになりかけている。
 その姿は、赤銅の肌に白い髪。
 まさに、人から英霊と化したエミヤシロウと同じ姿だ。


「……」

「まあ、大体わかるっちゃわかる気もするな。だから、俺から言えることは一個だけだ」


 アーチャーは応えず、背を向けているだけ。
 あるいは答えを持たないのかもしれないが、そのまま放っておいたら原作の凛ルートで士郎にしたような決闘をカズキに対してすることになるかもしれない。
 そんな面倒事はごめんなんだよ。


「カズキを信じろ」

「……っ、一体、奴のなにを信じろと言うんだ」

「全部だ。カズキの体は人間で、カズキの武器は勇気で、カズキの心は正義の味方だ。……お前自身、わかっている通りにな」

「……」


 いつだったか、「こっちの士郎」が言っていた。
 自分は仮面ライダーや正義の味方に憧れたからこうなったけど、カズキはそんな風に思うまでもなく元からああだった、だからカズキこそが本当のヒーローなんだと。
 

 その思いはきっとアーチャーも同じはず。
 でももしそんな風に思っているカズキの末路が自分と同じようなものだと思ってしまったら。
 そんなもの、考えたくもない。


「こんだけだ。じゃあな」

「……ああ」


 とはいえ、俺に出来るのはここまでだ。
 こんなにカオスな世界で俺のよーないいかげんチートの一つにも目覚めない転生者には、口八丁でそれっぽいことを言うしかできやしない。
 だからあとは、アーチャーもまた士郎であり、英霊であるということに期待するとしよう。




 とかなんとかちょっとシリアスに決めたのが悪かったのか、その後も色々洒落にならない事件が結構多かった。


 例えば、風都に死人が蘇ってさまよっているという噂が流れたり。
 どう考えても劇場版仮面ライダーWの事件なんだが、この世界だと死人だって洒落にならんのよ。
 実際調査に行ったら、士郎が切嗣っぽい影を見つけたりしたし。
 まあ、この事件はダミードーパントをふんじばるだけで済み、ライダー大戦2010にならなかったのが不幸中の幸いだった。
 ましてドーパントの正体が映画通り怪しい神父だか牧師だったのも超助かった。
 これでドーパントが言峰だったらどうなっていたことか。


 ちなみに、そのへん一応神父つながりで言峰教会も訪ねてみたんだよ、俺は超怖いからイヤだって言ったのに。
 そしたら間の悪いことに言峰は不在で、変わりに別の神父さんが留守番をしていた。
 少し話したところ、普段はバチカンにいる言峰の知り合いらしく、背が高くて眼鏡をかけた優しそうな神父さんだった。
 あと美声。


 ちなみに、言峰がおらず知り合いのおっさんがいるという状況だったので、一応気になっていたことを聞いてみた。
 この教会って、大災害のときの子供を引き取ってるのかどうかについて。


 原作だとその子供達がギルを現界させておくためのエネルギーにされていたらしいけれど、なんかこの教会、そういう風に子供を預かっていたりという話を聞かないんだよね。
 その辺すごく気になったので聞いてみたら、なんでも大災害のときに発生した孤児は何人かいたものの、この町に元からいたとある探偵と懇意であった世界消防庁長官の手配で別の施設に引き取られていったのだそうな。


 ……とある探偵ってこの町だと確実に鳴海のおやっさんですありがとうございました。
 つーかあの人ハードボイルドなだけじゃなく言峰の悪事を未然に防いでしかも本郷さんとも知り合いだったのかよ。
 そういえば、鳴海探偵事務所の隅っこに白黒スーツのやたらハードボイルドなおっさん二人のツーショット写真が飾られていたような……。
 今度しっかり見てみよう。


 怪しまれないようにそんな世間話をしての帰り際、言峰の知り合いの神父さんはカズキと士郎と良太郎先輩となのはちゃんたちの仲のよさに目を細め、


「いいですねぇ。仲が良いのは美しいことです。殴っていいのは、異教徒共とバケモノだけですから」


 とか言っていた。
 ……俺が可能な限り素早く教会を離れ、これまで以上に近づかなくなったのは言うまでもない。
 多分、次に留守番してるのは落ち着くために素数を数える神父だったりするから、絶対。




 その後、教会を出た足で例の神父さんに教えてもらった言峰の居場所に向かった。
 言峰は昼食に出ているだけとのことだったので、ちょうどいいから俺たちも昼飯がてらその店に向かっていった。
 うん、おそらく皆さんの中には今三択が浮かんでいるでしょう。


① 前回俺が行っていた「沈黙屋」

② まだ見ぬどこか

③ 激辛中華料理屋と噂の「泰山」


 はい、正解は……。


「結弦、この麻婆豆腐おいしいね」

「そ……そうだな、奏。よ、よかったら俺のも食べて良いぞ?」

「ううん、それは結弦の分だから結弦が食べて」

「そ、そうか。……ありがとう」


 ③の泰山でした。
 ちなみに今のはそのとき店にいたカップルの会話です。
 一応俺は一度死んだし士郎とカズキに至っては心臓も移植的なことされたけど、別に青春を繰り返したいわけじゃねーぞ。

 
 そしてそこでカップルの片割れ、天使のようにかわいい女の子と同じくマグマのように赤いマーボーをかっくらっている言峰の胡散臭い話を聞いている間に、本命への突撃をかましていた翔太郎たちから連絡が入りそちらへ合流して戦いましたとさ。


 ……でもなぜだろう、こんな風に軽く片付いたのに、ディケイド登場フラグは折れた気がしない。
 それとなく翔太郎に聞いてみたら、どうやら凛に協力を依頼される前にディケイドに会ってシャドームーンをブッ飛ばした経験あるみたいだし。
 その際聞いた翔太郎とフィリップのビギンズナイトは、映画の方とたいした違いがなかった。
 ただ、事件の際に夜空を列車のよーな影がのたくっていたのを見たとか言ったりもしていたから、ひょっとするとそのうちデンライナーであの時間にお邪魔することになるのかもしれない。




 そしてそんな感じで規模がでかいんだかしょぼいんだかわからないW劇場版の事件を終えたら、すぐさまプリキュア5のほうの最終決戦が迫っていた。
 こっちのほうも、他の事件を片付ける傍らピンキーを集めたり、うようよやってくる幹部と怪人を倒していたんですよ。
 他の陣営と違って、わりと普通だったんで話題としてはスルーしてましたけどね?


 なんかデスパライア様とかカワリーノさんとかに連れられて最終決戦場に行き、「絶望がお前たちのゴールだ!」的なことを言われたりもしたんだけど、原作以上に主人公体質増量中のわれらが陣営にとってそんな言葉はたいした効果もなし。
プリキュア伝統の超強化ラスボスに対して、プリキュア5+パピヨンの合体攻撃が炸裂して諸々片付きました。
 いやもうこの時期になると、いつの間にやらプリキュア5が戦うときにパピヨンが名乗りの段階から混じってたりするんだよねー。




 とまあそんな感じで、他の陣営のストーリー消化率を考えるにおそらくリリカルなのはとプリキュアはこのあと続編に続くんだろーなと思いつつも、そうなった場合またしても敵陣営が面倒なことになるので、俺としてはちょっと手を打っておきました。


 零時迷子つきエネルギータンク……じゃなかった悠二を連れて柳洞寺に出向き、そこで葛木先生と夫婦にしか見えない生活をしているキャスターに面会を求め、そのままうちの陣営に入ってくれるように篭絡しました。


 いやー、予想していたとはいえ意外とあっさりいったよ。
 ダイジェストで紹介すると、こんな感じ。


「なあなあキャスターさん、俺たちの仲魔になってくんない?」

「……何を言っているのかしら、このガキは」

「いまなら ゆうじのそんざいのちからのはんぶんを おまえにやろう」

「って何勝手に決めてるのさ!? ていうかその片言のしゃべり方はなんだよ!」

「……なるほど、確かにそっちの坊やの力がもらえるなら、私は聖杯を手に入れなくてもこの世に現界していられるわ。半分もいらないけど」

「えぇえぇもちろん。さらに今ならなのはちゃんやらフェイトやら現役魔法少女の着せ替えショーコーディネート権もプレゼント! 超お得ですよ奥さん! 葛木先生の奥さん!」

「やだもう! 宗一郎様の奥さんだなんて……!」

「というわけで葛木先生、キャスターを仲間にしたいんですがかまいませんね!」

「うむ」

「宗一郎様がそうおっしゃるなら。コンゴトモ ヨロシク」

「キャスター、ゲットだぜ!」


 だいたいこんなんでした。
 とはいってもあんまり出張らせてもアレなので、魔女的な知識の豊富さを頼りに、分からないことが出たときに聞きに来るご意見番として活躍してもらうことになったのだが。


 ちなみに、キャスターを仲間にしたので当然のようにアサシンこと小次郎も着いてきました。
 とはいえ山門を離れられない話はさすがに俺ではどうしようもないので、どうしたもんかとみんなで集まって相談したら、意外なことにモモタロスから解決法が提示された。


 その方法というのが、デンライナーのどこでもいける能力を駆使して山門からの力の流れ的なものをデンライナーに通す、というもの。
 これによって、デンライナーを介せばアサシンも他の仲間と同じようにいろんなところでの戦いにいけるようになったわけだ。
 その結果、基本的にアサシンはデンライナーで過ごすことになり、名前をコジタロスにされそうになったのを必死に固辞する小次郎は結構面白かった。


 だがモモタロス、得意げに「デンライナーシステムのちょっとした応用だ」とか言うんじゃねーよ怖いから。
 この陣営、ただでさえ未来の冥王がいるんだからそんなセリフ出てくるだけでも世界の覇権をかけた戦いとか始まりそうで恐ろしいわ。




 そしてもう一つの事件が、尻彦さん……じゃなかった霧彦さんの退場。
 今までにもドーパントがらみの事件の際には何度か現れ、Wと壮絶な戦いを繰り広げていた霧彦さんが死亡したというニュースが流れてきた。
 ちょうどその前日に例の霧彦さん最後の事件であるバードドーパント戦を終えたばかりだったから、もしかしてと思ったら案の定だった。
 いや、一応警告はしておいたんですよ、あんたの女房には気をつけろと。
 でもそれも空しく、おそらく風都のビルで風になってしまったんだろう……。


 敵ながら風都を愛することに関しては誰にも負けなかったあの人の冥福を祈りつつ、とりあえず俺は後に来るべき変態ドクター井坂先生が時系列無視してどこぞの変態ドクタースカさんと出会ったりしないことを祈るばかりである。




 そしてついでのように起きたのが、紅世の徒であるソラトとティリエル兄妹の襲来だった。
 ついでとは言ったものの、怖かった。
 ひょっとするとこれまでの事件で一番怖かった。
 何が怖いって、ティリエルの声がね……。
 なのはちゃんにとてもよく似ていて、しかもどこか冷たい感じもするもんで、なおかつ当のなのはちゃんとは決して相容れない感じの性格をしていたからなのはちゃんも静かに怒り、封印されていた魔王の片鱗が見えたというかなんと言うか……。
 いや、あまり語るのはよしておこう。




 それに、原作ではシャナの刀を狙っていたソラトのほうも、他にもたくさん刀やら剣やらあるのに感化されたのかあっちこっち狙ってきていた。


 アーチャーの干将莫耶を狙って来たら適当に投影した千将莫取とかいう銘の入ったパチモンを掴まされ、セイバーのエクスカリバーは見えないから士郎が投影したエクスカリパーを貰って喜び、電王のデンガッシャーソードモードを狙ってきたときは、リュウタロスと交代して一番面影のなくなるガンモードにしたら途端に興味なくしたし。
 ……あれ、こいつは結構楽勝じゃね?
 そういえばこいつの持ってた、触れるだけで相手を傷つけるとかいう剣も、弱い魔法とか効かないセイバーには無効だったし、アーチャーは遠くから武器投げまくりで近づけなかったし、なのはちゃんや仮面ライダーズはそもそも近づけないなら撃てばいいとばかりに射撃も使えたし。
 作品の壁って怖いですねー。


 なんだかんだでロリコンサングラスのほうはマージョリーさんが強敵と書いて友と読む感じのバトルを繰り広げてくれていたので、プリキュアの子たちは可能な限り近づけないようにして、俺と悠二の戦闘では役に立たない組はライダーの召喚したペガサスに乗って悠二が発見した自在法の破壊に奮闘してたし。


「いけっ、ペガサス! 流星拳!」

「ヒヒーン!」


 こうかは ばつぐんだ!


 こんな感じで。




 そしてこの事件で流れが変わったか、再びシリアスからはかけ離れた事件ばかりが起きた。


 まずはなんと言っても海。
 武装錬金のほうにあった海への旅行がこの世界でも企画され、皆でぞろぞろ行くことになった。
 なんか仲間になるのが異様に早かったパピヨンが当たり前のよーに例のパピヨン水着でスタンバイしていたのには、俺も含めて全員でずっこけたもんさ……。


 で、まあ色々遊んだりしたわけよ。
 セイバーが海で泳ごうとしたら水の精霊かなんかの加護とか言う奴で波紋使いのごとく水の上を走ったり、のぞみがブラボーと一緒にサーフィンやってここでもやたら上手かったり。
 お前が得意なのは海の波じゃなくてトラパーの波じゃねーのかよ。
 あ、ついでにアーチャーは運悪く泳いでいる最中に足が攣ったらしく、がぼがぼ言いながら沈んでいった。


「足がやられた!? くっ、この私がこんなところで……!」


 とかなんとか言いながら沈んでいくのが聞こえました。
 水没王子乙樽、とだけ言っておこう。




 そしてその日の夜、ヴィクター化を理由にカズキがブラボーに襲われて、斗貴子さんとついでに合流した剛太とともに逃げ、士郎がイリヤに拉致られた。


 すぐに色々とシリアスな雰囲気で話し合いがもたれた結果、カズキには斗貴子さんもついているから置いといて、まずは士郎の救出に向かうことになった。
 一同海から直接ぞろぞろと、冬木のはずれにある山の中の風雲イリヤ城へと向かって出発していく。
 一応アインツベルン式の魔術によるものと思しき障害物もあったんだけど、興奮したセイバーとかその他の仲間達の活躍によってあっさりと踏み越え、さくっと士郎の監禁されている部屋にたどり着き、連れ出した。
 さすがにバーサーCARが出てきたりはしませんでした。
 ちょっと残念。


 そして、案の定追いかけてくるバーサーカー。
 その場でアーチャーが例の名台詞を言おうとしていたものの、アーチャー一人に頼るまでもなくパワー勝負をしたくて出てきた良太郎先輩withキンタロスとかデカブツとの戦いに慣れているプリキュアのみんなとかが協力していたのでイマイチ締まらなかった。
 なんかアーチャーいいとこねーな。


 で、結局時間稼ぎをするもバーサーカーには追いつかれ、みんなで戦っている間に士郎が投影したカリバーンでセイバーと一緒にバーサーカー入刀して倒しましたとさ。


 イリヤはさすがにこっちの陣営の凄まじさを知っていたので、この士郎拉致事件も多分無理だろーなと思っていたらしい。
 てなわけで、イリヤもおとなしく投降してきて一件落着。
 なんか知らないけど、優しい不良的な感じのモモタロスがイリヤを叱ったら懐き、それ以来イリヤは主にデンライナーで過ごすようになって、マスコットのような扱いを受けている。
 このあいだ士郎と一緒にデンライナーに行ったらナオミちゃんと同じ制服(結構キワドイ)で出迎えてくれて、ついでに士郎を誘惑してました。
 幼女なのにあの色気マジパネェ。


 ただ、そのイリヤを遠坂邸に連れて行ったら例のゼル爺印の宝箱が一度ガタリと大きく揺れた音がしたような。
 ……とんでもないものが目覚めるのも近いのかもしれない。


 そしてイリヤに誘惑された現場をばっちり目撃されてセイバーと凛の嫉妬合体攻撃を受けた士郎は、そのまま死ねばいいのに。


「知っていますか、士郎。この世界の神はかつてウィラメッテでピエロが使っていたというこの小型チェーンソー二丁でバラバラにされたそうですよ。ふふん」

「アストラルの穂波ちゃん直伝のヤドリギで死になさい! デアボリックエミッション!」


 混じっとるがな。
 特に凛、後半のほうは多分そのうち出てくるから。




 大体こんな感じです。
 微笑ましくも恐ろしい俺の日々、一体いつになったら終わるのか……。
 はいそこ、「物語よりもお前の命が終わる方がはやいんじゃねw」とか言うな。
 ……日々俺自身そう思ってるんだからな!



[20003] 第四次までのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/09/03 11:00
あまりため込んでもあれ何で、二回に一回くらいの割合でネタ解説を入れて参ります。


※逆転裁判関係のネタで私の勘違いがありましたことをお詫びいたします。
 該当部分は既に修正済みです。申し訳ありませんでした。


第三次

 沈黙屋
 スティーブン・セガール主演の映画「沈黙の戦艦」より。セガール扮するライバック兵曹が艦長の誕生日にブイヤベースを作ったり戦艦を乗っ取ったテロリスト相手に大暴れシタリする映画。

 「このチェリーパイは死ぬほどうめぇな!」
 ONE PIECEの黒ひげ、マーシャル・D・ティーチが初登場したときのセリフ。後の蛇さん兄弟と合わせて、声優大塚明夫さんの演じたキャラが多い。

 温泉大好き企業有澤重工
 アーマードコアフォーアンサーに登場する企業の1。自社製品にはことごとく温泉の名をつけ、大口径グレネードを愛し、自社製品の宣伝のために社長自らネクストを駆って戦場に出るという実弾系変態企業。社長はさすがに影武者ではないかという説もあり。

 コーヒーカップを掲げたバイザー付きの検事。
 ナナシ様よりネタを頂戴した逆転裁判より、ゴドー。仮面付きとか経歴その他一切不明って検事としてアリなんでしょうか。とりあえずコーヒー17杯は飲んでいい量の限界にしたって多すぎではないかと。

 身長40mに及ぶ人型の光~
 ウルトラマンの身長って大体40m前後らしいですよ?

 「ちょっと宇宙まで行ってくる!」
 大統領は、スペースシャトルで宇宙に逃げようとする副大統領を追うためにシャトルに掴まってこのセリフと共に宇宙に上がったことがある。ついでに、そのあと地球に落ちて行く副大統領を直接掴み取って助けようとしたことも。

 「新たなメニュー制覇のため、沈黙屋よ、私は帰ってきた!」
 ガンダム試作二号機を分捕って核ミサイルをぶっ放したジオンのアナベル・ガトー少佐の有名なセリフ。ちなみにこのセリフを言っているのは、メタルギアソリッドシリーズのソリッド・スネーク。

 ジーク・ライバック!
 同じく、メタルギアソリッドのリキッド・スネーク。セリフはリキッドの中の人である銀河万丈さんの演じたギレン・ザビより。

 食欲を持て余す
 ソリダス・スネークのセリフじゃないですが、同じく大塚明夫さんの声優ネタ。

 この世の全てをそこに置いてきた
 スネーク達の父親というかクローン元であるネイキッド・スネークことBIG BOSSの声をメタルギアソリッド4で演じたという大塚さんより。大塚明夫さんとは実の親子でもある。

 UMAすぎる!
 メタルギアソリッド3において、ツチノコを食べるとスネークがこう叫びます。

 数年前には全世界的にインターネットが不調になって~
 デジモンアドベンチャー劇場版、僕らのウォーゲームより。30分しかない映画なのにあんなにワクワクできる内容詰め込めるなんてすごすぎです。

 お守り代わりのフォーク~
 GA文庫「這いよれ! ニャル子さん」シリーズより、ヒロイン……じゃなかった主人公八坂真尋のツッコミウエポン。0フレーム発生とか使いこなして邪神にヤキ入れるためのもの。作者はニャル子さんシリーズを応援しております。

 こっからしばらく
 設定クロスタイム。そのうち悠二は割と万能に使われます。ぼかして説明すると……アレルヤ・ハプティズム?

 アーチャーが微妙な顔~
 フリアグネの中の人はアーチャーと同じく諏訪部順一さんです。

 お茶の間の良い子号泣
 パピヨンとプリキュア5を絡ませる元になったとある動画についているタグ。いっそプリキュアにも核金持たせてしまおうかと思ったものの、何とか踏みとどまりました。

 死神博士とでもやりやがれ
 仮面ライダーWとディケイドの劇場版において、テラードーパントである園咲のお父様は死神博士メモリで死神博士に変身するおじいちゃんとおでんの屋台で乾杯していたりする。

 琴吹さんちのパーティー
 けいおん! より琴吹紬さん。たぶん他にも三千院家とか乃木坂家とか芝村家とかあるに違いない。

 とらドライブ
 イナズマイレブンに登場する宇都宮虎丸の必殺シュート、タイガードライブより。中の人がシャナと同じ釘宮理恵さんなので。ヴィジョンの手乗りタイガーと技名の改変は、同じく釘宮さんが演じている「とらドラ!」のタイトルと逢坂大河のニックネームより。

 エクスカリバー
 イナズマイレブンにおいてイングランド代表が使う必殺技より。セイバーが使うと剣のヴィジョンが約束された勝利の剣になります。

 りんちゃんのゴッドハンド
 イナズマイレブン主人公、円堂守のキーパー技。りんちゃんと中の人が同じなので。

 カットバックドロップターン、ゴッドノウズ
 ともにのぞみの中の人ネタ。カットバックドロップターンはエウレカセブンの主人公レントン・サーストンで、ゴッドノウズのほうはイナズマイレブンのアフロディ。

 私の美技に酔え
 同じく中の人ネタ。テニスの王子様に登場する跡部景吾の決めセリフ。こいつの声は諏訪部さんしか考えられねぇ。

 臓物――ハラワタ――をぶちまけろ!
 武装錬金のヒロイン斗貴子さんのセリフと、実際にそれをやるリリカルなのはA’sのシャマルの中の人が同じであるので。やってることはどっちも似たようなもんです。

 光と闇がシンメトリカルドッキング
 勇者王ガオガイガーより、光竜と闇竜。田村ゆかりさんが演じております。

 刀を傘に見立てて~
 銀魂より、神楽。釘宮理恵さんが演じております。

 チェーンソーでも持っているかのように~
 怪物王女より、姫。川澄綾子さんが以下略。

 特別なスーツ黒いボディ、輝くモノアイ真っ赤な目
 仮面ライダーBlack RXのOP歌詞より。公式チートっぷりでは負けてないRXの歌こそ大統領にはふさわしいでしょう。間違ってないし。

 ミスター・オーガ
 刃牙シリーズより、「地上最強の生物」範馬勇次郎。たぶんこの世界では大統領とも良い友人じゃないかと。……もう一つ勇次郎出したくなってきたな。遺産を色々作ってるほうの奴。



 なんかやたらと声優ネタの多い回でした。



第四次

 夢をみていました……
 スクライドより、ヒロインである由詫かなみのセリフ。中の人は田村ゆかりさんです。

 ワグナリア
 WORKING!!より。ぽぷら先輩マジちっちゃい。

 テーブルマウンテンの上に~
 JINKIより。エロゲ化するってマジですか。

 奇跡のラブストーリー~
 現在アニメ第二期放送中のセキレイより。セキレイ計画主催企業であるMBIの社長の声は関俊彦さんです。

 スマートブレイン
 仮面ライダー555より。一度死んだ人間が蘇って変わる怪物、オルフェノクの企業。たぶんスマートレディが黒幕。

 旋風寺コンツェルン
 勇者特急マイトガインより。主人公旋風寺舞人が総帥を務める。ロボになるかは別として、勇者特急隊の車両は一通りそろっています。

 船坂軍曹
 個人でただ一人公式の戦史に名を刻む鬼神。米軍基地に殴りこみをかけ、死亡確認されたものの死体安置所で三日後に蘇生したという猛者。たぶんルーデルの御大とかの同類。

 ナインテイルズ
 うしおととらより、白面金毛九尾の狐。この漫画を読んだ人には九尾の狐というよりも白面の者という名のほうが通りが良いでしょうか。この世界ではいろんな組織があるので原作より強く封じられているものの、多分そろそろ獣の槍の封印が解けるはず。

 猛士
 仮面ライダー響鬼より、鬼を支援する組織。一歩間違えば、士郎あたりは「シュッ」とかやるようになっていたかもしれません。

 ナインヘッドドラゴン
 日本語に直すと九頭竜。くずりゅう。読み方を適当に崩していくあらふしぎ、SAN値の下がる名前になりますよ。

 仮面の下の涙をぬぐえ
 多分宇宙の騎士テッカマンブレード内のセリフ。スパロボでしかやったことないので良くは知りませんが。

 仮面ライダー王蛇
 仮面ライダー龍騎より。ライダーバトルを加速させるためライダーに選ばれた死刑囚。いつもイライラしている極悪人。龍騎を龍騎たらしめる要因であると同時に、龍騎をライダーから逸脱させたという評価も受ける功罪併せ持つ人。

 アーチャーとのやり取り。
 作者は武装錬金読んだ時期とFateやった時期がちょうど重なってたので、この類似点に超驚いた経験が今ここに。

 別の神父さん
 HELLSINGより、アンデルセン神父。強力若本。そのうち来るんじゃないかと予想していた人もいるのでは。

 素数を数える神父
 ジョジョの奇妙な冒険第六部より、プッチ神父。どなたかこのクソ暑い夏をメイドインヘブンで縮めてくださいませんか。

 マーボー豆腐を食べるカップル
 Angel beats!より音無結弦と立華奏。マーボーつながりで出したら実は心臓がアレな奴らが他にもいたというつながりっぷり。奏ちゃんのおじいさんは昔世界消防庁の本郷長官と知り合いだったらしい。

 絶望がお前のゴールだ!
 仮面ライダーWより、照井竜の決めセリフ。竜くんそのうち本編にも出るのにセリフだけ先取りされるという罠。速さが足りない!

 仲魔
 メガテンシリーズより、仲間になった悪魔のこと。

 そんざいのちからのはんぶんを おまえにやろう
 初代ドラクエより、竜王のセリフ。このセリフの矛盾というか無責任さを知りたければ、「まおゆう」という名で有名なSSの最初を読んでみることをお勧めします。

 キャスターを仲間にしたいんですがかまいませんね!
 ジョジョの奇妙な冒険第五部より、フーゴのセリフ。元ネタとは色々な立場が逆のような気も。

 コンゴトモ ヨロシク
 メガテンシリーズにおいて悪魔が仲間になるときこのセリフを言うとか言わないとか。本編中には書けませんでしたが、キャス子さんは英霊になる前の現役時代、ふらりと流れてきたナカジマとかいう日本人を異世界に飛ばすのを手伝っております。

 デンライナーシステムのちょっとした応用だ
 冥王計画ゼオライマーより、またしても声優ネタ。モモタロスと主人公の中の人が同じなので。本来は「次元連結システムのちょっとした応用だ」と言って敵の攻撃を直撃したはずなのに何事もなかったかのよーに復活します。

 エクスカリパー
 バーではない。FFシリーズに登場するエクスカリバーのパチモン。ダメージ1しか与えられません。

 「いけっ、ペガサス! 流星拳!」
 星闘士星矢より星矢の必殺技ペガサス流星拳。セリフの流れとそのあとの「こうかは ばつぐんだ!」は言うまでもなくポケモンシリーズ。

 「足がやられた!?~」
 アーマードコアフォーアンサーに登場するカラードランク1リンクス、オッツダルヴァ。またしても声優ネタ。とあるミッションであっさり海中に没して行方不明になることから付いた名前が水没王子。

 風雲イリヤ城
 Fateのファンディスク、ホロウアタラクシアに収録されているミニゲーム。そもそもこの名前の元ネタ自体はおそらく昔のバラエティ番組風雲たけし城。似たようなミニゲームもあることだし。

 ウィラメッテでピエロが~
 デッドライジングより、中ボスの一人。小型チェーンソーでジャグリングするというアレな人。死に方はもっとアレなので、詳しくは書きますまい……。

 神はバラバラに
 ゲームボーイのRPG、魔界塔士 Sa gaのラスボスである神がこんな感じでやられるのだとか。元ネタよりもこの言葉のほうが広まっているような気が。

 ふふん
 怪物王女より、姫。声優ネタであります。

 アストラルの~、デアボリックエミッション
 いずれも植田佳奈さんが演じるキャラのネタ。前者はレンタルマギカの穂波・高瀬・アンブラーで、後者はリリカルなのはのはやて。この二人が一緒に出てきたら絶対に書きわけできないんで穂波の出番はないでしょう。



 どうにもネタのノリがイマイチでした。
 速く新メンバーラッシュが書きたいものです。
 キュアサンシャインに絶対言わせたいセリフが一つ二つ。



[20003] スーパー超人大戦F
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2011/10/13 22:06
 ある日、つぼみちゃんのおばあちゃんが管理している植物園に、淫獣連合の様子を見に行ってみた。
 自然豊かなハウス内でみんなのびのびと暮らしているという話だったし、俺自身そこでどんな植物を育てているのか興味があったしね。
 いつぞやつぼみちゃんの言っていたリュウゼツランとやらも見てみたいし。


 そうして訪れた植物園。
 中々広いガラス張りの室内には、綺麗な花やら見たこともない植物やらがたくさん植えられていた。
 これまた珍しい鳥やら虫やらもたくさんいて、さながら別世界のようなところだった。
 俺の知識ではそこにある植物は何がなにやら分からないので、せっかくだから近くにいたつぼみちゃんのおばあちゃんに色々と説明を聞いてみることに。


「この花綺麗ですね。なんていうんですか?」

「それはジュランよ。マンモスフラワーとも呼ばれているわ。本当はもっと大きいんだけど、それは小さい品種なの」

「……」



「じゃ、じゃあこのどことなく南国風情の溢れる花は……」

「ああ、それはミロガンダ。昔オイリス島っていう南の島に探検に行った人に貰ったの」

「…………」



「えーと、これって珍しいですね! 周りに透き通った体の虫もたくさんいますし」

「その花は周りの虫と共生関係にある、すっごく珍しい花なのよ。北海道で発見されたばかりでまだ名前がついていないんだけど、私は虫とまとめてレギオンと呼んでいるわ」

「………………」



「……こっちの今にも歩き出しそうなほどに動いているこれは」

「最近品種改良された植物で、良い植物油が取れるの。トリフィドと名付けられる予定よ。あっ、てっぺんのトゲには毒があるから気をつけて」

「……………………」



「なんかあっちの木に見たこともないナニカが張り付いてるんですが」

「あら、AMIDAちゃんったらあんなところにいたのね。あの子は私の知り合いの企業から預かっているペットなの。懐いた人の頭にくっついてくる可愛い子よ」

「…………………………」



「……」

「綺麗なバラでしょう? 生物学者の白神源壱郎博士の作ったバラで、ビオランテって呼ばれているわ」

「………………………………」



 ……ひょっとして、この人こそがラスボスかなんかじゃないかと冷や汗が止まらない。
 俺が何かを言うべきかそれとも徹底的に口を噤むべきかと迷っていると、不意に温室の扉が開いて、人が入ってきた。
 入ってきたのは、黒いスーツに帽子も似合うハードボイルドな気配を漂わせるオジサマ……って!


「せ、世界消防庁の本郷猛長官!?」

「あら、本郷さんいらっしゃい」

「ひさしぶりだね、薫子くん」

「今日はどうなさったの」

「なに、巽博士に新しいビークル開発のお願いするために近くへきていたのでね。せっかくだから薫子くんにも挨拶しようと思ったのさ。昨日は東京で志郎とも会ってきたよ。丈二も一緒に来ていたのだが、志郎と話が弾んでいたのでね、そこで別れて来たんだ」

「志郎さんって、確か今は警視庁の特別救急警察隊の長官さんだったわよね。皆偉くなっちゃったわー」


 驚く俺と、普通に会話を交わす二人。
 鳴海のおやっさんだけじゃなくてあんたまで知り合いだったんかい。


 そしてまた士郎か。字は違うけど。
 多分、薫子さんの行ったとおり特別救急警察隊で歴代のレスキュー組織や防衛組織を歴任した風見志郎長官のことなんだろーなー。
 そうすると丈二ってーのはあれか。
 世界消防庁に限らず数々の組織で自慢の科学力を披露している天才科学者、結城丈二のことだろうが、話の内容からするに今は世界消防庁で科学者としての仕事をしているようだ。
 そりゃ風見志郎とも仲がいいわなこの人は。



 話を聞くところによると、どうやらこの二人は昔パリで知り合い、一緒に仕事をしたことがあるのだそうな。
 植物学者と世界消防庁の人間がどういう経緯で仕事をするのかと思ったが、まあ怪我の療養中の話だとか劇場版の話だとか絡んできそうなので聞かないでおいた。
 おそらく、パリに巣食う秘密結社を倒したり劇場版用の敵を封印したりしてたのだろう。


「パリの歌劇団のみんなは元気かしら?」

「ああ、エリカくんなんかは相変わらずだったよ」

「あらあら、やっぱり。うふふ」


 ほらね。
 今の話に出てきたパリの歌劇団と言うのはおそらく巴里歌劇団のことだろう。
 昔、帝都の大神歌劇団のオーナーでもある大神一郎支配人が出向していたという話だし、おそらく彼女らとも協力して「色々」していたに違いない。
 ……ドラム缶に目玉のついたようなロボットとかも地下にあるんだろーなどーせ。


 ついでに言っておくと、さっき本郷長官の言った巽博士とは、かつてレスキューフォースの着用するレスキュースーツの前身であるアンチハザードスーツを開発し、自分の子供たちとともに災害救助を行っていたゴーゴーファイブの巽モンド博士のことか。
 尋常じゃない科学力を持った人だという話だったけど、まさかレスキューフォースの諸々にも関わっていたとは知らなかった。
 ゴーゴーファイブ時代は、巽博士の友人であるジェフ・トレーシーが所有する南の島に彼らともう一個、トレーシーさんのほうのレスキュー組織の基地があってそこを拠点に活動していたという噂だが、今はこの辺に住んでいるのだろうか。


 にゃあ


「ん?」


 足元からネコの鳴き声が聞こえてきたのでふと見てみれば、やたらと頭がデカくて目と耳がとんがったクロネコが退屈なのか、「かまえ」とばかりに俺の脚へ頭をこすり付けてきていた。
 微笑ましいなあと思いながらも頭を撫でてやったのだが、なんだか感触がおかしいような。
 具体的には、毛皮っつーか中国製のぬいぐるみのような手触りと、皮膚の下に金属部品とか仕込まれてそうな硬さ。


「あら本郷さん、クロちゃんも連れてきたの?」

「ああ、たまには日本に帰ってきたいと言っていたのでね」


 とかなんとかばーちゃんと本郷さんが言ってた気もしたけれど、俺はネコを撫でるのに夢中で気付かなかった。
 いかにも同類です、といわんばかりの本郷さんの口ぶりとか、普通にネコがしゃべっていたことを認めるような発言とか、俺は一切気がつかなかった。
 ということにしておいてくれ頼むから。


 そういうわけで猫を撫でるのに夢中になっていたら、再び植物園の扉が開いてまた誰かが入ってきた。
 なんか見るのが怖い気もしたけど顔を上げてみたら、そこにいたのはオレンジの髪をした目の覚めるような美少女。


「こちらにいらっしゃいましたか、本郷長官。巽博士のお時間が空きましたから、どうぞご案内します」

「そうか、ありがとうアスカ君」

「あら、かわいい子ね」

「はじめまして。巽博士の秘書をしています、式波・アスカ・ラングレーです」

「アスカ君はゴーゴーファイブ時代から巽博士達に協力していて、今では言葉通り博士の秘書をしてくれているんだよ」


 ……なんか、幼馴染に逃げちゃダメな男の子とかいそうですね!
 つーかいまだかつてないレベルでわかりづらい繋がり方だな!




 そんな感じで、ある意味カオスの権化じゃないかというくらい謎めいた上に全てを見通してそうな本郷長官だったけど、帰り際にプレゼントと言って俺に渡してくれたものがあった。


「……これは?」

「君達は随分大変なことに巻き込まれているようだからね、先輩としてのせめてもの贈り物さ。本当のピンチになったときに、それを使うといい」


 とかなんとか。
 俺の手の中には、液晶画面のやたら大きい、最近話題のスマートフォンのような形をした携帯電話っぽいもの。
 おそらく直通回線か何かでどこぞと直接連絡が取れるようになっているのだろう。


 使ったらどこに繋がって、何が飛んでくるのかわかったもんじゃないが。
 まあ、ピンチになるだろう最終決戦のときとかに使ってみるとしようかね。
 今の状態だと、多分どんなに戦力があっても困らないだろう敵が出てきそうだし。




 ともあれとりあえず、身の安全のために二度とこの植物園には近づくまいと固く誓った俺でした。


 そうそう、そのとき桜も植物園を訪れていたので軽く話しをしたりもしたんだよ。
 ライダーともどもとっ捕まり、その後放っておかれた慎二のその後について聞いてみたら、


「そういえば、慎二ってどうなった?」

「ワカメは海草ですよ?」


 とのことだった。
 ……二度と彼女に慎二のことは聞くまいよ。


 ただ、桜は結構晴れやかな表情をしていたので少し安心した。
 なんだかんだで英霊もほとんど生き残って聖杯に入っていないからイリヤもそうだが体調悪くしてないし、ライダーを含めてサーヴァントを現界させるためのエネルギーは零児迷子つきエネルギータンクこと悠二が勤めているから、負荷も少ないのだろう。


「では悠二、失礼します。……かぷっ、ちゅ~」

「あああああああ……」


 こんなふうに、日々存在の力を吸われております。




 とまあこんな感じで、何かするたびに世界のカオスが一つまた一つと明らかになって行く昨今、いいかげん大抵のことでは動じなくなりましたどうも俺です。
 それでは例によって、俺の身に起きた諸々を聞いてください。




 前回割と余裕を持って風雲イリヤ城をクリアして帰ってきた俺たちを待っていたのは、続けてまたもやFateのイベントである、ギルガメッシュの襲撃だった。
 衛宮邸について一息入れていたらいきなり塀の上に立っているギルを発見。
 セイバーに求婚したり士郎やなんかとしゃべったりしていたものの、結局戦うことになりました。


「いけ、我の財宝よ」


 との掛け声とともに飛び出すギルの宝物庫に収められた宝具の数々。


 魔剣グラムやハルペー、ヴァジュラという歴戦の宝具たちに、莫耶宝剣やライトセーバーや光の剣やリボルケインやらの光系に、レンズを嵌めたくなる喋る剣に柄のところがカチカチ動く喋る剣や、人と魔物のハーフに使われてやろうと思えば人の姿になれそうな喋る剣や、変身したり必殺技を使うときに鍵を使いそうな喋る剣などなど。
 他にもアルテマウエポンにガンブレード、ねんがんのアイスソードやキーブレードの類。
 タイタンソードにフレイムセイバー、ドラグセイバー、ファイズエッジ、ブレイラウザー、装甲声刃、パーフェクトゼクター、ザンバットソードと、なんか目に入れるだけでやばさが伝わってくるものがたくさん飛んできた。


「ちょっと待てええええええええ!?」

「ふむ、見慣れぬものが混じっているが、我の倉に納められているということは我の宝ということ。気にするな、雑種」

「ふざけんなああああああああ!」


 そして逃げ回る俺。
 剣であればなんでも良いと思ってるのかこの慢心王は。
 つーか明らかにお前の時代に存在しないもの混じってるだろいくつか。


 俺のような一般人だと掠めるだけでもヤバイ武器が原作の比ではない数と種類と密度で襲い掛かるので、逃げるだけでも精神が大変なことに。
 あ、今俺の隣を飛んでった小刀ってひょっとして鳴神尊じゃなかろーか。


 そんな感じで原作以上に節操のないギルの攻撃をなんとか逃れ、辛くも退けたら、次に押し寄せてきたのは更なる敵。
 プリキュア5のエターナルと、リリカルなのはのヴォルケンズであった。
 エターナルの方は、あるとき町の道端でファングメモリと遊んでいるへちゃむくれ鳥がいたので、もしかしてエクス鳥ーム!? と思って保護したらただのへちゃむくれ鳥で、そいつを追いかけて子安ボイスのサソリが現れた。
 プリキュアの敵でさそりはもうたくさんだっつーのと思いながら逃げ惑っていたらちょうどプリキュア5の子達と出くわし、その場は任せて離脱。
 新しい衣装と力を手に入れていました。


 つーかシロップが戦えばいいじゃねーかよ両手を合わせて地面にパシンとやって武器とかつくって、と思わないでもなかったけれど、よくよく考えたら下手にけしかけてサソリの人と二人してナノマシンで全てを無に帰されても困るのでこれが正解か。



 そしてその夜になると、町全体に結界的なものが張られたような気がして外に出てみれば、風都の上空にピンクの光と赤い光が飛んでいた。
 どう見てもなのはちゃんとヴィータです本当にありがとうございました。
 とりあえず放っておくとなのはちゃんとヴィータと町が(スターライトブレイカー的な意味で)危ないので、フェイトとかユーノとかの原作組に、近場に拠点があってしかも飛んだりも出来る鳴海探偵事務所の面々、あとその他の人たちにも連絡入れておく俺。


 そして、デンライナーにみんなで相乗りして駆けつけてみたら、自慢の速さと転移魔法とかでかっとんできたフェイトユーノアルフを交え、ヴォルケンズと原作的な展開が繰り広げられておりました。
 ヴィータがハンマーを振り回したり目からビームを放ったり、シグナムがレヴァンティンで斬撃を繰り出し、「グラスヒール!」とか叫びながら後ろ回し蹴りを爆発させたりとか。
 ……うん、特におかしくないな、おかしくない。



 そんなわけでかろうじて間に合いはしたものの、なのはちゃんはちょっと目を離した隙に「臓物――ハラワタ――をぶちまけろ!」されちゃって、結局結界もスターライトブレイカーがぶっこわしてくれました。
 なのはちゃんのスターライトブレイカーって始めて近くで見たけど、超怖かったです。



 てなわけで、一難去ってまた一難的な空気が流れ出した矢先、他の陣営も物語が中盤に入ってきたので新しい仲間が続々やってきました。
 イマジン関連の事件を片付けたら仮面ライダーゼロノスこと桜井侑斗がひょっこり現れたし、アイスエイジドーパントを追いかけていたら仮面ライダーアクセルこと照井竜が出てきたし、まだ正体はバレていないもののミルキィローズがエターナルとの戦闘に乱入し、シャナの小姑であるヴィルヘルミナが悠二を弄りにやってきたし。
 ……いや、新しい仲間が出てきたら一悶着あるっていうのは定番だけど、どうしてこうも一癖二癖あるっていうかツンデレ気質の奴らばっかりなんだろーね?
 まあ、自分を好きにならないやつは全部邪魔、とか言ってのける奴がいないだけマシか。


 ちなみに、侑斗と照井くんは一悶着あった後にそこそこ仲良くなり、ミルキィローズはどこへとなり消え、ヴィルヘルミナはシャナと同居するようになりました。
 ただ、原作と違ってヴィルヘルミナは料理が得意な上に家事万能で、メイド姿は伊達ではないといわんばかりの仕事をシャナの住む衛宮邸で披露していた。
 シャナ自身そのことが気になったらしく、あるときヴィルヘルミナにその辺聞いていたのを見たことがある。


「ヴィルヘルミナって料理上手だったっけ」

「いいえ、私はかつて料理どころか家事の一つもできない、メイド服を身につけるにふさわしくない人間でありました……」

「じゃあ、私と別れたあとに練習した、ってこと?」

「その通りであります。師匠の下でメイドとしての技能を一から鍛えなおし、先年の世界メイド選手権に出場するほどの技を身につけたのであります」

「世界メイド選手権?」

「あ、聞いたことがあるよ。セラとリズも出たことあるって言ってた。遠野家の双子メイドがいろんな意味で危なくて苦戦したんだって」

「私が出場したときはディフェンディングチャンピオンであるエマをはじめ、若手屈指の実力を誇るリーラ・シャルンホルストや、ロシア出身の格闘能力に秀でたドラエ・ドリャーエフなどの技は見事なものでありましたし、メイドロボ部門でも歴戦の覇者であるHMX-13セリオや新型のHMX-17シリーズが優秀な成績を残していたであります。家ごとのチーム戦では乃木坂家や花右京家のメイド隊が抜群の能力を示していたであります。安藤まほろの戦闘力も相変わらず冴え渡っていたでありますし、琴之宮雪や南米出身であるロベルタの主人に対する奉仕の心など、学ぶべきところの多い場でありました……」


 とかそんな感じのことを懐かしそうに語ってくれました。
 ホント人材豊富だなこの世界。
 ついでに言っておくと、なのはちゃんの親友であるすずかちゃんちのメイド二人も参加していたのだそうな。
 一応参加部門についてはデリケートな問題だから、その辺こそっと説明して誤魔化してもらったけど。


 ただ、俺自身ちょっと気になることがあったので聞いてみた。
 料理とかその他全然ダメだったという噂のヴィルヘルミナを世界選手権に出場できるほどにさせた人っていったい……。


「ちなみにヴィルヘルミナさん、あなたのお師匠ってどちらさんですか?」

「新人教育お手の物、分娩室から墓場まで、いつでもどこでも一撃ご奉仕、任せて安心メイドガイ! の、コガラシ師匠であります」

「……ソウデスカ」


 そりゃあいつならそのくらいのことはするだろうよ!
 そういえばヴィルヘルミナの戦闘モードって仮面のメイドガイレディーって感じだもんなあ!




 そうやって俺たちの陣営も着実に味方が増えていくのだが、山積みになった問題が片付いているわけではない。
 例えば、カズキ。
 カズキは前回ブラボーに襲撃されて以来逃亡を続けており、最近再殺部隊も動き出したのだという。


 再殺部隊は元々錬金戦団の中でも特に戦闘能力の高い特殊部隊で、アトラス院や時計塔からも色々と仕事を請け負っているらしい。
 最近では吸血鬼になった錬金術師を追いかけたり、そいつを追いかけてアトラス院を抜けたおねーちゃんを追いかけたり、人形作るのが超上手い魔術師を探したりしたのだそうな。
 正直かなりやばい人たちみたいです。


 とはいえ、そんなカズキたちの情報は桜花のエンゼル御前経由でほぼ入ってくるので心配はないんですが。
 なので、カズキはそのうちヴィクターに関する話を聞いて戻ってきてくれることでしょう。


 しかしそうやってカズキが抜けている間にも事件は続く。
 まずはなんと言っても電王劇場版。
 神の路線に入って時間を消そうとする牙王の野望を阻止するために遥か昔の戦国時代へと追いかけて行ったりしました。


「オーケィ、レェッツパーリィ!」

「ぅ親方さむぅああああああああああ!!」


 しかもそこは運悪く合戦場。
 近いところではなんか大統領みたいなことを言う青い人と、リュウタロスが声を聞いた瞬間「あいつ嫌い」と断じてモモタロスからデンガッシャーソードモードを奪い、「あんたって人はあああああ!」と叫んで飛びだそうとした赤い人がすごい戦いを繰り広げ、遠くのほうでは風林火山の旗の近くに小さい女の子が、毘と書かれた旗の近くには黒髪の聖将っぽい雰囲気の人がいて、それぞれの陣営の指揮を執っていた。
 まあ、この辺の時代で暴れまわったという妖怪首おいてけが出なかっただけマシだとしよう。
 相変わらず混じってるけどね!


 まあ、その後のすったもんだの末に結局牙王は倒されてなんとかなった。
 途中、ジークがデンライナーに乗ってくるときに金髪赤目でどことなく神々しい少年に憑依していたのだが、なんかほっとくとヤバイ気がしたので丁重に言峰教会の前に放置しておいた。



 そして、一つの悲しい事件が起きる。
 原作でもあったとおり、モモタロス以外のウラタロス、キンタロス、リュウタロスの消滅が始まったのだ。
 イマジンがこの世界に存在できる理由は、人の記憶にその存在を刻んでいるから。
 しかし牙王事件の際、そのとき不思議なことが起こったわけでもなくそれぞれの時間から良太郎先輩を呼び出して四人の電王を登場させてしまったため、電王になっていたときの記憶がないモモタロス以外のイマジンとのつながりが、切れた。
 そのためウラタロスたちは消滅し、電王は良太郎先輩とモモタロスの二人となってしまったのだ……。



 となるはずだったんだけど、ごく当たり前のように復活しましたよこいつら。
 いや、俺自身不安に思ったりはしてなかったんですけれど、良太郎先輩がウラタロスたちの砂からケータロスを作り出し、消えたはずのウラタロスたちが復活し、電王ソードフォームの皮が剥けた。
 皆タロスズとは仲が良かったので、みんなが助かったと知ったときには喜びの声が爆発するように上がったもんだった。
 結構、みんなでいい仲間になれたみたいだ。


 ちなみに、ケータロスはなんか喋る携帯になってました。
 しかも変形してそこらへん歩き回るし、ことあるごとに「お前の心を受信した」とか言うし、良太郎先輩をバディと呼ぶし。
 この世界には他のシリーズいないだろとか、見た目からして違いまくるだろとかツッコミどころは相変わらず多いのだが、なんかみんなは普通に歓迎してました。
 まあいまさらこの程度じゃ驚かないわな。



 そんないい感じで終わった話が、次の事件で急転直下。
 何が起きたかってーますと、紅世の王である、教授の登場だった。
 しかも、その事態に好奇心かなんかを触発されたのか井坂先生も出てきたしで、冬木はまさに二大変態ドクターの共演状態。


 そして予想通り復讐に燃える照井。
 この陣営、斗貴子さんという復讐良しな人もいるんで止めるやつがいなくて困る困る。
 しかも、危険を察知したかヴォルケンリッターも出てきて暴れるし、あっちこっちで事件の対応に追われてそれはもう大変なことになりましたよ。


 教授の目的は、この町を徹底的に歪ませて何が起こるかを見ることだったらしいんだが、この世界はそもそもそんなことする必要がないほど歪みきっているよーな。
 井坂先生は井坂先生で、徒の力を知ればさらに強くなれるんじゃないかと教授にくっついてしまったせいで敵陣営のカオスっぷりがひどいことに。
 頼むから燐子に適当なガイアメモリ渡して強化とかやめてくださいな。


 ただまあ、一つだけ良いことと、一つ良いか悪いか微妙なことがあった。
 良いこととは、ここまでとんでもない事態だったからか、エクストリームメモリが駆けつけ、Wが一足早く最強フォームとなったこと。
 しかも超強い。
 エクストリームの強さは地球と直結したことによる敵の全情報閲覧なわけだが、このカオスな世界の場合はその辺もちょっと変わっているらしく、


「『この事件』の全てを閲覧した。事件の首謀者はDr.ヒネラー……ではなく、紅世の王“探々究々”ダンタリオン、通称教授。その目的は冬木中央のターミナル駅にこの術式の鍵となる装置を入場させ、世界の歪みを頂点に達するように仕向けることだ」


 という感じで、なんかあっちゅーまに全部把握してくれました。
 さすがにどんな事件でも一発解決というミステリの探偵要らずな能力と言うわけではなく、それまでに色々事態を把握するために仲間一同で動き回っていたから出来たことだというが、マジすげえ。


 もう一つ良いか悪いか微妙なことは……。


「さあさあ、ようやく出てこれたんですから派手に行きますよ凛さん!」

「ちょっ、何よこの姿!? つーか待ちなさいよおおお!?」

「くっ、ただの魔導師がベルカの騎士と互角だと!? 貴様、何者だ!」

「ふふふのふっ、私こそはかの宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが管理世界を旅していた際、インテリジェントデバイスとアームドデバイスに触発されて作ったカートリッジシステム搭載式愉快型インテリジェントデバイス、通りすがりのルビーステッキです! 覚えていてください!」


 つーわけで、ある意味最強の魔法使いカレイドルビーが爆誕しやがりました。
 いやー、こっちも強いですよ。
 なにせカートリッジ搭載型。
 しかもゼル爺印の平行世界技術も組み込まれてるらしく、カートリッジは別の時空から取り寄せて実質弾数無限というチート仕様。
 破壊的な攻撃力で敵と町と凛の精神を完膚なきまでに破壊してくれました。
 まさに、おのれルビーステッキ! って感じです。
 ……あれ、こいつひょっとしてフラグじゃね?


 あ、ちなみにこの事件の首謀者達についてですが、教授の送り込んだ列車については、線路に乗り入れたゼロライナードリルが真正面から粉砕し、井坂先生は照井に圧倒的な強さを見せ付けて帰って行きました。
 しかも、テラードーパントにお茶に誘われるという形で。
 これで井坂先生が園崎家に居候することになったし、教授が出てきたってことはそろそろシャナ陣営の仮面舞踏会も動き出す、ってことか。
 ……安心できる要素が一つもねえ。
 なんだかんだで仮面の勇者王も出てきてフェイトもリンカーコアを蒐集されちゃたし、これで初代リィンフォースの戦力は原作並みが確定か……。


 とまあそんな感じの日々を過ごしております。
 敵味方問わずますますカオスが進行し、精神の休まるときが一時もないこの日々、俺のSAN値が尽きる日も近いかもしれません。
 もう、絶望でもいいからゴールしてもいいよね? って気分になってきたよ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 このネタは、皆様から提供されたネタの中で私が知っている物ならば取り込みたいと思っております。
 ストーリーがアレだとか矛盾がどうとかいう前に、とにかくネタを詰め込んで世界観をカオスにすること。
 それがこのネタの存在理由でありますからして。



[20003] スーパー超人大戦F完結編
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/08/11 18:31
 先日、町をぷらぷらしていたら新しい本屋を見つけました。
 ほら俺がいるのってアレな世界だから、情報が命綱になるんで本屋とか図書館とかでたくさん勉強しないと命に関わりかねないんですよ。
 ……最近の境遇を鑑みるに、あまり意味ないんじゃなかろーかという気もしなくもないんだが。


 ともあれ昔から図書館や本屋は結構な頻度で利用し、図書館では関西弁の車椅子少女に本を取ってあげたり、無口な眼鏡少女と冴えない高校生くらいのあんちゃんが図書館デートしているのに遭遇したりもしつつ、色々と知識を吸収していったりしたもんだった。
 いやね、本当に油断ならないよ。北欧の歴史を勉強してみたら、麦の大産地になっているパスロエ地方に伝わる賢狼の言い伝えが書かれていたり、地理について調べてみたらなんか北極の氷の中に巨大な亀の化石っつーか死体っつーか冬眠態みたいなものが埋まってるらしいとか書かれていたり。
 まあそんなわけで、いろんな本を読んでいるわけなんだよ。


 そして、今日見つけた本屋は見るからに雰囲気抜群の店だった。
 今にも物理的に潰れそうなほどに古い切妻造りの日本風の建物で、看板はかすれて何が書いてあるのか読めやしない。
 それでも古書店であるということはわかるので、せっかくだから入ってみようとしたとき、ちょうど入れ違いに二人組が店から出てきた。


「放っておいていいのかい、ダリアン?」

「かまわないのですよ。ここは手を出すには危険に過ぎますが、かといって放っておいても回りに害をなすことはないのです。触らぬ神になんとやら、です」

「……言い得て妙だね」


 イギリスっぽい青年とゴスロリ風の服を来た黒髪の幼女の二人で、そんなことを言い合いながらどこへともなく歩いていった。


 うんまあこの時点で俺は逃げ出す気満々だったんだけど、次の瞬間気付いたら店に入っていた。
 つまり抵抗は無意味なんだろうということで腹を括り、仕方ないから店の中を見て回ることにしてみた。




 適当に棚の本を抜き出してみたら、赤い表紙にタイトルも書かれておらず、中にも何も書いてないのにしばらく見ていたらガカァ……ッ! という感じで光りだし、文字が浮かび上がってくる本があった。
 浮かび上がった文字は見たこともない形をしていたのになんか読めたので、いくつか目に付いた言葉を口に出してみたり。


「なになに……ザケル……ラシルド……バオウ・ザケルガ……」


 言葉を読むたびに棚の後ろから轟音と衝撃が響いてきたけれど、そんな言葉ばかりでろくなことを書いてないので棚に戻す。
 ずらりと色違いのシリーズが並んでいたけれど、俺は決して手を出さない。




 別の本を見てみたら、これまた中に何も書いていない本だったが、付属の指輪をつけてみたらこの本も読めるようになった。


「えーと、エクスプロージョン……ディスペル……テレポート……」


 これまた棚の向こうから爆音が響き、振り向いたら後ろにあったはずの棚が無くなっていたりもしたが、まあ気のせいだろう。
 今度は色違いのシリーズではなくオルゴールとか香炉とか円鏡とかあまり統一感のない諸々が置いてあったけど、多分ただの飾りだ。そうに違いない。
 他にもタイトルだけ見たらセラエノ図書館あたりに迷い込んだんじゃないかと思うような本がたくさん並んでいたけれど、もはや触れる気にもならないから全てスルーした。




 そして店の中をうろついていると、どうやらこの店で売っているのは本だけではないらしく、一角にはCDコーナーもあった。並んでいたCDはあまり聞かないタイトルばかりだったけど。


「スタープラチナ、クレイジーダイヤモンド、ゴールドエクスペリエンスにストーンフリー、タスク……」


 ジャケットがやたらスタイリッシュではあったけれど、中身を試聴もできないCDを買うのは奇妙な冒険過ぎるのでこれまたスルーしておいた。
 この世界で生き残るために必要なのは、危険を未然に察知する感覚とスルースキルだと最近気がついた。




 さらに、カウンターの近くにはカードも売っていた。
 有名なデュエルモンスターズなんかのカードはあまりなく、これまたマイナーなカードがずらりと並んでいる。


「ウィンディ、フライ、ジャンプ……タロットカードみたいな縦横比だな」


 すぐ隣にスターターセットとかいう札つきで置いてある、鳥のくちばしのような形をしたいかにもな魔法のステッキは一体どう使えと言うんだろう。


「こっちは、チェンジ・ビートル、スラッシュ・リザード、ビート・ライオン、タックル・ボア……タイム・スカラベ、フュージョン・イーグル…………ヘェー」


 こっちもスターターセットと称して、なんかつい最近トラウマ物の状況で見たような記憶のある剣が置いてあったりするけど、まあ気にするだけ無駄だろう。


 しかしカード売り場も備えているとは、見た目と違ってモダンな店もあったもんだ。


 ちなみに、カウンターの中では店の人らしき人がもう一人と語り合っていた。


「どうですか真尋さん、従姉のお姉さんから私が譲り受けたこの二人のお店兼愛の巣は。品揃えも豊富だし死角も多いから色々やり放題ですよ! あっ、ちなみに従姉のお姉さんっていうのは惚れた男の人が真性ロリコンだったからフラれちゃって、今は傷心旅行に出ているんですが」

「聞いてねぇよ」


 口ぶりからするに店主らしき女の子が、近くに侍らせた高校生くらいの男子にぺたぺたとくっつきながら話していた。
 いちゃついてるように見えなくもないのだけれど、男子に絡み付こうとする女の子の手足の動きが妙にニャルニャル……じゃなかったにゅるにゅるしていて気持ち悪いのと、頭のてっぺんから出たアホ毛もまたしゅるしゅると男子に絡み付こうとしているのでどことなく恐ろしい。
 つーか、そんな女の子をフォークで牽制してる男子はよく見たら同じクラスの八坂真尋ではないですか。
 彼は名前と見た目からするにやたら危険なんでカズキや士郎以上に関わらないようにしていたんだけど、やっぱりそういうルートに入っていたか。
 ……なんにせよ、フラれたお姉さんとやらが帰ってこないことを祈るばかりである。




 ちなみに、何も買わずにその本屋を出ました。
 だって! ここで売ってる物買ったら確かに今回は命拾いできそうだけど、その後確実に別の事件とかなんとかに巻き込まれるじゃないか! こんな店にいられるか、俺は帰らせてもらう!



 とまあそんな感じで、事件があろうとなかろうと常に命の危機にさらされている気がしますこんにちは俺です。
 色々な事件がクライマックスに近づいている気がするのと同じくらい危機感も増している今日この頃、今夜も俺と地獄に付き合ってもらう……。




 前回の一件で、チート武具を倉に収めまくったギルとの接触や、教授とやたら親和性の高い井坂先生に、姿を見てしまっただけで負けフラグが立つテラードーパントとの遭遇などというイベントをこなし、俺たちはそろそろ行き当たりばったりに事態へ対処するだけではいけない、という結論に達した。


 その結果可能な限り敵の情報を集め、キャスターとの一件のように戦わないで済む陣営は取り込むなりなんなりして少しでも戦力の温存と拡充を図る、ということが満場一致で決定されることになる。


 まず最初に対処することになったのは、ヴォルケンリッター。
 あそこは闇の書なんてヤバイものをよくわけもわからんくせに抱えているから、放置しておくととんでもないことになる。
 ……いやね、俺ってば無性に嫌な予感がするんだよ。
 この世界ってカオスだからさ、「リンカーコアを蒐集した相手の魔法を使えるようになる」という闇の書の特性がとんでもないことになりそうな気がして。


 というわけで、闇の書について詳しく知るためにやってきました管理局は無限書庫。
 原作ではユーノがマッチポンプでおなじみ猫姉妹と検索無双したりしてくれたんだけど、こと検索にかけては地球で一番の人が俺たちの仲間にいるので、ちょっとそいつに頼んでみた。
 どうしたかってーと。


\エクストリーム!/

「……無限書庫の全てを閲覧した。さあ、検索を開始しよう」

「はい、普通の検索魔法と同じ要領でいいんですよね」


 というわけで、仮面ライダーWのサイクロンジョーカーエクストリームにごそっと無限書庫を閲覧してもらいました。
 いやー、さすがフィリップ。無限書庫の蔵書をまるっと記録してもまだまだ余裕です。
 一年分の記憶で脳みそパンパンになると信じられていたどこぞのイン……なんとかとはエライ違いだ。
 相棒が地獄に付き合えるか悪魔と相乗りできるかでこうも違うとはね。


 そのおかげで、ユーノと協力しての検索もスムーズになるしフィリップは喜ぶしで情報の検索が超楽になりました。
 その様子を見ていたクロノとリンディが揃ってorzポーズを決めていたけれど、この世界での管理局のアレっぷりは今に始まったことじゃないので軽く流しておくことにした。


 そして、闇の書の本来の名前だとか、蒐集完了したらどうなるかとかその辺の話をまとめ、ヴォルケンリッターとの交渉に行くことになりました。
 俺が。


「って、俺ぇ!?」

「キャスターとの和平交渉もあなたがやってくれたでしょう。大丈夫、あなたが信じるあなたを信じなさい」


 とかなんとか、凛に両肩を掴まれて言われました。
 お前はむしろストーリーの後半でその台詞言う奴をアレな目つきで睨むほうの彼女じゃないのか。
 ともあれ、掴まれた肩が超痛かったです。


 仕方ないから、士郎お手製のアイスと、コジタロス……じゃなかったアサシンと、士郎と凛のドジでも出来る料理レシピと一緒に八神邸に赴き、ヴォルケンリッターを口説き落とした。


「うちの陣営に来れば、毎日美味しいアイスを食べられることを約束しよう、ヴィータ」

「うぐぐ……」


「彼はこの国でも屈指の剣客です。純粋な剣技を競える相手があんまりいなくて日々退屈しているんですよ、シグナムさん」

「ぐぬぬ……」


「料理する度に弄られるキャラを卒業したくはありませんか、うっかりドクター……じゃなかった、シャマルさん」

「くうう……」


「てめぇらずっと待ってたんだろ!? はやての足をあきらめなくて済む、リンカーコアを蒐集しなくてもすむ……そんな誰もが笑って、誰もが望む最高なハッピーエンドってやつを。今まで待ち焦がれてたんだろ? こんな展開を……何のためにここまで歯を食いしばってきたんだ!? てめぇらのその手でたった一人の女の子を助けて見せるって誓ったんじゃねえのかよ? お前らだって主人公の方がいいだろ!? 脇役なんかで満足してんじゃねえ、デュ↑ーエルだぁ! ……じゃなかった、命を懸けてたったひとりの女の子を守りてぇんじゃないのかよ!? だったら、それは全然終わってねぇ、始まってすらいねぇ……ちょっとくらい長いプロローグで絶望がお前のゴールだしてんじゃねぇよ! 手を伸ばせば届くんだ! いいかげん始めようぜ、魔導師!」

「正確には騎士だ」

「……騎士!」


 て感じで、交渉用のブツと情報だけだと弱かったようなので、転生者らしくSEKKYOUしたら割とあっさりなんとかなりました。
 さすが、上条さん式の説教は効きますねー。
 ……まあ、俺がやってもフラグは立たないけどな!


 え、ザフィーラ?
 彼はヴォルケンズの中でも一番の良識派ですから、話したらわかってくれました。
 そんなわけでヴォルケンリッターも仲間になり、なのはちゃん達はデバイスも強化されて戻ってきて空中戦力がエライことになったりとかしています。


 その後の交渉の結果、闇の書自体は放っておいても悪いことばかりだし、ひとまずは完成させないと猫姉妹とかも出張ってきて面倒なことになりそうだから、とりあえず蒐集は進めることにしました。
 でもこれまでのように管理外世界とかで蒐集すると管理局やら何やらの関係で障りがあるので、エネルギー豊富かつロクな力もない奴から蒐集してもらうことに。


「え、えーと、臓物――ハラワタ――をぶちまけろ?」

「ああああああああ……」


 はい、もはやおなじみエネルギータンクの悠二君です。
 サーヴァントの現界するエネルギー源にもなってくれてるし、本当に優秀な補給ユニットだねー。




 ついでに、そんな闇の書関連の話を片づける傍ら、聖杯戦争についてもしっかりと知っておくべきだと言うことになったので、魔術に関しては仲間内でも抜きんでているキャスターに資料を漁ってもらうことになりました。
 遠坂家の持ってる聖杯戦争に関する資料を渡したり、その中にこっそり俺が気になってるものである士郎の所有するスクラップブックを混ぜたり、さりげなくイリヤとキャスターを二人にしてみたり。
 そして、数日後、キャスターとイリヤが揃ってわかったことを説明してくれた。


「大体わかったわ。聖杯戦争のシステムについてもほぼ解析できたけど、このシステム、一度外部に流出してるわね」


 なんかさらっと衝撃の発言が漏れ出しました。
 俺は半ば予想していたんだけど、俺以外の一同は総員「な、なんだってー!?」状態。
 とりあえず鎮まるのを待って、キャスターが説明するところによると。


「聖杯戦争は、簡単に言ってしまえばエネルギー容量の大きい英霊を呼び出して戦わせ、負けた者を聖杯の中に取り込んで願いを叶えるためのエネルギーにする、というものなのよ」


 それ自体知ってる人はほとんどいなかったので、サーヴァントを中心にざわめきが広がったんだけどキャスターは我関せずと話を続けた。


「そして、それとほぼ同じシステムによる儀式が、数年前に別の場所で行われていたようね」


 そう言ってキャスターが取り出したのは、俺が紛れ込ませておいた士郎のスクラップブック。
 新聞やゴシップ誌などから仮面ライダー関連の記事を集めたものだ。


「これによると、かつて仮面ライダーと呼ばれる者がモンスターと契約し、鏡の中の世界でそれぞれの願いを叶えるために戦い合った、とあるわ。その他の資料も併せて考えると、このミラーワールドという器と、そこで戦うためのライダーシステム、さらには契約するミラーモンスターを作った神崎士郎はおそらく前回の聖杯戦争のシステムを解析して、再現したのでしょうね」


 スクラップブックの中からOREジャーナルの紙面を印刷したものを中心に説明するキャスター。
 ……やっぱりか! この世界にも龍騎の噂は存在してるって聞いていたし、昔冬木には清明院大学もあったとか聞いたからそうかもしれないと思ってたけど!
 どうやら既に龍騎の物語自体は終わっているようなので劇場版みたいにミラーモンスターが溢れることはなさそうだから、まあそれはそれでよしとしよう。


 とまあそんな横道もあったものの、イリヤから聞いた話も含めて聖杯戦争のシステムを説明してくれました。
 さすがに大聖杯のありか自体はまだ分からないらしいけど、もし詰まるようだったらこそっと教えてやればいいか。

 とまあそんな感じで聖杯戦争については分かったので、ひとまずこの辺置いとくためにはサーヴァントを脱落させなければいいってことで、しばらくランサーやギルが現れても可能な限り倒さない、という方針が決定しましたとさ。




 そしてFateの話がひと段落ついたと思ったら、町にカイが現れるようになりました。
 道を歩いてたらいきなり「そういう顔してるだろ?」とか言ってくるにーちゃんに話しかけられたので、ダンサーズの一人にされる前に速攻で逃げました。


 ちなみに、このころになると町を出歩く人もかなりバラエティに富むようになってきている。
 この前は高校の制服を着て「不思議を探すわよ!」とか叫ぶやたらやかましい女の子に率いられた集団が街をうろついていたし、冬木大橋のふもとの公園ではいつか会えるんじゃないかと思っていた海上空港の空港長であるハヤタさんとホントに出会えて、本郷長官からもらったスマートフォン(?)を見せたらなんかアドレス入れてくれました。


「私と兄弟たちも、時が来たら及ばずながら力になろう」


 とかいって。
 ……今度牧場とかサーキットとかホテルのレストランとか水族館とか行ってみようかなあ。




 ついでに、久々に沈黙屋に行ってみたらなんかロシア風の紳士が暗い雰囲気でライバックのおっちゃんと話をしてました。
 なんでも、この間やった仕事でスンゴイ無力感を感じたのだとか。
 あまり聞き耳を立てるのも悪いので店のテレビに注目していたら、ちょうどニュース番組がやっていて、つい最近帝都で起きた事件のニュースを放送していた。


 嘘のような話だが、夜のビッグサイトから身長40m近い巨大ロボットが現れて、町をのしのし歩きながら軽トラを追いまわしたのだそうな。


 とはいえ、日本の警察はいまさらその程度のことには動じない。
 レイバー着込んで海から上がってきた怪獣とかさんざん相手にしてるんだから、「ちょっとやっかい」程度の気持ちで、自衛隊が出張るまでもなく平常運転だったのだそうな。


 特車二課のパトレイバーと特殊刑事課「ブレイブポリス」のロボット刑事たちが足止めをしている間にやってきた、帝都の治安と制空権と迷惑警察の名を欲しいままにする青空署こと遊撃警艦パトベセルが数発の誤射で近くにあったビルを倒壊させた後にネオナンブカノンを命中させて沈黙させたとかなんとか。
 青空署の署長が言い放った「てめーはあたしを怒らせた! 死ねーーーー!!」という叫びは外部スピーカーで帝都の夜空にこだましたのがばっちり録画され、テレビから繰り返し流されている。
 ちなみに、ネオナンブカノンを作ったのが有澤重工であることは言うまでもない。


 その後の捜査もベテランロボット刑事Kとその同僚であるジャンパーソンとへっぽこ助手であるR・田中一郎の手によって速やかに進められ、事件の実行犯であるテロ組織の検挙と、その背後にある巨大な国際テロ組織への捜査が進められるようになったのだという。
 また、テロ組織は完全に地球由来のものであるため、宇宙警察であるデカレンジャーの出動は見送られたらしい。
 そんな話を、特別救急警察隊の風見志郎長官が記者会見で話していた。
 ……そういえば、風見長官には幼いころに生き別れた双子の弟がいると聞いたことがある。
 そのせいで名字も違うけど見た目はとてもよく似ていて、しかもなにをやらせても日本一のすごい人だとかなんとか。


 嘘かほんとかわからないトリビアを思い出しつつ、相変わらず帝都は事件の規模もそれに対応する警察もすごいなあとか思っていたら、なんかめそめそと泣く声が聞こえてきたので振り向いてみると、さっきライバックのおっちゃんに愚痴ってたロシア風紳士が男泣きに泣いていた。


「これだから……っ、これだから日本は……!」

「落ち着け、カリーニン少佐。今日は奢るから、元気を出せ」


 やはり外国の方に日本の帝都関連のニュースは荷が重かったのかもしれない。
 アメリカだったら大体、大統領があの人だから、の一言で納得できるんだろうけどね。


 そんな風に思っていた矢先、店の前から何か重いものが降ってきたような轟音が鳴り響いた。
 何事かと思いはしたものの、どうせロクでもないことだし確実に巻き込まれるだろうと店の中で待っていたら、からんからんと扉のベルを鳴らして一人の男性が入ってきた。


 今度はアメリカ風の男性だった。
 ……ちなみに誰かとゆーと、


「相変わらず紳士的だな、マイケル」

「まだ17時前だからな、ケイシー」


 そう言って、嬉しそうに笑ってライバックのおっちゃんとがっしりと握手したのは、誰あろう、


「……大統領」

「おお、君はいつぞやの。元気そうだな」


 そう、みんな大好き大統領。
 あんたほんとにこの店に来たのかよ。
 しかも、さっきの音からするに絶対店の外にはメタルウルフがあるよね! ようしお兄さん絶対大統領より先に店を出ないぞー!


 というわけで、大統領と会話を交わすという貴重な経験をすることができました。
 俺は英語できないのでライバックのおっちゃんに通訳してもらいながらだったが。
 一方大統領は父親が日本贔屓だったこともあって最近日本語を勉強しているらしく、その成果を披露してくれたりもした。


「リッチャンハカワイイデスヨ」


 何でよりにもよってそれなんだよ。
 その後、例のテレビから765プロのアイドルの映像が流れてきて、律子が出てきた瞬間大統領が「リッチャアアアアアアアン!」とか叫んだりしていた。
 どうやら大統領は律ちゃんがお気に入りようです。
 なんか別の奴と勘違いしてないかあんた。


 ちなみに、今日大統領がここを、というか日本を訪れた理由はメタルウルフの武装のメンテナンスのためらしい。
 なんでも、大統領の使う銃火器のほとんどは有澤重工製で、せっかくだから有澤の社長のところに顔も出そうと直接来たのだそうな。


 勿論エアフォースワンから。
 言うまでもなく飛び降りて。
 さすが大統領。


 有澤重工といえば、たしかクーデターのときに自由の女神をブッ飛ばそうとして逆に大統領にジャイアントスイングかまされたガチタンを作ったりもしていたはず。
 ホント手広いなあそこ。


 そうして色々話して別れ際、大統領は俺が持っていた例のスマートフォンを目ざとく見つけ、「おお、それは……」とかなんとか言ってやっぱりアドレス入れてくれました。
 とりあえずで受け取ったけど一体なんなんだよこのアイテム。




 とまあそんな事件が起こりつつも、一方で他にも色々起こっていた。
 例えば、何度か出てきてはガイアメモリを変態的な使い方してなのはちゃんやプリキュアの子たちのよーな小さい子にトラウマを植えつけていた井坂先生がイマジンにまで手を出したりとか。
 イマジンに願ったのはテラーを倒したいという本命の願いではなく、ケツァルコアトルスメモリを使うための適当な鳥を連れてきてもらうことだった。
願いをかなえてもらってあっさりとイマジンを過去に飛ばしたのだが、気絶したと思ったらすぐに意識を取り戻して「興味深い……じゅぺろっ!」とかやってうちの女の子組に思いっきり引かれてました。


 しかし、鳥にメモリを刺したケツァルコアトルスのほうもイマジンも放っておけないのでいつぞやの蝶野のときとおなじように二手に分かれることになり、俺はデンライナーに乗って過去に行くことにしました。
 ……デンライナーで過去に飛ぶ瞬間に見えたケツァルコアトルスドーパント、なんかあちこちとんがってたり触手にゅるにゅるだったりで邪神のよーなオーラを出してたような気がするけど、気のせいだよね。
 井坂先生が「イリス! 殺せ!」とか叫んでた気がするのも勿論空耳だろう。
 まあ、もし空耳じゃなかったとしても地球の意思を代弁するのはフィリップで十分だろうから気にしない気にしない。




 ともあれ、デンライナーでイマジンを追って辿り着いたのはちょうど十年前。
 そう、みなさんご存知前回の聖杯戦争のときだった。そしてそんな大事件の隅ではばっちり井坂先生がテラーパパと遭遇したりもしてたけど、まあいいや。


 なにせ、よりにもよって先代キャスターによる怪獣召喚の日だったんですから。
 冬木大橋のあたりの夜空にのっそりと巨大な怪獣の影が浮かび上がってました。
 アンモナイト三つ並べて、その真ん中のところに上下ひっくり返した顔をくっつけてさらにたくさん触手を生やしたようなデザインの怪獣がどーんとね。
 ……思わず冬木の海に失われた古代都市が浮かび上がってないかとか確認してしまった俺は決して間違ってないと思います。
 幸いにもデザイントチ狂った古代都市も、宇宙規模の企業が作ったテーマパークも浮かび上がってはいなかったんだが、代わりに空の上の方から火の玉が落ちてきた。


 落下したのはちょうど、もうすぐ洋上空港が建設されるところのさらに沖合。
 なんかその火の玉を追ってさらに四つの光が降りてきて空中にとどまったり、そこからいかにも火の玉を封印することが目的っぽい光が出てきて海面に蓋をしたりもしてたけど、怪獣騒ぎのほうが大きくて気付く人はほとんどいなかったようだ。
 ……うん、俺も見なかったことにしよう。


 俺たちはイマジンの方にかかりきりで放っておいたのだが、怪獣騒ぎの方もほぼ原作通りに決着がついたようだ。
 先代ライダーが怪獣を異空間に引きずり込んで仲間ともどもフルボッコにして、出てきたところを当時のセイバーがエクスカリバーで引導を渡す、という。
 ……ただ、先代ライダーは確かにイスカンダルだったんだけど、怪獣を異空間に引きずり込んだのは偶然通りすがったトイカメラを首からかけた青年だったり、そのときに見えた空間の歪みが灰色のカーテンみたいだったりとかするのが妙に気になるんだよねー。
 この時代にやってきたイマジンが桜井さんと間違えて襲った人は「おのれディケイドぉ!」とか叫んでいたし。またあんたか。
 何か……何か嫌な予感しかしねえ!


 とかいうひと悶着もありつつイマジンを片づけておきました。
 ただその途中、人ごみから離れたところに這いつくばってライフルで誰かを狙っている怪しい人を見かけたんだけど、遠目に見ていたらなんとその人の後ろに鳴海のおやっさんが現れた。


「この町を泣かせることは許さないぞ、切嗣」

「もちろん、肝に銘じているよ。少なくとも今は君とも目的を違えていないはずだ。この前も邪魔したんだから、今度は見逃してもらえないかな」

「ビルの破壊はやりすぎだ。それに、こんなところからの狙撃も見過ごせん」


 うーわー、鳴海のおやっさん切嗣のやんちゃも止めてたのかよ。
 人脈といいやってることといいホント万能だな。
 そりゃこのカオス世界でも冬木は平和だったはずだよ。




 とか何とか、そんな事件が終わり、ケツァルコアトルスドーパントもWエクストリームやらなのはちゃんやらの空飛べる組によってごくあっさりと撃墜され、井坂先生の退場まであと一歩と迫ってきたころになると、残りの仲間になる予定の人たちも続々と合流してきた。


 まずは、カズキ達との合流。
 斗貴子さんが前に潜伏していた学校の地下でヴィクターの生い立ちと白黒の核金についての話を聞いてきたらしく、色々と思い悩んだりしていた。
 そしてそこに追い打ちをかけるようにブラボーとカズキの決戦が行われ、火渡さんも出てきて魔法とか関係ない生身の人間がしていることとは思えないバトルが繰り広げられた。


 原作通りの展開でブラボーが火渡さんに焼かれかけたところで大戦士長、坂口照星さんが現れ、カズキに関する諸々の話も先延ばしにされたりと、こちらもひとまず落ち着けるようになったみたいだ。


 ただ、大戦士長がブラボー助けたときに、


「過ぎたるは及ばざるがごとし。変わらんな、単純バカが」


 とか言ってたんですが。
 なんですか、ブラボーのシルバースキンはあなたがデザインしたとでも言うんですか。
 だからブラボーはあんなガチタン並みの防御力なんですか。


 まあそんなこともあったりもしたがひとまずまたカズキ達と一緒に戦えるようになったから万々歳だ。
 プリキュア5のほうでもいいかげん正体バレ始めたミルキィローズが本格的に仲間に入ってくれたし、かなりの戦力が強化された。


 ……ちなみに、ミルキィローズが仲間になった時、


「プリキュア5に新しい仲間……これで7人目だな!」

『6人目!』

「う~ん、もっと愛をこめて!」


 というやり取りが士郎とその他大勢の間で交わされたりもしたのだが、あいつは多分もう駄目なんだろう、うん。




 そして今回一番の収穫は、みなさんお待ちかね、ハートキャッチプリキュアにおいて「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな……」の名を欲しいままにする追加戦士、キュアサンシャインである。
 原作通りいつきちゃんのお兄さんがデザトリアンにされ、元が格闘経験のある人だからかかなりの苦戦を強いられているところに、新しい妖精の助けもあって覚醒しました。
 いやー、原作通り強いのなんの、それまで苦戦していた車いすデザトリアンを初登場補正があるにしても一方的にボコってくれましたから。


 ……ただ、名乗りの時にひと悶着が。


「悲しみなんていらない……私がみんなを照らす太陽になる! そう、私は太陽の子! キュアブラック、アールッ、エッ……!」

「待てえええええええええ!」

「えー」

「黒くもないだろ君は! チェンジチェンジ!」


 そんな感じで、バランスブレイカーな存在になろうとしたので必死に止めました。
 その後も煌めく太陽のエレメント、天空勇者キュアシャインを名乗ろうとしたり、太陽の勇者キュアファイバードを名乗ろうとするたびにチェンジしてようやくキュアサンシャインに落ち着きましたよ。
 しかも、その後必殺技でデザトリアンにとどめを刺す時も、


「集まれ、花のパワー! シャイニー……、ってわわ! これプリズムビッカーですよ!」

「おおっ!? こりゃシャイニータンバリンじゃねーか! 変えろ変えろ!!」


 ってかんじでエクストリームと自分の武器を間違えるというハプニングが起こったり。
 いや、どこからともなく出てくるはずの武器をどう取り違えられるんだよ。
 確かにすごい似てるけどさ。


 ちなみに、技名叫ぶ時も、


「日輪の力を借りて! 今、必殺の! サン! アターーーッ……!」

「だからあああああああああああ!!」


 ……なんだかものっそい疲れました。




 まあそんなわけで、うちの陣営も戦力がかなり強化されてきた。
 ただ、それでもまだ不安なのがやはりなんと言ってもギルである。
 なにせあいつのゲートオブバビロンにはそれこそ節操なしにありとあらゆる武器が収められているわけだし。
 正直解決方法もさっぱり思いつかなかったのだが、それでも時は無情に過ぎて、ギルとの再戦と相成ってしまう。


 今回ギルと出くわしたのは、冬木大橋の下にある公園。
 このあいだ俺がハヤタさんと出会ったところで、原作だと黒桜が現れたりしたところだったろうか。ある意味この世界における異常の寄り集まったところなのかもしれない。
 それはもうばったりと出くわしたため、周りには士郎とセイバーと俺以外仲間もほとんどいやしない。
 大慌てでみんなに連絡を取ったものの、このギルを相手にセイバー一人だとどれだけ持ちこたえられるのかエライ不安だった。


 そして案の定、ギルは今回も絶刀とか斬刀とか千刀とか薄刀とか賊刀とか双刀とか悪刀とか微刀とか王刀とか誠刀とか毒刀とか炎刀とかを飛ばしてきた。
 途中刀と名がついているのに明らかに鎧だったりロボだったり銃だったりするものが飛んできたけど、もはや一々ツッコミを入れる気にもならず黙って逃げに逃げた。


 主戦力、というか現状唯一の戦力であるセイバーは頑張ってギルと戦ってくれたのだがさすがに分が悪く、変態刀……じゃなかった変体刀がネタ切れを起こす頃にはかなりボロボロになっていた。
 士郎はそれでも必死にセイバーを助け起こしたりしていたけれど、まだ仲間達が来てくれる様子はない。
 さっきは士郎が体の中にあるエクスカリバーの鞘でなんとか堪えてくれたけど、どうやら次は無理そうだ。


 さすがにこれは詰んだか……と、そう思っていた時期が俺にもありました。


 俺が半ば諦めの境地に達し出したころ、ついでとばかりに飛んできたシンケンマルが、空中で何かにぶつかったかのように軌道を曲げた。
 俺のような一般人には何が起こったのかさっぱりだったのだが、ギルとセイバーはわかったらしく、二人同時に俺達の後ろを振り向いた。


 そこにいたのは、革ジャン、帽子、手袋、ギターにスカーフというとても……カッコイイ(棒読み)格好をした人だった。
 俯き加減に帽子で顔を隠しながらギターを引いてゆっくりと歩いてきて、一言。


「無数の宝を持ち、その武器を自在に操る名人、古代の英雄王ギルガメッシュ。だがその武器使いの腕、日本じゃあ、二番目だ」


 この見た目とセリフの時点で、既に俺の中にはある予感があったのだけれどまだ何も言わない。
 っていうか驚きすぎて言えない。
 なんでこの人がここに。


「何ィ……、ならば、日本一とやらはどこのどいつだ」

「ヒュウ♪ ちっちっち」クイッ


 口笛吹いて、気障な舌打ち、深くかぶった帽子の鍔を押し上げて、「俺さ」とばかりに自分を指差した。
 それを見て軽くブチキレるギル。
 あれだけの武器とか色々持ったギルを挑発するなんて自殺行為でしかないんだけど、なんだこの安心感。
 なんか大統領並みに全て何とかしてくれそうなオーラが漂ってるんですが。


「ほう……ならばその大言、真か否か見せてもらおうか!」


 といってさっきまで以上の勢いで武器を飛ばすギル。
 士郎やセイバーは「危ない!」と叫んで止めようとするものの、さっきまでの負傷で体が動かずのたうちまわっている。
 え、俺?
 ごく普通に眺めてましたよ。


 いやだって、ねえ?
 この人が死ぬわけないじゃん。


「なっ……!!!?」


 ギルのゲートオブバビロンに晒されたその人は、まるで弾幕シューティングの自キャラのごとく絶妙な動きでそのことごとくを回避。
 しかもそれだけでは終わらず、飛んでくる剣やらなにやらを掴み取って投げ返し、飛んでくる武器にぶつけ返すなどということまでやりだす始末。


 見ているギルも士郎もセイバーも、唖然。
 正直なところを言うと俺自身びっくりしてた。
 だってこの人、生身だよ?
 改造人間だとか特別なスーツを着てるとか魔法使ってるとか一切なく、サーヴァントであるセイバーすら苦労するギルを相手に平然と渡り合ってるんだから。


「……ッ、貴様あああああああ!」


 しばし呆然としていたものの、ハッと我に返ったギルは怒りも思い出したらしく、前フリなしでエヌマ・エリシュを使ってきた。
 とはいえその間もゲートオブバビロンの武器攻撃は続いていたので逃げることはできず、モロに直撃を浴びることになるあの人。
 さすがに死んだだろ、と思うべきこの場面だが、あの人には当てはまらない。


「ハッハッハッハッハッ、ハッハッハッハッハッ……」

「何者だ!?」

「ズバッと参上、ズバッと解決! 人呼んで、さすらいのヒーロー! 怪傑、ズッバァァァ!」


 爆心地には何も残っておらず、冬木大橋の橋脚の天辺に赤いスーツのヒーローが現れた。
 うわー、かっこいーい(棒読み)。


 その後は、ズバットのあまりのアレっぷりに押されたギルがおろおろしている間に続々と仲間も集まり、ひとまずはギルを退散させることができた。
 ……本来ならエクスカリバーの鞘のありかがわかるイベントのはずだったのに、なんであなたがいるんですか、風見志郎の双子の弟である、早川健さん。


「なに、本郷さんが気にしているこの町の様子を見てきてほしいと、ちょいと兄さんに頼まれたんでね。君たちを助けられたのは偶然さ。……ひょっとすると、荘吉が導いてくれたのかもな」


 とか何とか言って、ズバッカーで空飛んで帰って行きました。
 やっぱり同業のよしみでおやっさんとも知り合いか。
 もっとここにいて手伝って貰いたかったような、バランスブレイカーな存在だから帰ってくれてよかったような、どうにも複雑な気分だったよ。




 なんかもう、疲れたよホント。
 最近は敵側のチートも味方側のチートも激しくて精神の疲労がマジヒドイ。
 この調子だと最終決戦のころには一体どんなことになっているのか、考えるだけで憂鬱だ……。



[20003] Fシリーズのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/08/11 20:33
スーパー超人大戦F


 ジュラン
 ウルトラQより。全長100メートルに達する巨大植物。根は人の血を吸って、花からは毒花粉が撒かれるのだとか。たぶんつぼみのおばあちゃんの謎技術でその辺は封じられてることでしょう。

 ミロガンダ
 ウルトラマンより。ただの食虫植物ですが、品種改良のために放射線を浴びせられたりすると凶暴化して、オイリス島の水を飲んだ人を襲います。

 レギオン
 平成ガメラ第二作、レギオン襲来より。宇宙から飛来した珪素生命で、ハキリアリとその食糧であるキノコのように、ソルジャーレギオンと草体レギオンが共生関係にある生物。たぶん宇宙のどこかではBETAと覇権を競っているんじゃないかと。

 トリフィド
 トリフィド時代より。歩行性の肉食植物でかなり危険。緑色の流星雨が流れたら決して近づいてはいけません。まあこの世界の場合だと、流れ星が降ったら人は盲目じゃなくてゾンビになりそうな気もしますが。

 AMIDA
 アーマードコアNXとLRより。変態企業キサラギの開発した生体兵器。ノミのような外見で飛び跳ねて近づき、自爆する。この性質はNXのみで、LRでは弱体化しているらしい。間違っても可愛くはないが、一部ではACシリーズのマスコット扱いを受けているとかいないとか。

 ビオランテ
 ゴジラVSビオランテより。白神博士の娘の細胞と融合したバラに、さらにゴジラ細胞を融合させて生まれた怪獣。この世界では普通に白神博士に品種改良されたバラでしかありませんが、白神博士はれっきとしたゴジラ細胞の研究者ですので、あるいは……。

 風見志郎
 仮面ライダーV3その他より。風見志郎を演じた宮内洋さんは、メタルヒーローのウィンスペクターからなるレスキューポリスシリーズの長官役をしていたので、そのつながりで特別救急警察隊の長官に就任してもらいました。
 生き別れの双子については後述。

 結城丈二
 仮面ライダーV3に登場する、ライダーマンより。元は敵組織デストロンの科学者であったものの、のちに第四のライダーと認められた男。顔の下半分が出るマスクなので弱いという認識が強いが、仮面ライダーSPIRITSなどでの活躍は見事な物。
 この世界では風見長官の良い友人であり、持ち前の科学力を防衛組織などで生かしている。

 巴里歌劇団。
 ほぼ作中で説明したとおり。本郷長官とつぼみのおばあちゃんが巴里にいたころにちょうど大神一郎が出向してきていて、互いに協力して魔を払ったりショッカーや砂漠の使徒と戦っていた。

 怪我の療養中の話だとか劇場版の話
 仮面ライダー1号本郷猛を演じていた藤岡弘、さんは撮影中の怪我で一時仮面ライダーを降板していた。その間に仮面ライダー2号が登場し、本郷はパリのショッカーと戦いに行っているということになっていたので、それを元に色々絡めました。
 つぼみのおばあちゃんは昔パリで砂漠の使徒と戦い、幹部の一人を封印したという話がプリキュアの劇場版において出てくるらしいので。
 プリキュアとライダーと光武が一緒に戦うって、すごい絵面だな。

 巽博士、ゴーゴーファイブ
 救急戦隊ゴーゴーファイブより。巽博士とその五人の子供が災魔に立ち向かうためゴーゴーファイブとなって戦ったりレスキューしたりという話がこの世界でも多分あったのでしょう。その後、巽博士はレスキューフォースの設立に技術面から協力し、レスキュースーツやビークルの開発を行っています。

 ジェフ・トレーシー
 サンダーバードより。国際救助隊を設立した資産家にして元宇宙飛行士。ゴーゴーファイブの基地は海ほたるのすぐ隣にあったんですが、せっかくなのでサンダーバードの基地に相乗りさせて貰いました。大型の基地建設にかなりの技術を持っていて、トレーシーさんはレスキューフォースに対して主にレスキューフェニックスなどの基地系の建設に協力しています。

 クロちゃん
 サイボーグクロちゃんより。サイボーグに改造された猫で、ガトリングガンやらなんでも切れる剣やらを振り回す危ない奴。本来の体は銀色のメタルボディーなので、ごまかすために中国製の黒猫のぬいぐるみをかぶっている。
 この世界ではサイボーグ仲間の本郷長官の飼い猫という名目で自由気ままな生活を楽しんでいる。

 式波・アスカ・ラングレー
 エヴァンゲリオン劇場版より……というか、ゴーゴーファイブよりというか。アスカ役の先日スーパー戦隊VSシリーズを見ていたらゴーゴーファイブに宮本優子さんが出ていたので、せっかくだから出演してもらいました。
 親戚の女の子がスコットランドヤードでブレイブポリスの技術開発主任をしていて、最近日本の帝都で特殊刑事課の一員になったとかなんとか。

 かぷっ、ちゅ~
 ロザリオとバンパイアより。ヒロインの吸血鬼少女が血を吸うときの音。ライダーも吸血鬼みたいなもんだし。中の人的にはフェイトとかつぼみがやるべきじゃないかと思わないでもないですが。

 ギルの宝具
 光系は封神演戯とスターウォーズとスレイヤーズと仮面ライダーブラックRXから。喋る剣シリーズはテイルズオブデスティニーとゼロの使い魔とラグナロクとリュウケンドーから。その次はFF7、8とロマンシングサガとキングダムハーツから。残りは仮面ライダーシリーズから電王以外の剣系武器。その後しばらくして出てきた鳴神尊はライトノベル「9S」より。

 シロップが戦えば~
 鋼の錬金術師とターンエーガンダムより。シロップと中の人が同じなので。ターンエーにおいては、子安の御大将と全てを無に帰すかのよーなナノマシンですごい戦いを繰り広げたとかなんとか。

 目からビーム
 で・じ・きゃらっとより。ヴィータの中の人がでじ子と同じなので、その必殺技を受け継いでいます。

 グラスヒール!
 無限のフロンティアシリーズより。同じく声優ネタ。Wシリーズのアンドロイドである毒舌ロボ、アシェン・ブレイデルとシグナムの中の人が同じなので。

 世界メイド選手権
 遠野家の双子メイドは月姫、ディフェンディングチャンピオンのエマはそのままマンガ「エマ」から。リーラはまぶらほ、ドラエさんはツマヌダ格闘街、HMXシリーズはTo Heart、乃木坂家は乃木坂春香の秘密、花右京家は花右京メイド隊、安藤まほろはまほろまてぃっく、琴之宮雪は水月、ロベルタはブラックラグーンから。いずれも常識外れの能力を持ったメイドさん達であり、彼女らが持てる力と主への愛の全てを発揮するのが世界メイド選手権です。毎年各メイドが己の主人への愛を語るスピーチコンテストでは砂糖を吐いて悶死する審査員が後を絶えないとかなんとか。

 メイドガイ
 仮面のメイドガイより、コガラシさん。アニメにおけるヴィルヘルミナの戦闘モードをして仮面のメイドガイレディーと評するのをどこかで見たので、そのつながりで。たぶんあの人ならこの話の本筋に出てきても大活躍できるでしょう。

 再殺部隊
 吸血鬼になった錬金術師とかアトラス院を抜けたおねーちゃんとかはMELTY BLOOD、人形作るのが超上手い魔術師は空の境界より。この世界の再殺部隊は常設の特殊部隊で、そういうやばげな仕事を請け負う人たちです。

 戦国時代
 以前戦極姫な感じの歴史が紡がれているとは言いましたが、男武将がいないなんて一言も言っていない! と開き直ったわけではなく、最近戦国BASARAのアニメ第二期が始まったので。幸村は親方様がアレだからってロリコンなわけではありません。
 聖将っぽい雰囲気の謙信さまのとなりに鉄扇持ったにーちゃんを配置しようかと本気で悩んだのはここだけの秘密です。

 あんたって人はああああ!
 機動戦士ガンダムSeeD Destinyより。リュウタロスの中の人が主人公シン・アスカと同じで、幸村の中の人はキラの中の人と同じであるという声優ネタ。

 妖怪首おいてけ
 平野耕太のマンガ「ドリフターズ」より。主人公の島津豊久が手柄首を見る度に首おいてけと叫ぶのでついた名前。時系列を気にしてはイケマセン。

 ケータロス
 携帯捜査官7より。歩く携帯であるセブンが人間と共にサイバー犯罪に立ち向かう特撮。他のナンバリングの奴らは多分でてこないことでしょう。

 Dr.ヒネラー
 電磁戦隊メガレンジャーより。敵組織の大ボス、といっていいのでしょうか。世界をねじってひねって歪ませることを目的としていたので、フィリップが勘違いしたようです。

 ルビーステッキ
 Fate/hollow ataraxiaというかむしろプリズマイリヤより。ただし管理局のデバイスを見たゼル爺のせいでカートリッジ搭載型にされています。Fate本編で凛の使った宝石剣のごとく平行世界から魔力を引っ張ってこれるので、チートっぷりがマジパネェ。



F完結編

 無口な眼鏡少女と冴えない高校生くらいのあんちゃん
 涼宮ハルヒの憂鬱シリーズより、長門とキョン。今年中に新刊出るんですかねー。

 パスロエ地方に伝わる賢狼の言い伝え
 狼と香辛料より、ホロ。決して剣狼ではありません。ホロとは原作よりはまともな別れ方をしたため、ホロが出て行った後も研鑽を続け、世界屈指の良質の麦が取れるようになったらしいです。

 イギリスっぽい青年とゴスロリ風の服を着た黒髪の幼女
 ダンタリアンの書架より、ヒューイとダリアン。この本屋なら禁書しかないと言っても過言ではないでしょう。

 赤い本
 金色のガッシュより、赤の魔本。たぶん本棚の向こうには本と対応する魔物の子がずらりと並んでいることでしょう。

 指輪をつけると読める本
 ゼロの使い魔より、始祖の祈祷書。その他の三つも虚無の魔法を使えるようになるアイテム。ただし使い魔は付属しません。

 CD
 ジョジョの奇妙な冒険より。第六部のラスボスであるプッチ神父のスタンドは相手のスタンド能力とか記憶とかをCDとして取り出せるというもので、そのCDを使うとスタンド能力を使えるようになるとかなんとか。

 タロットカードみたいな縦横比のカード
 カードキャプター桜より、クロウカード。彼女がもとで道を踏み外した諸兄も多いはず。放送当時小学生だった私の場合は、むしろおかんも一緒に楽しんでみてました。

 チェンジ・ビートルその他
 仮面ライダーカブト、ではなくブレイドより、ラウズカード。アンデッドを封印し、その力を使えるようになったもの。コンボなどとても面白いシステムがあったものの、全部で52枚もあるので使われなかったカードもあったとか。たぶん一番有名なのはフロートじゃないかと。

 カウンターの中の二人
 このネタ書くときの心の師匠である這いよれ! ニャル子さんより、ニャルラトホテプのニャル子と主人公八坂真尋。今回の話書きつつ新刊読んでたら、向こうでも本ネタ使われててちょっとびっくり。でもネタいじりのセンスは敵いません。さすが師匠。
 従姉のお姉さんというのは、デモンベインシリーズの方のナイアルラトホテップのナイア。かの主人公大十字九郎は彼女からのお誘いを「俺やっぱりロリじゃなきゃだめなんだ……(意訳)」と言って断ったのだとか。

 「あなたが信じるあなたを信じなさい」
 天元突破グレンラガンより、中の人ネタ。やっぱり一年の内一つくらいはロボット物が必要だと思うんですよね、私。勇者シリーズカムバック。

 SEKKYOU
 とある魔術の禁書目録シリーズより、上条さんの説教。ディケイドと並ぶ説教の名手と評判なので借りてみたり。途中に混じっている「デュ↑―エルだぁ!」は満足同盟のリーダーである鬼柳京介から、最後の「絶望がお前のゴールだ」は照井竜から。満足とか絶望とか聞くと反射的にこう書いてしまいます。

 キャスターの説明
 仮面ライダー龍騎より。ただ設定似てるから混ぜるっきゃないと思ってやっただけなので聞き流し推奨。セイバーとアーチャーがサヴァイブにクラスチェンジしたりはしませんので悪しからず。

 不思議を探す集団
 これまた涼宮ハルヒシリーズより、SOS団御一行様。お騒がせな事件を起こしてはいるものの、ハルヒ本人が根本的に「そんなオカルトありえません」な性格らしいので、おそらくこっちの事件に気付くことはないでしょう。

 ハヤタさん
 冬木大橋の元ネタである神戸大橋がウルトラマンの映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」においてミライくんとハヤタの出会いのシーンなどで使われていたことから。映画で最初に出てきた風見鶏つきの洋館が遠坂邸に見えて仕方ないんですが。
 ハヤタ以外のウルトラ兄弟は、ダンが牧場、郷さんがサーキット、星司がホテルのレストランで働いている。映画の脚本段階では光太郎が水族館に勤めている、という設定になるはずだったらしいので、折角だからその話を入れておきました。

 ロシア風の紳士
 フルメタルパニック! より、カリーニン少佐。沈黙屋の客だけあって、中の人は大塚明夫さんです。
 その後の巨大ロボットの事件は、「疾るワン・ナイト・スタンド」より。

 帝都の警察
 巨大ロボと戦ったのは、機動警察パトレイバー、勇者警察ジェイデッカー、遊撃警艦パトべセルより。
 デカレンジャーは宇宙関連の事件の専門家であるものの、地球人同士の事件でも超巨大戦力が必要だったりすると手伝ってくれます。
 その後の捜査を担当したのは、ロボット刑事と特捜ロボジャンパーソンと究極超人あ~るより。あ~る君は警察とあまり関係ないような気もしますが、多分東大を出た後に警察へ入ったんじゃないかと。

 風見長官の双子の弟
 後述。

 大統領の好きなアイドル
 メタルウルフカオス本編において、大統領が副大統領であるリチャードを呼ぶ際の発音がどう聞いても「リッチャアアアアアアン!」なので。

 ケツァルコアトルスドーパント
 平成ガメラ第三作、イリス覚醒より。イマジンにつれてこさせた鳥が本当に鳥類なのかはなはだ疑問。

 先代キャスターの召喚した怪獣
 ウルトラマンティガより、ラスボスであるガタノゾーア。海底都市ルルイエの浮上と共に現れた邪神。ただしこの世界にはニャル子がいるのでルルイエは呪われた海底都市ではなく単なる宇宙規模のテーマパークかもしれません。

 海に落ちた火の玉
 ウルトラマンメビウスの映画に登場した怪獣、Uキラーザウルス。劇中では月でウルトラマンからエースまでの四兄弟と戦ったのちにボコられて地球に飛来したものの、怨念はこってりと残っていたのでウルトラマン四人のほとんどすべてのエネルギーで封印される。当然、現在の時間軸でも海の底に封印されております。

 トイカメラを首からかけた青年
 いろんな世界を旅している通りすがり。できることの規模から考えて、むしろ激情態……いや、なんでもありません。多分異空間のなかではディエンドがせっせと色んなライダーをカメンライドしてスタンバっていたことでしょう。

 大戦士長のセリフ
 アーマードコア・フォーアンサーより、中の人ネタ。ブラボーは「まだまだいけるぜ、メルツェエエエエル!」なんて叫んだりはしませんが。ちなみに、大戦士長の中の人ネタはまだやる予定です。

 キュアサンシャイン
 太陽繋がりで、仮面ライダーブラックRX、マジレンジャーからマジシャイン、太陽の勇者ファイバードを名乗りで。必殺技は無敵鋼人ダイターン3から。それにしてもシャイニータンバリンとプリズムビッカー、ブロッサム達のタクトとシンケンマルはとてもよく似ていると思います。

 ギルの武器
 刀語から、四季崎記紀の完成形変体刀。名前は十二しか出ていませんが、実際には千本の刀とかあるんで恐ろしい密度で飛んできていることでしょう。

 日本一の人
 特撮「怪傑ズバット」より、主人公早川健。中の人が風見志郎と同じ宮内洋さんであるため、出さないわけにはいかないだろうと。何をやっても日本一で、大統領並みにすごい人。ズバットスーツを着ないままの方が強いんじゃないかと言われるほどにすごい。
 この世界では幼いころに風見志郎と生き別れた双子の弟で、今では風見志郎とも仲が良く、気楽な私立探偵を営んでいる。



[20003] スーパー超人大戦α
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:cae9ab50
Date: 2010/10/17 18:04
 俺がこの世界で生きていく上で欠かせない物が情報である、ということは以前に語ったと思う。


 その理屈に則って通い詰めた図書館ではいろんな出会いがあったし、変な本屋を見つけてしまったりもした。
 前回行ったあの古本屋は、あのとき以来二度と見つけられることはなく、いっそ何か買っておけばよかったんじゃないかと思わないでもない……ということは別になく、普通にあれからもあの場所にあり続けました。
 しかも相変わらず、気付いたら時々引きずり込まれるように店の中に入っていたりするので油断がならない本屋である。
 この間なんて、絵本コーナーから赤ずきんのコスプレした女の子とシンデレラのコスプレした目つきの悪い女の人が「月光待っててね!」とか叫んで駆け出してきたりとかしたし。
 ……まあ、最近月がやけに青いしね。
 そりゃあ、こんなに月が青い夜は不思議なことが起きるよ。チャンドラマハルの王子様が跪いてワルツに誘ったりとか。


 ともあれ、そうやって多数の書物から情報を得る一方、インターネットもまた欠かすことのできない重要な情報源だ。
 本にまとめられるような過去の情報だけではなく、今現在起きている事件や現象にも注意しておかないと、後々の選択を誤ってしまうかもしれないからね。


 今までにもインターネットからもいろんなことを知ったもんだ。


 例えば、帝都や世界中で活動している怪盗達とか。
 ルパン三世にキャッツアイにセイントテールに怪盗ロールにジャンヌに怪盗キッドなどなどたくさんいて、警察もすごいがこいつらの身体能力とか科学技術とかもすごいのでなかなか捕まらないらしい。
 太正時代の帝都には特にそういった手合いが多くいたらしく、金田正太郎と鳴滝という二人の少年探偵がそれぞれの相棒ロボットとともに怪盗や怪人や犯罪組織と激しい捕り物合戦を繰り広げていたのだとか何とか。


 ともあれ、先に挙げたような現代の怪盗達の場合、盗まれた品物は元の持ち主に返されていたり、あまつさえ被害者の方こそ犯罪に加担していた証拠が見つかったりするので警察としてもそんなに真剣に捕まえなくていいんじゃね? という風潮が蔓延しているとかいないとか。
 そしてそういった華麗な怪盗達の影に、世界中で盗みを働こうとするものの毎回失敗しているドロンボー一味なる奴らもいたりするらしい。


 一方、そんな怪盗とは違って性質の悪い窃盗集団もいるにはいる。
 オーバーテクノロジーで作られたと思しきわけのわからん危険な能力を持つプレシャスと呼ばれるお宝を狙う集団とかがその筆頭だ。
 でもそいつらの相手はプレシャスの収集と管理を目的として設立されたサージェス財団のプレシャス回収チーム、ボウケンジャーがしてくれるので問題ないようでもある。いざとなったら警察とか宇宙警察とかも手伝ってくれてるみたいだし。


 そんなわけで、暇な時とかには家でパソコンとにらめっこしているわけなんですよ。
 さて、今日も今日とて自分の部屋のパソコンの電源をぽちっとな。


『おはようございます。独立型情報支援ユニット、ADAです』

「うん、よろしくー」


 ……ごく普通に量販店で買ったはずのパソコンなのに、いざ起動してみたらOSの代わりに良く分からないけど超可愛いAIが入っていたときの気持ちを理解してくれる人って、この世にいるのかなあと、このパソコンを使うたびに思います。


 と、とにかくそうして日々色々とニュースサイトや噂を集めたサイトをめぐって情報を仕入れていたら、興味深い情報を見つけた。


 世界的に広く知られていることだが、この世界の神奈川県には全世界的にその名の轟く超天才科学者がいて、かつて研究所を構えていた。……まあ、この世界にはそんな人が他にもたくさんいる気はするんだけどね?


 ともあれ、そんな科学者の研究所も今はない。昔、実験上の事故か何かで大爆発を起こし、周辺一体を焦土と化してしまうということがあったのだそうな。
 その場所は現在になっても復興が進まず、日本の夜景に黒い穴を開けていることから通称「ブラックスポット」とか、色々失われたから「ロストグラウンド」とか、大爆発のときに天地を貫いた光がまるで地獄の門が開いたようだったので「地獄門(ヘルズゲート)」とか呼ばれているらしい。
 基本的にその中はどんな危険があるかわからないので立ち入り禁止ということに表向きはなっているのだが、実際にはかなりの数の人がそこで生活していて、電気も通ってるのにどうして夜景は黒いままなのかとかそっちの方が謎らしい。


 そんなわけでブラックスポット内の情報もいくらかは外に出てくるのだが、それによるとどうやら最近そこに住んでいる人たちの中に、通常では考えられない超能力を持った人たちが現れたのだそうな。


 その人たちはそれぞれ能力の系統別にフラグメントだとかアルター使いだとか契約者だとか呼び名があるらしく、かなり物騒になっているのだとも言われている。
 ブラックスポットの中という特殊な場所事情のため、それらの能力についてあまり詳しい調査はされていないのだが、アルター使いは異界との交信が影響してのものであるとか、フラグメントはかつて全ての能力を併せ持った聖人の力が分かれたものだとか、その聖人の遺体を手に入れるとこれまた違った能力に目覚めるだとか、契約者はブラックスポット発生時に地球の反対側までを貫いたという光が原因だとかいう風に推測されている。


 ちなみに、そもそもブラックスポットができる原因になった研究所の主である科学者は、現在もその発明品が「遺産」と呼ばれて世界中の国やテロリストに狙われている、峰島勇次郎という人らしい。
 ……そういえば情報産業に絶大な影響力を持つ真目財閥もあったから、多分峰島勇次郎の娘さんは真目財閥の妾腹の子とらぶらぶしているのだろう。


 そんな話が、都市伝説の類を収集したサイトに書かれていた。
 ちゃんとしたニュースサイトで関連情報を調べたところ、ブラックスポットが現在も神奈川県に存在し、その内部に住む人が特異な能力を持っているということも事実とあった。
 何とか治安を保つためにどういうわけだか製薬会社のシメオンなる企業がブラックスポットに進出し、その治安維持部隊であるHOLDがブラックスポットで活動しているという話だが、はてさて。


 まあこういう風に色々調べているわけなんですよ。
 その日もブラックスポット関連の話を調べて、さあ次はどんなカオスが待っているのかと暗澹たる思いで別のサイトへのリンクをクリックしたら、突如インターネットが不調になった。
 何事かと思いつつも情報収集をしてみたら、どうやら世界中のインターネット利用者のほぼ全てが利用しているネット内の仮想空間「OZ」に不具合が発生したらしい。


 なんでも、OZ利用者のうちかなりの数のアカウントとアバターが何者かに奪われたのだとか。
 そして、現在その犯人と目されるアバターに対し、OZ内格闘技世界チャンピオンのキングカズマと、最近現れてから1ヶ月とかからずOZ内の空間戦闘ゲームでキングの座についたキングゲイナーがタッグを組んで、派手なバトルを繰り広げているとかいう話も流れてきている。
 ……思わず部屋から窓の外を見上げてしまう。そういやそろそろ夏だもんなあ。


 とはいえこの事態をどうしたものか。
 これはこれで世界の危機だし、時が来たら花札をしている人に俺のアカウントを託すくらいのことはしてもいいのだが、今日も今日とて冬木の町を守り、色々とヤバイフラグをへし折るために仲間達と出かける用事があるからあまりパソコンに張り付いてもいられないのだ。
 そんな風に悩んでいると、パソコンの中から声がかけられた。


『私を行かせてくれないか。彼らの助けになりたいんだ』

『私も同じ気持ちだ。頼む』


 ウィンドウを開いて俺に声をかけてきたのは、俺のパソコンの中に居候している人たちだ。
 何のことかと思うかもしれないけれど、まあ簡単に言ってしまえば以前インターネットをうろうろしていたところを保護したAIといったところだろうか。


「うーん、まあ確かに二人に頼めばこういう事件は大体なんとかなりそうだしなあ。それじゃあよろしく頼むよ、グリッドマン、グラディオン」


 ……いやー、ADAに加えてこの二人が来てくれてからうちのパソコンのセキュリティは不安なんてなくなったし、どういうわけか性能も上がったしでいいこと尽くめだねー。
 せっかくだからグリッドマンにはアシストウェポンであるダイナファイターとキングジェットをつけて、キンググリッドマンになれるようにしておいてあげた。これで三人のキングがそろい踏みだよ、やったね。


 ちなみに、グリッドマン達が入ってきてもパソコンの中のHDD容量はほとんど圧迫されませんでした。
 さすが、グリッドマンの方のラスボスはやろうと思えばフロッピーディスクに入れるだけあるね。



 そんな風に過ごす日もあったりしますどうもこんにちは俺です。
 ちなみにこの事件のあと関連ニュースを調べてみたら、事件の犯人であるAI「ラブマシーン」はキングカズマとキングゲイナーと、さらに突如乱入した謎のアバター2体――画像を見たらキンググリッドマンとグラディオンでした――によってボコられたのだとか。
 しかしその後再起して盗んだアバターの権限で現実の諸々に介入しようとしたところを花札勝負におびき出されて負けたという話だ。
 さらに、そのときラブマシーンによって地球に墜落させられかけていたはやぶさに次ぐ宇宙探査機「あらわし」は、はやぶさのときと同様いつの間にかちゃっかり宇宙に上がっていた大統領の手によって回収されてました。
 しかも大統領はそのまま落下地点にあった、事件の原因の一部にして解決の功労者である陣内家の16代当主の葬儀兼誕生パーティに普通に参加していたとかなんとか。


 ……なんにせよ、以前の副大統領によるクーデターに引き続き今回もこんな事件を起こしたアメリカの軍部が大統領によって本格的かつ物理的に壊滅させられないことを祈るばかりである。南無。



 こんな事件すら日常的に起きているあたり、本当にこの世界はどうなっているんだと考えるたびに頭痛に襲われるので、最近はもう火山の噴火で宇宙に放り出された究極生物よろしく考えるのを、やめた状態になりつつあります。
 ……気になって調べてみたら、本当に1939年にイタリアのヴォルガノ島の火山が突如原因不明の盛大な噴火してて軽く鬱ったりもしましたが。


 ともあれ、俺に直接の関係がある事件について、今日もまた聞いてください。



 まず前回井坂先生がケツァルコアトルスメモリを持ち出したことから予想はしていたものの、照井がいい加減井坂先生を放って置けなくなったのでシュラウドに頼んで新たな力、トライアルメモリを手に入れました。
 井坂先生に関わるときの照井はそれはもう荒んでいて、プリキュアの子達を筆頭にした小さい子たちはそれこそ見ていられないといった風になっていた。
 ただ照井自身は割りとなりふり構わないので、シュラウドに課せられたバイクの訓練に行き詰ったらものすごい形相でフェイトに高速移動のコツを聞いたり、つぼみちゃんとえりかに赤い心の種を使ったときのことを聞いたりしていた。
 聞かれたほうの子は照井のマジっぷりに当てられてビビッて話どころじゃなかったのは言うまでもない。


 ともあれシュラウドの記録詐称もあって、照井は死亡フラグなど立てつつ井坂先生との決戦の場に向かっていった。
 おそらく今頃テラーパパにケンカ売った井坂先生も冴子さんと一緒に死亡フラグを立てていることだろう。
 照井と井坂先生の決戦は、正直他の誰かが介入するようなことじゃない。見届けの役目は翔太郎たちW組に任せておこう。……ということにして他の人たち、とくにプリキュア組とリリカル組の女の子たちを遠ざけておきました。
 小さい子に井坂先生の死に様はトラウマ過ぎるからね。
 とくになのはちゃんやフェイトが変態ドクターをトラウマとしてしまった場合、10年後に起きる事件で面倒なことになりかねないし。



 そしてこの事件のあともWに関係する事件が多く起こった。
 まずは、冴子さんナスカ化事件。しかもイマジン付き。


 冴子さんは原作通り園崎家から放り出されてしまったらしく、タブーメモリも失ったせいでナスカメモリを手に入れようと画策したものの、ナスカメモリを隠してあった園崎家のビルは原作よりも警備が強化されていたために侵入できなかったらしい。
 だったらあきらめればいいのに、そこは井坂先生に惚れた人。
 俺たち一行が事件を察知して駆けつけたときには、そこらにいたイマジンをとっ捕まえて無理矢理願いを言いつけ、ナスカメモリを回収してクレイドールになった若菜をいじめようとしていた。
 ……ちなみに、冴子さんが気絶から目覚めるまでの時間は井坂先生よりさらに早かったです。げに恐ろしきは女の執念ですねー。


 ナスカは高速移動がメインであるので照井やフェイト、ハートキャッチ達高速組に任せ、残りのメンバーはデンライナーでイマジンを追った。


 今回たどり着いたのは、約1年前のとある孤島。
 そう、仮面ライダーWが生まれた日である、翔太郎とフィリップのビギンズナイトだ。
 正直ちょっと後悔した。若菜が実の姉だと知って動揺しているフィリップを向こうに置いておくべきではないと判断し、この時間に翔太郎達を連れてきてしまったことを。



 俺たちがイマジンを追い詰めている間にビギンズナイトの事件は順調に進んでいた。
 鳴海のおやっさんが冴子さんと戦い、翔太郎がフィリップと出会い、……そして、おやっさんがミュージアムの凶弾に倒れた。
 今と過去、駆け寄ろうとする二人の翔太郎のうち、本来いてはならない今の翔太郎を必死に押え、翔太郎とフィリップに再び撃たれるおやっさんを見せてしまったのだから、後悔しないはずがない。


 ただ、一つだけいいこともあった。
 床の崩落とともに階下に落ちたおやっさんと翔太郎が、わずかながら話をすることができたんだ。
 そのときの短い会話は、どうにも忘れ難い。


「おやっさん!」

「……翔太郎? ……よくはわからんが、成長しているようだな。帽子が、少しは似合うようになったじゃないか」

「っ、おやっさーん!!」


 ただそれだけの言葉を最後に、俺たちとおやっさんの間に更なる瓦礫が降り注いで遮られた。


 イマジンを倒し、デンライナーで現在へ戻る間、翔太郎とフィリップは思いつめた顔をしていたが、決して悲観はしていなかったと思う。



 その後も、現在に帰ったら若菜がエクストリーム化して逆に冴子さんをいじめ返したり、良太郎先輩がみんなに負けないようにと頑張ってライナーフォームに覚醒したり、電王の二号ライダーである侑斗が錆びたりと色々あったんだが、その辺の記憶はちょっと曖昧だ。
 ……なぜなら、それらの事情とかシリアスな雰囲気をすっ飛ばすほどオソロシイドーパントと出会ってしまったのだから。


 そのドーパントの名前は、オールドドーパント。
 精神干渉によって人の年齢を自在に操作することのできる能力を持ったドーパントだ。
 この事件の間、井坂先生が照井に残した「シュラウドに運命を握られている」とかそんな感じのセリフがもとで照井がシュラウドを詰問したりもしていたが、問題はそこじゃない。
 本来ならば翔太郎が受けるはずだった年寄り攻撃を受けてしまった相手が、問題なんだよ。


「さあ、一気に100年くらい年とっちまえ!」

「えっ、きゃああああ!」

「なのは! くっ、こっちにも!?」


 そう、なのはちゃんとフェイトである。
 翔太郎のときは50年分くらいだったというのに一気に100年。これはまずい、とみんなが思った。
 ……100年分の年を取ったはずのなのはちゃんたちが、姿を現すそのときまでは。


「ああもう、うっとうしいわね。祟り殺されたいのかしら?」

「どわあああ!?」


 まず陰鬱な声とともに、砲撃かなんかでオールドドーパントを吹っ飛ばしたなのはちゃんは、……なんというか、髪が黒く長くなっていました。
 普通なら白くなるところでしょうに、何回も人生をループしてそうな疲れた声音に、角の生えた巫女服幼女のスタンドを従えていそうな雰囲気でそれはもう怖かったです。


「な、なのはちゃん……?」

「なんなのですか、士郎? にぱー☆」


 とか思っていたら一転して可愛らしい笑顔を浮かべてきたりとか。
 ……おいオールドドーパント、お前本当に年齢操作したのか!? なんか別のものになってない!?


「おーっほっほっほ! わたくしをド忘れて貰っては困りますわ!」

「ふべらあああ!」


 一方同じく砲撃かなんかでオールドドーパントをぶっ飛ばしつつ現れたフェイトも姿が変わっている。
 なのはちゃんと同じく、こちらも確かに体が大きくなってはいるんだが、どう見ても100年も年をとっているようには見えず、若さバリバリのスタイルだった。
 さらに金髪の色が少し薄くなり、成長した体を包むバリアジャケットもソニックフォームのごとく露出が増えて派手に横乳を出し、しかもバルディッシュの形が剣とギターの合体したようなものになっていた。


 そして何より喋り方。
 それまでのフェイトとは似ても似つかない高飛車なお嬢様口調で、「ド派手」とか「ド激しく」とかやたらと強調するようになる始末。


 ……なんかこのドーパント、確実にオールドとは違うものな気がしてきた。


「いくわよフェイト、合わせなさい」

「よくってよ、なのは!」


 しかも、一応互いが互いと認識できてはいるらしい二人が、合体攻撃を放った。
 フェイトがそこらじゅうにばらばらと宙に浮かぶ鏡をばら撒いてオールドドーパントを取り囲み、なのはちゃんはエネルギーをチャージ。
 オールドドーパントは何が起こったのかわからずそれはもう取り乱し、そんなことをしているうちに……。


「「光と闇の舞!」」

「だぎゃああああああああ!!?」


 ……拡散したビームを鏡で反射させて全方位からぶち当てるというなんとも勇者的な必殺技を放ちました。


「だああっ、くそ! なんなんだよこいつら! もう、元に戻りやがれ!」


 さすがにこのままだとまずいと判断したか、くるりと前後逆に振り返って再びなのはちゃんたちに年齢操作を施すオールドドーパント。
 おそらく元どおりに戻るはず!
 オールドの攻撃を受け、再び姿を現したなのはちゃんたちは……、しかしまた微妙に服が違っていた。


 前はかろうじて魔法少女らしくもあったのに、なのはちゃんのバリアジャケットに胸部装甲が追加されていたりレイジングハートにどう見ても引き金としかいえない部品がついていたり、フェイトのほうはあまり変わらないけどバルディッシュがそこはかとなく禍々しい形になっていたり。


「ああっ、あれはもしや!」

「知ってるの、ルビー?」


 それを見て声を上げたのは、なんとルビーステッキだった。
 ルビーは最近、持ち主を凛からイリヤに鞍替えし、ローティーンの魔法少女を手に入れてご満悦になっている。
 この間もイリヤを初めてプリズ魔イリヤに変身させたとき、


「魔法少女はローティーンこそが究極にして至高! これで私の真の力を発揮すれば非殺傷設定などという言葉で魔法少女を魔砲少女に変えることもないですし、19歳にもなって魔法少女を名乗り、25歳になっていい加減少女を名乗れなくなったら戦記に宗旨変えするなどということもさせません!」


 などと叫び、なのはちゃんにガン睨みされていた。
 とまあそれはさておき今のなのはちゃんたちだ。何か知っているらしきルビーに解説をお願いしよう。


「あれこそまさに、魔法少女激情態!」

「激情態!?」

「はい、カードをキャプターする魔法少女や魔女の正体を見破ってカエルにしたおジャマな魔女っ娘など、ごく一部の選ばれし魔法少女のみがたどり着けるという限定フォーム! 間違いありません!」


 ……このあと、ルビーの言葉通りにパワーアップしたなのはちゃんたちはテレビシリーズではありえないような威力の魔法とか色々使って、オールドドーパントを倒してくれましたとさ。
 なのはちゃんがスターライトブレイカーを使うときなんて、どこからともなく魔王的なBGMが流れてきたように錯覚するほどの威力でしたよ。



 そんなこんなでオールドドーパントを倒し、なのはちゃんたちの姿が元に戻って風都(と俺の精神)に平和が戻ってきた。ちなみになのはちゃんたちは姿が変わっていた時のことをほとんど覚えていませんでした。
 まあなにはともあれ、平和って素晴らしい。
 ただ黙って呼吸をしていても頭痛がしたりしないんだから、と平和を満喫しながら風都を散歩していたら、頭上をヘリが飛んでいた。
 あのヘリに乗っている人もきっと平和なこの町を眺めているんだろうなぁと思いながら見ていたら、そのヘリよりもさらに上空を飛んでいた飛行機から何かが落ちてきてヘリに取りつき、しばらくしたらヘリが爆発炎上して墜落した。


「……は?」


 呆然として見ていると、ヘリから小さな光の塊がちらほらと町に向かって降り注いでいく。
 その数およそ26。


「……え、ひょっとして地獄を楽しまなきゃいけないの?」



 そして始まりましたW劇場版。風都の町の人たちが運命のガイアメモリと惹かれあったりする大事件です。
 この事件もこの事件でひどかったですよー。
 なんか風都にばら撒かれたT2ガイアメモリは適合率の高い人とそれこそ運命じみた引力で引き合う性質を持っているせいか、いろんな人のところに降ってきたし。


「あれ……これって、翔太郎さんの持ってるガイアメモリ?」

\トォリガァー!/

「なのはちゃんそれはだめええええええええ!」


 敵を減らしてくれるから良いような気もするけど、同時に手のつけられないドーパントになりそうだから必死に止めたり。


「こ、これがあればひょっとして、俺も仮面ライダーに……っ」

\ダミー!/

「いや、それダメなメモリの筆頭だぞ士郎。姿とかはライダーっぽくもなれるしお前にはぴったりすぎるけど」


 既にメモリの毒素に犯されそうになっていたり。


「あらら、まさか僕のところにまでメモリが来るとはね」

\ライアー!/

「うん、絶対ウラタロスにはそれだと思ったよ。てーか過剰適合しそうだからやめとけな」


 メモリとの適合率が超高そうで、ある意味最強のドーパントになりそうな奴がいたり。


「うーん、もうちょっと早ければ使ってあげてもよかったんだけど」

\マネー!/

「普通に必要だったら使う気でいるんじゃねえよ」


 金策の手段を一度失敗した競馬から麻雀へと変え、最近でははやてとコンビを組んで嶺上開花を連発したり、東場に強いシャナを連れて行って荒稼ぎできるようになったあかいあくまはさらっと流したり。


「あらー」こたぷーん

\ゾーン!/

「……ごめん、君何者?」


 どことなく765プロの三浦あずささんに似ていて、なんかこたぷーんな感じの、メモリ必要のなさそうな小さい人(?)が風都に現れたり。



 ……なんか明らかにT2メモリの総数が26じゃ収まらないことになってる気がするんですが。


 幸いどれも未然に使用を止められたからよかったものの、一部ドーパント化していたらどうなっていたか想像もしたくない人たちもいたりした、恐ろしい事件だ。
 ……え、俺? どのメモリにも見向きもされなかったともさ!


 そして、忘れちゃいけないのがプロフェッサーマリア。ある意味この事件の元凶にして、最大の被害者であるサイクロンドーパントの人だ。
 フィリップにシュラウドの中の人だと勘違いされ、その感情を利用しようとするも悪女に徹しきれず翻弄された母親。
 罪なき人ではないだろうが、とても優しい、立派な母ではあったのだろう。
 ちなみに、フィリップだけじゃなくてフェイトとかプリキュア5のうららもなびきかけていたあたり、その母性は並ではない。


 そんなこともありつつ、この事件は基本的に映画の通りに進行していった。
 風都を暴れまわるNEVER達、というか仮面ライダーエターナルによって第一世代のガイアメモリが力を失い、翔太郎はおやっさんから受け取ったというロストドライバーと、翔太郎に引き寄せられたジョーカーのT2ガイアメモリによって仮面ライダージョーカーに変身し、攫われたフィリップの救出に向かう。


 もちろん仲間達も協力して、まっすぐな弾しか撃てないトリガードーパントがなのはちゃんの誘導弾でボコボコにされたり、冷え症を気にしているヒートドーパントがキュアルージュと(温度的な意味で)熱い戦いを繰り広げたり、オネエ口調でどことなく変態臭いルナドーパントがパピヨンと変態対決をしたり、筋肉バカっぽいメタルドーパントが同じくロッドを使う電王ロッドフォームのウラタロスに主に口八丁で翻弄されたり。


 そうそう、俺は遭遇していないんですが、やっぱりオーズも助けに来てくれていたようです。
 あの変身音、ぜひとも聞いてみたかった。
 


 そんなこんなで風都タワーでダブルとエターナルの最終決戦が行われ、風都壊滅の危機にさらされたりしつつも羽の生えたCJXが何とか勝利してくれました。



 それが今回の事件のあらましです。
 基本的にW関連の事件が多かった今日この頃、相変わらず魂の危機とトラウマの危機が倍プッシュ、略してタトバコンボで襲ってくる日々。
 クライマックスに近づいてきたこれらの事件が終わるのと俺の精神がオワタするのとどちらが早いんでしょうか……。

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 先日は別作品を投稿時に操作をミスって更新もないのに上げてしまい申し訳ありませんでした。
 こっちはもう少しで完結予定ですので、今しばらくお付き合いくださいませ。



[20003] 第二次スーパー超人大戦α
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2010/10/17 18:12
 W劇場版の事件が終わり、その他の陣営もそろそろクライマックスが近づいている今日この頃、誰からともなく第二回の新しい仲間歓迎会を開かないか、という話題が上がってきた。


 確かに、これまでの状況を考えればそれぞれの最終決戦とかその他はもうすぐ起こるだろうし、そうなってしまえば楽しい思い出を作るどころではない。
 原作その他を知っている俺からしても今が最後のチャンスだろうと思うし、他のみんなもそのあたり本能的に察しているのだろう。誰しも乗り気でやるべきだ、いまやるべきだすぐやるべきだと話がとんとん拍子で進み、あっという間に準備が整った。


 今回は以前のサッカー大会のように種目を一つに絞らず、いろんなことをすることになるのを止めることができたのは、この時が最後だとも知らずに……。



「歓迎しよう、盛大にな!」


 そんな台詞を叫ぶのは、どこからともなく現れた大戦士長。
 今回の歓迎会は人数も増えたから、確かに盛大なことになってるんだけどね。
 ちなみに、この歓迎会の資金の一部は錬金戦団の提供でお送りしております。


「士郎、おかわりを」

「うわっ、りんちゃんのラーメン美味しそう! 私にもちょうだい!」

「うっさい、ナルトは絶対あげないってばよ!?」


 士郎や凛やら料理の作れるメンバー総出でセイバーたち大食連合を迎え撃つための料理を作り、作る端から食われていくという絶望的な戦いを繰り広げる一団があった。


「米炊けたぞ!」

「炒飯作るわよ!」

「おにぎりなら作れますっ、それも早く!」


 ……とりあえず、桜が口走ったそのセリフが不穏過ぎたのでおにぎりはちゃんと普通に作るか監視しておきました。


 とはいえさすがに途中で料理人達の体力というか生命力まで尽きそうになっていたので、出前を頼んでなんとか乗り切りました。
 沈黙屋とか泰山とか、甘味系として翠屋とか、最近主にうちの女の子たちの間で人気の甘味処「たちばな」なんかに注文をした。
 余談だが、「たちばな」は昔レーシングクラブを運営していたというおやっさんが経営していて、出前を持ってきてくれたのは店の手伝いをしている孫の女の子であり、以前泰山で麻婆豆腐を食べていた天使のように可愛らしい女の子だった。



「全て、振り切るぜ!」

<<Sonic move>>

「レッドの心の聖なるパフューム! シュシュッと気分でスピードアーップ!」


 相変わらずフットボールフロンティア並みの技が乱舞するサッカー会場では、照井やフェイトやハートキャッチ組が加速まで駆使して常人の目には捉えられない超高速戦を繰り広げていた。
 最近、トライアルのマシンガンスパイクと、それと互角の速さのプリキュア二人の蹴りを受けて行ったり来たりしても破裂しないボールこそがあのフィールドの中で最強なんじゃないかと思い始めてきた。
 あ、キュアサンシャインがゴールドフォルテバーストの弾幕にまぎれさせてゴール決めた。本来のポジションはキーパーで、キュアミントともどもシールド技で文字通り鉄壁の防御を敷いてるはずの人がなにやってんだ。



「よし、ニードルワームを反転召喚してリバース効果発動! お前のデッキの上からカードを五枚墓地に送ってお前のデッキは残り一枚、ターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー! ……これで私のデッキは0。でも悲しいかな、これが私の切り札よ。墓地にライトロードと名のつくモンスターが四種類以上存在する場合、このカードは特殊召喚できる! さあ、裁きの名の元、全てを消し飛ばしなさい、裁きの龍!!」


 家の中にいるメンバーはカードゲームなどに興じていて、普段の穏やかな性格からは思いもよらないデッキ破壊をしているデネブと、ライトロードを使うくるみがデュエルしていた。
 ライトロードにデッキ破壊というある意味相性最悪の組み合わせだったのだが、どうやらくるみの勝ちのようだ。
 ちなみに俺たちの陣営でもデュエルモンスターズはかなり人気があって、みんな結構盛んにデュエルしている。
 使用するデッキも様々で、例えば士郎はベンケイ1kill、凛は元キング風のレッドデーモンズドラゴン、セイバーはなぜかD-HEROに光と闇の竜を入れたデステニーライダーがお気に入りらしい。
 


「僕達は、二人で一人の仮面シンガーだ!」

「あーもう、しょうがねえな!」


「俺の歌を聞けぇ!」


 そんなこんなで狂気一歩手前の盛り上がりがどんどん悪化していく中、仮面で顔を隠したフィリップと翔太郎にしか見えない男二人と、小さな黒丸メガネをかけたファイヤーでボンバーな感じのにーちゃんがライブを始めた。
 ……黒丸メガネにーちゃんの髪が青いこととか、マイクスタンド代わりにされている赤い槍とかはスルーしてあげよう、うん。多分色々ストレス溜まってるだろうしね。


 そういえば、フィリップは前に俺たちの学校群の一つを見学しに来たときに見た高校生の軽音部にやたら興味を示していたし、あのピザ好きの亀みたいな仮面つけて舞台に上がったのはその影響もあるかもしれない。
 その軽音部というのは最近共学化した桜才高校とかいう元女子校の軽音部で、ベースの子とその学校の生徒会長、ドラムの子と書記の子の声がそっくりだった。……下ネタ連発する生徒会役員共と軽音部の子達で頭の中身はまるっきり違っていたが。


「ほらほら、フェイトちゃん。一緒に歌いましょう!」

「わっ、わっ、待ってよつぼみ!」


 そんなステージを見ていたら、意外とカラオケとか好きなのか花咲さんちのつぼみちゃんがフェイトを引き連れて舞台に上がり、二人で超上手い歌を披露してくれた。
 ……つぼみちゃんの趣味に引きずられてか、歌ったのは演歌だったんだけどね! まるで小さい頃に演歌のカセットを発売したかのような、異様に慣れた感じで歌ってました。



 とまあ大体そんな感じで、あちらこちらにカオスを振りまく歓迎会を皆楽しんでいたようだった。
 ……夜になるとどこからともなく酒が出てきて、飲んだセイバーが黒化して士郎を兄くんと呼ぶようになったり、シグナムが熱暴走したかのように湯気を吐きながらやたらとテンションの高いボクっ子になったり、ヴィータが髪を振り乱してデスメタルを歌い始めたり、シャナが悠二をバカ犬と罵ったり、ライダーとヴィルヘルミナはろれつが回らなくなって互いを「はるか」「ひびきちゃん」と呼び始めたり、カズキがどっからか持ってきた黒い仮面をかぶって「合衆国日本!」とか叫んだりしていたような気もするが、俺はプリキュアのみんなやなのはちゃんといった健全な子達を寝かしつけに行っていて一切関知してませんので悪しからず。
 ……見てないよ。なんか空間が歪みそうになっていた酒盛り会場なんて絶対に見てないよ!



 まあそんな感じの、全体的に楽しい歓迎会でした。
 平和は素晴らしいとか思ってたんですけど、平和なら平和でまた別のカオスが襲ってくるとわかりましたこんにちは俺です。
 ……あと少し、あともう少しで諸々片付くから、それまでの我慢だぞ俺! と最近は一日数回言い聞かせてなんとか生きております。


 ともあれそんな風に前回W劇場版の事件を片付け、歓迎会も済ませてからのことをお話しましょう。


 まず、あの歓迎会の直後、俺に二件の連絡が入りました。


 そのうち片方の人とは直接会ったことはないインターネット上の知り合いで、他愛のない話をしているだけでも超天才だということが分かるすごい人だ。
 どのくらい天才かというと、ネット対戦ゲームをしている最中に


「お前は次に『やめてそれだけは』と言う」

「やめて、やめてそれだけは! ……はっ!?」


 とか言ってくるくらい、人の思考とか読んできます。この後俺の操るキャラクタは、相手の技である茨の鞭でがんじがらめにされた上でバラバラにされました。
 ……思わず親戚にジョースター家の人がいないか聞いてしまいましたが、ジョースターも東方も汐華も親戚にはいないそうです。よかったよかった。


「そういえば、ニュースを見たぞ。OZを騒がせたAIと戦った謎のアバター、あれが着込んでいたのはアシストウェポンか?」

「そうですよー。すっごく役に立ってくれたみたいです。さすがですね、安藤さん」


 言い忘れていたけれど、この知り合いというのは落ち着いた中年女性の声をした安藤さんと名乗る人で、超天才なところを生かしてグリッドマン用のアシストウェポンなんかも作ってくれている。こういうのが欲しい、といったらあっという間に作ってくれるんですよこの人。
 ちなみに話をしていて知ったのだが、どうやら安藤さんも使っているパソコンの中にOS代わりのAIが入っているらしく、ADAと自分のところのAIを比べてはうらやましがっている。


「まったく、風間と来たらいつもロクなことをしなくて困る。その点ADAは素直でうらやましい限りだ」

『光栄です』


 風間、というのが安藤さんのAIらしい。皮肉屋な男だという話で、安藤さんとの会話の途中に時々バシンバシンと何かを叩く音が入るのは風間の言動にムカついた安藤さんがパソコンをそこらに叩きつけている音のようだ。


「ところで安藤さん、その後彼とのやりとりはどうなりました?」

「なっ……! ま、まあ君なら聞く権利はあるだろう。……そ、その、な。私からのあ、あああアプローチの結果、……でででデート、とやらに誘われた」

「ほほう、それはなにより」


 ついでに、こんな感じで思い人がいるらしく、恋愛相談をされてアドバイスの真似事をしてみたりした。
 そしてその辺の反応からするに、おそらく中年女性なのは声だけで実際には若い人なんだろうとある日ADAと話していたら、風間から未加工の音声サンプルが送られてきた。
 試しに聞いてみたら本当にかわいらしい声の女の子でした。



「そっ、それより、本題だ! 君に頼まれていた人工衛星は見つけたし、そこと通信できるようになる装置も作って、すでに送ってあるぞ。……何に使うのかは聞かないが、気をつけろよ」

「うん、ありがとう安藤さん。いつもすみません」

「なに、闘真と会うとき意外は暇で暇でしょうがないからな。こうして話し相手と出会えただけでも僥倖というものだ。こちらこそ感謝している」


 そして、送ったものの受け取り方を聞いてその日の通信はおしまい。
 最初グリッドマンがこの人の話し相手になってやってくれ、と言って繋いできたときは何事かと思ったけど、意外といい人でよかったよ。
 ……ちなみにADAに調べてもらったら、この国の峰島勇次郎の遺産研究機関ADEMが地下1200メートルに及ぶ研究施設を所有していて、安藤さんと知り合ったころにそこの情報セキュリティが破られたらしいという話もあったけど、まあそれはこの話と一切関係ないよね、多分。



 ともあれそんな感じで一人目との話が終わり、別の日に次は二人目。
 今度はデンライナーとかでも時々顔を合わせることもある、我らが陣営の軍師的ポジションであるキャスターで、頼んでおいた調べ物の結果が出たので報告その他を取りに来い、とのことだった。
 指定された場所である風都の一角に行ってみると、そこには一軒の喫茶店があり、店名は「魔女の巣」とあった。
 ……どっしりしたドアとかそこはかとなくおどろおどろした外観とか店名とかから言い知れぬ不安を感じながらも店に入ってみると、カウンターの中に店主らしき人と、席に何人かの女性客がいた。


「いらっしゃいませ……って! あなたはあのときの!?」

「いや、あなたこそなんでこんなところにいるんですか、プレシアさん」


 まず店に入った俺に声をかけてきたのは、誰あろうカウンターの中で女店主と言った風情の格好をしている、フェイト・テスタロッサの母親ことプレシア・テスタロッサさんだった。


「わ、わわわ私はプレシアなんて名前じゃないわ。……そ、そう、私の名前は、シュラウドよ」

「そこらへんにあった布巾で顔の下半分を隠しただけでシュラウドとか名乗らないでくださいな。つーか本物もいるじゃないですか隅のほうの席に!」


 テンパったせいかどことなくドジっ子じみた行動をし始めたプレシアさんの態度にも我関せずを貫くシュラウドが店の隅にいた。
 くてりとテーブルにうつぶせになり、なんかいじけた雰囲気で対面に座っている人に慰められている。


「シュラウド、飲みすぎよ……」

「誰のせいだと思ってるのよ……来人の母親は私なのよ!? なのになんであなたが母さんなんて呼ばれるのよマリア!」

「そ、そんなこと言われても……」


 ……なんだこの風都の二大魔女。シュラウドが包帯巻いた顔でどうやって酒飲んでるのかはともかく、大道克己に撃たれたはずのマリアさんはどうして生きてるんですか。


「ああ、それは私が助けたのよ。マリアにはアリシアの蘇生でお世話になったから」

「……詳しく聞かせてもらいましょうか」


 聞くところによると、プレシアさんは時の庭園での決戦でアルハザードを目指して次元の狭間に消えたあと、やっぱり失敗して時の庭園が崩壊し、もうだめかと思ったのだが、そのとき不思議なことが起こって気付いたら風都にいたのだという。
 次元の狭間で見た最後の記憶は、灰色のオーロラのようなカーテンのような、そんなものの向こうでマゼンタ色した仮面の戦士と黒い仮面の戦士が敵と激しい戦いを繰り広げていて、黒い方がベルトの石から赤い光を放ったのを見たような気がするとかなんとか。
 それならしょうがないな、うん。


 ともあれそんなわけでこの世界に返ってきて、何がなにやら分からぬままにさまよっていたらプロフェッサーマリアと出会い、境遇が似ているために意気投合。それまでの研究成果とNEVERに関する技術をあわせて、一緒に風都に流れ着いていたアリシアを蘇生させることに成功したのだそうな。
 しかし、蘇生したアリシアにフェイトに関することを知られてアリシア大激怒。フェイトに謝るまでは二度と口利かないといわれてしまったのだとか。
 プレシアさん自身謝りたいとは思うものの、今まで自分がしてきたこととか今この街で起こっていることとか考えると下手に動くわけには……とか考えてどうしようもなくなったところ、散歩の途中に迷い込んだシュラウドの森で知り合ったシュラウドに洗いざらいぶちまけたら同情されてこの店を与えられ、ひとまず喫茶店経営とかして腰を落ち着けて考えることになった。


「で、こんな店になったと」

「この町の女性は皆優しいわ」


 ふと見回せば、店の中にはさっきのシュラウドとプロフェッサーマリアに加え、いつの間にかやってきたマージョリーさんに、俺をこの店に呼びつけた張本人であるキャスターがいて、リンディさんがやたら甘そうなケーキをほお張る横でつぼみちゃんのおばあちゃんがコーヒーを飲んでいる。
 ボックス席には白黒の魔女っぽい服を着た金髪の女の子と、人形をたくさんまとわりつかせた青い服の金髪少女と、眠そうな顔して本を読んでいる紫もやしな感じの女の子がたむろしているし、また別の席ではセーラー服にマントととんがり帽子という妙ないでたちで凛やはやてにそっくりな声をした魔女っぽい女の子が、黒づくめの服にゴージャスな金髪をした女のこと何やら物騒な空気を放ったりしている。
 それらを見ていてふと思い出す店名、魔女の巣。
 言い得て妙にもほどがある。


「見て見て、リンディさん。私の甥っ子から写真が届いたのよ」

「へえ、とても素敵な笑顔だわ。強くて優しそうな、素敵な甥御さんですね」

「ええ、2000の必殺技を持つんだって子供の頃からすごいがんばり屋さんで、私も昔はいくつか技を教えてあげたりしたのよ」


 今は1999の必殺技を持ってるって言ってたわ、と薫子さん。……そういえばあなたの旧姓五代さんでしたよね!
 とりあえずしばらく長野方面には絶対に近づかないようにしよう。


 つーかあれか、この店の客は全員プレシアさんとグルか。
 道理でいつまでたってもリンディさんがフェイトを養子にしたいとか言い出さないはずだよ。あ、ちなみにフェイトはシャナや斗貴子さん達と同じく衛宮邸の居候の一人になっています。セイバーや斗貴子さんやシグナム達と毎日楽しく模擬戦して最近ますます強くなっているらしいですよ?


「あ、あのそういうわけだから、このことはフェイトには……」

「はいはい、その辺はわかってますからご心配なく」


 なんかプレシアさんがやたらと残念な感じになってしまっているが、それでもこの様子ならハッピーエンドも遠くないかもしれないと、何となくそう思った。



 ともあれ、この店に来た用を済ませるためにキャスターからの報告を受け取る。
 今度はキャスターに心の大樹についてともう一つ、調べてもらったんだった。


「こっちも割りと調べやすかったわね。以前聖杯戦争について調べたときの資料と、フィリップとユーノが無限書庫で仕入れてきた資料が役に立ったわ」

「無限書庫はともかく聖杯戦争について……ってどの辺が?」

「神崎士郎のライダーシステムに関する資料ね。ミラーワールドのライダーシステムの参考にされたものの一つが心の大樹と関係していたのよ」


 キャスターの話によれば、ローゼンという人形師の作り上げた人形、ローゼンメイデンが人の心の中の世界とかを通じてお互いの存在を賭けたバトルロイヤルを繰り広げ、完璧な少女になろうとしているのだとかなんとか。
 そしてそのローゼンメイデンたちの戦うフィールドとして人の心の中、通称「nのフィールド」が使われ、そこが心の大樹に繋がっているらしい。
 ……そういえば、主人公が赤くて戦いに積極的じゃなかったりライバルが黒くて病気の彼女がいたり黄色いのが卑怯もラッキョウもあるものか! な感じだったしな!


「その方向からのアプローチで、色々わかったわ。内容はこれにまとめてあるからそっちで読んで頂戴」

「うん、ありがとう」


 正直一人でこの報告を受ける勇気はないのでありがたい。これはつぼみちゃんたちハートキャッチ組に渡すとしよう。
 ちなみにもう一つの方の報告はごくあっさりと結果を告げられ、ついでにとあるブツを借り受けたりしました。
 ……これを使うとしたらかなり追いつめられた状況だから、そんなことにはならないといいなー。



 そうしてキャスターとの話を終え、その足でやってきたのは風都の港。
 安藤さんに頼んでいたものが到着するのが今日だという話を思い出したので、ちょうどいいから受け取り場所に指定されているココまでやってきたのだった。


 ぼうっと船の行き来を眺めて待っていると、海の向こうからすごい勢いで小型船がやってくる。
 小型と入っても他の貿易用の船と比べればの話で、船の両側にある長い円柱型のものはあれってひょっとして魚雷じゃね?
 その船がなんかまっすぐ俺のほうに向かってきてるなあ嫌だなあと思っていたら案の定すぐそばに止まり、ぞろぞろと乗組員が降りてきた。
 サングラスをかけた禿頭の巨漢な黒人に、おっかない目つきをして派手なタトゥーを入れたアジア系の若い女の人と、どう見ても日本のサラリーマンな感じの冴えないにーちゃん。


「おいダッチ、どうしてあたしらがロアナプラからこんなところまで直接荷運びしなきゃならねえんだ?」

「答えはシンプル、依頼人がいて、たんまり依頼金を受け取ったからだ。文句は弾代をロックのタバコ代くらいに抑えてから言え、レヴィ」


 そんな感じで、黒人とねーちゃんが話しているのをにーちゃんは苦笑いしながら見てました。やっぱりかよ……とか思っていたんですが、その人たちの後に続いて出てきた人を見て固まる俺。


 全身黒尽くめで、長いコートに鍔の広い帽子を被った糸目の男性で、一見優しそうでありながらなんか全身からヤバイオーラを噴出してるんですが!


「あなたが受取人ですね。運び屋の赤屍蔵人と申します。これが依頼された荷ですよ」

「は、はいどうも……」

「いやあ、ここは良い街ですねえ。そこかしこからイイ気配が風に乗ってきてわくわくします。これからもう一件仕事が入っていなければしばらく滞在していきたいところなんですが。クククッ」


 誰だか知らないけどこの人にもう一件の仕事を入れてくれた人ありがとう。
 そして安藤さんはもうちょっと運び屋を選んでください。
 ……待てよ、一個思いついた。


「あの、すみません。一つ依頼をお願いしたいんですが……」

「……いいですね、あなた自身は私好みではありませんが、お話はとても面白そうだ。お聞きしましょう」


 そんなわけで赤屍さんに俺からも依頼を一つ。
 今すぐしてもらうってわけじゃないけれど、多分役に立つんじゃないかなあ。



 とまあそんな感じに、何かしようと思うたびに全てから逃げ出したくなるほどの恐怖を感じたりしつつ、色々な事件がクライマックスに近づいてきた。


 まず第一に、プリキュア5。
 話に上ることこそなかったもののちまちまとエターナルのホシイナーとか幹部とか倒していたため、このたびプリキュア5がエターナル本拠地へと向かい、最終決戦を行うこととなった。
 ただ、運の悪いことに現在のところデンライナーでもリリカル系の転移魔法でもエターナル本拠地へと行くことは出来ず、移動手段はシロップによる輸送しかない上に、運べる人数には限りがある。
 そのために最終決戦の場へ向かえるのは、プリキュア5とミルキィローズのみ。
 年端の行かない少女達だけに任せるのは心苦しいなんてもんじゃないが、他に手段はないのだった。


「それじゃあ、行って来るね、みんな!」

「ああ、俺が行けないからと言ってヘマをするなよ。お守り代わりに俺とおそろいのパピヨンマスクを……」

「いらないわよっ! ていうかどこから出してるの!?」


 見送りのときに期待を裏切らず股間からプリキュアの色に合わせたマスクを取り出したパピヨンとの間でそんなやり取りがあったりもしたけれど、みんな少しさびしそうな笑顔を浮かべていたあたり、実はプリキュア5のみんなとパピヨンは結構相性が良かったのかもしれない。



 そして、プリキュア達が旅立つのを見計らったかのように、カイによるイマジンの一斉侵攻が開始された。
 次々過去へ飛ぶイマジンを追っていくもその数は圧倒的であり、原作にもあったとおり過去にキンタロスとウラタロスが取り残されてしまった。


「俺の強さも、お前らみんなの強さも、泣けるでェ」


「僕、嘘泣きしかしたことないし。みんなには嘘泣きも見られたくないんだよね」



 そしてその別れに悲しむ暇もなく、園崎家がガイアインパクトを実行しようとし、テラーパパが本気を出したせいで照井くらいしか戦える人がいなくなり、まんまとフィリップを攫われて、そこからは一本道。
 なんとかWドライバーと翔太郎、そしてエクストリームメモリの力でフィリップを助け出すことには成功したが、一度死んだフィリップの体を構成する地球のデータが破損してしまったためにフィリップはもう長く実体化していることが出来ず、最後に財団Xに攫われた若菜を助けて地球へと帰っていってしまった。


 ちなみに、フィリップは自分が死んでいることを知ってもその辺は特に悩まずスルーしてました。
 まあ、それも仕方ないだろう。うちの陣営って、士郎やカズキ、侑斗に悠二も、ある意味フェイトも、そして知られてはいないが俺も一度死んでるようなもんだしね。そりゃあ自分もそうだったとしても今さら気にすることなかろうよ。


 だが、だからと言って別れがつらくないわけじゃない。
 フィリップが残したプレゼントの本とロストドライバーを見て涙を流す翔太郎にかけることのできる言葉を俺は持たない。
 だから、自分にできることをしよう。安藤さんに作ってもらったあの装置を使って。



 そんな感じで敵も確実に減っているのだが、それと同時にこちらの仲間達も次々に減っていく。
 プリキュア5のみんなとはまだ連絡がつかないし、デンライナーとゼロライナーは使いすぎたためか調子が悪く、ウラタロス達を助けに行く余裕がなくなってしまった。


 しかも、追い討ちをかけるようにヴィクターが日本近海に現れたという情報が入り、錬金戦団とともに決戦に赴くことになる。
 カズキのヴィクター化についてはパピヨンと相談して原作にあったような措置を考えてはあるけど、それも間に合うかどうかは微妙なところなので油断はできない。


 そんな不安を抱えながらヴィクターの現れた海へと向かうのであった。



 ……ちなみにみなさん、今回はここまでそれなりにシリアスだと思ったでしょう?
 ところがどっこいしょ。ヴィクターとの決戦場、そこにはカオスが待っていた。



「来てくれたか、君達。これから私がヴィクターとの戦いに向かう。もしそれでもヴィクターの撃破が叶わなかった場合は、君達に頼む。武装錬金!」


 そう言って自らの核金を展開する坂口大戦士長。ついに巨大ロボットである大戦士長の武装錬金が見られるかと思ったのもつかの間、核金の光が収まり復活した視界に映ったのは……。


「スーパーカー?」


 つぶやいたのは誰だったかわからないが、まさにそう、サイドのドアから天井部分までガラスで覆われたスポーツカーであった。
 妙に男心をくすぐるかっこいいデザインで、士郎やカズキを中心に感嘆の声が上がる。


「久しぶりだな、またお前の力を貸してくれ」

『任せておけ、照星』


 とか思っていたら、なんかスーパーカーがライトをぺかぺか光らせながら大戦士長と会話しはじめた。しかも大戦士長と聞き分けられないくらいそっくりな声で。
 会話のできる武装錬金ならエンゼル御前という例があるから納得できなくもないけど車って。
 ……待てよ、本来坂口照星の武装錬金は巨大ロボットであったハズ。そして、このスーパーカーと、なんか背後から響いてくる大型トレーラーと支援戦闘機が飛んでくるようなこの音……!


「よろしい。では、ブソウナイツの諸君、合神せよ!」

「了解! 超巨大合体!! グレートバスタァーッ、バロン!!」


 なんか大戦士長が叫んだらトレーラーと支援戦闘機が変形合体し、エックスでカイザーな感じの巨大な勇者が誕生しますた。
 そういうことかチクショウ!


 あ、大戦士長もう一個核金取り出した。


「もう一度武装錬金! そして合神だ!」

「了解! グレートアナザーバロンッ、GX!!」


 そして今度はこれまた大戦士長と同じ声した青いパトカーが、光の線路を走ってきた新幹線と最新型の戦闘機、そしてライオン型のメカと合体し、男児向け玩具、略称ダ・ガーン……じゃなかったダンガンのようなデザインの伝説の勇者になった。
 ちょっと頼もし過ぎないかぁ!?



 突如海上に現れる二体の巨大ロボットと、まんま巨大化したヴィクター。
 唖然とする俺たちをよそに始まるスケールの大きい戦いに、もはやツッコミを入れる気力もわかなくなった。


 とはいえヴィクターも強い。
 大戦士長の二体のロボットが力を合わせてもようやく互角であり、なんとか巨大ヴィクターは撃破するも、プランクトンの死骸とかで作ったという巨体をキャストオフしたヴィクター自身の武装錬金による重力攻撃で海面に叩きつけられ、破壊こそされなかったもののこれ以上の戦闘は困難にされてしまう。


 そして、そこからは原作通りの流れに戻る。
 ヴィクターに白い核金を当てて黒から赤銅色に戻し、カズキが一人、ヴィクターを道連れに月へと上っていった。



 そんな感じで、次々と仲間が減っていく。
 誰一人として死んだというわけではないし、いつか帰ってきてくれると信じているし分かってもいるのだけれど、さすがに厳しい。


 だがカオスな現実はいつも非情で、最終決戦のときが着々と近づいてきていた。


 その始まりは、闇の書の完成。


 主であるはやてへの侵食を進めない程度のペースで悠二からの魔力蒐集を続けていた闇の書のページが、そろそろ埋まろうとしていた。
 すでに闇の書改め夜天の書に関する検索はフィリップとユーノの協力で終わっているため、闇の書を一度完成させてリィンフォースを分離、防御プログラムを完膚なきまでに破壊してケリをつけるという筋道はできている。
 ちなみにこの展開になるときに一番心配していたグレアム提督の方は、フィリップとユーノが検索無双しだしたあたりでなんかもう色々あきらめたらしく、クロノにデュランダルを託して本格的に隠居していた。
 とりあえず、事件が終わったら引っ張り出してはやてに無理矢理合わせてくれようか。



 カズキやフィリップ、プリキュア5のみんながいないのは少し不安だが、それでもリリカル組やFateのサーヴァントたちもいる。しっかりと結界を構築して行えば大丈夫だろうということで、リンディさんたち管理局の協力の下、闇の書の最後のページが埋められた。


 そしてはやてを取り込んで現れる初代リィンフォース、名前はまだないバージョン。
 原作でもなのはちゃんとフェイトの二人を相手に余裕で裁いていた実力を遺憾なく発揮し、俺たちの陣営のみんなと激戦を繰り広げている。


 いや、ほんとにすごいよ。
 なのはちゃんとフェイトはもちろん、ペガサスに乗ったライダーとセイバーに、テラードラゴンと戦ったときのようにタービュラー装備のアクセルや炎の翼を生やしたシャナや蝶の羽を生やしたパピヨンまでいるのに一歩も引かずに戦ってるし。


「……」


 そう思っていたら、回りのみんなを衝撃波か何かで吹き飛ばして両手を掲げた。
 戦闘が始まってからしばらく経つし、これはあのMAP兵器版スターライトブレイカーか!


「黄昏よりも暗きもの……血の流れよりも紅きもの……」


 ……え?


「時の流れに埋もれし

 偉大なる汝の名において

 我ここに闇に誓わん

 我らが前に立ち塞がりし

 全ての愚かなるものに

 我と汝が魔力持て

 等しく滅びを与えんことを


 ドラグ・スレイブ」

「だあああああああああ!?」


 身も世もない叫びを上げ、街一つ消し飛ばしそうな威力の魔法による爆発から必死に逃げてメイン盾であるキュアサンシャインとアーチャーの後ろに逃げ込む俺。
 なに、何でこの魔法使うの!? ってか使えるの!?
 ここはスーパーなスターライトブレイカーでなのはさんマジ怖いってなる場面じゃなかったっけ!?
 とかそんなことを思いつつも必死こいて逃げていたら、人差し指一本だけ向けてきた。今度は何かと見ていたら指先に火球が生まれ、どんどん大きく成長し、こっちに向かって飛んでくる。
 そして、着弾と同時に大爆発。


「のわあああ!? なんだあのメラゾー……ッ!?」


 メラゾーマ、と見た瞬間に連想した魔法の名前を反射的に言おうとしたが、あることに気付き慌てて口を閉じる俺。
 だめだ、この台詞を言ったら……っ!


「今のはメラゾーマではない……メラだ」

「聞きたくなかったああああああ!」


 ヴォルケーンズ! お前ら一体どっから魔法蒐集してきたんだよ!?


「我は放つ光の……螺旋」

「そんな魔法はないよね!? ないよねえ!!?」


 なんか赤、青、緑の魔力が合わさって白い衝撃波となり周囲に大爆発とか起こす魔法まですっ飛んできた。なんだこの一人合体魔法。


 ちょっと待てこれ本気で増援呼んだりしないとヤバくないか!?
でも、呼べば来てくれそうな人の筆頭である大統領は今朝のニュースでホワイトハウスを占拠したスクラッグ残党をヒーローマンと一緒にボコってる最中だって言ってたし、さすがに無理がある。
 ちなみに撮影は軍のヘリよりも頑丈なことに定評のあるDNNのヘリに、ヒーローマンを追いかけ続けていたAANの記者が相乗りして行ったらしい。
 そういえば、それと関係があるのかどうかはわからないが、数年前にアメリカで例の副大統領によるクーデターの時くらいしか休まなかった沈黙屋も最近臨時休業してたなあ。


 そんな風に半ば現実逃避してしまうくらい、このリィンフォースはヤバい。
 今はなんとかキュアサンシャインとかアーチャーあたりが防御の技で持ちこたえてくれているけれど、このままだといつまで持つか……待てよ。


 このリィンフォース、まずメラゾーマが使えて、なおかつ今の魔法を見るに合体魔法も使える。
 そして将来生まれるだろう妹分は冷気の魔法が使えるってことはおそらくマヒャドあたりも普通以上に……。


「メラゾーマ……マヒャド……」

「退避ッ、全員退避いいいいいいい!!」


 弓を引くようなポーズで右手に炎、左手に氷を出してスパークさせながら構えるリィンフォースを見て、本格的に血の気の引く俺。
 この魔法を使われたらいかにシールドの強度が強くても、受け止めようとするメイン盾ほどやばい!


「メドローア」

「やっぱりかああああああ!」


 そして放たれるビーム。なのはちゃんたちの砲撃ほど派手ではないものの、途中射線を遮っていたビルの一部を消滅させて風穴開けつつ地面をえぐっていきました。


 その後も、リィンフォースの放つ魔法の数々はしゃれにならないものばかりだった。ピオラで加速してアクセルトライアル並みの速度になるわ、メテオで隕石降らせるわ、それはもうバリエーション豊かな魔法の数々が襲い掛かってきた。


 はっきり言ってプランD、いわゆるピンチだ。
 空飛べる組や射撃できる組がなんとかがんばって攻撃してるけどまともに攻撃が通らないので、はやてと分離させるどころの話じゃない。一応みんなが立ててる作戦――なのはちゃん式OHANASHI――がダメだったとき用の策は用意してあるんだが、このままだと使えるかどうか……。


 そう思いながら懐に仕込んだモノを握りしめたとき、いつまでも攻撃が通らないことに焦れたフェイトがソニックフォームを発動し、同調してライダーがベルレフォーンを発動。二人して高速空中戦でリィンフォースを翻弄し始めた。
 リィンフォースもちょうどピオラの効果が切れたばかりのようで、フェイト一人ならまだしもライダーもいるとその速度についていけず手をこまねいている様子が見える。


 これは、おそらくこのあとフェイトが闇の書の中に取り込まれる展開だろう。
 このまま進行すればさらにフェイトまで戦線離脱して大変なことになるけど、逆に言えばフェイトの速さに気を取られている今が俺の策を実行するチャンス!


「あなたに足りないもの、それは!」

「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!」

「そして何よりもぉーーーっ!」

「「『速さ』が足りない!!」」


 ……なんか二人してテンション上がったのか変なことを言いだしたが、放っておこう。


 これをやるのは正直気が乗らないどころじゃないけど、リィンフォースに近づかなければできないこの役目は、これだけの乱戦の中でもスルーされるくらい弱っちい奴でなければダメなんだ。
 となると俺か悠二くらいしか候補がいないが、悠二は後方で補給ユニットをするという大事な役割があるからそこを離れるわけにはいかない。


「悠二っ、補給お願いします! かぷっ、ちゅ~」

「またああああああああ……」


 ……そのうち枯れないか心配だが、とにかくそんなわけで適しているのは俺だけだ。
 だから、この作戦を実行するために「空に浮かんでいる」リィンフォースになんとかして一気に近づかなければ。


 一応算段はある。
 いやね、最近街で見かけるようになったんだよ、アレを。
 しかもこの前ゲームセンターでメダルゲームやってたらなんか銀色で×マークのついたメダルが出てきたし、ここで使うっきゃないでしょ。
 と、思ってあたりをきょろきょろ見回したらありました、ちょっと変な形をした自動販売機。
 そこにゲーセンで見つけたメダルを入れて、ボタンをピポパペっと。さらにもう一枚メダルを入れてでっかいボタンを押せば……。


『タコカン!』

ガシュガタドシン!



 はい、ごとごと出てきた缶が変形して無数の青いタコになり、自販機はバイクに変形。自販機正面にいたら押しつぶされそうになったけど気にしない。
 最近街にこのおもしろ自販機が現れ出したんだなこれが。まあ以前NEVERが大暴れしたW劇場版事件のときにオーズが助け合いに現れたともいうし、時期的には合ってるのか。
 なんにせよちょうどいいから、せいぜい使わせてもらおう。



 自販機からたくさん出てきてすぐ、なにもせずとも勝手に変形してくれたタコたちだが、この子らは翔太郎たちが使っているメモリガジェット並みにできる子なので、即座に集まってリィンフォースへ向かう道を作ってくれた。俺はよっこいせとバイクに乗って、アクセル全開。


「無免許運転は高校生の特権なんだよなぁ、アーチャー!」

「なんの話だ!? というか何をするつもりだ!?」

「すごくいいこと! もし俺が失敗したら士郎と一緒にフォロー頼む!」

「……! いいだろう!」


 ちらりと懐に仕込んだブツを見せたら理解してくれたんで、今度こそタコカンロードへゴー。
 ……なんだけどこれこええええええええええ!
 道幅せまいし下見えるしどんどん高くなっていくしがたがたするし! この道で空を走るなんて正気の沙汰じゃねええええ!!?
 だけどそんなことも言っていられない。こういうときは無駄にテンションを上げて乗りきるがキチ……じゃなかった、吉だ。
 とりあえず叫ぶ!


「この心が熱くなって満たされるものはこれだああああ!」


 そしてみんなが空中の一点に釘付けにしているリィンフォースの背後に回りこんでタコカンロードから飛び出し、空中でさらにリィンフォースへ向かってジャンプ。


「!?」

「本気出して戦うから負ける気しないぜええええええ!」

「なっ!」

「その契約をぶち殺すっ! ちょっとくすぐったいぞぉ!!」


 と叫び、懐に仕込んだエモノを取り出して、突然上空から降ってくるバイクと俺とタコという異常な状況に固まっているリィンフォースの胸へ突き刺した。


 よし、これにて一件コンプリート!
 驚いて暴れるリィンフォースに跳ね飛ばされて落ちていく俺は誰にも気付かれず、助けてくれたのはタコカンだけだったが泣きはしない。これでリィンフォースと闇の書の防衛プログラムは切り離されたんだから。


 一部の方はそろそろお気づきでしょう、俺が突き刺したもの、それはキャスターから借りてきたルールブレイカーだ。
 Fateの原作においてはセイバーと士郎のサーヴァント契約すらぶった切ったある種のチート宝具であるアレならば闇の書とのつながりとかも切り裂けるのでは、と思いついてキャスターに相談して多分大丈夫との応えと共に以前魔女の巣でこれを受け取ったのだが、答えはご覧の通りである。
 タコカンにつるされた上下逆さの視界の中で、リィンフォースと分離したはやてがヴォルケンリッター全員とまとめて抱きしめて再会を喜び合っている。


 ……うん、そんな感動的なシーンだから、この期に及んで誰一人俺の状況に気付いてくれないことなんて寂しくないんだからね! ……チクショウ。



 そんな感じで、ひとまずはやてたち八神一家の件はこれにてひとまずハッピーエンドのルートに入った。
 リィンフォースの存在は、この世界にある魔術とはまたちょっと性質の違ったものだから、ルールブレイカーだけだと防衛プログラムとの切り離ししかできないので本当ならこのあとリィンフォースが消えるだのなんだのの話があるんだが、そのあたりも既に何とかする方法があるから置いておこう。


 今はとにかく、リィンフォースとはやてから分かれた、リリカルなのはのラスボスである闇の書の防衛プログラムを片づけないといけない。
 だがそれも、ここにいるみんなの力を合わせればきっとなんとかなるだろう。


 そうみんなが決意を新たに海上でうじゅるうじゅると展開していく防衛プログラムを睨みつける俺達に、リンディさんから緊急通信が入った。


 その通信に曰く。



 衛宮邸で留守を守ってくれていた桜が、パル・マスケと言峰神父にさらわれた。



 ……どうやら、最後の最後にとんでもないカオスが待っていそうな雰囲気がしてきたね。
 本郷さんに貰った日から肌身離さず持っていたスマートフォンをポケットの中で握りしめて、驚く皆の様子を眺めるしかない俺だった。

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 異次元へと広がった話の風呂敷たたみ始めなきゃいけないから、その分ネタの積み込みが甘い気がしてきてしょうがありません。

 そうそう、次が最終回です。
 ネタ解説はその時まとめて行いますので、今しばしのお待ちを。



[20003] 第三次スーパー超人大戦α
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2010/10/16 21:44
 ごくごく普通の人生を送っていた俺がどういうわけだか転生し、混じってる諸々の数を数えたら気が遠くなりそうなこのカオス世界にてカオスな事件に巻き込まれて以来、気の休まるときなんてほとんどなかったんだけど、もうすぐそれも終わりそうだ。


 いやね、本当に大変だったんだよ。
 この事件に巻き込まれだしたのは春だったけど、なんだかんだでもう季節は秋になりかけてるし、この夏は何度かループしたような気がするし。


 ……実を言うと、風都にあるスーパーにて高校生の男女数人がきぐるみ姿でバイトしているのを何度か見たような記憶がうっすらあるし、ランサーとかアーチャーとかギルとかが風都の港で暢気に釣りしてるのを見たような気もするんだよ。
 他にも、今年の夏はやけに暑かったからか半裸に刺青びっしりというファンキーな風体の士郎に良く似た青年を引き連れた、キリッとしているのにどこかダメそうな雰囲気をしたスーツ姿の女の人がうろついているのを見かけたし、しかもそれをデジャヴのように何度も何度も見たような記憶がある。
 具体的には15498回くらい繰り返したかのよーな、そのうち8回位を連続して見せられたかのよーな、いい加減飽きたぞコラみたいな感覚。


 ……うん、今年の夏は特に暑かったから、そのせいで頭もちょっと茹ってたのかもね!
 とある女子高生の能力でループしたんだか、聖杯が暴走してループしたんだか、宮城の殺人犯が絶望したせいでループしたんだか、どこぞの素数が好きな神父かアスラクラインな悪魔だかの力で世界が一巡したんだか、はたまた神にここで死ぬ運命ではないと言われたんだかは知らないが、俺はごく普通の人間だからそんなの一切感知できませんでしたよ、ええ。


 まあそんなわけで今年の夏は刺激的な事件に多数遭遇したのだが、そのせいかそれ以外の日常は大分退屈に感じるようになってしまった。


 例えば、新聞やテレビのニュースを見てもあまり興味を引かれるものがなかったりとか。
 これをつまらないと言ってしまうと不謹慎になるのだが、かなりの数の人捜しの依頼広告が新聞に掲載されていたりしたんだが、他人事にしか思えない。


 この世界って、実は結構失踪者が多いみたいなんだよ。
 特に少年から青年が多くて、覚えている限りでも秋葉原で行方不明になった平賀才人とか、家出して船に乗って以降の消息がつかめない東方院行人とか、聖フランチェスカ学園の剣道部に所属していた北郷一刀とか、どこぞの大学生をやっていた天涯孤独に近い天城颯馬とか、龍神小学校の戦部ワタル少年や遥大地少年や馬場ラムネ少年に、バイクで走行中に忽然と姿を消したというモトクロスレーサー志望の座間祥とか。
 あと帝都タワーにて、修学旅行にやってきた三つの中学校から一人ずつ女の子が消え、再び現れてまた消えるとかいう怪奇現象が起きたという噂もある。


 しかも時々かなり大規模な行方不明事件も起きたりしていて、近年ではグァムから日本へ向かっていた大日航空357便なんかがぷっつりと消息を絶っている。
 かつてデュエルアカデミアとか大和小学校なんかが一時敷地自体なくなっていたなどという噂もあるが、さすがにそれは眉唾だろう。……眉唾だと信じたい。
 ……そういうことに注目し出すと、織田信長とか島津豊久の遺体が見つかっていないことも邪推できて怖いんだよね。この世界の織田信長は女性だったらしいけど。


 ただ、そんな風に消えてしまった人や物のうちいくつかの消息らしきものについては、時々うちのポストの中に入っている取った覚えのない新聞に書かれていたりする。
 この間は「魔法の森に突如出現した謎の物体! 森近霖之助氏に曰く『飛行機』という空を飛ぶ乗り物だとのこと。周辺にたむろしていた多数の人間達からの証言独占取材!」とか、ニュースで見た357便の写真つきの記事が載っていた。
 文々。新聞とかいう名前の新聞なんだが、何て読むんだかさっぱりわからないな(棒読み)。
 イヤー、イッタイダレガイレマチガエテイルンデショウネー?


 そんなニュースやら調べた結果にワクワクしたりビビったりしたのも今は昔。最近ではそういう画面の向こうで起きた事件を人づてに聞くまでもなく、身近で世界を揺るがすようなことばかり起こっているからいまさら驚いてもいられない。
 ……なんだかどんどんと自分が戻れぬ道に足を踏み入れて行っている気がしないでもないけれど、ひとまず気にしないようにしよう。




 まあそんなわけで、事件に巻き込まれて以来ノンストップでSAN値を削られていく日々が続いている。
 だけど俺のまわりやこの世界はそんな恐ろしいことばかりが詰まっていたわけではなく、いい仲間達との出会いもあったし、そんな仲間の力があったからこそ助けられた命もある。
 だから、この世界は決して悪いものなんかじゃない。
 俺はよそ者に過ぎないけれど、それでもこの世界で生きてきてみんなの仲間になった以上、それを壊そうとするものと戦おう。
 それが、みんなと一緒にいるための唯一の資格だと思うから。





 桜がさらわれた。
 突如知らされたその事実に、リィンフォースとの決戦を終えたばかりの俺たちはみんな凍りついたように固まった。


 なぜ今? なぜ桜が?


 そんな疑問が尽きもせず浮かんでいるだろう仲間達の中で、イリヤとライダーは顔を真っ青にしている。おそらく、俺も同じような顔をしていることだろう。


 桜自身のことを思ってみんなには言っていないが、桜もまたイリヤと同じく聖杯の器としての能力を有している。
 だから桜に魔力をこめれば聖杯を起動させ、その機能を発現させることは十分に可能であったりする。
 そのことを知っているのは、元から知っている俺を除けば同類であるイリヤと桜のサーヴァントであるライダー、そして聖杯戦争についての情報収集をお願いしたキャスターくらいのものであるはずだが、実行犯がパル・マスケだけでなく言峰も絡んでいてしかもこのタイミングであることから考えて確実に桜のことは知られているのだろう。
 くそっ、言峰が怪しい動きをしてるのは分かってたのに、怖いからって放置したらご覧の有様だよ!


 だが、さすがはうちの陣営の仲間達だけあって立ち直りも速い。
 アースラの面々が桜をさらった連中の足取りを全力で追ってくれているらしいから、それを追いかけて奪還しようと誰もが考え、口に出そうとした。


 が、それとほぼ同時。


『――転移反応!? みんな気をつけて、すぐそばに出てくるよ!』


 切羽詰ったエイミィの声を皮切りに嵐のような突風が辺りを吹きぬけ吹っ飛ばされ、何事かと顔を上げたら風都の海上、リィンフォースと戦っていた一帯であり、現在闇の書の防衛プログラムらしき陰がうごめく地点のちょうど真上に巨大な城が出現していた。
 何だこの空に聳える鉄の城、とか半ば現実逃避気味に思ったのもつかの間、地上からでも良く見える城のバルコニー部分に居並ぶ面々を見て本格的に頭が痛くなってきた。


 そこにいたのは、三つ目眼帯熟女、ロリコンサングラス、能登声帽子杖というパル・マスケの幹部三人に、うっすらと満足気な表情を浮かべているマーボー神父と傲岸不遜を地で行く目つきでこっちを見ているギルと、やる気なさっそーにそっぽ向いてるランサーという言峰組。そして真ん中にある十字架に貼り付けにされている桜と、その後ろで狂喜乱舞しながら何かの装置をくみ上げている教授がいた。


 間違いなく、あれは桜の性質を理解して悪用しようとしているフォーメーションだ。
 クロスした陣営とそいつらが原作で持っていた目的、手に入れた人質と本拠地の下に蠢くモノを考えるとこれが本当の最後の戦いになるだろうという思いと、なんかもう本格的にヤバい物が生まれそうな予感がひしひしと感じられる。




 そして始まるパル・マスケと言峰の演説大会。正直どっちも言ってることは悪役のテンプレに程よく電波を混ぜた感じだから省略するが、要するに聖杯の器である桜を使って大聖杯を呼び出し、闇の書の闇を聖杯の中にぶちこんでかき回してパル・マスケの悲願とやらを達成してその余波で世界が大変なことに! それを眺めてマーボーもメシウマ状態! ということらしい。
 やってることは本当に悪役のテンプレなのだが、使ってるものがやばすぎる。
 ただでさえ世界を呪うアヴェンジャー色に染められた泥の詰まった聖杯に、どんな願いも――破滅的な意味で――かなえてくれる闇の書なんて突っ込んだらどうなるか……。


「へえ、おもしろそうじゃないか」

「げぇっ! カイ!」


 とかなんとか思っていたら、今度はカイまで現れた。
 ああそうだよ、カイだって時間を消そうとしてるんだから、こういうことになればそりゃ嬉々としてやってくるよなぁ!
 なんか悪役同士の意思疎通でごくあっさりと協力体制築いてるし、本格的に敵の戦力がヤバイ!


 そしてそれをきっかけとするかのように、教授が桜の後ろでくみ上げていた装置が完成して動き始め、パル・マスケの城、星黎殿で蠢いていた闇の書の闇が空高く浮かび上がり、桜の体から出た闇が固まって出来た器に注がれ、真っ黒な泥があふれ出した。


 クロノがとっさにデュランダルで海面を凍りつかせてくれたからどうにか海が汚染されることは防げたようだけど、恐ろしい勢いで広がり続ける泥は途中で人やら獣やらの形を作り、カイからあふれ出したイマジンなんかも乗り移ったりして、凍った海面も見えないような数の泥モンスターの軍勢となって襲い掛かってきたのだった。
 その様子はまるでhollow ataraxiaの最終決戦のよう。悪夢だろこれ……。


『ほう、カイとやらもやるじゃないか。……それならせっかくだ。アレも使うとしようかね』


 やたらと良く通る声でペルペオルがそんなことを呟いたのが、周囲の喧騒に混じって聞こえてきた。
 何事かと思って視線を向けたら聖杯の器が海面すれすれまで降りてきている。
 一体そんなところで何を……と思ってすぐに、気がついた。


 周囲に何もない冬木の海上、洋上空港のすぐ傍。
 そこは、かつてデンライナーで訪れた10年前の冬木で火の玉が落ちてきた場所……ッ!


『お前も暴れるがいい、ヤプールの怨念よ!』

「うそでしょおおおおおおおおおおおおお!?」


 どぱっとひっくり返された聖杯の器から溢れた泥が凍りついた海に染み込み、その中から姿を現したのは、全長300mに及ぶ巨大な怪獣。
 禍々しい顔とごつい体に、それを支える巨大な胴体と一本一本が超獣一体に相当するという触手。
 六本の足で海から姿を現したその怪獣の名は。


「Uキラーザウルス・ネオ……っ!」


 目を覆いたくなるような数の怪物達に、天を衝く大怪獣。
 この世界に来て何度となく感じた絶望に似た感情が全て些末なことだったと思わせるのに十分な、本当に絶望的な状況だった。




 そして、戦いが始まった。
 リリカル組やシャナを含めた空を飛べる能力を有している者は桜奪還のために飛び上がっていったが、空からも襲ってくる聖杯から生まれた泥モンスターと紅世の徒に阻まれてまともに進めていない。


 地上でも同様で、ばっさばっさとみんなが次々泥モンスターを片付けているがいかんせん数が多い。
 ならばセイバーあたりが宝具で一気になぎ払えば……と思ったらそういう大火力が使える仲間のところにはギルやらランサーやらラスボス的に強そうなイマジンやらが張り付いて大技を使う隙を与えない。
 まさしく完璧な布陣だ。


 Uキラーザウルスももちろん何もしなかったわけじゃない。
 出現地点からそれほど動きはしなかったものの、自在に動き回る触手が空を飛ぶ者を泥モンスターや徒ごとなぎ払い、地上に立つものには光線を放って凍りついた海面を爆散させる。
 どう贔屓目に見ても手加減しているというのにその破壊力は絶大で、そもそもみんなは近づくことすらできていなかった。




 そうやって手をこまねいている間にも次々と新しい敵は生まれてきて、仲間達はその数に押されて一人、また一人と倒れていく。
 ユーノやアルフやシャマルが必死にそんな仲間達を回収して結界の中に収容してくれているからトドメを差されることこそないが、戦えるような仲間はどんどん減っていき、ついに、戦いの音が消えた。




 目の前にはざわざわとこちらの様子を伺う泥モンスターと、その上に悠々と浮かぶ星黎殿。ぐるりと周囲を見渡してみると、360°びっちり隙間なく敵がいる。
 近くに目を転じても、シャマルたちの必死の治癒魔法でも傷が治りきらない仲間達。
 完全に、詰んでいる。


 もちろん、俺だって何もしなかったわけじゃない。
 この期に及んで戦えるわけでもない俺にできることなんてほとんどないけど、一縷の望みを託して例の本郷さんから貰ったスマートフォンを使おうとした。


 だが、今まで普通に電話としても使えていたのに何をしても反応しなくなっていた。どれだけ弄っても電源すらつかず、まったく動かなくなってしまったんだ。





 悪夢のような光景だった。


 子供のころに憧れて、この世界に来る前から年甲斐もなく大好きだったライダー達が倒れている。
 世話が焼けたり無茶しそうなところを必死になだめたりと、妹のように思ってきた女の子たちが苦痛に顔を歪めている。
 熱い闘志に励まされ、自分もかくありたいと願っていた主人公達が苦痛の声を上げている。


 ただ一人、傷一つない俺の周りで。



 ことここに至って俺に出来ることはなにもなかった。
 元から戦う力なんて何も持たず、できることと言えば口八丁手八丁で戦う前に交渉したりするくらいの俺はこの期に及んでみんなに守られ、誰一人立つこともできないほど消耗している中、ただこれまで一緒にいたというだけの理由で守られ無傷でここにいる。



 今日までこの世界のカオスっぷりに何度となく頭を抱え、敵にも味方にも驚かない日はなかった。
 でもだからこそみんなの力は強くなり、原作以上のハッピーエンドになれたこともあったし、傷つかないで済むことも多かった。


 それが今、全て嘘であったかのように絶望の中に沈んでいる。



 仲間たちは一人として諦めていない。
 全身どこもかしこも痛むだろうに、必死に立ち上がろうとしては崩れ落ちてのたうちまわって荒い息を吐いている。
 疲労と消耗で動くことすらできない体であっても目は諦めずにそこらじゅうにいる敵をしっかりと見据えている。


 今の状況は、正直怖い。
 みんなですらかなわなかった敵に十重二十重に取り囲まれて、残っているのはなんの力もない俺が、助けも呼べないスマートフォンを持っているだけ。
 もはや完全に八方ふさがり同然の状態で、俺は頭を抱えて震えていることしかできやしない。



 俺が、皆の仲間でなかったならば。



「ふう、まったく」

「ちょっと待て、何する気だ!?」

「んー? 何ってそりゃ、時間稼ぎ?」


 アーチャーと士郎が投影しまくってそこらじゅうに落ちていた剣の一本を適当に拾って、その重さによろけながらふらふらと敵の方へ歩いていく俺に士郎が制止の声をかける。
 まあそれも当たり前だろう。俺がこんな化け物じみた奴らと戦えないということはこれまでの付き合いで知っているし、それがよりによって今この絶望的な状況で戦おうとしていれば気が狂ったとでも思うだろう。


「無茶よ、下がりなさい!」

「お兄ちゃん、ダメぇ!」


 凛となのはちゃんも気付いて必死の様子で止めてくる。ヴィータに悪魔と呼ばれるイベントを回避したことで基本的に優しいなのはちゃんはともかく、凛にまで心配してもらえるとは嬉しいねえ。


「なぁに、大丈夫だって」

「大丈夫なわけないよ! 危ないから、戻って!!」

「心配いりませんよ、良太郎先輩。……みんなはヒーローですから。俺が少しでも時間を稼げば、きっと何とか逆転の手段とか見つかりますって」


 ちらりと振り返ってみたら、みんなボロボロで立つことすらできないっていうのに泣きそうな顔をして俺のことを心配してくれている。
 まったく、みんなイケメンだったり美人だったりするのに、そんな顔したら台無しじゃないか。


『……まったく、興ざめね。いくらなんでも三文芝居にすぎる』

「同感だな、女。我もこのような茶番は見ていると吐き気がする」


 星黎殿のバルコニーではペルペオルとギルが好き勝手なことを言っているが、そんなものは気にしていられない。そろそろ目の前すぐ近くまでやってきた泥モンスターを一体でも倒すのが、俺の役目だ。


「だありゃああああ!」


ザンッ!


 思い切り振りかぶって振り下ろすだけという、まるでなっちゃいない剣の使い方だったけど動きの鈍い敵にはそれで十分。剣の切れ味も良かったからか、真正面から敵を両断して……振り下ろした剣を持ちあげるより前に、別の敵に殴り飛ばされた。


「うぐわっ!? ……痛っつぅ~…………」


 横っ跳びにすっとばされて凍った海面をざりざり滑る感触というのは実に痛い。……こういう痛みを、みんなはずっと我慢して戦ってたのか。


『……本当に不様ね。もういいわ、トドメを刺しなさい」

「雑種、貴様のあがきは完全に無駄であった。その無力を嘆いて死ね」


 情けなくも一発殴られただけでもう立てなくなった俺に容赦ない言葉が投げかけられるが、あまりに的確すぎて返す言葉もない。
 ……ごめん、みんな。やっぱり俺は、こういうことじゃあ役に立てなかったみたいだ。


 せめて最後まで目を閉じるまいと振り上げられる泥モンスターの腕を見ながら、諦めにも近い感情を抱いた。


 そのとき。




「――それは違う」




ガギン!



「……え?」


 どこからともなく響いてきた声とともにじっと見ていた泥モンスターの腕が弾け飛び、その余波で周りを取り囲んでいたモンスターもかなりの数が消し飛んだ。


『何!?』


 仲間達は誰一人としてまともに戦えないにもかかわらず起こったその現象に、誰しも驚いて下手人を探した。


 きょろきょろとそこらじゅうを見回していた皆の視線が、だんだんと一つの方向に収束していく。
 そこには、全方位を隙間なく泥モンスターが取り囲んでいたというのに、その包囲の内側に忽然と現れた一人の青年がゆっくりとこちらに向かって歩いてきている。


 この状況が分かっているのかいないのか、飄々と自然体で歩いてくるその顔は自信に満ちた表情を浮かべ、首から下げたトイカメラが揺れている。


 ……まったく、本当にタイミングがいいよなぁ。


「確かにこいつは弱い。剣を振るうこともできなかったし、いまでは拳を握りしめて戦うこともできないだろう。……だが、それでもこうして仲間を守るために敵に立ち向かっていった。例えどんなに恐ろしくても守りたい誰かがいること。そのために勇気を振り絞れること。それが、絆だ」


 さっきの攻撃を阻んだときと同じ声でつぶやく言葉は静まり返ったあたり一帯に響き渡り、例のBGMが聞こえてきそうな雰囲気に皆圧倒されている。
 いつか来るだろうとは思っていたけど、この状況で来るとはねえ。感心するほど見事だよ。


「貴様っ、何者だ!」



「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ! 変身!!」

<<KAMEN RIDE! DECADE!!>>



 マゼンタの仮面も美しく、世界を旅する仮面ライダー、ディケイドが来てくれた!



 ディケイドが変身するなりベルトに付いたカードホルダーがひとりでに開き、そこから一枚のカードが飛び出した。


「……なるほど、大体分かった。おいお前、これを使え」

「え? うわっ!」


 そしてそのままカードをこちらに向かって投げ、あとはもうこっちに構わず目の前の泥モンスターに向かって飛び掛っていった。
 ディケイドがそれはもう激情態もかくやという活躍で敵をばったばったと切り伏せる中、呆然としている仲間達に混じって俺は手の中に納まったカードを見てみる。
 裏も表も真っ黒なカードなのだが、うっすらと同じ色で何かが描かれているのが見えるような……。


「! ああ、そういうことか。……まったく、本郷さんも人が悪い」


 そして、唐突に理解した。
 あのスマートフォンを本郷さんがくれた理由と、その使い方。まさか、こんな風に使うとはね!


 向こうのほうではディケイドが一騎当千の活躍を見せているが、いかんせん敵の数が多すぎてこちらに流れはじめている敵もいる。
 何とか応戦しなければならないだろうがみんなはまだ倒れているし、俺だって体中痛くて体を起こすのがやっとだ。
 だから、頼れるとしたらこれしかない。


「何が起こるかは知らないけど、こうなりゃヤケだ! みんな、多分何とかなるからもうちょっとだけがんばってくれ!」

「! ……うん、がんばる!」

「任せろ!」


 ……本当に、呆れるほどバカな仲間達だよ。
 突然現れた仮面ライダーを名乗る怪しい奴から渡されたカードを見て、いきなり何とかなるって言い出した俺をまったく疑わずに信じるなんて。
 だから、こんな仲間達の期待と信頼にこたえてくれよ……っ!


 ディケイドから受け取ったカードをスマートフォン……ディケイドの持つケータッチにとてもよく似たこれに差し込むと、液晶のおかげでカードに書かれていたものがはっきりと分かるようになる。


 そこにはただ一言、Cosmosとだけ書かれていた。


 ……なんの当て付けだろうと思わないでもないけど、今はそんなことはどうでもいい!
 もうすぐ目の前に津波のような勢いで敵が迫ってきている。やるしかないんだよぉ!
 無駄に上がるテンションに任せて、指を叩きつけるようにその文字に触れた。


「力を、貸してくれぇ!」


 ピッ、と特徴のないごく普通な音がして画面に光が灯る。
 しかしそんなものに見向きもせずに怒涛の勢いで近づいてきた泥モンスターがその鉤爪を振り上げて今まさに振り下ろさんとして……。




 そのとき、不思議なことが起こった!




「「トォーーーッ!!!」」



 勇ましい掛け声とともに俺の左右から白い何かが凄まじい速さで飛び出して、近くの泥モンスターを弾き飛ばした。


 白い何かは勢いそのままに泥モンスターを轢き飛ばしながら弧を描いて俺たちの前へと回り込んで止まる。
 白いものの正体は、バイク。
 流線形のカウルもカッコいいバイクに乗っているのは、それぞれ緑の仮面と黒の仮面に真っ赤な複眼をした、異形にして優しいヒーロー。


「仮面ライダー……1号、2号!?」


 そう、都市伝説にその存在を謳われ、1号のほうは多分世界消防庁の長官とかやってるだろう仮面ライダーが、来てくれた。


「遅れてすまない。だが、来たのは俺たちだけではないぞ」


 バイクを降りて近くの泥モンスターを手当たり次第ボコり出したライダーはそう言うと俺たちの後ろを指差した。
 その指の示すほうにみんなそろってぐるりと首をめぐらせれば、俺たちを取り囲む泥モンスターの向こう側に巨大な灰色のカーテンが立ち上がっているのが見える。
 そして、そのカーテンの中からざっ……ざっ……とゆっくり何かが歩いてくる音が聞こえる。それも、大量に。



 だんだんとカーテンの中に陰が浮かび上がってくる。
 ずらりと横一列に並んだ人影はだんだんと形と色をなし、カーテンを越えて現れたのは……。


「かっ、仮面ライダー!? あんなに一杯!」


 と、士郎が怪我も忘れてはしゃぐ声を上げるほどの、オールライダーだった。
 それはもうディケイド劇場版で見た、夢のような光景が目の前に広がっている。
 V3にはじまりブラックRXまで。クウガからキバすらこえてオーズまで。
 ずらりと並び、ざわめく泥モンスターたちを睥睨する。


 突如現れたライダーたちの姿に威圧された泥モンスターが慌てふためくのを前に、ライダー達が駆け出した。


 まさに、圧倒的だった。
 ライダー達は地上を駆け、空を穿ち、近寄る泥モンスターの全てを駆逐する勢いで倒していく。
 ドラグレッダーが空を舞い、灼熱真紅の型が片っぱしから泥モンスターを吹き飛ばし、真空地獄車が他の泥モンスターも巻き込んで爆走する。


『ええい、何をやっている! Uキラーザウルス、奴らを始末しろ!』


 その流れに苛立ったか、ペルペオルがUキラーザウルスに命じると触手を振り上げ、そのままの勢いで叩きつけようとしてきた。
 何本も並べているあの触手、叩きつけられたらライダーは無事でも海面が砕けて大変なことになる!


「ライダー、危ない!」


 懸命に戦うライダー達に思わず叫んだ俺のその声に応えたか、手の中のスマートフォンが再び光った。



――シュワッ!



 頭上から大気を震わすその声に、空を見上げる。
 そこには結界内特有の黒々と染まる空と、天を突かんばかりに振り上げられたUキラーザウルスの触手。


 そして、その触手に掴みかかって受け止める、光の巨人達の姿があった。



「ウルトラ兄弟!?」


 そう、ウルトラマンだ。
 初代からメビウスまでの光の国出身のウルトラ兄弟だけでなく、ティガにダイナにガイア、コスモスもネクサスもマックスも他のウルトラマンもみんないる!



――約束を果たす時が来た。この怪物は私達に任せろ!


「……っ! はい!!」


 脳裏に直接響くように聞こえたその声は、かつて冬木大橋のふもとで出会ったハヤタさんの声にとてもよく似ていた。


 しかもさすがに光の巨人はエネルギー量も半端ないらしく、タロウがカラータイマーから出した光が俺たちに降り注ぐとみんなの怪我が消え、体力やら魔力やら諸々も回復した。


「すごい、これならまた戦えるぞ!」

「うん、行こう!」


 そして、再び戦いが始まった。


 全回復状態の仲間達と、助けに来てくれたライダーとウルトラマン。
 圧倒的に不利だった状態から、これでようやく五分になったといえるだろう。


 あちこちで激しい戦闘が巻き起こり、あっちゃこっちゃであまたの仮面ライダーが入り乱れるライダー大戦じみた戦いとか、Uキラーザウルスの触手を相手に板野サーカス並みの空中戦を繰り広げるウルトラマンたちとかそれはもうこのせかいでも今だかつて見たことがないほど凄まじい戦いだ。


 だが、これでもまだ足りない。
 ウルトラマンたちは聖杯やら闇の書やらの力も加えられたUキラーザウルスに掛かりきりだし、オールライダーも地上の敵を倒すのに精一杯でどうしても空の敵は仕留め切れていない。



 だけど大丈夫。
 ライダーだけでもウルトラマンだけでもなく、俺達みんなの力があれば。


『――まったく、見ていられないね、翔太郎』

「なっ……! この声は!?」


 そんないつもと変わらぬ言葉とともに姿を現したのは、かつて財団Xの使者との戦いで地球へと帰ってしまったフィリップだった。
 どこからともなく響く声とともに、孤軍奮闘していた仮面ライダージョーカーの周りをエクストリームメモリが飛び回り、その中からフィリップが復活してくれた。


「フィリップ……? お前、どうして!」

「ああ、僕自身よくわからない。だが、地球と一体化したあとデータだけになった僕の前に巨人が現れてね。その巨人の胸から出た光を浴びたら破損したデータが修復されて、今日こうして復活したというわけさ」


 そんなフィリップの説明を聞くのもそこそこに、翔太郎はフィリップに飛びついて喜んでいる。失ったと思っていた相棒が戻ってきてくれたんだ。それも当然のことだろう。



 ふう……どうやら、成功したらしいね。
 ちなみにこの一件、俺が一枚噛んでいたりします。
 いやね、フィリップが消えた原因ってようするにデータの破損じゃないですか。
 そのデータが漂っている場所である地球的な何かには、財団Xがガイアインパクトに使おうとした人工衛星を経由すれば入れそう、ということでちょろっと。
 安藤さんにこの人工衛星へとアクセスするための通信機を作ってもらい、それを使ってグリッドマンに地球の中へ行ってもらいました。そこでフィリップの破損したデータにフィクサービームあててデータ修正して、その結果がご覧の通り。


 翔太郎とフィリップは妙に嬉しそうな顔をして久々にWに変身し、これまで以上の獅子奮迅の戦いを見せてくれた。



「「さあ、お前の罪を数えろ!」」



 そして、フィリップの登場を皮切りに仲間達が続々と帰ってくる。


「みんなっ、お待たせ!」

「「「「Yes!」」」」


 空の上のほうから元気に溢れた叫びとともにふってきたのは、プリキュア5の面々。どやらエターナルを倒し、キュアローズガーデンの諸々も片付けて帰ってきてくれたようだ。
 ……ただ、見過ごし難いおまけを連れて。


「さあ、久々にいくわよホワイト!」

「ええ、ブラック!」


「準備はいい、イーグレット?」

「もちろんよ、ブルーム!」


「ベリー、パイン、パッション、みんなでいくよ!」

「まかせて、ピーチ!」

「すごい状況ね……」

「精一杯がんばるわ!」



 ……わーお、ライダーとかウルトラマンとか妙に男の子向けだった光景が一気に華やかになりましたよ。
 え、なにこのプリキュアオールスター?


「いやー、ここに帰ってくる途中になんか迷っちゃって。そしたら白くて可愛いコウモリが道案内してくれて。プリキュアの皆とはそこからここにくるまでの間に出会って、一緒に来てくれることになったんだ!」

「やだもうのぞみったら、キバーラが可愛いのは当たり前でしょ~!」


 のぞみをとっつかまえて事情を聞いてみたら、そんな理由が帰ってきました。
 やっぱりお前の関係者の仕業か、ディケイド。
 そんな意志をこめてディケイドのほうを見てみたら、仮面越しに「ふっ」とか笑われたような気がする。
 まあいいか、みんな来てくれたんだし!



 ちなみに、シロップの荷台になぜかハートキャッチミラージュが入っていたらしく、それを知ったゆりさんも一緒に来てくれてキュアムーンライトに変身しました。


「可能性の獣……私の、たった一つの望み!」


 ……確かハートキャッチミラージュはプリキュアの可能性を無限に引き出すとか言ってた気がするけど何か違いませんかね。確かにキュアムーンライトは素でデストロイモードな感じの強さですが。


「リボルケイ……ムーンタクト!」

「今何言おうとした。取り出し方が似てるからって今何言おうとしましたか」

「いいなー……」

「武器の取り出し方をうらやましそうに見てるんじゃねぇよサンシャイン。いいから君はおとなしくタンバリン回してなさいな」


 ……ハートキャッチの追加プリキュアはどうしてこう調子乗りたがるんでしょうね? ついでに言っておくと、ムーンタクトの実物はくねったナックルガードに赤い刀身の剣という、シャドーでムーンな剣状の杖(?)でした。



 そんなプリキュア達に続いて、次はあいつも空から帰ってきた。


「みんなっ、俺もいるぞおおおお!」

「ッ! ……カズキィィィィィィィ!!」


 ヴィクターとともに月へと上っていったカズキが、斗貴子さんの泣きそうな声に迎えられ、ヴィクターを連れてやってきた。


「カズキ……やっと帰ってきたか、あのバカ」

「ええ、さすがに月から運んでくるのは初めてでしたから大変でしたよ」

「うおわぁ!?」


 感慨深くつぶやいた俺の独り言に応えたのは、いつの間にやら後ろに立っていた運び屋の赤屍さんだった。
 そう、赤屍さんの言った通り月にいたカズキとヴィクターの回収をしてくれたのがこの人なのだ。
 以前風都の港で安藤さんから人工衛星にグリッドマンを送り込むための通信装置を受け取ったとき、もしカズキが月に行ってしまった場合の回収をお願いしたのだった。
 さすがに不死身のこの人でも生身で大気圏離脱は出来なかったらしく今日このときまで時間はかかったが見事成し遂げてくれた辺りさすがだと思う。


 ちなみに、依頼料はというと。


「ふ、ふふふふっ……それではクライアントへの報告も終わりましたし、そろそろ私は依頼料を受け取っても……よろしいですね?」

「は、はい、どう……」


 ぞ、と言い終えるより早く影すら残さない勢いで敵の一団へと突っ込み、そこで盛大に泥モンスターを吹っ飛ばしていた。
 この最終決戦への参戦許可。それこそが赤屍さんへの依頼料代わりだったりするんですね、これが。……勢い余って敵味方の見境なくならないようにと一応言っては置いたので、多分大丈夫だろう……多分。



 ……分かれていた仲間達がどんどん帰ってきてくれるのは素直に嬉しいんだけど、なんだかそれに比例して戦場のカオスも増している気がするのはどうしたものだろう。
 そんなことを考える余裕も出始めたころ、こんどは空に穴が開き、そこから伸びる線路に乗ってデンライナー(?)が現れた。


「デンライナー!? 一体どうして!」

「それは、僕らを連れてきてくれたからさ……よっと!」

「カメ公!? クマ公も!」


 当然のようにそこから降りてきたのは、かつて過去の時間に取り残されたウラタロスとキンタロス、そしてついでにジーク。
 確かにそろそろデンライナー(?)は復活するころだと思っていたし、そうしたら呼び戻しに行くつもりではいたけれどこのタイミングとはナイスだよ。なあ……。


「私だって、仮面ライダーですっ!」


 この戦いで誰よりも必死に戦っていた桜のサーヴァント、ライダー。いつぞや士郎に仮面ライダー扱いされてたけど、実は気に入ってたんだろうか。
 まだデンライナー(?)も完全復活というわけではないだろうが、そのあたりはライダーの騎乗技能。さすがの操縦技術で地上から空中から降り注ぐビームとか火の玉とかの全て、デンライナー(?)の車体を捩じらせるようにして避けている。さすが、ライダーの名は伊達じゃない。


「お、俺より運転うめえじゃねえか……」

「落ち込むなモモタロス。あんな変態的な機動真似しなくて良いから」


 軽く落ち込んだモモタロスを慰めたりしつつ、電王組も皆そろって勢いとテンション100倍。帰ってきた仲間たちや他の仮面ライダーとともにそれはもう無双級の活躍を見せてくれた。


 ちなみに、なぜ「デンライナー(?)」という表記なのかとゆーと、ライダーが操っているのはこれまで見なれたデンライナーゴウカの姿ではないからだ。
 いや、基本的なところは変わらないんだよ。イスルギとかレッコウとかイカズチなんかも接続されているがそれは良しとして、さらにその後ろ。
 デンライナー全車両の後ろになんだか明らかにデザインの傾向が違う車両が連結してるんですよ。


 レトロと最新の狭間にありそうな蒸気機関車っぽい車両とか、銀のつばさとそれに乗っていそうなのぞみとか、動物に変形しそうな感じのボンバーな奴らとか、災害救助をしてくれそうな感じのダイバーな奴らとかそれはもう色々と。
 なんつーか、ジョイントしたドラゴンがファイヤーしそうです。


「せっかく旋風寺コンツェルンの方々が車両を貸して強化改造も施してくれたんですっ、必ず使いこなして見せます!」


 ……あれだ、金持ちって多分無敵ってことですねー。
 なんかもう遠くを見るような眼しかできなくなってきましたよ。




 そして、最後に控えていたあの人たちがやってくる。
 俺をしてすら、さすがに予想外だったあの人たちが。


「How do you like me now!!!!!」

「ヒーローマーン、アターック!!!」


 地上戦力空中戦力どちらも程よくそろったものの、いまだ空に浮かぶ泥モンスターや星黎殿が健在で鬱陶しいと思い始めたころにその声が響いてきた。


 ……まあこの台詞の時点で誰が何しに来たのか丸分かりなんですけどね?


 もういい加減首が疲れてきたけどそれでも見ずにはいられないから空を見上げてみると、そこには天が落ちてきたのではと錯覚するほどに高いテンションと密度で降り注ぐ無数のミサイルと銃弾が。
 一瞬血の気の引く思いがするものの、ミサイルと弾丸は一発も外れることなく空を飛んでいた泥モンスターに命中し、一気に空を飛ぶ敵の数が半分くらいになった。


 片や星黎殿のほうを見てみるとちょうどど真ん中の辺りに、雷を纏ってぐるぐる回っている白い物体が貫いて、浮力を失ったのかだんだんと高度を下げはじめていた。


 そんなテンション高い大破壊をやってのけた白と黒のロボっぽい外見をした二人は地面になっている氷を砕きながら着地して、すっくと立ち上がった。


『はじめまして、大統領に言われてみなさんを手伝いに来ました、ジョーイ・ジョーンズとヒーローマンです!』

『遅れてすまない。ホワイトハウスの掃除に思いのほか時間が掛かってね』


 大統領とヒーローマンが現れた!
 今朝ニュースを見た時点では遠く太平洋の向こう側にあるアメリカ合衆国でホワイトハウスに湧いたスクラッグの残党と戦っていたはずなんですが、なんでいるんですかこんなところに。


『ああ、さすがに以前ファイトハウスをホワイトハウスに改築したときよりは大変だったがね。君達のほうも大変だと聞いて急いで片付けて来たよ』


 HAHAHA、とアメリカンな笑い声とともにそう言いきる大統領。
 でもそれを言うのが大統領だとスクラッグに関連した世界危機レベルの事件も「大変」の一言で済む! 不思議!


『ただ、さすがに私達だけではこれほどの速さでここまで来ることは出来なかったのでね、彼らに護衛と輸送をお願いした』

「彼ら?」


 そういって空を指差す大統領に従ってもう何度目になるかわからないけど見上げると、轟、と爆音が響いて何かが通りすぎ、進路上にいた泥モンスターがボコボコ落ちてきた。


 近くを通ったときは速すぎてなんだったか分からなかったが、はるか向こうのほうで旋回しているのを見つけ、ようやくなにが起きたのかを理解した。


 そこにいたのは人やら電車やらが普通に空を飛ぶこのカオスな世界においては逆に異質なほど航空力学に忠実な形状と翼を持つ、むしろ一般的には見慣れた航空機。
 面積の大きな主翼とステルス性能を考慮した継ぎ目の滑らかな機体を持つ戦闘機、F-22ラプターだった。


 ウルトラマンにおける通常戦闘機のように、怪獣やらなにやら渦巻くこの空間において現実にも存在する戦闘機はさすがに分が悪いのではないかと思ったが、ラプター自身の高速性能とライダーの操るデンライナーにも匹敵するほど鋭いマニューバで攻撃を避け、次々と敵を撃墜していく。


 え、何でこんな強いの?


 一体あの戦闘機は何者なのかと見ていたら、近くを旋回しながら飛んできたときに尾翼に描かれたエンブレムが見えた。
 青い空を優雅に舞うリボンのように∞のマークを描く、メビウスの輪。


 その姿、まさにリボンつきの翼だった。


『Mebius 1 engage!』


 そんな戦闘機内の無線らしき声が、大統領の持ってきた戦況を知らせるインカムから聞こえてきました。


『アメリカ空軍でもナンバーワンのエースでね。ホワイトハウス奪還作戦でも協力してくれたよ』



 ……この世界の歴史においても、太平洋戦争が起こって日本はアメリカと戦争やっています。
 日本は日本で色々と人外じみた人とかロボとかありますけれど、それにしたってよくこんなのが生まれる国とケンカできたな。
 その後、ハワイ辺りに駐留しているという戦闘機隊、通称「ラーズグリーズ」も参戦するに至るのを見ながらそんなことを思いました。



 ただ、そんな人たちの参戦はまだ生ぬるいほうだったと知るのはその直後の話。


 ごうごうと、空の上のほうからもういい加減嫌になるくらいだがまたしても増援の気配がやってきた。
 これまでもともとの仲間達とか大統領とか降ってきたんだからもう何が来ても驚かないぞ、と思って振り仰いだ。


 そして、超絶句。


 泥モンスターとか徒とか、デンライナーとかラプターとかが高速で飛び交う空に、いっそ鈍重なほどに遅い飛行機が飛んでいた。
 やたらめったら頑丈そうなボディに二本の垂直尾翼。
 見晴らしのよさそうなコックピット周りは戦闘機サイズでありながら重爆撃機のような雰囲気を醸し出し、機首と同軸の機関銃はラプターのものより一回りは大きい弾丸を吐き出して射線上の敵をことごとく「消滅」させていく。


 対地戦闘においては圧倒的な戦力を誇るアメリカの攻撃機、A-10サンダーボルトⅡである。
 しかも、メビウス1と同じように垂直尾翼に描かれたエンブレムは、柏の葉の下で交差する剣にダイヤモンドをあしらい、「1939」とかかれた鉄十字。


 ゑ……? ま、まさか、アレは……!


『ははっ、撃ち落し放題だぞ、ガーデルマン!』

『わかりましたからとっとと撃ってください大佐。また横から来てますよ』


 無線の言葉で確定。
 あれ、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルだー!?


 黄金剣付き柏葉の魔王!
 そういえばこっちのWikipedia見てもあの人死んでるとか書いてなかった!
 戦果は元の世界で見たのと変わらないくらいすごかったけど、まだ生きてたのかよ!?
 しかもこの戦場に来るってどういうこと!?


『いやあ、久々に彼が開発のアドバイスをしたA-10の様子を見に来ていたのでね。せっかくだから誘ってみたのだよ』


 やっぱりあんたの仕業か大統領。
 なに連邦の白い悪魔のビームライフル乱射しながら「ドライブに誘ったら来てくれたんだよ」みたいなノリで言ってるんですか!


 ああもう、メビウス1とかラーズグリーズの戦闘機からすれば空戦性能なんて無いに等しいA-10で敵の攻撃をひょいひょい避けてかわりに自分の攻撃叩き込んでるし。
 なにあれ、まるで発売から7年かかってもクリアされることのなかった某弾幕シューティングの極殺兵器の攻撃を回避しきる人でも見てるような気分になってくるんですけど。一体どうやってあの機体で回避してるんだ。


 そんな風にぼーっと、というか呆然と魔王様の戦いっぷりを見ていた俺のそばで、「パンッ!」という音がした。
 嫌な予感しかしねぇ、と思いながらもゆっくり音のしたほうを見てみたら、すぐそばで頭をなくした泥モンスターがどさりと倒れておりました。
 おお、いつのまにこんな近くに。いろんな人たちが助けに来てくれたからついうっかり回りの様子を気にしなくなっていた俺に近づき、ちょっくら命を狙っていたようだ。
 いや、それはいいんだけど一体これは誰が……と思いながら命の恩人を探してみたら、いました。なんか遠くの方に凍った海面とほとんど一体化していて分かりづらいが、白い塊がうずくまってライフルらしきものを構えているのが見えた。


 その白い塊が次々と打ち出す弾丸は百発百中の精度で次々と泥モンスターにヘッドショットをキメている。
 ……氷と同化するほどに白く、確実に頭を打ち抜くその狙撃技術。まさか今度は……。


『ああ、ヘイへに助けられたな。あとでコーヒーでもおごるとしよう』


 ……そっかー、この世界って空だけじゃなくて地上にも人外が住んでるんですねー。白い死神というかムーミン谷のゴルゴ13というか、あの人までいるんだったらもう怖いものなんて何もないだろうよ!



 そして、そこからは完全にこちらペースの反撃が始まった。


 泥モンスターの大群をオールライダーが押し返し、プリキュアオールスターが殲滅し、空を飛ぶ泥モンスターと徒をなのはちゃんたちや大統領やメビウス1たちが撃ち落とし、一気に形勢が逆転した。


 ついでに言うと、仲間の陣営もカオスなことになったせいか色々とドラマも生まれていたらしい。



「GISYAAAAA!!」

「危ない!」

「うわぁっ!」

「君は……! ケガはないか?」

「はっ、はい、大丈夫です! 仮面ライダー!!」


 士郎がちょっと危ないところを仮面ライダー1号に助けてもらったりとか。


「あっ、あの俺! 十年前あなたに助けられて……ッ!」

「ああ、覚えているよ。大きくなったね。……さあいこう。今日は君達と俺達で、オールライダーだからな」

「っ! ……はい!!」


 ……士郎、気持ちは良く分かるが涙拭け。まあ、仮面ライダースピリッツっていいものだからしょうがないが。



「私は戦争が大好きです!」

「いいだろう、来い!」


 いつの間にやら墜落した城のあたりまで一人で踏み込んでいた赤屍さんが言峰と肉弾戦始めていたり。
 ……いつぞや言峰教会で留守番してた神父様が出てきたりしないだろうな。



「自惚れも大概にしろ、雑種共!」

「お前の相手は俺がしてやる、ギルガメッシュ!」


 いいかげんキレ始めたギルの相手をするのは士郎。
 「ここは任せて先に行け!」なんて死亡フラグ紙一重なことを言ったりもしていたが、たくさんのライダーに囲まれてテンション上がった士郎なら大丈夫だろう。


「ふっ、いいだろう。ならば我が財宝の錆となれ!」


 と叫ぶギルの後ろに現れた空間の歪みから、いつものごとく大量の宝具が……!


 出なかった。


「へ?」

「な、何だと!?」


 思わず間抜けな声を上げる士郎と、あからさまにうろたえるギル。
 なんというか、今まで見ただけでもやばそうだとわかるカッコいい剣だとかわけわからない武器だとかがどばーっと出てきていたゲート・オブ・バビロンなのだが、なんか今回は見た目もしょぼい剣が二、三本ぴゅんぴゅんと飛んできただけだった。
 なんかギルにとっても予想外だったみたいだし、一体何が起こったというのか。
 ギルと士郎も呆然とゲート・オブ・バビロンの出口を見ていたのだが、そしたらなにやら大きな歪みと共に人型をした何かの影が浮かび上がり、中から誰かがひょいっと現れた。


「いやあ、さすがは最古の英雄王の倉。お宝が一杯だね」


 そして、マスクの下ではホクホク顔を浮かべているだろうことを想像させる声で、そんなことをのたまいながら自称怪盗な旅人、仮面ライダーディエンドが出てきたのでした。
 その手にはカード狭しとばかりに色んな宝具の書きこまれた一枚のカード。
 さてはあんにゃろう、あのカードの中にゲート・オブ・バビロンの中身ほとんど盗みやがったな!?


「な、なっ……!」

「えーと、なんだかよくわからないけどライダーならば全部よし! いくぞ英雄王……さあ、お前の武器を数えろ!」


 色々とツッコミどころ満載の状況であるにも関わらず、士郎的にはライダーがやったことだから全てOKのようで、なんとなく翔太郎あたりに感化されたと思しきセリフとともに固有結界を展開した。
 ……うんもういいよ、勝手にそっちでやっといてくれ。



「なあ、にーちゃんよ」

「うおっと!? ななな、何の御用でしょうかランサーさん?」


 ふらりといつの間にやら俺のすぐ傍までやってきていたランサーに話しかけられて超びびった。
 一応ランサーは敵のサーヴァントなのだが、ランサー個人としてはそれほど敵対の意思が無いし、令呪でロクでもないことを命令しそうな言峰は相変わらず赤屍さんと中国拳法で戦っているから気付いてもいないようだ。


「いや、な。さっきお前さんは闇の書のねーちゃんの契約解除してただろ?」

「え、ええまあ。……ううっ、そのことちゃんと見ててくれたのアンタだけだよ……」

「まあ泣くな。……で、ものは相談なんだけどよ、ひょっとしてそんとき使ってた宝具使えば俺の契約も解除できるんじゃねえか?」

「あ」


 ……というわけで、ランサーもそけぶ――そのサーヴァント契約をブチ壊す!――して仲間になってくれました。


「いよっしゃああああああ! ぃやぁあってやるぜぇええええええ!!」


 思う様戦えなくてよっぽど鬱憤たまってたのか、それはもう大暴れしてくれました。敵に回した時は宝具とか――特に良太郎先輩に使われたらと思うと――怖くてしょうがないけど、仲間になると頼もしいですねー。



「キリがないか……シャナ、これを使え!」

「これは……? よくわからないけど、エクスプロージョン!!」


 シャナの日本刀一本だけだと、さすがに数に頼る敵と戦うのに不利だと考えたらしいアーチャーが投影した、十種類の姿を持っていそうなオレンジ色の剣を受け取るなりやたらと堂に入った叫びとともに振り回し、あっちゃこっちゃ爆発を振りまくシャナ。
 ……おいシャナ、無双出来て楽しいのはわかるけどその辺にしておけ。悠二が本人にとっても原因不明の恐怖でうずくまってるから。


「僕は犬じゃない僕は犬じゃない僕は犬じゃない……」


 ……この世界の悠二はなんか不遇だなあ。



「ところで、おやっさんは所長と会っていかないんですか?」

「……ああ」


 影から影へ、目立たないようにしながらも渋い活躍をしているおやっさんこと仮面ライダースカルを見つけたので、久々に話をしたりもした。
 MOVIE大戦に現れたソウキチのほうじゃなく、正真正銘翔太郎の師匠で所長の父親である鳴海荘吉だ。
 おやっさんはビギンズナイトの事件で殉職する直前にフィリップのいた地球の本棚に入った経験があり、NEVERの暴れた事件の時にもわずかながら翔太郎の前に姿を見せている。
 だからひょっとしてフィリップと同じく地球の中にいるんじゃないかと思ってグリッドマンに探してもらったのだが、案の定だったようだ。
とはいえおやっさん自身は自分が死んだという認識が強いせいか、翔太郎達を見守るだけでいいらしい。
 まあ、もし再会できるとしても冬に起きる次のMOVIE大戦を待たなきゃいけないってことなのかなぁとそんなことを考えながら、さりげなく所長に近づく泥モンスターと、ついでに照井を撃っているおやっさんの姿を眺めていた。



 まあそんな感じで、皆の力を合わせて絶望を塗り替えた。
 やっぱりそれが、俺達の戦いのやり方なんだろう。
 敵はボコる。仲間になる奴は仲間にする。
 それがたとえどんなカオスな戦場を作り出すことになろうとも。


 オールライダーに混じって現れたオーズがガタキリバコンボで分身して一人ライダー大戦をやったり、ウルトラマンマックスが分身して一人ウルティメイトウォーズをするのもよくあること。


「よぉーしっ、みんな! やっちまえええええ!!!!!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おう!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



 そして、残ったパル・マスケの城とUキラーザウルスネオに無数のライダーキックとか投影された宝具とか砲撃とか光線とかの必殺技の数々が突き刺さり、そろそろ存在を忘れかけていた結界全体を震わせる振動と轟音とともに、全てが無に還って行った。




 正直終盤は俺という一人の人間の処理能力を越えていたので、全ては記しきれない最終決戦はこんな感じ。
 ちょっとあっけないような気もするけど、敵も味方もあれだけ揃っていればそれはこうもなるだろよ。


 だからあとは、最終決戦の後に起きたことを語ろう。



 まず気になる敵陣営がどうなったかについてだが、闇の書の闇は完全消滅を確認し、Uキラーザウルス・ネオ、というかヤプールの怨念はその大部分を消し飛ばされて再び冬木の海へと封印された。
 ヤプールはさすがにしぶとすぎるので完全に滅ぼすことはできなかったが、この世界にはあれだけのウルトラマンを始めとしたヒーローもいるんだから、もしまた復活してもきっとなんとかなるだろう。


――約束は果たした。君達の力になれたことを、私達も誇りに思う


 ウルトラマン達が宇宙へと帰って行くとき、そんな言葉が聞こえた気がした。
 きっとまた、ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って、どうにもこうにもどうにもならないそんなときに助けにきてくれることだろう。



 カイを始めとしたイマジン達もほとんどが徒や泥モンスターに混じって倒されていたようだから、おそらく超電王の事件が起きるまでは何事もないと思う。
 イマジンもなかなかどうして根絶が難しい存在のようではあるが、それこそクライマックス刑事とかディケイドとかどこからともなく助けに来てくれるだろうから無問題だ。



 ヴィクターに関する話も、一応の決着がついた。
 こちらも原作通り、未だ人間に戻る術が確立されていないホムンクルスともども月に移住してもらって、錬金戦団による人間化の研究が完成するのを待つことになる。
 とはいえ、錬金戦団には最近、どこからともなく変な帽子をかぶっていて糸を伸ばして戦う、イメージカラーが紫の女の人が共同研究を申し入れたというから、ホムンクルスとついでに吸血鬼の人間化は割とすぐに成るかもしれない。



 ……とまあそんな風に大体良さげな結末を迎えたものの一方、少々きな臭いところもあったりする。


 その筆頭が、シャナ陣営だ。
 最終決戦終盤、地上に墜落した星黎殿はオールライダーの全員参加ライダーキックでぼこぼこにされた挙句、サンライズの構えから天を突かんばかりに伸ばされたシャナの炎の剣に真っ向唐竹割りで真っ二つにされたというのに、気付いたら例の幹部三人はどこにもいなかった。
 多分シャナの方は原作終わってないから、これからもあいつらが暗躍して悠二が闇悠二に覚醒したりするんだろう。千年パズルでも持たせてくれようか。


 同様にハートキャッチ組のプリキュアもまだ砂漠の使徒との決着がついていないし、なのはちゃんたちは10年後に井坂先生並みの変態ドクターをボコるという使命があるが、今のところはどちらもすぐさまどうにかしなければいけないということはない。しばらく落ち着いていられるだろう。



 とまあ大体そんな感じだ。
 言峰は、セイバーとアーチャーとランサーとライダーによってボコられて壊れた聖杯と運命を共にしたようだし、桜はきっちり救出されて今では誰に憚ることなく凛を姉さんと呼んでいる。
 ……まあ、士郎の取り合いになると黒いオーラを出してくるんですけどね?




 そして、冬木に平和が戻った。


 戦いを終えたほとんどの仲間達はこれまで通りの生活に戻っていくことになり、変わらぬ日々が帰ってきた。


 なのはちゃんたちは本格的に管理局に誘われていたし、それを受け入れそうな雰囲気ではあったからくれぐれも、くれぐれも無理はしないように言っておいた。
 まあ、この世界ならばフェイトやはやて達以外にも仲間はたくさんいるし、リィンフォースだって生存しているし、無理矢理フェイトに引き合わせたプレシアさんも和解できたから大丈夫だろう。
 そうそう、ルールブレイカーで闇の書の闇と切り離したリィンフォースだけど、フィリップの時と同じようにちょっくらグリッドマンにフィクサービーム当ててもらってプログラム修復したらすっかり良くなりました。さすが、電脳関係なら無敵だなグリッドマン。


 プリキュア5のみんなはそれぞれの夢を叶えるために努力をしているし、カズキと斗貴子さんはなかなかどうしてラブラブなカップルとして周囲に知られている。
 カズキはまだ胸の中に核金を残したままだけど、あいつが今さらその使い道や何かで悩んだり道を誤ったりするはずもないだろう。


 セイバーを始めとした生き残りサーヴァントも、最終決戦が終わってからウルトラマンコスモスがフルムーンレクトで浄化した大聖杯のかけらを取りこんで現界していられるようになり、主に衛宮邸に住みついて賑やかに過ごしている。


 ともあれそんな感じで諸々片付き、駆けつけてくれた人たちもそれぞれ帰っていった。


 大統領の帰り際、わざわざ帝都から小泉ジュンイチロー首相が迎えに来て凛とシャナとともに(麻雀的な意味で)一戦ぶちかますという阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられたりもしたが、まああれは忘れておくのが賢明だろう。大統領麻雀もマジ強いし。
 さらにはエアフォースワンに乗り込みしな、ジョーイに大統領魂を感じたらしい大統領が、そのうち大統領選に出馬しないかと勧誘したりしていた。
たじたじになるジョーイの姿にごく一部の腐りかけメンバーが萌えたりしていたような気もするが、まあ気のせいだろう。



 これが、俺の経験したカオスな事件だ。
 とはいえ、完全に平和になったわけでは決してない。


 例えば、風都ではいまもガイアメモリが残っている。
 それを手に入れたヤンキーたちが事件を起こし、仮面ライダーが解決したというニュースは時々聞こえてくるし、デザトリアンが暴れたという情報も噂話に乗って町を駆け巡っている。


 つぼみちゃんたちはこの間からフランスへファッションショーに行っているが、多分そこでも封印されていた砂漠の使徒が復活したりしているのだろう。
 先日つぼみちゃんから連絡があり、なぜかパリにあった、喋る提灯を装備した寿司の屋台で豆腐を片手に持ったにーちゃんと一緒に寿司を食べたとか言っていた。
味は普通だったらしいけど。


 悠二は悠二で一人鬱々としながらシャナについていくべきかで悩んでいるようだし、良太郎先輩も小さくなったり元に戻ったりと大変そうだ。


 そんな風に、一つの事件が終わってもまだ全てが片付いたわけではない。
 だからこれから先も、俺が生きていかなければならないこの世界ではアチコtでたくさんの事件が起きて、そのたびに超人たちによって解決されていくのだろう。




 そんな中、今回冬木で起きた一連の事件でもたいしたことが出来ず、転生したのに相変わらずチートの一つにも目覚めない俺はこれからも変わったりしないだろう。
 自分の身近で起きた事件はこれであらかた解決したんだから、あとは元の世界にいたころのように、テレビや新聞の中に出てくるその辺の事件を見つつ近づかないようにするだけだ。


 これが、俺の遭遇した事件の顛末。
 カオスと、恐怖と、最高の仲間達との冒険と戦いの日々。
 どこかあっけないほどの終幕はこうして訪れ、俺たちは未来へ向かうんだ。


 ようし、これからは平和に生きるぞ!








「……そう思っていた時期が、俺にもありました……ッ!」

「ど、どうしたんだ?」


 教室の中、自分の席。
 色々面倒が終わったと思っていたのに再び自分が放りこまれた状況に頭を抱える俺に声をかけてきたのは、最近新しくできた友人の一人だ。


 つんつんと跳ねた髪の下にやる気の無さそうな表情を浮かべた、良太郎先輩並に不幸な高校生。
 本人はいたって善良なのにどういうわけか不良やらツンデレ中学生に絡まれやすく、時々ボロボロになっているこいつの名前は、上条当麻という。


「どこか具合でも悪いの?」

「だったら無理すンなよ」


 上条さんに続いて俺を心配したような声をかけてくれたのは、同じく新しい友人である二人。
 廃部寸前だった美術部に入り、友人と先輩を巻き込んで部長の座に収まった白塚真一と、高校生離れした筋肉量を誇り、ときどきふらりといなくなっては傷と強そうなオーラを増やして帰ってくる範馬刃牙である。


「ああ、だ、大丈夫だよ……」


 なんだろうね、この既視感を感じるやり取り!



 あ、ありのまま先日起こったことを話すぜ!
 「冬木の学校が某学園都市と姉妹校提携して、その交換生徒としてこの学校に送り込まれた」
 な、何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……。
 頭がどうにか……はもうなってるような気がする。
 相変わらずのカオスだとかまた事件に巻き込まれそうだとかちゃちなもんじゃ断じてない。もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……。


 もう今回の人生で何回繰り返したかわからないポルポル的反応を繰り返す俺。
 この学校のこのクラス、担任教師は矢的猛先生だし副担任は糸色望先生だし、クラスメートの中には小さい頃はかなり暗い性格だったという天河優人とか、最近一体何についての物だかは知らないが師匠を見つけたという噂の安達明日夢とか、学校始まって以来の秀才と呼ばれる夜神月とかがいたりする。
 ……頭の痛くなる度合いで言うならば前の学校並だよチクショウ!


 なんかこっちに越してきて早々全身に赤い隈取り模様のついた白い犬(ぴょんぴょこ跳ねる玉虫付き)も拾っていつの間にやら家に住みつかれてるし、今度は何が起こるんだちくしょおおおおおおおお!!



 一難去ってまた一難。
 カオスな世界の恐ろしさに神を呪ったことは数知れず。
 どうやら俺の人生に「平穏」という言葉はないようです。
 仕方ないから、今度も色々がんばってやるよ。



 以前の仲間と、これから仲間になるかもしれない奴らの顔を思い浮かべて、俺は新しい日々を生きる覚悟を決めた。
 こんなカオスな世界でも、楽しんでやるさぁあああああ!!!



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 やたらと長くなってしまった最終話を読んでいただきありがとうございました。
 「一話につき10件の感想をもらう」「全体で100件以上の感想をもらう」という私のひそかな野望を達成できたことも、こんな勢いとネタしかない代物を一応の完結まで持ってこれたのも読んでくれた皆様のお陰でございます。
 私はこのネタとは別にリリカルなのはの二次創作もチラ裏板に書いていますので、もしよろしければそちらの方も見てやってください。

 最後のネタ解説につきましては、明日その他板に移すときに投稿しますので今しばしのお待ちを。
 それではこれにて。
 ありがとうございました!



[20003] αシリーズのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2011/01/22 17:49
 スーパー超人大戦α


 絵本コーナーの赤ずきん&シンデレラ
 月光条例より、赤ずきんとシンデレラ。深山町の流行らないラーメン屋でやたらと目つきの悪い高校生が手伝いをしているという噂があります。

 こんなに月が青い夜は~
 「みんなのうた」より、月のワルツ。みんなのうたに時々ある不気味……というか不思議な曲の一つ。結構好きです。

 怪盗達
 ほぼ名前そのままに、「ルパン三世」、「キャッツアイ」、「怪盗セイントテール」、「遊撃警艦パトベセル」、「神風怪盗ジャンヌ」、「まじっく快斗」というか「名探偵コナン」というか、より。多分帝都の警察と渡り合うにはこの人たちくらいの能力・技術が最低ラインでありましょう。

 二人の少年探偵
 それぞれ「鉄人28号」と「快傑!蒸気探偵団」より。どちらも父に託されたロボットで探偵活動をしている少年達。多分鳴滝くんの強力は帝国華劇団と連携して整備とかしていたんじゃないかと。

 ドロンボー一味
 言わずもがな、「ヤッターマン」より。中の人たちはいつまでもお元気ですよねー。

 プレシャス、サージェス財団、ボウケンジャー
 「轟轟戦隊ボウケンジャー」より。謎のお宝プレシャスの回収を任務とする戦隊。最初タイトルを聞いた時一体何を目的にどんな敵と戦うのかさっぱりわかりませんでしたが、チーフがおもしろいのでほぼOK。

 ADA
 Z.O.Eシリーズより、独立型戦闘ユニットADA。人格を持ち、持ち主と会話するAIというのはロボットを含めれば世に数ありますが、中でも屈指の萌えAIとはこのADAのこと。原作ゲームにおいてヒロイン以上に可愛いのはもはや疑いありません。

 ブラックスポット
 「NEEDLES」より。原作では第三次世界大戦によって発生したものらしいですが、こちらは別の原因で。別名のロストグラウンドは「スクライド」、地獄門(ヘルズゲート)は「DARKER THAN BLACK」より。フラグメントとかアルター使いとか契約者とかもそれぞれに登場する能力・能力者の名前。ただし、フラグメントの説明にある「聖人の遺体を手に入れると~」というのは「ジョジョの奇妙な冒険」第七部、スティール・ボール・ランにおいてスタンド能力を手に入れる方法の一つです。

 峰島勇次郎
 「9S」より。シリーズ全ての事件の根源でありながら未だ謎の多いヒロインの父親。作中に登場した時は鳴海のおやっさんのようなスーツに帽子という伊達姿で現れているので、ひょっとしたら沈黙屋の常連の範馬のほうの勇次郎さんとか鳴海のおやっさんとも知り合いかもしれない。その後の真目財閥とかその辺も9Sシリーズから。

 OZ
 「サマーウォーズ」より。第三次を書く前に見ていれば、あらわし関連の話ははやぶさとまとめられたものを……。ともあれ、この映画って根本的な部分が僕らのウォーゲームとまったく同じな気がするんですが。電脳世界の危機が現実に影響するとか、世界中の人の思いを託されて超進化とか、タイムリミットぎりぎりで勝利、とか。面白いから良いのですけれど。

 キングカズマの助っ人たち
 「OVERMANキングゲイナー」よりキングゲイナー、「電光超人グリッドマン」よりグリッドマン、「電脳冒険記ウェブダイバー」よりグラディオン。「キングカズマのネーミングってキングゲイナーと全く同じ発想だよなー、同じくネットゲームだし」と思い至ったために、キングゲイナーにも参戦してもらいました。でもそれだけだと寂しいんで、コンピュータ内で戦うヒーローであるグリッドマンとグラディオンも呼んでみたり。ちなみにグリッドマンのラスボスである魔王カーンデジファー様はフロッピーディスクに入れるくらいにデータ容量を小さくできるそうです。便利! ちなみに、オリ主はアクセプターを持ってないし、マジカルゲート的なものも存在していないので二人と合体することはできません。

 宇宙に放りだされた究極生物
 「ジョジョの奇妙な冒険」第二部より、ラスボスのカーズ様。このカオス世界で全ての生物を超越してるわけだから、多分体の一部を動物化するどころか怪獣化することもできたかもしれません。

 オールドドーパント
 精神干渉によって相手の年齢を操作することのできる能力を持ったドーパント。この能力を受けたなのはが変わったのが「ひぐらしのなく頃に」より古手梨花、フェイトが変わったのが「無限のフロンティアEXCEED」よりネージュ・ハウゼン。梨花ちゃんはループによって百年以上生きていて、ネージュはエルフなので寿命が長く、作中において「花もド恥じらう117歳」と言っていました。

 光と闇の舞
 「勇者王ガオガイガーFINAL」より、光竜と闇竜の合体した天竜神の必殺技。中の人が田村ゆかりさんでありますので、ネージュのベレイシャスミラーを使って合体攻撃として再現してもらいました。

 プリズ魔イリヤ
 「魔法少女プリズマイリヤ」より。意図的誤字。Fateのファンディスクに登場した凛の変身する魔法少女、カレイドルビーがどういうわけか巡り巡って現在連載中のこのマンガに行き着いたようです。ちなみに、このマンガにおけるイリヤは士郎の妹であり、作中の番外編として劇場版のなのはさんたちとも共演しております。……アニメ化しねーかなー。

 魔法少女激情態
 劇場版リリカルなのはより。「激情態」という言葉自体はMOVIE大戦2010に出てきたディケイドのフォームより。中の人に「押しちゃいけないスイッチを押しちゃったくらい強い」と言われるほど強く、かのチートオブチートであるBlack RXすら倒したらしい。そんな激情態の名を冠するにふさわしく、劇場版におけるスターライトブレイカー用BGMはどう聞いても魔法少女のそれではなく、明らかにボス曲にして処刑用BGM。なのはさんマジパネェ。
 ルビーが例として出した選ばれし魔法少女は、「カードキャプター桜」と「おじゃ魔女どれみ」から。プリキュアは魔法少女というよりも変身ヒーローなので一応この例からは外しております。
 ちなみに、もしハートキャッチプリキュアにキュアフラワーが登場していた場合、そっちも登場させようと画策していたのですが出てきてくれないので断念したという経緯があったりします。

 凛の金策手段
 「咲-Saki-」より、中の人ネタ。仲間内で麻雀をすると大体こいつらの誰かが勝つ。あとヴィルヘルミナもここぞというときは変な待ち方をして勝つらしいです。

 こたぷーん
 「ぷちます」より、みうらさん。765プロと961プロのアイドルたちにとてもよく似た小さい生物「ぷちどる」の一人であり、なんかこたぷーん。手を叩いたりして大きな音を出すとテレポートする能力を持っているという、ゾーンメモリいらずな人。


 第二次α

 歓迎しよう、盛大にな!
 「アーマードコア・フォーアンサー」より、メルツェルのセリフ。中の人ネタ。多分ここの照星さんはアーチャーと仲が良いんじゃないかと思われます。

 ナルトは絶対あげないってばよ!?
 「NARUTO」より、中の人ネタ。この世界のりんちゃんも結構ラーメンが好きなようです。

 炒飯作るわよ!
 チャーハン作るよ! のAAより。おそらく凛がセイバー達用に超デカイ鉄鍋振るってチャーハン作っていることでしょう。

 おにぎりなら作れますっ、それも早く!
 「魔法陣グルグル」より、キタキタオヤジのおにぎりの作り方。どのようにして素早く作っているかはあえて黙秘させていただきます。「桜があの方法で作ってくれたんならむしろご褒美」とか思ってしまうほど、レベルの高い方はここにはいないと信じております。

 甘味処「たちばな」
 「仮面ライダー響鬼」より、響鬼さんたちの拠点である甘味処。この世界においてたちばなを経営しているおやっさんは、仮面ライダーシリーズのおやっさんである立花藤兵衛で、手伝いをしている孫の女の子は以前泰山にいたAngel beats!の天使ちゃんこと立華奏。名字の字が違うのは気にしてはいけません。

 デュエルモンスターズ
 「遊戯王デュエルモンスターズGX」より、デネブとくるみの使用デッキは作中にて中の人が同じキャラが使っていたデッキを参考に。ただしくるみの方はアニメではなくPSPゲームのタッグフォースシリーズからデッキを引用。裁きの龍なんて滅びればいいのに。
 士郎のデッキは固有結界にちなんで、凛はあかいあくまだからレッドデーモンズを、セイバーのデッキは遊戯王系やる夫スレである「遊戯王デュエルモンスターズYX」より。セイバーが光と闇の竜に宿る精霊にしてヒロインとして登場しているのでそちらから。
 作中には出ていませんが、なのはちゃんのデッキは魔法使い族統一デッキ。アーカナイトマジシャンでフィールドを粉砕したりもしますが、基本的にはマジックテンペスター1killです。

 俺の歌を聞けぇ!
 「マクロス7」より、主人公熱気バサラ。中の人がFateのランサーと同じなので、マーボー神父の元で日々ストレスをためたランサーが変装という名のコスプレをして乱入してきた姿です。
 フィリップ達がつけた「ピザ好きの亀みたいな仮面」というのは、アメリカのアニメ「ミュータント忍者タートルズ」より。最近放送してたのはあまり知りませんが、一昔前の方は良く見ておりました。

 桜才高校軽音部
 「けいおん!」と「生徒会役員共」より。澪とシノ、律とアリアの中の人が同じであり、なおかつ桜才学園は元女子校だし桜が丘高校と名前も似てますし。ちなみに生徒会副会長はデュエルモンスターズにおいて近隣屈指の実力を誇ります。中の人的な意味で。

 演歌のカセットを発売したかのようなつぼみとフェイト
 中の人である水樹奈々さんは子供の頃にのど自慢荒らしとしてブイブイ言わせ、演歌のカセットも発売したとか何とか。それが紅白に声優代表的な感じで出場するまでになったんだからすごいもんです。

 酒を飲んだ仲間達
 セイバーは「シスタープリンセス」より千影、シグナムは「無限のフロンティア」シリーズよりアシェン・ブレイデル、ヴィータは「けいおん!」よりさわ子先生、シャナと悠二は「ゼロの使い魔」よりルイズと才人、ライダーとヴィルヘルミナは「アマガミ」より塚原響と森嶋はるか、カズキは「コードギアス」シリーズよりルルーシュ。いずれも中の人ネタ。

 安藤さん
 「9S」より、峰島由宇。安藤という名前は作中で由宇が名乗った偽名。相手の思考を読んでセリフを先回りする、というジョセフみたいなことを本当にやることができる子で、酸素消費の少ない呼吸法も心得てるのでこの世界なら波紋も使おうと思えば使えることでしょう。超天才な人なので、アシストウェポンとか色々作ってくれています。

 魔女の巣
 Wの映画を見てマリアさんがNEVERの技術を開発して死者を蘇らせるのと似たようなことをしたというのを見た瞬間これだ、と思いまして。
店にたむろしているのは、「東方Project」より霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドとパチュリー・ノーレッジ、および「レンタルマギカ」より穂波・高瀬・アンブラーとアディリシア・レン・メイザース。いずれも魔女。おそらく店の奥には変なスキマが開いていることでしょう。
 店名の由来は「笑ウせぇるすまん」に登場するバー「魔の巣」より。
 ちなみに、アリシアはNEVER化したわけではなく、NEVERに関する技術とプレシアさんの技術のハイブリッドで蘇生しただけですので、別に不死身じゃありません。

 薫子さんの甥っ子
 「仮面ライダークウガ」より、五代雄介。つぼみのおばあちゃんの旧姓が五代であるので。2000年までに2000の必殺技を身につけると幼いころに誓った青年で、1個目の必殺技は笑顔、2000個目の必殺技はクウガへの変身。ちなみにクウガの主要人物の名前を並べると、「五代雄介」「一条薫」「沢渡桜子」となるのですが、昔は五代薫子さんであったつぼみのおばあちゃんとはまあ関係ないですよね!

 ローゼンメイデン
そのまんま「ローゼンメイデン」から。鏡の中に入ったりバトルロイヤルだったり、振り返ってみれば龍騎と親和性の高い設定が多いという罠。黄色いのの「卑怯もラッキョウもあるものか!」というセリフは仮面ライダーディケイドにおける龍騎の世界で黄色いライダーであるシザースが「卑怯もラッキョウも大好物」と発言していたので。まったく同じセリフをウルトラマンタロウのメフィラス星人が叫んだりしてましたが気にしない。

 小型船に乗ってきた人々
 「BLACK LAGOON」より、ラグーン商会のダッチ、レヴィ、ロック。ベニーはついてきてないわけじゃなく、船の中で料理番をしているから降りてこなかっただけです。多分この世界なら船の上限定で料理が上手だったり蹴りが強かったりするのでしょう。

 赤屍蔵人
 「奪還屋Get Backers」より、赤屍蔵人さん。下手に出すと大統領並みにバランスクラッシャーやらかしかねなかったのでどう出すか迷っていたのですが、ちょうど良いところに荷運びの必要が発生し、ついでにもう一個運んでもらいたいものが出来たのでご登場願いました。

 大戦士長の武装錬金
 「勇者エクスカイザー」よりエクスカイザーと、「伝説の勇者ダ・ガーン」よりダ・ガーン。それぞれ最強形態であるグレートエクスカイザーとグレートダ・ガーンGXで登場。速水奨ボイスの大戦士長がロボを出すというのですから、これしかないでしょう。……多分この大戦士長が黒い核金とか取り込んでヴィクター化したらGEAR戦士電童のベクターゼロとか呼び出すことでしょう。
 合体時の掛け声は「超重神グラヴィオン」より、サンドマン様の中の人ネタ。かっこよくてお茶目で超素敵なオジサマです。

 リィンフォースの使った呪文
 「スレイヤーズ!」よりドラグ・スレイブ、「ドラゴンクエスト」シリーズよりメラゾーマというかメラというか、とピオラ、「魔術師オーフェン」より我は放つ光の白刃、「魔法騎士レイアース」より閃光の螺旋、「ダイの大冒険」よりメドローア、「ファイナルファンタジー」シリーズよりメテオ。
 ヴォルケンズを仲間にしたとき主人公が感じたカオスの予感の正体がこれ。蒐集によっていろんな魔法が使えるようになるのなら、この世界ではこのくらいしなければという無駄な使命感によってリィンフォースがとんでもないことになりました。

 大統領が大暴れ中の事件
 「HEROMAN」より、スクラッグ残党との最終決戦。大統領はホワイトハウスが占拠される直前に例の地下から発進するエアフォースワンで間一髪逃れてヒーローマンと合流。ヒーローマンともどもホワイトハウス上空から降下してホワイトハウス奪還に向かっております。
 DNNとAANはそれぞれメタルウルフカオスとHEROMANに登場するマスコミのヘリで、DNNのヘリは軍用ヘリよりも頑丈な上に撃墜されてもいつの間にか乗員が脱出していて、次の瞬間には何事もなかったかのように復活するという対大統領仕様であるので、この事件の報道でもかなり活躍していることでしょう。
 さらに、メタルウルフカオスにおいてはクーデターに対抗するレジスタンスとしてナイスミドルと呼ばれる人が登場する。歴戦の兵士として大統領を影ながら支えたりする人で、普段の職業はコック。誰をモデルにしているかはいまさら言うまでもないでしょう。

 プランD、いわゆるピンチ
 「アーマードコア・フォーアンサー」より、フラジールのリンクスCUBEのセリフ。じゃあプランAとBとCはなんなのかと思いますがそれはそれ。この人は登場するミッションがミッションだからか、他にも色々名セリフが多いです。

 「速さ」が足りない!!
 「スクライド」より、ストレイト・クーガーの名台詞。そりゃあんたからすれば誰でも速さが足りないでしょうよ。この世界におけるクーガーさんはおそらく今もロストグラウンドでカズマの名前を間違えながら元気よく走ったり戦ったりしていると思います。

 謎の自販機
 「仮面ライダーオーズ」より、今作のバイクであるライドベンダーとカンドロイド。街中に普通にある変な形の自販機にセルメダルを入れてボタンを押すとバイクに変形したりカンドロイドを出してくれたりする。特にタコカンは何も命令しなくてもバイク用のロードになってくれたり、高いところから落ちる時に命綱になってくれたりトランポリンになってくれたりと超有能です。

 オリ主の叫び
 「学園黙示録 High school of the dead」と、仮面ライダーオーズのOP曲「Anything goes!」の一節と、上条さんのそげぶの改造と仮面ライダーディケイドより。状況的に勢い任せに叫んだ台詞と、リィンフォースと闇の書の防衛プログラムを切り離すという宣言と、まあそれがファイナルフォームライドみたいなもんだろう、という思いからの発言。
 その後のモノローグにおける「これにて一件コンプリート!」というのは「特捜戦隊デカレンジャー」より。


 第三次α

 ループ・ザ・ループ
 きぐるみ姿でアルバイトしていたのは「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレス・エイト、ランサーやアーチャーやギルの釣りおよび半裸刺青男とスーツのおねーさんは「Fate/hollow ataraxia」より。ループものから拝借しようと思ったら意外とありました。
 その後のループ原因列挙は「涼宮ハルヒの憂鬱」、「Fate/hollow ataraxia」、「ジョジョの奇妙な冒険 第四部、第六部」、「アスラクライン」、「エルシャダイ」より。
 こんなネタの数で大丈夫か?

 失踪者
 「ゼロの使い魔」、「ながされて藍蘭島」、「恋姫†無双」、「戦極姫」、「魔神英雄伝ワタル」、「魔動王グランゾート」、「NG騎士ラムネ&40」、「聖戦士ダンバイン」、「魔法騎士レイアース」より。
 この世界は色々混じってるカオスなだけではなく、別の世界にカオスを供給する源ともなっているので異世界へ旅立っていく人たちもたくさんいます。
 その後の大規模事件は、「エデンの檻」、「遊戯王デュエルモンスターズGX」、「漂流教室」より。いずれもごっそりとこの世界からいなくなったという共通点があったりなかったり。そもそも遊戯王のほうは漂流教室のオマージュらしいですからね。

 文々。新聞
 「東方project」より、鴉天狗の射命丸文が発行している新聞。エデンの檻の飛行機が辿り着いたのが幻想郷です。現実世界で忘れられたり絶滅したりした物やら生物の行き着く幻想郷ならエデンの檻の舞台となっているよーな場所もあるかな、と。おそらく主人公一行は慧音あたりに保護されていることでしょう。

 通りすがりの仮面ライダー
 今までにもなんどか登場しかけた、「仮面ライダーディケイド」満を持して登場。オリ主の持っているスマートフォンの正体はディケイドがコンプリートフォームになるためのケータッチ(のようなもの)ですので、その力を使うためにはディケイドからカードを借りなければならなかったり。
 最終決戦後、オリ主からカードを返されてまた別の世界へ旅立って行きましたとさ。

 キュアムーンライト
 可能性の獣、というフレーズは「機動戦士ガンダムUC」、ムーンタクトを出す時の掛け声と実際のフォルムは「仮面ライダーBlack RX」より。
 「プリキュアの可能性を無限に高める」というハートキャッチミラージュの説明を聞いた瞬間に思い浮かんだのが、同じく可能性を詰めたラプラスの箱だったので。
 そしてムーンタクトの取り出し方は予告で見た瞬間からリボルケインにしか見えなかったので、つい。

 デンライナー(?)
 「勇者特急マイトガイン」より、勇者特急隊の車両をデンライナーにくっつけました。
 多分オーナーあたりが同じ電車系のよしみで旋風寺コンツェルンに持ち込み、デンライナーの修理を依頼したのでしょう。
 やっぱり最終決戦と言えばてんこ盛り合体だと思うので、全車両と合体してジョイントドラゴンファイヤーしてもらいました。

 護衛の戦闘機
 「ACE COMBAT 4」よりメビウス1、「ACE COMBAT 5」より、ラーズグリーズ。いずれも主人公機。ちなみに、ヒーローマンのOPにあったでビルの壁を飛び跳ねていたヒーローマンを乗せて飛んだ戦闘機。この世界ではあのラプターを操縦していたのがメビウス1です。

 黄金剣付き柏葉の魔王
 言わずと知れたハンス・ウルリッヒ・ルーデル。地上最強の戦車撃破王にして、片足吹き飛んでも平然と飛び続けた鉄人。
 この世界ではまだ生きていて、現役当時と変わらぬ飛行技術を披露してくれます。こんな世界だから、多分第二次大戦当時には「ついうっかり」で宇宙人の乗ってる飛行機とか怪獣とか撃破していたのだと思います。

 白い死神
 フィンランドにて怪鳥ケワタガモを狩り続け、狙撃スキルが人外の領域にまで逝ってしまった実在のスナイパー、シモ・ヘイへ。戦績を見るに、確実にルーデルとかの同類。個人的には白い死神よりもムーミン谷のゴルゴ13という呼び名の方が面白くて好きなんですが。

 今日は君達と俺達で、オールライダーだからな
 「仮面ライダーSPIRITS」より、「今夜は俺とお前でダブルライダーだからな」という名セリフの改変。この話に限らず、ライスピは古本屋で立ち読みしたらうっかり涙ぐむくらい名セリフが多くて困ります。

 私は戦争が大好きです!
 「HELLSING」より、少佐の演説。赤屍さんと中の人が同じなので、同じくアーカードの旦那と中の人が共通な言峰と戦って貰いました。このセリフ、かつて教授を出した時に演説込みで言わせようかなと思ったのですが、あいつのテンションと合わないのでここに使わせて貰いました。

 士郎VSギル
 「仮面ライダーディケイド」に登場する二号ライダー、仮面ライダーディエンド。ギルの処遇を考えていたときに、ギル→ゲート・オブ・バビロン→お宝一杯→ディエンド大歓喜という連想から中身ごそっと盗まれてもらいました。ギル初登場の時にライダー系の武器がたくさん入っていたのが実はこの展開の伏線であったり。
 その後の士郎のセリフはもちろんUBWにおける名セリフ……のつもりだったんですが、この世界の士郎はライダー成分が多いのでWの決めセリフと混じりました。

 十種類の姿を持っていそうなオレンジ色の剣
 「RAVE」より、テン・コマンドメンツ。シャナ→釘宮理恵→ルイズ→エクスプロージョン、という連想から「エクスプロージョン!」と叫んで爆発する剣を使って貰いました。さすがに虚無レベルの爆発力を出すことはできないものの、副作用としてシャナがやたらハイテンションな爆弾魔になります。

 鳴海のおやっさん
 「仮面ライダーW」より、本文内に書いてある通りの理由で復活。W本編には登場していないものの、死んだ際の状況とか夏の映画を見るに、おそらくこんな状態になっているんじゃないかなぁと妄想した結果、グリッドマンの力で復活してもらうことに。
 ちなみに、泥モンスターだけでなく照井も撃っているのは、彼が冬の映画で所長と結婚するからです。

 ギリギリまで頑張って~
 「ウルトラマンガイア」のOP歌詞より。ウルトラマンシリーズのOPの中でも屈指の名曲だと思うんですよね、これ。

 イメージカラーが紫の女の人
 「MELTY BLOOD」より、シオン・エルトナム・アトラシア。半分吸血鬼(というと語弊アリ)でなおかつ吸血鬼化の治療方法を研究していたよーないなかったよーなということでご登場。この世界の錬金戦団はアトラス院の下部組織でありながらフリーダムな立ち位置であるので、シオンが協力を申し出てくれれば喜んで受け入れます。多分路地裏生活が苦しくなったので、路銀を稼ぐ意味も込めての行動でしょう。

 サンライズの構え
 勇者シリーズなど、サンライズのアニメ作品を筆頭に剣を持つキャラが時々やるポーズ。
 腰だめに構えた剣を相手に向け、その剣の切っ先からパースを効かせて描いた絵面。必殺技の前後などに見られるカッコいいポーズ。グーグルで画像検索しても出てきます。
 真っ向唐竹割りというのはサンライズの構えから繰り出すわけではありませんが、「勇者特急マイトガイン」におけるグレート合体ロボ、グレートマイトガインの必殺技です。

 小泉ジュンイチロー首相
 「ムダヅモ無き改革」より。凛やらシャナやらのオカルトじみた麻雀力でも互角に張り合えるかどうかかなり微妙な、最強クラスの麻雀打ち。コミックス1巻ラストで見せた天地創世――ビギニング・オブ・ザ・コスモス――は見開き4Pを使うという前代未聞っぷりでした。

 喋る提灯を装備した寿司の屋台
 「侍戦隊シンケンジャー」より、梅盛源太のゴールド寿司。原作ラストで修業のためにおフランスへ旅立って行ったので、おそらくこの世界では外道衆との戦いが終わった後なのでしょう。ちなみに源太の中の人は鳴滝さんの中の人並にプリキュア好きらしいので、ノリノリでサービスしたと思われます。
 一緒に寿司を食べていた、豆腐を片手に持ったにーちゃんというのは「仮面ライダーカブト」より天道総司。天の道を行き総てを司る男。こいつも原作ラストでフランスにいたので。シンケンゴールドとカブトのいるフランスで事件を起こす砂漠の使徒が哀れでなりません。多分このあと、源太は天道によって寿司のダメ出しとか散々されることでしょう。

 新しい友人
 「とある魔術の禁書目録」より上条当麻、「ほうかご百物語」より白塚真一、「グラップラー刃牙」より範馬刃牙。本文中にある理由によって放りこまれた学校で新たにできた友人達。彼らとのやり取りは本作第一話において、オリ主がカズキ、士郎、良太郎とやったやり取りのオマージュです。
 このオリ主は生涯こんな感じで、次から次へとカオス事件へ巻き込まれていきます(断定)。

 新しいクラスと犬
 「ウルトラマン80」より矢的猛、「絶望先生」より糸色望、「おまもりひまり」より天河優人、「仮面ライダー響鬼」より安達明日夢、「DEATH NOTE」より夜神月、「大神」よりアマテラス。
 割りとその場のノリで選んだ新しいストーリーの起点ですが、作品の並び的に考えて、おそらくこのあと「うしおととら」なんかも合流して九尾の狐を軸に話が進むのではないかと。


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 これにてスーパー超人大戦、終了にございます。
 当初タイトルに「一発ネタ」の名を冠していたというのにご好評頂き続けられたこと、感謝の念が尽きません。
 とりあえず、スーパーロボット大戦を発売しておられるバンプレスト様はスーパーヒーロー作戦に変わるシリーズとして、こんな感じの人間スパロボ作ってくれないですかねぇ。



[20003] スーパー超人大戦A
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2011/01/22 17:50
 ちゅんちゅん、ちちち。
 ピジョーット!


 窓の外から聞こえる小鳥達の声に導かれるように、俺の意識が覚醒する。
 別にこの魂が目覚めたりするわけじゃあないけど、さわやかな朝であることは間違いない。……マッハ2で空を飛んでいそうな鳴き声も聞こえた気がするけど、それもこの世界では良くあることだ。昨日は「をばれう、をばれう!」とか鳴く鳥もいたし。


 いやあ皆さんお久しぶり、俺です。


 このカオスな世界でカオスな事件に巻き込まれ、ようやく解決したと思ったら今度はカオスの坩堝であることが確実な学園都市に放り込まれたりもしましたが、今日も何とか生きてます。


「わんっ」

「ああ、おはようアマ公。散歩行こうか」


 この学園都市に着いた日に出会うなり即懐かれ、学生寮なのになぜかあっさりと部屋で飼う許可が下りた、白い体に赤い隈取がかっこいい大型犬アマテラス、通称アマ公に声をかけられ、いつもの日課である散歩に出かける準備を促されました。


 ……うんまあね、やっぱりこの学園に来ても色々あるんですよ。
 ココに来ると決まった瞬間から九割諦めていたんで別にいいんですけど、やっぱり俺の精神安定のためにも一つ俺の最近の生活と、身近なところで起きた事件について聞いてください。




「わんわんわんっ」

「落ち着けアマ公」


 俺の朝はまず、同居している犬(?)であるアマ公の散歩から始まることになる。
 よく食い、よく遊び、よく動きよく眠る健康極まりない犬であるアマ公は朝起きるなり俺を散歩に誘い、俺は早朝の学園都市を散歩することになるのです。
 一応犬嫌いの人などを怖がらせないようにリード的なものはつけておりますが、このリードがピンと張るほど暴れたことなど一度もない辺りアマ公の賢さは折り紙つきだと思う。
 ただ、アマ公を見た人によって「白い犬だね~」という人と「隈取かっこいいね~」と反応が分かれるのはどうしてナンデショウネー。
 アマ公の頭の上でぴょんこぴょんこ跳ねる玉虫色の光の塊を見ながらそんなことを考えながら、ぷらぷらと歩いていきます。




「よぉっ、また犬と散歩か」

「そういうそっちはまたランニングか。しかもえらくペース速いな」

「まぁな」


 ゆっくりと学園都市内を見回るように散歩を続けていたアマ公についていく俺の後ろから結構な勢いで足音が近づいてきて、足音の主は抜き去るなり声をかけてきた。


 年は変わらないはずなのにそもそも同じ人種……というか同じ生物かどうかすら怪しいと思わせるのに充分な筋肉と体格を持つ、この学園都市で出来た新しい友人。範間刃牙であった。
 その見た目からしてこの学園でも屈指の変人である刃牙と俺はどういうわけかそこそこ親しい間柄であり、早朝にアマ公の散歩をしているとこうしてランニング中のこいつと出くわすことがある。
 ……多分こいつの親父は沈黙屋で何度かあったことがあるあの人なんだろうなー。
 大統領やライバックのおっちゃんたちとも仲が良くて、背中の筋肉がすごいあの人。


 ちなみに刃牙、こうして出会うと必ずと言っていいほどアマ公に走りの勝負を挑んでくるという習性を持つ。
 アマ公は犬とは思えないくらい走るのが速く、さすがに刃牙でも今まで勝ったことはないのだが最近どんどん差が縮まってる気がするのが恐ろしい。
 今日もアマ公と目配せをした次の瞬間にはそろって飛び出し、あっという間に後姿が見えなくなってしまった。
 いつの間にリード外したんだアマ公。




 一般人の俺が着いていけるはずもないので、適当にアマ公たちが走って行ったと思しきルートを歩いていくとこれまたものすごい勢いで戻ってくるアマ公と刃牙を目撃。
 30mほどの差をつけつつも2秒と間を空けずにアマ公、刃牙の順番で俺の隣を駆け抜けた。


「あーっ、また負けか!」

「いや、アマ公にここまで食いつける人類はそうそういないって」


 悔しそうでありながらもどこか楽しそうな表情を浮かべる刃牙にはそこらの自販機で買ったスポーツドリンクのペットボトルを渡し、アマ公には散歩用バッグに入れておいた水を飲ませてやりながら二人が息を整えるのを待つ。
 とはいっても、どちらも生物の規格を外れたかのような身体能力を持っているのですぐに直るのだが。
 アマ公との勝負ですっきりし、気分がよくなった刃牙がリアルシャドーを始めるのをアマ公と眺めつつ、全力で走って少し疲れたらしいアマ公を撫でてやったりしていた。
 拳と足を凄まじい速さで繰り出す刃牙の前にぼんやりと、胸に七つの傷を持ったにーちゃんの姿が見えてきたような気がしてきたので必死に目を反らしつつ、そろそろ散歩の続きに行くことに。


「それじゃあ刃牙、また学校で」

「ああ、またな」


 こっちも見ずに返事を返す刃牙の繰り出すパンチの速さが百烈拳な感じになり始めたので、俺はそろそろ本格的にお暇しよう。
 アマ公ともども、つったかとその場を離れていく。
 こういうことがほぼ毎朝あるのだから、この学園都市は侮れない。




 刃牙のような早朝ランニングをする人もいるような学園都市内でも開けた場所から、だんだんと建物の多い地域へと向かっていく。
 この辺りになるとすれ違う人も多くなってくる。


「あっ、おはよう! アマテラスも、元気?」

「わんわんわんっ」

「おはよう、明日菜ちゃん。今日もご苦労様」


 例えば、オレンジ色の髪に青と緑のオッドアイをしている新聞配達少女とか。
 俺の部屋にも新聞を配ってくれている縁で前に話をする機会があったんだけど、なんでもこの子はもう一つの有名な学園都市である麻帆良学園から新聞配達に来ているらしい。
 一体どんな俊足なのだろう。試しにアマ公や刃牙と競走させて見たいところではあるが、この子に下手に関わるとまたカオスの度合いが増しそうなのでやめておこうと誓っている。
 蛇足だけど、この子はアマ公の隈取が見えず、撫でるとアマ公の隈取が消えるタイプの子です。


 今日も今日とて少しだけ話をすると、最近子供先生と一緒に住むことになってしまったのだとか。
 ……なんか向こうも大変そうだと思いつつ別れ、再び散歩に向かう。
 というかそもそもこの子がここに来て大丈夫なのだろうか。この学園都市はかたくなに科学と魔術の交差を妨げているけど、この子が住んでる学園都市は思いっきり交差しちゃってるような。まあいいや。


 そこからまたしばらく歩き、ふと周りを見渡せばレストラン街に入っていたようだ。
 普通の商店よりもさらに一段階おしゃれな構えの店が立ち並び、その中には俺のお気に入りの店もいくつかある。


 例えば、いろんな人種の人が訪れるカレーショップ「恐竜や」とか、最近新しいバイトが入った多国籍通り越して無国籍な感じのレストラン「クスクシエ」とか、店長が家の畑で作っている美味しい野菜を使った料理を振舞ってくれるレストラン「AGITΩ」とか。
 ……そういえばここって超能力を科学する学園都市だから、ひょっとしたら昔正体不明な名前を持つ怪人に襲われたりしたのかもしれませんねー。




「わんわんわん!」

「う、ううう……」

「ありゃりゃ」


 アマ公がなにやらこっちを向いて吠えているので何事かと思って近づいていけば、大抵変なものがある。
 本日の奇妙な物体Xは、赤やら緑やらでカラーリングされ、うめき声を上げる右手だった。


「アンク、またメダル切れ? それとも今度こそ家出かな?」

「うるさい、黙れっ! ……だがメダルがあるならよこせ」

「はいはい」


 ぐったりとくたばりかけながらも憎まれ口を叩くのは、コアメダルの怪物、グリードの不完全態であるアンクだ。
 正直こいつもあんまり関わりたくない手合いだったんだけど、以前もこうして倒れていて、アマ公が助けてやってくれというのだから助けないわけには行かない。
 ごそごそと、こういうこともあろうかと用意しておいたセルメダル――相変わらずメダルゲームをやっていると一定の割合で出てくる。ライドベンダーとか俺でも使えるから超便利――をアンクに向かって振りまいてやった。


「ふんっ、一応感謝しておいてやる。……くそっ、どうして俺がやっても出てこないんだ!」

「まあ、運じゃないかなぁ」


 少しは持ち直したらしいアンクが悪態をつく。
 俺がどこからセルメダルを持ち出してくるのかを聞き出したアンクはちょくちょく学園都市のゲームセンターでメダルゲームに挑んでいるようだが、どれだけ大当たりしてもセルメダルが出てくることはなく、その度に無駄遣いを相棒である映司たちに怒られているのだそうな。
 まあ、俺としてはやっぱりどこぞの妖怪ハッピーバースデーのいやがらせじゃないかと思うのだが。


 このように、日によってはアンクに出くわしたり、ガタイがいいのにどこか子供っぽいにーちゃんやら妙に妖艶な中学生の女の子やらに出くわすので、セルメダルを分けてあげることがあったりもするのだった。
 だが黄色くてチャラいにーちゃんと緑色で虫頭な感じのにーちゃん、おめーらはダメだ。


「あっ、アンク! お前こんなところにいたのか! 早く戻らないと刑事さんの体が!」

「うるさい映司! 言われなくてももう戻る!」


 そして、新聞配達のバイト中にアンクを探しに来た映司に叱られてそそくさと飛んで帰っていくところまでがアンクとのお約束だ。
 言うまでもなく、俺は映司とも知り合いだったりする。
 風都にいたころの翔太郎や良太郎先輩たちのように一緒に事件を解決したりするわけではないけど、時々セルメダルを分けてあげたり何か……っていうかヤミーを探してるときにタカカンドロイドを送ってあげたりとか。


「いつもごめんな。あと、アンクにセルメダルくれてありがとう」

「なに、いいってことさ。あ、でももし俺がグリードに襲われたら助けてね?」

「もちろん。アマテラスも、またな~」

「わんっ」


 素直でまっすぐな性質のせいか、アマ公にもとても懐かれている映司でした。




 とまあそんなイベントに毎日のように遭遇する散歩を終えて、部屋へと帰ると次は朝食の準備だ。
 自分の家の台所でちゃっちゃと用意をする。
 うーん、今日は二人分にしておくか。俺はとある事情の朝食準備として、時々二人分の食事を作ることがあるのだよ。
 そんなわけで適当にトーストやら目玉焼きやらコーヒーやらを用意していたのだが、なにやら窓の外を白い影が落ちていったような。
 ……もう一人分、いや二人分くらい作っておくか。




「やあ、おはよう。飢え死にしてないかい?」

「お、おおお。また来てくれたのかありがとう!」


 ちょっと多くなった朝食を載せた盆を片手に開けた扉は、俺の部屋のちょうど真下の部屋。俺と同じくこの学園都市の学校に通う一人の学生の部屋である。
 その部屋の主は朝だというのに部屋の真ん中に這い蹲り、くうくうと腹を鳴らしている。
 そろそろそういうころだと思ってはいたが、案の定また空きっ腹を抱えていたのか、上条さんは。

 そう、こいつこそ刃牙と同様この学園で新たに出来た俺の友人の一人である上条当麻、通称上条さんだ。
 根っからの不幸体質はこの世界でも変わらず、ビリビリツンデレ中学生から寄せられる好意に気付けないで電撃を食らい、ことあるごとにラッキースケベを繰り返し、道を歩けば不良に絡まれたり刃牙が繰り広げるケンカに巻き込まれたりしているのだそうな。
 そしてそんな上条さんが日々平和に三食食いつなげるはずもなく、見かねた俺が時々こうして食事を恵んでやっているのであった。
 まあ、上条さんにはここに来る前から世話になっていたからね。……ヴォルケンズを説得するときとか。
 ちなみにこの上条さん、明日菜と同じでアマ公の隈取が見えないのはもちろんのこと、右手で撫でると一時的にアマ公の隈取が消えたりします。


 そんなこんなで二人とアマ公そろって朝飯を食い、上条さんが妙に多い食事の量に首を傾げ出したころ、窓からさらりと風が入ってきた。
 はて窓は開けただろうか、と外に目を向けた上条さんはしかし、その場で硬直する。


 まあ当然だろう。
 なにせ部屋のベランダにシスター風の服を着た少女が引っかかっているのだから。




 そこからの一連の流れは、俺とアマ公というイレギュラーが部屋で観客をやっていた以外はほぼ俺が知るとおりの流れだった。
 インデックスと名乗った少女が上条さんの手ごと多めに用意していた食事にかじりつき、10万3000冊の魔道書を頭の中に仕込んでいることやら必殺そげぶパンチやらの話しが飛び交い、インデックスの服がはじけ飛ぶ。
 そうなることがわかっていた俺は言うまでもなくその瞬間に目をそらしており、後の報復から逃れられたことは特に記しておくべきだろう。


 とはいえ、インデックスとのやり取りはひとまずこれで終了だ。
 服を直すのを手伝ってやったりしてそこそこ懐かれたし、できることなら事件に巻き込まれず空気になれるスキルをご教授いただきたいところではあったが、そんなこと口にしようものなら俺まで噛みつかれそうなのでやめておいた。




「私と地獄の底まで付き合ってくれる?」

「悪魔と相乗りする勇気はあるけどそれはごめんです」


 インデックスお約束の台詞に対しそんなことをついつい言ってしまう俺。
 いやごめん、この間まで風都にいたからついね。
 妙な顔をされるも、インデックスは原作の通りに上条さんの部屋を出て行った。
 きっとこのあとちょっと血の気の多い仲間にうっかりで斬りつけられたりしながらも再びこの部屋に戻ってくるのだろう。
 もしそれに巻き込まれた場合、俺は確実に命がないのでちょっとかわいそうと思いはするがどうしようもない。……一応、薬箱をスタンバっておくか。


「なあ」

「何、上条さん?」

「地獄の底まで付き合えるかって……俺は、どうしたらいいんだ?」

「地べたに這いつくばってこそ見える光もあるらしいから、あの子と地獄に落ちて兄妹になればいいんじゃね?」


 原作の展開に関わることなんて俺に聞くなっての。
 とりあえずどこぞの兄貴のようなことを言ってごまかして、テレビのニュースに目を向けた。


 ちょうど今やっているのは朝のニュース番組の中のミニコーナーで、不思議な島やそこにある特徴的な学校の数々を特集しているらしい。
 例えば、一年中桜の花が枯れないことで有名な初音島とか、20年ちょっと前に所有者一族郎党全員死ぬという事件があったという噂の六軒島や、この学園都市に匹敵する規模の学園都市・蓬莱学園を擁する宇津帆島とか、風都にいるころ凛から吸血鬼がいるとか言う噂を聞いた海上交通の要、珠津島とか。
 そういえば、珠津島には以前安藤さんに頼まれたバイオリンを注文した職人さんが住んでるんだったっけ。父親は世界的なバイオリニストで、本人も隠れた凄腕と噂される人だとかなんとか。


 さらには古風なしきたりのある家が多く、変な組織の暗躍と巨大ロボットの存在がささやかれる南十字島とか、最近開発された謎兵器、ISことインフィニットストラトス操縦者を養成するIS学園とか。


 IS学園に関しては生徒のインタビューも紹介されていて、イギリスから来た代表候補生というリリウム・ウォルコット嬢がはきはきと質問に答えていた。
 ……何か違いませんかねあなた。
 あ、ちなみにISについてなんだけど、いろんな企業が開発に参加してますよ。軍需産業を中心に、有澤重工とかキサラギとかアクアビットとかレイレナードとか。
 ……そのうち変な粒子ぶちまけ出さないか考えるだけで恐ろしいですねー。


 相変わらず、情報を得ようと思うと必ずカオスと肩を組んでやってくるのがこの世界の困ったところ。
 がっつりSAN値を削られながら朝食を終えるころには上条さんも深刻そうな顔で俺の用意した食事を再び食べはじめていたので、まあひとまずは大丈夫だろう。


「ところで、上条さん」

「ん、なんだ?」

「そろそろ遅刻の危険がある時間だということはご存知で?」

「……え?」

「それじゃあアマ公、俺は行ってくるから留守番よろしくね」

「わんっ」


 上条さんの部屋の前でアマ公と別れて学校へ向かう。
 途中上条さんの部屋の中から「不幸だああぁぁーーっ!」という叫びが聞こえて来たような気もしたけど、まあいつものことだから放っておいた。
 ……なぁに、イマジン4体に取り付かれて世界を救う戦いに巻き込まれた良太郎先輩と比べればまだましだよ、多分。




「やあ、おはようみんな!」

『おはよーございまーす!』


 そして学校が始まる。
 朝の挨拶は元気良く、という小学校教師のようなモットーを掲げるのは我らがクラスの担任である矢的猛先生。
 ……いやー、この人が身近にいてくれるから、俺もこの学園での生活は割りと安心して過ごせるというものだよ。


 ちなみに、上条さんは息も絶え絶えになりながらなんとか間に合ったようで、机に突っ伏している。
 他にも刃牙なんかもすでにぐーすか寝ていたりする。
 まったく、矢的先生が担任してるというのに不真面目な奴が多いクラスだよ。


「はーい、それじゃあ授業を始めますよー」


 とかなんとか思っているうちに、どうやら超能力関係の授業が始まっていたようで、教室前の壇上に小学生にしか見えない小柄な先生が立っていた。
 あの人は言うまでもなく学園の合法ロリこと月詠小萌先生。
 とあるシリーズにて能力無し扱いされた問題児の多いクラスを受け持っていたあの先生である。


 ……ええそうですよ。俺はここでも無能力者ですよ。
 以前ライダーやら魔法少女やらが入り乱れるあれだけの事件に巻き込まれておきながら能力に目覚めないような俺がちょっと教育受けた程度で超能力に目覚めるなんてことがあるかぁーっ!
 まあ、俺の場合だとその魂が目覚めたとしても中途半端で、緑色のライダーになったりしそうだからこれでいいっちゃいいんだけどね。


「ほら上条さん。可能性があるかもしれないうちは諦めちゃいけないよ?」

「お前は諦めてるみたいな言い方だな……いいんだよ、お前も知っての通り俺は一応能力あるんだから。まあ、そこまでレアじゃないけどな」

「だねぇ」


 超能力開発を目的とした学校であるだけに、色々と特殊な能力に関する噂は多い。
 上条さんの右手に宿る幻想殺しのような能力は、同じ学園都市の中だけ見てもアリス学園とかに同じような能力を持った子がいるという話しだし、俺が知っている中でも明日菜とか、ちょっと違うが赤屍さんとかサイクロンジョーカーエクストリームのビッカーファイナリュージョンとかもあるんだよなぁ。


 そんなことを考えながら授業を聞き流し、平穏を謳歌する。
 前の学校でもそうだったけど、アニメだったらキンクリされるような普通の授業時間が一番安心できるよ。
 ……この平穏、フラグじゃないよな?
 いまだぐーすか寝こけている刃牙が視界に入った瞬間、ふとそんな不安がよぎった。




 時は過ぎて、放課後。
 今日も今日とて授業の大部分を聞き流し、部活動が学園を支配する時間がやってきました。
 前の学校では特に部活には所属していなかったのだが、こっちにきてからはとある部に入ることになったのだよ。
 その部活とは……。


「ちーっす」

「ああ、来てくれたんだ」

「幽霊部員が暇つぶしに来ただけだけどね」


 扉を開けると香る絵の具臭。
 もはやどうやっても取れないだろう絵の具のしみがあちらこちらに染み付いた部屋の中、スケッチブックを手に持ってなにやら書いている男が二人と女の子が一人しかいないこここそ美術部部室。
 俺は、美術部に席を置いているのでありました。
 今俺に声をかけてきたのは、この美術部の部長にして俺のクラスメイトである白塚真一。呼吸をするように絵を描いて、魅力的だと思う人がいれば男女問わずにその場でモデルになってくれと頼む怪しい奴だ。
 前にスケッチブックを見せてもらったら、刃牙とかアマ公とかアンクとか色々書いてあった。いつの間に知り合ったんだこいつ。


「幽霊部員だなんて言わないで、お前も何か書いたらいいじゃないか」

「それもありなんだけどね。あんまり絵とか上手じゃないし……まあ、うしおよりはましだろうけど」

「なんだとっ!?」


 そしてもう一人、部を維持するために名前を貸した幽霊部員にも真面目さを求めてくるこいつの名前は蒼月潮。どこぞの寺の一人息子で、絵が好きだけどとても下手。しかし一本芯の通った主人公体質な、友人の一人だ。
 ……こいつと付き合いがあると割りとしゃれにならない事件に出会いそうだから、最近は可能な限りアマ公と一緒にいるようにしています。
 どうやらまだ寺の地下に刺さってる槍は引っこ抜いていないようだけど、多分時間の問題なんだろうなー。


「いやっほぉぉぉおおおおおおぅっ!!!!」

「うわっ、びっくりした」

「どうしたんですか、経島先輩?」


 うしおと軽口を叩き合っていたら、部屋の隅でノートパソコンにかじりついていた最後の一人、美術部の紅一点である経島御崎が奇声を上げた。
 この世のありとあらゆる妖怪変化や怪異の類を愛して止まないある種の変態である彼女は俺と同じくこの美術部に名を貸しているだけの部員であり、美術室にいてもたいていは自前のノートパソコンで情報収集と論文(?)の作成を行っている。
 妖怪どころか怪人やら怪獣やら邪神やら平然と存在しているこの世界だから、彼女の興味の対象も尽きないようだ。
 わざわざインターネットに頼るまでもなく、俺のクラスに来てうしおやら明日夢やらに張り付いていればいいと思うんだけどねぇ。明日夢はこの前屋久島行ってきたらしいし。


「どうしたもこうしたもないわ、ダイダラボッチよ!」

「ダイダラボッチ?」

「あれですか、徳川家康と同程度には実在していたと思われる妖怪」

「おっ、あんたも京極先生のところ行ったのね。……って、そうじゃなくて本物らしき目撃例があるのよ、それも二つ!」


 年齢的には俺や真一、うしおの先輩に当たるのに見た目は確実に小学校低学年であり、小萌先生と並ぶ合法ロリである経島先輩。学園都市のさびれた一角にある古本屋の店主の論を出したら一瞬関心したような表情を浮かべたものの、すぐにそれはもうらんらんと輝く目で俺たちのほうにパソコンのディスプレイを向けてきた。


「えーと、なになに。『風都に巨大女神出現! かつての冬木大災害や風都タワー壊滅事件と関係が!?』」

「こっちは、『アメリカのダテンシティにパンティとストッキングとガーターベルトをつけた巨大な女性の下半身が! 町を守っていると噂の天使の必殺技の可能性徹底検証!』」

「……」

「ほら、こんなにはっきりした写真まで! ああもう、実地調査に行きたくてしょうがない!! 風都は前も海上に巨人が出たっていう話しだし、そのうち行くっきゃないわね!!」


 確かに、ディスプレイに開いたブラウザにはそこらのビル並みに大きい、黒くて角の生えたデザートでデビルな感じの怪物を掌に乗せたおねーさんの写真と、おそらく同じくらい大きいだろう女性の下半身が雲を割って地面にハイヒール突き立てている写真があった。
 風都のほうはつぼみちゃんたちが順調に成長してハートキャッチオーケストラまで使えるようになったらしく喜ばしい限りだけど、アメリカのほうはダイダラボッチというよりダイダラビッチですよ。
 あっちはハートキャッチではなくむしろハートビッチというべきですし。


 そろそろ人の心とついでに地球が砂漠化するのかもしれないけど、俺の知る限り誰かに何かされた程度で心が枯れるとは思えない人もたくさんいるんだよね。
 大統領とか大統領とか大統領とか。
 カズキとか翔太郎もなんとかなりそうだし、良太郎先輩は運の悪さに反比例して心が強いし。
 ……あ、でも士郎はやばいかも。あいつ結構繊細だし。
 とりあえず、つぼみちゃんたちには激励のメールでも入れておこう。


 そんな風に、部活は適当に駄弁っては早目に切り上げるのが俺のジャスティス。
 夜の学校はありとあらゆる意味で怖いからね! 前の学校で身に染みてるぜチクショウ!


 しかしそんな思いも空しく、学校帰りに日用品の買い物などして寮に帰り着くころになるとあたりはすっかり暗くなっていた。
 やばいなぁインなんとかさん転がってないかなぁと思っていたらなんか上条さんとまで合流してしまった。
 そういえばさっき美術室を出るときは真一が絵にすごく熱中してて忘れ物フラグを立てていたし、うしおは父親から蔵の掃除を言いつけられたとぼやいていたような。


 ……わかってはいた。
 わかってはいたんだけど、やはり運命は俺をほっとかないから結局は進むしかないらしい。


 前の経験が生かせるかどうかは分からないけれど、とにかく今度もがんばろう。
 がんばって生き残ろう。
 ……今回身近にいる人たちって前以上にヤバイから特に気合を入れてね!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なのはSSが進まないからといって性懲りもなく帰ってきた私をどうか許してください。
 アニメやら見るたびネタが蓄積し、しかもかつてこんなものを書いていたせいであっちとこっちのネタに親和性があるのでは、とかどうしても思ってしまうのです。

 ただ、この番外編が続くかどうかは本当に未定ですので、期待はしないでくださいませ。



[20003] スーパー超人大戦R
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2011/02/16 10:20
 現在俺が所属している学校は、とある学園都市の超能力開発を目的とした学校の一つだというのは、これまでの話から分かってもらえたと思う。
 ……だが、それは甘い考えに過ぎなかったのだと、俺はこの学園に着いた日すぐに思い知らされた。


 まず、俺自身が所属するクラス。
 上条さんがいるんだから学園都市なんだなぁと認識していたのだが、皆さんご存知のとおり刃牙やらうしおやら色々と危ない人たちが所属し、矢的先生や糸色先生が担任と副担任を任されている。
 ついでに他のクラスメートを挙げるとすると、例えば妹が雑誌の読者モデルをやっているという高坂京介だとか、生粋のお嬢様な乃木坂春香と一般人代表みたいな綾瀬裕人など。こいつらの平凡さは割りと俺の心の支えだ。
 高坂と乃木坂さんの父親とは会ったことがあるのだが、二人ともガイアメモリから聞こえてきそうなほどの美声でありました。


 そういった普通な人たちの中にしれっと夜神月がいると知ったときには咄嗟に偽名でも使おうかと思ったのだけれど、なんかこの月は「俺のビッグバンはもう止められないぜ!」とか「さあ、青春を謳歌しようか!」とかハイテンションに叫ぶ変な奴なので心配いらない気がしてきた。
 ……そうそう、月で思い出したけど世界的に有名な探偵もいますよ。
 Lとかドヌーヴとかエラルド=コイルとか。ただ最近はそれら三大探偵に加えて日本の高校生探偵工藤新一を加えようという話が出てきたり、でも最近あまり活躍を聞かないから代わりに毛利小五郎を入れようかという反論が出たりもしているようだった。


 まあ他にも聞き覚えのある名前のクラスメートは色々いるのだが、今はこのくらいにしておきましょう。
 ……あまり一度に紹介すると俺のSAN値が下がってしまうのでどうかこの辺で勘弁してください。



 クラスの中もすでに混沌が渦をまいているのだが、この都市に数多存在する他の学校や研究施設なんかも危険だ。
 こっちに越してきてすぐのころに色々とある学校を見て回ったのだが、巨大な身長にオールバックの髪を三本角状に固めた番長ルックのにーちゃんが通っている雷鳴高校とかをはじめとした一部の学校には「番長」がいるという話だし、お嬢様お坊ちゃまが通うと噂の超広い白皇院には必殺技を使える優秀な執事達が通っているとも聞く。
 プログラミングの天才がいるという十聖高校なんかは近づくだけで世界が崩壊しそうな気がしたり、それはもういろいろあった。


「見ない顔だが、転校生かな。私はこの箱庭学園で教師を務めている、ウィン・D・ファンションだ。……ふぅ、それにしても熱いな」

「見事な脱ぎっぷりだな、ウィン・D教師! ならばここは生徒会長として私も脱がねばなるまい!」

「……」


 とある学校の前を通ったらなぜか教師に転校生と勘違いされ、その場にいた生徒会長ともども服を脱ぎ出す変な学校もあった。
 ……つーか色々立場違いすぎませんかね先生は。


「それにしてもなぜ私はこの学園に転勤させられたのだろうな?」

「また忘れたのか、ウィン・D教師。前に勤めていたIS学園に世界唯一の男子が転入することになったからだと言っていたではないか」

「ああ、そうだったな……存外理由など忘れやすいものだ。霞先輩は元気だろうか……」


 何でそんなことを忘れるのかわからない。
 あと転勤させられた理由は確実にあんたの脱ぎ癖によるものだと思うんですが。
 それにしてもやっぱりこの世界でも一人だけISを動かせる男がいるのか。


「ふむ、会ってみたかったものだな。男性唯一のIS操縦者、バナージ・リンクスに」

「…………」


 日本人じゃないのかよ、とか生まれる時代を間違えすぎとか色々ツッコミたいところはあるが、まあ気にするだけ無駄だろうし、大丈夫だろう。……ラプラスプログラムとか組み込まれてないといいけど。



 そんなめまいがするような学校のほか、室町時代から伝わる忍者養成学校、忍術学園なんていうものもこの学園都市には存在するという噂がささやかれていたりする。


「ほれ忍ぅ~、俺様のエッチピストル16連射を食らえ~い!」

「イヤー! 音速丸がー!!」


「シュトゥルムウントドラング!」

「貴様らにそんな玩具は必要ない!」


 忍術学園の噂を聞いてすぐ、こんな話声がどこからともなく聞こえてきたような気もするけど気のせいだ、絶対。


 その他、各種研究機関も発達しているらしく、ちょっと歩くだけでいくつもの研究所と出くわした。
 人類基盤史研究所「BOARD」とか、ミスカトニック大学の分校とか、鴻上生体研究所とかね。
 ドラゴンとロストプレシャスなる物騒な諸々を研究している世界遺物保護協会――ソサエティ――の研究所もあったっけなたしか。あそこが扱うロストプレシャスはボウケンジャーが蒐集・管理しているプレシャスとの線引きが難しくてもめることもあるとかないとか。
 そしてどういうわけだかその隣には光子力研究所なんかもあった。本部的な研究所は富士山のふもとにあるらしいが、最近ジャパニウム鉱石の採掘場からサクラダイトとかいう別の鉱石も掘り出されるようになって、それにブリタニア……じゃなかったイギリスの軍事企業BFFが興味を持ったようで交渉やら色々大変らしい。



 研究機関やら学校やらのがたくさんある発達した学園都市ではあるのだが、時々時代錯誤なものもあったりする。
 その筆頭が神社の隣にあり、その神社の神主が店主を勤めているという古本屋、京極堂だ。ここの店主は妖怪に詳しい変人で、時々俺も本を見に来たりする。……ちなみにこの京極堂、すぐとなりに風都で時々迷い込んだあのニャルニャルでカオスな古本屋が平然とあったりするようにも見えるんだけど、俺は気のせいだと判断しています。ええ、気のせいに決まってます。


 とはいえ、この京極堂もそれほど寂れた店というわけではなく、俺のように若い客もたまに来ていたりする。最近だと直江津高校の制服を着た男女が先客として店にいて、店主である京極堂と話し込んでいる姿を何度か目撃した。
 ……ただ、男は鬼太郎みたいな髪型にアホ毛を生やして糸色先生みたいな声をしてる奴で固定なのに毎回女の子は違う子なんだよね。
 うちの学校で教師をしているレベッカ宮本ことベッキー――この子は小萌先生と違ってガチロリ――みたいな声の子とか、どうやって店の戸口をくぐったのか分からないくらい巨大な荷物を持った小学生の子とか、ことあるごとに卑猥な言葉を口走るスポーツ少女とか、小学生くらいなのに妙なラブ臭を漂わせ、後から出てきて他のヒロイン全てぶち抜き人気トップに躍り出そうな声をした帽子をかぶった女の子とか。
 京極堂のほうは特に気にしていないようだから俺も気にはしないんだけど。


「……まったく、メメの奴は本当に厄介な客しか紹介しないな」


 そんなボヤキが聞こえてきたりもして、ホント心の休まるところがないったら。



 ……ちなみに、これらに遭遇したのは俺の生活圏にも程近い、学園都市内でもごくごく一部でのことだ。
 学園都市でもこのあたりが特別に異常なのか、それとも全体にわたってこんな感じの学校が分布しているのか、正直怖くて確かめることなどできやしねーのである。


 世界を股に掛けるどころか、ますます家の中に閉じこもりたくなる環境に放り込まれてしまった今日この頃、なんかもう町を歩くことにすら覚悟を必要とするようになってきた俺の日々、どうかどうか聞いてくださいな。



 寮の玄関を入るなり早々に上条さんと別れて自分の部屋に入って荷物を降ろして買ってきた食糧の類を冷蔵庫にしまう。
 多分そのうちインなんとかさんも養うことになるだろうから多めに買ってきたんだけど、ちょっと調子に乗って買いすぎたかもしれない。今度士郎あたりに連絡取ってお手軽レシピでも教えてもらおうか。
 そんなことを考えながら食材の整理を終えたころ、インターフォンが乱打された。
 1秒間に16回という伝説の速度に迫るのではないかと思われる速さに戦慄しながら扉を開けると、上条さんが息せき切って入ってくる。


「大変だ! 今朝のインデックスが部屋の前に血まみれで倒れてる!」

「……あー、それじゃあちょっと救急箱取ってくるから下行っといて」


 案の定巻き込まれたよ!
 くそっ、上条さんと親しくなれば逆に「あいつを巻き込むわけには行かない……っ」とか思ってくれると信じてたのに! 俺も今朝の時点でインデックスと出くわしちゃったからしょうがないけどさぁ!
 まあいいや。上条さんに言ったとおり救急箱と、後もう一個持って下の階へゴー。


 そんなこんなでインデックスが力尽きている上条さんの部屋の前まで行くと、上条さんとアマ公が心配そうに血まみれのインデックスを覗き込んでいました。
 ……アマ公?


「来てくれたか! 早く見てやってくれ!」

「はいはい落ち着いて……って、ほとんどケガないよ上条さん」

「こんなに血が……え?」


 驚いた顔をしている上条さんではありますが、事実その通り。
 修道服の背中にばっさりと斬られたようなあとはあるものの、その下の肌は傷一つない滑らかさ。服にやら床やらにこびりついた血糊が移ってはいるし出血したせいだろうと思われる血色の悪さは見て取れるけど、基本的に傷はない。
 ついっ、と上条さんにはばれない程度に顔を動かしてアマ公に視線を向けると、こくりと一回頷かれました。
 やっぱりお前か。頼りになるなぁ。


 どうやらアマ公が筆しらべを使って傷を塞いでくれたらしい。道理でさっきから上条さんの右手が触れないように押しのけてるはずだ。万が一にも筆しらべの効果消されたら困るし。


 おそらく使ったのは、筆しらべが一「画龍」。壊れたものやなくなったものなら天の星すら直せる、まさしく神様らしい力だ。
 一応血糊を拭いて他にも傷がないかを確かめて、あとはベッドにでも寝かせるくらいしか応急処置としてできることはないだろうということで、上条さんの部屋の中へインデックスを運ぼうとしたところで、声がかかった。


 振り向いてみればそこにいたのはバーコード赤髪ノッポ、ステイル・マグヌス。これで俺たちより年下だっていうんだから驚きだ。
 もはやこの世界に来て以来俺のデフォルトと化したであろう諦めの表情の俺は、インデックスの敵っぽい雰囲気をあえて醸し出しているステイルと上条さんの会話を見ながらそそくさと離れてみたり。
 イマジンブレイカーとか持たない俺にどうしろと。
 しょうがないから、冬木を離れるとき悠二から餞別代りに貰ったアズュール(コピー)を握り締めて隅っこのほうにいました。
 これは、どうやら悠二が士郎に頼んで投影してもらったものらしい。
 この学園都市にいる間は使えるだろうと思って用意しておいたけど、ビンゴだったようだ。まあ、これから先はあまりコレに頼ることもないだろうから、そのうち世界消防庁の本郷さんのところにでも送りつけてあげようかと思ってるけど。
 レスキューファイヤーあたりならきっと有効活用してくれるはず。


 あ、アマ公はあんまり動かないようにね。さすがにお前が出て行ったら二人ともボコれちゃうだろうから。
 神様パワーを失ってもなお常闇の皇を殴り飛ばせるアマ公の身体能力はたとえ上条さん相手でもバカにならん。


 ただ、こっちのステイルは原作より多少は頭の出来がマシなのかこの寮の火災報知機やらスプリンクラーやらを壊した上でこの襲撃に臨んでいたらしい。
 せっかくインデックスの中の人こと自動書記さんがイノケンティウスの特徴とか色々教えてくれたというのに。
 まったく、人が必要以上に原作の流れを変えないようにしているというのになんてことしてくれるんだか。
 仕方ないから、アマ公に頼んで何とかしてもらいました。


――筆しらべ「水郷」の一、「恵雨」。


 目の前の何も無い空間に、縦に二本の線が引かれたような気がしたと思ったら、屋内だというのに雨が降り、ステイルの魔法を支える紙を見事ずぶ濡れにしてくれた。
 チビテラスのも含めて全部の筆しらべが使えるらしいアマ公の頼りになることったらないね。


 そして始まる上条さん無双。
 復活できなくなったイノケンティウスなど上条さんの前ではただの火の粉。
 説教から繰り出される幻想殺しのそげぶパンチはあらゆる魔法と超能力を打ち消して殴り飛ばすのです!
 ……拳の握りが菩薩のよーだったのは、多分俺の目の錯覚だよね!
 ステイルがコンクリでできた寮の壁にめり込むほど吹っ飛ばされているような気もするけど、まあ誤差だよ誤差。
 だから上条さん、「刃牙に教わった技が役に立ったな……」とかつぶやいてるんじゃねぇよ。


 とにかくそんなこんなでステイルを片付け、傷が塞がっているとはいえ未だ青い顔しているインデックスをどうすんべ、という話になった。
 ステイルのような奴にこの場所が知られているのはもちろんのこと、下手に病院へ担ぎ込もうものなら確実に学園側が出張ってくるとなれば、俺たちが選べる選択肢はほとんどない。


「というわけで小萌先生、(この子を)一晩泊めて?」

「……生徒の力にはなろうと思うですけど、せめて状況の説明を要求したいです」


 つーわけで小萌先生に押し付けることになりました。
 未だ残る体の不調を直すため、インデックスの自動書記さんが魔術使うんで上条さんを追い出したのだが、俺とアマ公も追い出されることに。


「え、俺も残っちゃいけないの?」

「はい。あなたはどういうわけか神気や妖気や邪気が異常に染み付いています。魔術を行使する際の不確定要素となるので可能な限り離れてください」

「……分かりました」


 というわけで厄介払い。
 ……ふんだ、好きでこんなカオス人生歩んでるわけじゃないわい!


 まあとにかくそんなわけで、上条さんとアマ公と一緒に夜の街をさ迷い歩く俺。
 上条さんはそれはもう思いつめてインデックスのこととか色々考えてるみたいだから、確実に神裂さんの人払い結界の中に迷い込むね。
 この様子だと話しかけても聞いてくれないだろうし、せっかくだから俺はこの時間を有効活用しておこう。


――プルルルルッ

「あ、もしもしフィリップ? オレオレ」

『やあ、君か。連絡をくれるとは珍しいじゃないか。……何か知りたいことでも出来たのかい?』

「さすがに察しがいいね。実は完全記憶能力者と知り合うことになって……」

『なるほど、興味深いね』


 はい、困ったときの知恵袋ことフィリップです。
 とある原作だとインデックスの記憶に関する話は小萌先生に聞いていたようだけど、もうなんか面倒になってきたんでフィリップに聞いてばびっと確認を済ませちゃうことにしました。


『……そういうわけさ。その完全記憶能力者にもよろしく言っておいてくれ』

「うんわかった、ありがとね。……そういえば、そっちは変わりない?」

『ああ、花咲つぼみたちは砂漠の使徒との決戦が近いようだけど、僕達も協力しているから心配はいらないよ。……ああ、だがそういえば最近はキャスターが珍しく動いているね』

「え、キャスターが?」

『なんでも、彼女が「魔女」であることを理由として「魔法少女」を名乗る少女に襲撃を受けたんだそうだ。どうやら少女達の願いを叶えることを代償として「魔女」と戦う「魔法少女」を生み出している者がいるらしい』

「……」

『キャスターは魔法少女の性質などから、黒幕はかつて存在したミラーモンスターかあるいはイマジンの残党ではないかと推測している。もし君もそれらしきものを見かけたら注意しておいたほうが良いだろう』

「…………ちなみに、その黒幕って?」

『詳しいことは分かっていないが、白い体に赤い目を持つ小動物のような生物で、魔法少女達からは「キュウべえ」と呼ばれていたらしい』

「………………ヘー、ソウナンダアリガトウ」


 ……なんかこっちに来てから血生臭い話ばっかりでいやになるなぁ!

 ただ昔の仲間と連絡を取っただけなのにカオスが不意打ちしてくるあたり、本当に一瞬たりとも気が抜けない。



 そこからの展開は、上条さんがインデックスを助ける代わりに記憶を失うあたりまで、インデックスの完全記憶能力に関する情報の出所がフィリップになったこと以外は基本的に原作と変わらなかったので割愛させていただこう。


 ……原作通りだよ。原作通りだってば。
 神裂さんが出てくるなり、


「私の名前は神裂火織。好きなものは秘剣燕返し。特技は秘剣燕返し。趣味は秘剣燕返しです」


 とかなんとか言い出してアマ公に胸をガン見されたり、


「ヘェ……渋川さんが言ってたこと、当たったな」

「何奴!?」

「『行っちゃいけないと思うところには強い奴がいる』なんて、半信半疑だったんだけどなァ」


 そんなことを言いながら人払いされてるはずのところへ刃牙がふらりと現れたりしたけれど、基本的なところは変わらねーのである。
 こんな程度、前の事件でどれだけ経験したと思ってるんですか。
 神裂さん相手に素手でいい勝負を繰り広げた刃牙にはそのうち事情を説明するとだけ言ってその日は別れ、インデックスに仕掛けられた時限爆弾的な呪いを解くための戦いでぶっ倒れた上条さんとインデックスの処置や、ぶっ壊れた部屋の片付けなど普通にやっときました。
 ……それにしてもワイヤーブレード的なインチキ武器を使う神裂さん相手に素手で平然と渡り合う刃牙ってホントすごいよ。



 そして、一夜が明けて。


「まあ色々怪我もしたし入院もしたけど、それでもいろんな人との出会いもあったわけだから、これはまさに新しい上条さんの誕生だよ! 実に素晴らしい! ハッピーバースデー!!」


 はい、そんなわけで上条さんの見舞いに来ましたよ。
 1ホールのバースデーケーキ付きで。


 どうせ記憶とか色々なくしてるだろうから、それに気付かないフリをしつつこれまでの上条さんとの日々を振り返る形で過去を教えるという、なんとも面倒きわまりないフォローつきで。
 俺が誰だかも分かっていない状況で言ったことを信じてくれるかどうかはわからないけど、まあ何もしないよりは助けになると思いたい。


 あ、ちなみにお見舞いに持ってきたケーキは、今朝方俺の部屋に届けられたものです。


「……会長から君の友人へのプレゼントだ」

「あ、いつもありがとうございます、後藤さん」


 こんな感じで、ときどき鴻上会長から贈り物があるたびに5103……じゃなかった、後藤さんが届けてくれるんだよね。
 祝いのケーキ(最低単位1ホール)だとか新しいカンドロイドだとか俺経由で映司たちに渡ることを狙っているらしいセルメダルだとか。クジャクカンドロイドは扇風機代わりに超便利です。
 今回は「新たな上条当麻くんの誕生に、ハッピーバースデー!」と会長の直筆で書かれたメッセージカード付き。
 ……時々鴻上会長がどれだけ知ってるのか不安になりますが、まあそんなのこの世界じゃ今に始まったことでもないので気にしないことにしております。



 そして、インデックスが病室にやってきたのでケーキを置いて学校へと向かう俺。
 ここからの感動的なシーンに俺が混じるのはさすがに無粋というものだろうからして。
 ……病室に入るなりケーキに心奪われた様子だったインデックスがそんな感動のシーンを繰り広げることが出来るかどうかは別として。
 会長のケーキは美味しいから、仕方ないね。



「今日はみんなに大事なお知らせがある! 転校生がやってきたぞ!」

「「「な、なんだってー!?」」」


 学校へ到着してすぐ始まったHRで、矢的先生がそんなことをのたまった。
 ノリの良いクラスメイト達の叫びに誘われて颯爽登場したのは二人の女子生徒。
 ああ、なんか前の学校でもこのパターンだったよなぁ、とお決まりの展開に頭が痛いのをこらえていると、どよどよと男女問わず驚きの声が上がってきた。
 まあ、相手が相手だからしょうがない。


「野井坂緋鞠じゃ、よろしく頼む」

「伊達クズリです、よろしくね」


 なんか、俺の目からすると獣っぽい耳とか尻尾とかうっすら見える可愛い女の子達でした。


 二人とも表面上はごく普通に振舞っているんだけど、お互いが妖怪であることには気付いているらしくそこはかとない警戒感を滲ませており、それぞれの事情を知っているだろう優人と真一に不思議そうな目で見られている。
 そして、二人が俺の存在に気付いたときは思いっきり目をむいていた。
 ……多分アマ公の匂いでもついていたんだろう。
 変な注目されないといいなぁ。


 そしてもう一つ。
 HRが終わるころにようやく学校に姿を見せた奴がいる。


「すみません、遅れました!」

「ああ、蒼月。その長いものは……まあ良いから席につきなさい」


 なんか一晩経ったら妙に傷の増えている、蒼月潮だ。
 昨日までは持っていなかった長い棒のような何かを布に来るんで持ってきて、慌しく教室へと入ってきたんだが……。


<<おい、うしお! あの野郎わしが見えてるみてえだぞ!>>

(な、なんだって!?)


 そんなうしおの頭の上に、半透明の虎っぽい生き物がしがみついてるんですよねー。


 いやもう殺気ビンビン。
 うしおが入ってきた瞬間、緋鞠とイタチさんもとらから血の匂いでも嗅ぎ取ったのか警戒レベルを一気に上げて物々しい雰囲気を醸し出してるし、うしおはうしおで二人が妖怪だととらに聞かされたのかかなり気にしているらしい。


 俄かに妖怪密度を上げたこの教室。この部屋の中で今日一日を無事に過ごすことができるんだろうか……。



「……って、できるわきゃねーよなぁ」


 そう頭を抱えることになるのは昼休みのことでした。
 むしろ良く持ったほうだと思う。


 午前の授業が終わって休み時間に入るなりどこかへ姿をくらまそうと思っていたのだが、所詮それはただの人間である俺の悪あがき。
 大魔王ならぬ化け猫からすら逃げられず、緋鞠にさくっと回り込まれて屋上へと連行されることになりました。
 どうしてこんなことをするのか、と緋鞠に問い詰める優人や幼馴染ポジションである凛子なんかもついてきたし、後ろのほうではイタチさんたち美術部組とうしおがこっそり追いかけてきている気配もある。
 どーせまたカオスに巻き込まれるんだろうと観念した俺は腕を引かれるに従ったおとなしくついていきましたとさ。


 この学校、当然のように屋上が解放されているものの、今日は中々に風が強いので都合よく昼飯を食べている生徒もおらず密談には格好の場所。
 そこで、俺が一体何者なのかと聞かれることになるのでした。


「そこまでだ、化け猫!」

「ふんっ、先にそちらがかかったか!」


 しかし俺がとりあえず何か言おうと口を開くより先に、屋上の扉が盛大に開かれてうしおが登場。
 どうやら、妖怪らしき少女に連れ去られた俺を心配していてくれたらしい。


 それだけならば感動的なのだが、だが無意味だ。
 見るからに人とか食ってそうなとらが実体化し、優人が騒ぎ緋鞠が挑発し、うしおよりも後ろで様子を窺っていたイタチさんを筆頭とする美術部の面々も現れてそれはもう大変なことに。


「……経島先輩、この状況どうにか……」

「うわすっげー! アレ化け猫!? それにあっちの黄色いのはひょっとして長飛丸!? 昨日白の字にイタチが出たって相談されたときから予感はあったけど、まさかこの学校にこんなにたくさん妖怪いたなんて!」

「……」


 できるはずもなかったね、うん。
 目を輝かせて妖怪三人の動きに見入っておられました。


 そしてさらに、鬼斬り役である優人の命を狙ったちゃちい妖怪が空気も読まずに現れ、緋鞠に斬られてイタチさんに燃やされて乱入してきたアマ公に一閃されて獣の槍に刺されてとらにぺろりと食べられる段になり、ようやく落ち着いてきました。


 緋鞠とイタチさんが獣の槍のオーラにビビッて動きを止めてくれたからこそだけど、アマ公の登場にもそれはそれは驚いておりました。


「ひゃわああああ!? な、なんじゃその犬(?)は!?」

「な、ななななななんなの、すごく強い力を感じるよ!」

「なんじゃ、この気配は……っ! ムカつくにおいだ!」


 そんな感じで、妖怪たちから畏怖とか色々な感情を寄せられながら、当のアマ公はあくびしたり緋鞠の胸を観賞したりしていた。


 混乱が去ったと思ったらまたしても大混乱。このままだと、さっきまでの状態に輪をかけてひどいことになりかねない。
 そうならないために、俺がするべきことはただ一つ!


「――話をしよう」


「「「「!?」」」」


「あれは今から36万……いや、1万4千年前だったか」


 とまあそんな感じに半ば口からでまかせで話始めて注目を集め、俺の唯一の武器である口八丁で何とかその場を収めました。
 冬木の事件をほぼ口先だけで生き抜いた俺を舐めるなよ!?



 そういう決死の努力でもって、お互いの状況を把握しあいました。


 優人は、生まれの特殊性から持たされていたお守りの効果が切れたために、身の安全を守るためやってきた緋鞠と出会ったのが昨日の夜。
 真一のほうは、忘れ物を美術室に取りに行ったらイタチさんと出会い、即座に経島先輩に連絡して事情を説明して状況を理解。
 うしおのほうは蔵の掃除をしていたらとらを発見し、獣の槍を引抜かざるを得ない状況に追い込まれてとらに憑かれることになってしまったのだとか。


 おおむね原作通りの流れではあるものの、そんな三人が一同に会すとまたひとしおの感慨があるね。
 緋鞠とイタチさんは獣の槍の名前を聞いた瞬間からビビりまくってるし、姿を見せたとらは早速真一の絵のモデルにされてるし。
 とりあえず、俺のほうもアマ公と出会ったときのことだとか、後々関わるだろうからということで昨日上条さんの身に起きたことだとかを説明しておきました。


 そして、そうなれば当然……


「じゃあ、これからは危険な妖怪が出たら」

「みんなで協力してなんとかする」

「俺もこの槍でがんばるぞ」

「わんっ」


 ということで、やっぱり驚くほどあっさりと協力関係が結ばれることになりました。
 さすが主人公体質たち! 上条さんなんてこの場にいないのに勝手に組み込まれたぜ!



 そしてその日のうちに病院帰りの上条さんと、怪しい気配を感じてうずうずしていた刃牙も誘ってそこらのファーストフード店へと揃って押しかけ、上条さん達への説明や今後のことの話し合いをしました。
 上条さんはこれまで以上の厄介ごとに巻き込まれたことを嘆き、刃牙は割りと興味なさそうにしていた。人外と戦っても刃牙の望む強さが得られるとは限らないしね。
 まあとにかく、そんな感じで説明とかしていたら、視界の隅に妙な巫女服が。


 気付けば同じテーブルについてハンバーガーをむさぼっている、放っておいたら地獄に流されそうな声をしている割に影の薄いこの人、自己紹介によれば案の定吸血殺しの姫神さんだそうな。


「私の血は吸血鬼を呼び寄せて殺す。……これまで吸血鬼の実在は疑わしいと思われていたけど」

「へー」


 原作でも言っていた通り、実在すら疑われる吸血鬼を殺す血を持っているのだそうです。


「ほらっ、いくぞぼーや! せっかくじじいが許可を出したんだから、今日一日は楽しみ尽くすっ!」

「ま、待ってくださいエヴァンジェリンさん!」


「あっ、あれなんだろう! ほらほら志貴、早く行こう!」

「分かったから少し落ち着けよ、アルクェイド」


「ンッン~♪ 実に! スガスガしい気分だッ! 歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~! 最 高 に 『 ハ イ ! 』 っ て や つ だ ア ア ア ア ア ハ ハ ハ ハ ー !」


「……」


 なんか、ふと目を向けた店の外をにぎやかに行き過ぎる人たちがいたような気もしたけど、まあ気のせいに違いない。
 特に最後の一人は太陽の下なんて歩けねーだろ。
 今日は天気がいいなぁ。太陽がまぶしいよ。


 そんな風に現実逃避している間に、どうやら事件は始まっていたらしい。
 姫神さんがどこぞの山羊角天使のごとく電磁警棒を魔法のステッキのごとく構えてみたり、妙に目が死んでる学生達に連れられていったりして、気付けば三沢塾への突撃体制が整っておりました。


 道中ステイルと遭遇して俺たち一行の人数に驚かれたりしましたものの、塾に乗り込んだり首に針刺すおっさんにケンカ売ったりして、まあ大体なんとかなりました。
 いやー、結構大変な事件だったはずだったんだけどどういうわけか妙に印象薄くてね?


 ちなみにアウレオルスに対してトドメを刺したのは上条さんでしたが、一番普通に戦えていたのは刃牙でした。
 多分刃牙のイメージ力のほうが強かったから。
 そのうち刃牙に最近はやりのカードゲーム、ヴァンガードをやらせてみよう。


 そうそう、上条さんの腕はやっぱり吹き飛ばされたので、アマ公に頼んでちょちょいっと直してもらいました。



 ちなみに、その後一応病院に行ってカエル顔の先生に診てもらうことになった上条さんの病室にて、見舞いに訪れた面々の話し合いでなにがどうなったのか海に行くことが決まったりしたのだが、まあそれはまた今度の話。


 このメンバーで海、か。
 ……かつてない勢いで命の危険を感じるのは、どうしてなんだろうなあ。
 上条さんと優人とうしおの顔を順番に眺めながら、とりあえずアマ公は何があっても連れて行こうと心に誓う俺だった。


 見上げた空にはそれはもうまぶしい太陽。
 日の光が本気で殺人光線のように思えることなんてそうそうないんだろうと思うとこれも稀有な経験に思えてくるから不思議なもんである。
 ……アマ公の世話をするようになってから祈る神も罵る神も居なくなったような今日この頃。前の事件の時以上に胃が痛いのはどうしてなんだ、チクショウ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これまでと違って第二部ともいうべきこのストーリー、オチの候補はあるもののそこへと至るストーリーがあんまり定まっていなかったり。
 もう二、三やりたいシチュエーションがありますので、気が向いたらもうちょっとだけ続くかもしれません。

 むしろ最近ISのSSを書きたくなってきた。もしも書いたらそっちもネタまみれになること確実ですが。



[20003] AとRのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2011/02/16 10:21
A編

ピジョーット
「ポケットモンスター」より、ピジョット。この世界ともなればこの程度のポケモンは普通に存在していることでしょう。……決してアジョットではありません。

 をばれう
 「姑獲鳥の夏」より、ウブメの鳴き声。今回は妖怪が普通に出てきますので、そりゃあこいつが出てきてもおかしくないですよね!

 アマ公
 「大神」より、アマテラス。出番がほとんどないイッスンも一緒にいて、オリ主の家が気に入ったのか居ついています。筆しらべはアマテラス自身のものに加えてチビテラスが獲得したものも使用可能。しかし信仰心は足りていないのでいまだ全盛期の力には届きません。

 刃牙
 「グラップラー刃牙」より、範間刃牙。おそらく最大トーナメント優勝後くらい。父親である勇次郎との関係は悪くはないものの、やっぱり将来の夢は父親打倒と味噌汁を作らせること。ただし「この」地上で最強と呼ばれているのは伊達ではないらしく、刃牙も原作以上に強くなる必要があったりなかったり。

 胸に七つの傷を持ったにーちゃん
 「北斗の拳」より、ケンシロウ。そりゃあこの世界の勇次郎と戦うなら相手はどれだけ強くても構わなかろう、と。

 明日菜
 「魔法先生ネギま!」より、神楽坂明日菜。とあるシリーズの学園都市と同程度の規模を誇る麻帆良学園の生徒。新聞配達のアルバイトをしているが、持ち前の俊足を見込まれてこっちの学園都市まで配達に来ていたり。上条さんと違って全身そげぶ体質。初期の単行本のカラーを見て思い出しましたが、この子がオッドアイなのって原作者ですら忘れてるんじゃなかろうか。

 レストラン街
 「爆竜戦隊アバレンジャー」より、恐竜や。アバレンジャーのたまり場にして、後にVSシリーズが出るたびに話題に上ったカオスの権化。この世界ではアバレンジャーの活躍は済んでいるので、大企業に成長した恐竜やの支店の一つです。この学園都市の場合は人外やら宇宙人を中心にいろんな人が利用してますが。
「仮面ライダーオーズ」より、クスクシエ。オーズにおける主要メンバーのバイト先。よもや後藤さんまでバイトすることになろうとは。
「仮面ライダーアギト」より、AGITΩ。アギトの本編終了後、仮面ライダーアギトである翔一が開いたレストラン。過去、この学園都市に現れたアンノウンと激闘を繰り広げたんでしょう。自家製野菜の美味しさは郡を抜いております。

 アンクと火野映司
 「仮面ライダーオーズ」より、主人公とその相棒。学園都市を中心にグリードとの戦いを繰り広げております。この世界でも映司は当然のように世界中を旅しており、ロアナプラではバラライカさんと張のアニキに妙に気に入られたらしいです。
 その後に出てきたガタイがいいにーちゃんやら中学生やらの四人は敵の幹部であるグリード達。メズールとガメルの復活を望んでやみません。

 「悪魔と相乗りする勇気はあるけどそれはごめんです」
 「地べたに這いつくばってこそ見える光もあるらしいから、あの子と地獄に落ちて兄弟になればいいんじゃね?」
 「仮面ライダーW」より、ビギンズナイトにおけるフィリップのセリフと、「仮面ライダーカブト」より矢車のアニキのセリフ。インデックスって設定やら能力がフィリップと似ている気がしたので。そして地獄といえば地獄兄弟。矢車のアニキにはなんともいえないカリスマがあると思います。

 不思議な島と学校
 「D.C.シリーズ」より、初音島。一年中桜が枯れず、魔法使いがいるとかいないとか。シリーズ累計何作出てるんだ。
 「うみねこのなく頃に」より、六軒島。魔女つながりというわけではありませんが。……ここになのはちゃん(100年年取ったバージョン)を連れて行ったらまたカオスなことになるんでしょうねえ。
 「蓬莱学園シリーズ」より、宇津帆島。名前間違えてスミマセン。カオスな学園ということならここ以上のものはそうないだろう、と言える学園。今の時代だと文庫のシリーズ揃えるのが大変ですが、一読の価値ありです。……ちなみにミスリルの基地は、あります。時々「沈黙屋」の支店が出没し、謎ボルシチを振舞っているとかいないとか。
 「FORTUNE ARTERIAL」より、珠津島。この世界で吸血鬼なんざ珍しいものでもありませんが、ここはここでいます。ちなみにこの世界の伊織さんはカナヅチで、普段のカッコよさとの落差から「水没王子」の名を拝命しています。
 「STAR DRIVER 輝きのタクト」より、南十字島。綺羅星ポーズは最初見たとき大爆笑しました。ただ、世に巨大ロボットの多いことから綺羅星十字団の活動も少し投げやり気味なのだとか。
 「インフィニットストラトス」より、IS学園。アニメOPの最初に海からIS学園に近づいていくシーンを見た瞬間「あ、ラインアーク」と思ってしまったり。原作のイギリス代表候補生の名前がセシリア・「オルコット」だったので、ならもうリリウムに変えるしか!とフロム脳のささやくままに。

 珠津島に住むバイオリン職人
 「仮面ライダーキバ」より、紅渡。これで平成ライダーは大体一作につき一つはネタ出せたでしょうか。原作でも知る人ぞ知るバイオリン職人だったらしいですが、こちらも同様。ただしキバの事件は終わっているので割りと悠々自適な職人生活らしいです。

 有澤重工とかキサラギとかアクアビットとかレイレナードとか
 「アーマードコアシリーズ」より、変態企業。私の思う変態企業四天王です。「温泉の有澤」、「ナマモノのキサラギ」、「コジマのアクアビット」、「宇宙のレイレナード」とか二つ名も考えましたが、どれ一つとしてカッコよくない罠。

 緑色のライダー
 「仮面ライダーアギト」より、仮面ライダーギルス。人類の進化した姿であるアギトになりそこなるとこうなります。この世界では涼さんも幸せであって欲しい……。

 上条さんと似た能力を持つ人々
 「学園アリス」より、佐倉蜜柑。「魔法先生ネギま!」より、神楽坂明日菜。「奪還屋 Get Backers」より、赤屍蔵人。「仮面ライダーW」よりサイクロンジョーカーエクストリーム。いずれも性質が微妙に違いますが「能力を無効化する能力」たち。主人公体質の人が持つこと多い能力であるなか、赤屍さんが異彩を放っています。

 白塚真一
 「ほうかご百物語」より、白塚真一。綺麗な人やら動物を見ると即座にモデルになってくれと頼み込む根っからの絵描き。ある意味自分の欲望に正直すぎる男。特別な力はないけど事件に巻き込まれまくるあたりオリ主と似た性質があります。

 蒼月潮
 「うしおととら」より、蒼月潮。この世界では高校生です。いまだ獣の槍は抜いていないものの、惜しみない主人公体質で上条さんとともに事件やらなにやらに巻き込まれていたのだとか。絵は下手なわけではなく、「写実性に欠けている」らしいです。

 経島御崎
 「ほうかご百物語」より、経島御崎。妖怪大好き女。妖怪に関する知識は広く深く、これからの妖怪に関係することが多い事件をサポートしてくれることでしょう。京極堂との親交も深く、「先生」と呼んで慕う仲だとか。

 京極先生
 京極夏彦の小説の登場人物、中禅寺秋彦。古本屋と神主という職業を営む(?)、妖怪に詳しい人。その知識が経島御崎に目をつけられて時々議論を交わしたりしている。この世界だと原作にあったような事件のほか、本格的に妖怪がらみの事件に関する相談を寄せられることも少なくない。

 風都の女神とダテンシティの下半身
 「ハートキャッチプリキュア」より、ハートキャッチオーケストラ。「Panty and Stocking with Garterbelt」より、ママ(?)。いずれも主人公達の必殺技で召喚される巨人。プリキュアでありながら相手の真上から鉄拳制裁をかましたオーケストラさんにはびっくりさせられ、最終回でハイヒールアタックかましたパンティたちのママ(?)にはもっとびっくりしました。多分サイズが同じくらいなので一緒にご登場願ったり。ちなみに、「ダイダラビッチ」と「ハートキャッチではなくハートビッチ」というフレーズはニコニコ動画にあったタグを参考にしております。


R編

 クラスメート
 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」より、高坂京介。「乃木坂春香の秘密」より、綾瀬裕人。電撃らしいアレなヒロインと関わってしまった一般人代表達。高坂家と乃木坂家の父親はいずれも立木文彦さんが声を当てているという共通点が。

 夜神月
 「DEATH NOTE」より、夜神月。月と書いてライトと読ませると知ったときは割と本気で驚きました。デスノートを取得するのはもうちょっと先のことらしいので人を殺したりする能力はありません。というか、むしろこの世界の色々混じった月は南十字島に行ったり死に掛けたところをウルトラマンに助けられたりするかもしれませんね。

 「俺のビッグバンはもう止められないぜ!」
 「ウルトラマンゼロ」より、ゼロのセリフ。ヤンキー地味た性格のウルトラマン、という前代未聞なセブンの息子。中の人ネタです。テレビシリーズでの活躍を見たいと願ってやまないのですが、彼の設定的に厳しいですかねえ。

 「さあ、青春を謳歌しようか!」
 「STAR DRIVER 輝きのタクト」より、タクトのセリフ。同じく中の人ネタ。言ってることは往年の天道総司のようにアレですが、わりかし親しみの持てる人。自分でやっといてなんですが、このセリフを爽やかな表情の月が叫んでいると思うとちょっと複雑な気分になります。

 世界三大探偵+工藤新一
 「DEATH NOTE」より、世界三大探偵。「名探偵コナン」より、工藤新一。三大探偵の正体は全部Lらしいですが、せっかくだから中の人ネタで高校生探偵にもお出まし願おうと。とはいえLと工藤新一が同一人物ってことは特になく、新一は黒の組織にクスリ飲まされて江戸川コナンとなり、毛利小五郎を眠らせて事件を解決しているようです。

 番長
 「金剛番長」より、金剛晄。最終決戦で兄弟揃って巨大化するのはさすがに驚きました。アニメ化したらそれはもうネタになったでしょうに。

 白皇院
 「ハヤテのごとく!」より、白皇院学園。多分学園都市の中でも敷地面積は最大。能力開発とかその辺に関しては、普通に執事やら霊能力者やらが通っているのでまあありでしょう、と。ひょっとするとザ・チルドレンとかも通ってるかもしれません。

 十聖高校
 「女神転生」より、主人公の通う十聖高校。悪魔どころか妖怪やら怪人怪物怪獣やら色々いすぎる世界ですので、そりゃあこのレベルの世界の危機も転がっているでしょう。

 箱庭学園
 「めだかボックス」より、箱庭学園と黒神めだか。「アーマードコア フォーアンサー」より、ウィン・D・ファンション。「とある科学の超電磁砲」より、木山先生。確かに箱庭学園は能力開発とかしてたよな、と。箱庭学園は、能力開発に関しては学園都市の中でも屈指の先鋭派です。木山先生の位置にいるウィン・D・ファンションは中の人ネタ。決してウィン・Dに脱ぎ女の気があるわけではありません。でもめだかちゃんは脱ぎ女そのものなのでセットでご登場願ったり。

 バナージ・リンクス
 「機動戦士ガンダムUC」より、バナージ・リンクス。ほかに「インフィニットストラトス」と「アーマードコア フォーアンサー」より。ユニコーンとISの主人公であるバナージと一夏は中の人が同じなので。そしてウィン・Dの言っている霞先輩とは霞スミカのことで、バナージの姉です。ISとACfAに関してはフロム脳が大喜びで色々考察を始めてしまうので後はお察しください。

 忍術学園
 「ニニンがシノブ伝」より、忍と音速丸。「機動武闘伝Gガンダム」よりシュバルツ・ブルーダーと「ストライダー飛竜」より飛竜。学園都市の山の中かどっかにひっそりと存在し、いろんなところからの忍者が教師だったり生徒だったりしてカオスな日々を過ごしています。

 各種研究所
 「仮面ライダー剣」より、BOARDと「クトゥルー神話」より、ミスカトニック大学と「仮面ライダーオーズ」より、鴻上生体研究所。それっぽい研究施設を上げていったら怪人とか邪神とか平然と闊歩していそうなラインナップになってしまいました。ちなみにアメリカには覇道財閥お抱えのロリコン貧乏探偵がいて、時々大統領に仕事を依頼されています。

 ソサエティ
 「ドラゴンクライシス」より、ソサエティ。ロストプレシャスと言う言葉を聞いた瞬間ボウケンジャーと共闘したり取り合いしたりしている姿が思い浮かんだので。最近はズバーンを研究したいんで貸してくれるようにサージェス財団に頼んでいるようです。

 光子力研究所
 「マジンガーZ」より、光子力研究所と「コードギアス」より、サクラダイト。第二次スーパーロボット大戦ZのPVを見て、マジンガーZの飛ぶ空の下でサクラダイト鉱石発掘されているらしき富士山を見たので。ちなみに光子力研究所謹製の超合金Zは有澤重工の製品やメタルウルフの装甲に使われています。

 京極堂
 京極夏彦の妖怪シリーズと、「化物語」より主人公とヒロインズ。この世界の忍野メメは京極堂の大学の後輩で、その縁で阿良々木さんたちを押し付けたようです。それにしても化物語の千石撫子といいISのシャルルといい、花澤香奈さんは後出しで他のヒロインをぶち抜いていく宿命でも背負っているんでしょうか。

 アズュール
 「灼眼のシャナ」より、火避けの指輪。悠二と士郎の共同作業で作ったコピーで、自分の周りの火を消す作用があります。後に世界消防庁に送りつけられることで超火災の爆鎮に役立つことになったりならなかったり。

 菩薩のような握りの拳
 「グラップラー刃牙」より、菩薩拳。愚地独歩さんが編み出した強い突きを打つ方法。後に克己さんも自力でたどり着いた境地らしいです。上条さんでこの威力なら、刃牙とか使ったらどんな威力になるのやら。

 魔法少女
 「魔法少女まどか☆マギカ」より、キュウべえ。……脚本家の提示する展開にこれほど頭抱えたくなったのは井上敏樹による鳥人戦隊ジェットマンの最終回以来ですよ。魔法少女のあり方と魔女との戦いが仮面ライダー龍騎に似ているなあと思っていたのも5話までのこと。脚本家である虚淵さんに「ジェットコースターの下り」と評される6話に入ってからは龍騎が可愛く見えてくる始末です。

 秘剣燕返し
 「これはゾンビですか?」より、ハイ燕返しです。中の人ではなく、見た目似てるよね、ということで。別に吸血忍者じゃありませんが。この戦いでキレて上条さんを罵るときは「このド素人がっ!」ではなく「このクソ虫がっ!」と叫びましたが。

 ハッピーバースデー
 「仮面ライダーオーズ」より、鴻上会長。ことあるごとにハッピーバースデーと叫び、暇さえあればケーキを作っている怪しい人。大統領に似て妙なカリスマがあります。

 話をしよう
 「エルシャダイ」より、ルシフェルさんのセリフ。あのPVは妙な面白さがあります。4月に発売されたら更なるネタも増えるでしょうから、ゲーム的な意味よりむしろネタ的な意味での期待が尽きません。

 地獄に流されそうな声
 「地獄少女」より、閻魔アイ。中の人ネタ。黒髪ロングに能登ボイス、さらには巫女服とさまざまな要素を持ち合わせていたのに妙に影薄いですよね、姫神って。

 吸血鬼たち
 「魔法先生ネギま!」より、エヴァンジェリン。「月姫」より、アルクェイド。「ジョジョの奇妙な冒険」より、DIO様。まあDIO様は太陽の光浴びたら死ぬので多分別人ですが。この世界で吸血鬼および吸血殺しの希少価値なんてこんなもんです。

 山羊角天使
 「撲殺天使ドクロちゃん」より、サバトちゃんの魔法のステッキドゥリンダルテ。姫神がアニメで警棒持ってポーズ決めてるのを見た瞬間連想したのがこの子であったために条件反射で、つい。余談ですが、山羊や羊を始めとした瞳孔が横を向いている生物は幼少期のトラウマがもとで私の天敵です。


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 新しく始まったゴーカイジャー面白いですね。なんか素でディケイド以上の悪ノリが感じられるというかなんというか。
 もしこれがもうちょっと続いた場合、確実にご登場願うことになるでしょう。



[20003] スーパー超人大戦D
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:280abe01
Date: 2011/03/08 21:05
 皆さんは、宇宙人の存在を信じているでしょうか。


 俺は信じます。
 ってーかよく出会いますよこの世界だと。


 なにせデカレンジャーのボスからしてアヌビス星人の宇宙人だし、時々恐竜やにそれっぽい人たちが出入りしてるのを見ることもある。
 他にも昔、宇宙の鬼族が地球を侵略しようとやってきてどこぞの町を舞台に鬼ごっこをやらかしたりなどの騒動を次々引き起こして、当時は順番に一人ずつ地球に赴任していた宇宙刑事のギャバン、シャリバン、シャイダー達によってことあるごとに厳重注意を受けたとか。
 その後鬼族の女の子と地球人の男が結ばれたとか結ばれなかったとか言う話も聞いたりするが、まあそれはいい。


 最近はそういう侵略者なんかは地球に辿り着く前に宇宙警察や惑星保護機構が止めてくれているらしいんだが、時々宇宙の遠くで起こっている出来事が噂として流れてきたりする。
 例えば、宇宙の彼方でBETAとかいうケイ素生命の尖兵とレギオンと呼ばれるガチのケイ素生命がお互いを潰しあってるらしい、とか。……前につぼみのばーちゃんちで似たようなの見た気がするのは気のせいだよね!
 いや本当に、宇宙の神秘は尽きないね。その手の自然災害的な存在はもちろん、最近は宇宙帝国ザンギャックとかいう奴らも暴れまわって治安が悪くなっているらしいし。


 そしてそんな事情を背景として、現在地球では宇宙警察で採用する次期パワードスーツのトライアルが行われているのだそうだ。
 確か、開発に関わっているのはオタンコナス社とエメラルドカンパニー。どこぞのアパートに関係者をまとめて放りこんであるとかないとか。


「あっ、おはようございます桜咲さん」

「ああ、おはよう。今日も学校頑張ってね」


 そんなことを考えながら朝のゴミ出しをしていたら、学生寮の隣にあるコスモス荘に住む桜咲さんと出くわした。
 妹の小鈴ちゃんと一緒の部屋に住んで幼稚園の先生になろうと頑張り、同じくコスモス荘に住む朝香さんに虐げられているにーちゃんである。
 ……ホント、この世界は宇宙にも開けてるよねー。


「やあ、アマテラス。今度体洗わせてくれないか?」

「わんわんっ」

「ミュウ」


 とか何とか話していたら、一緒に出てきたアマ公が妙にホトケ顔をした龍守さんちの忠介にわしわしと撫でられ、忠介に懐いている角の生えた幼女、ミュウミュウによじ登られていた。


「おニイっ! アマちゃんに無理言ってるんじゃないの!」

「そうだぞ。早くわらわにつきあえ」

『このような暴言に耳を貸す必要はないぞ、忠介』


 そしてぞろぞろとついてくる龍守家の家族と居候たち。少々ブラコン気味の妹、陽子ちゃんだけならば普通なのだが、金属生命体であるグロウダイン帝国の第三皇女、バルシシア殿下とか銀河連邦軍の特務査察官を務める猫のカーツ大尉なんかは会う度扱いに困る。


 いやそれにしても、惑星保護機構によると地球は保護対象となっているはずなのに、これこのように案外宇宙人からの接触が多くて困る。
 デカレンジャーや歴代の宇宙刑事が赴任しているのは違法滞在者なんかを取り締まるためだからいいとして、ごく当たり前のように色々な宇宙帝国の王族なんかがいたりするのはいかがなものなんだろう。


 今遭遇したばかりのバルシシア殿下はもちろんのこと、日本のどっかでは巨大星間連合国家デビルークの皇女三人がフィアンセ候補の一人の家に押しかけてハーレムを作っているという話だし、沖縄ではキャーティアなる猫っぽい宇宙人が居候して日本人の少年の貞操を狙っているとかいないとか。正直セキュリティとかどうなっているんだろう。


「あっ、和人さんおはようございます。ワるきゅーレちゃんも、おはよう」

「おはよう、アマテラスも元気そうだね」

「おはようっ! わーい、アマテラスちゃーんっ!」


 今度は時の湯御一行様まであらわれた。
 元々はどうしてか学園都市の中にあった普通の銭湯だったのに、しばらく前に墜落してきた宇宙船が突き刺さり、その船に乗ってきたヴァルハラ星の皇女様であるワルキューレが居候することになったのだとか。それにしても宇宙人の地球滞在形式には居候が多いな。


「ああもうっ、学校遅れちゃう! ねえカズちゃん、テレポート使っちゃダメ!?」

「だっ、ダメだよ成恵ちゃん! ここでは使用を控えるようにって言われたでしょ!?」


 そして、まだ朝も早い時間だというのにどういうわけか学校に遅刻しそうになっている中学生たち。先日出会ったばかりの姫神みたいな声をした女の子と、ぱっとしない男の子の組み合わせで初々しくも仲が良い感じの二人組であった。


 まあそんな風に宇宙規模での交流も盛んなんだかどうだかよくわからない地球ではあるが、最近では地球由来の技術による宇宙開発も進んでいる。
 例えば惑星探査と開発の手はそろそろ木星や火星あたりまで伸びているし、その結果として最近、空間圧縮したり魔法みたいな力を出すことのできるメタトロンなる新しい鉱石や、時空間移動を可能とするワープホール、通称チューリップを発見したという発表がなされていた。
 つい先日亜光速実験宇宙船「イザナギ」も冥王星軌道から帰ってきたし、今後ますます地球人による宇宙開発は進んで行くことになるだろう。


 ……なんつーか、開発が進むのも本当に良し悪しだよね。
 この世界で宇宙進出をすることは人類にとって地獄への一方通行に思えてならないのは気のせいなのだろうか。
 まあ地球にだって人外とか色々いるから大丈夫な気はしないでもないけどさ。


「そんなに心配なら、僕と契約して魔法少女になってよ」

「もしくは、うちで君の寿命をエネルギーにしてみない? 給料弾むよ」


「見つけたぞっ、契約宇宙人QB星人とマーキンド星人! 保護対象惑星地球における未成年者略取、契約詐称、およびそれに伴う間接的殺人その他の罪により……ジャッジメンッ!」

「また君たちか。僕の目的は説明したのに、宇宙警備隊も宇宙警察もどうしてわかってくれないんだろうね。本当に、わけがわからないよ」


 ……大丈夫だ。大丈夫なはずだ。
 宇宙警察のみなさん、本当に頼りにしてますので超頑張ってくださいね。


 空を見上げれば、青い空。
 その向こうには見えないだけで今もたくさんの星があるのだろうが、今の俺にはその一つ一つがカオスと恐怖を詰めた爆弾にしか思えません。
 ……将来は引きこもりになろう、絶対。


 そんな後ろ向き極まりない夢をひそかに決意する日もあったりする。
 多分無理な話なんだろうけどな!




 ともあれ、海だ海。
 前回上条さんの見舞いに行ったらどういうわけか話がそっち方向に逸れ、上条さんの退院を待ってみんなでぞろぞろと海へ行くことが決定してしまったのだった。
 ……俺は反対しようとしたんだけど、勢いに流されましたよチクショウ!


 そんな経緯を経て、やってきました海です。
 電車を乗り継いでくるここまでの道程は特に問題がなかったことに心から感謝したい。
 途中トンネルの中で黒くて平べったくて目玉だけ光ってる変な物を見た気もするけど、ここは青函トンネルじゃないから目の錯覚に違いない。
 どういうわけか、旅行先の海で上条さんのご両親といとこが合流するなんて話もあったりするけどまぁそれはそれ。


 しかし俺は今、少し安心している。
 上条さんやら優人やらうしおやら、こいつらと海に行くなんて確実に死亡フラグだと思われるところなのだが、実は今日、さらなるゲストがいらっしゃるのです!


 ちょっと大所帯で海に行くことになったと矢的先生に先日報告したら、さすがにそこまでの規模だと同伴してくれる人をつけた方がいいだろうということになりまして。
 そして、


「ふむ、しかし同伴してくれそうな人は……待てよ。おーい、安達! 確か、今度海に行くって言ってたよな?」

「あ、はい。お世話になってる響鬼さんと海に行くことになってます」

「ちょうどいい、それじゃあこいつらも連れて行ってくれないか?」


 ……というわけでした。
 というわけで、


「それじゃあ、よろしく。響鬼です。シュッ!」


 これだけのカオスな集団もびしっとまとめてくれそうな人がついてきてくれました。
 ちゃんとした大人なこともあってすごく落ち着ける感じです。


「へぇ……よろしく、響鬼さん」

「落ち着け刃牙。頼むから本当に落ち着け」


 ……約一名、響鬼さんがどれくらい鍛えてるかを察知して髪の毛ざわざわ逆立ててる奴もいたりするけどね。


 そんな困難もあったりしたけどやってきた海です。
 上条さんの家族が合流するのは明日以降になることもあり、今日はひとまず自由時間。たっぷり海を満喫することになった。
 なった……んだけど。


「よーしっ、それじゃあまずは鵺でも探しに行きますか! 白の字、船をチャーターするわよ!」

「いやいや経島先輩っ、いきなり船なんてどうやって!?」

「あ、あれが良いんじゃないかな、真一。観光船みたいな形だよ」


 とかなんとかいきなり騒ぎ出した美術部一行。
 イタチさんが指差した先には全体的に赤くて、船尾にロケットかなんかがついていて、衝角が剣になってるド派手でゴーカイなガレオン船が停泊していました。
 ……なんかもう、ね。
 別にこの星が宇宙帝国ザンギャックの侵略を受けたという歴史はないんだけど、妙に不安な気分にさせてくれるよ。


 てなわけでさっそく美術部一行とアマ公が脱落した。
 なんかアマ公が向こうについていきたそうにしていたので送り出してやったらとっとこ行っちゃったよ。
 え、なんで俺はアマ公についていかなかったかって?
 ……いやね、多分ただの蜃気楼だと思うんだけど、海の向こうに鬼みたいな形した島がうっすらと見えるんだよ。それも見る時々で場所を変えて。
 海の底から巨大な竜宮の使いとか湧いてこないといいけどなぁ。




 海と聞いたときから半ば予想はしていたものの、そんなもん平然と越えてくれるのがこの世界。砂浜に着くころにはすでに精根尽き果てていたのだが、こんなところで死ねるかという意地だけでなんとかがんばりました。


「そろそろいい時間だし、まずは海の家で昼飯でも食べようか?」

「さんせーい!」


 遊びたい盛りの一団ではあるものの、同時に食べ盛りでもあるのが高校生。響鬼さんの提案に俺たちは一も二もなくついていくことになった。
 そして辿り着いた海の家は、結構人の多い海だというのに、至ってシンプルな作りででかでかとした看板ばかりが目立っている。
 ちなみに、店名は……


「いらっしゃいませでゲソ! 注文はなんにするでゲソ?」


 「れもん」でした。
 ……注文を取りに来てくれた、白いワンピースに白い三角帽子をかぶってうねうねと動く青い髪(?)をした女の子の語尾がとても特徴的だ。
 なんとなくインデックスに色の配置が似てるな。


「よかったね、マーベラス。やっとカレー食べられて」

「ああ、悪くないぜ」


 見た目が地味な割に結構繁盛している店の中には、カラフルな5人組もいたりした。
 なんか服のデザイン傾向がさっき見たばかりのガレオン船と似ているように見えるけど、まあ気にしないでおきますよ、ええ。


「うおっ、すげえ! あの幼女かき氷何杯目だ!?」

「十、二十、三十……すまん、これ以上数えたくない」


 あと、ここからは見えないがやたらとかき氷ばかり食べている女の子もいるらしい。
 ……とりあえず優人の冥福を祈っておこう。こと人外に対しては上条さんと並ぶフラグ体質のあいつのことだ、放っておいても大丈夫に違いない。


「ご注文は以上でゲソ? それでは、ちょっと待っているがいいじゃなイカ!」

「イカ娘よ、待たないあ」


 俺が周りを気にしている間に注文をとり終わったらしき店員の女の子が厨房へと戻りかけたとき、彼女に声がかけられた。
 そしてそれと同時に俺の背筋をもんのすごい勢いで駆け巡る怖気。
 さっきの子といい特徴的な語尾の店員が多いねハハハ、とか必死に現実逃避をしながら声のしたほうを向かないよう顔を背ける俺。


「師匠!」

「失礼します皆さん。イカ娘の師匠、イカ師匠でいあ。よろしくとぅるー」


 語尾の時点で思いっきり顔を背けたのは正解だったとその瞬間に確信した。
 さっきから声に混じって聞こえてくるしゅるしゅるという音は多分このイカ師匠とやらの口元で触手の蠢く音じゃないかなぁ、あっはっは。
 声を聞いているだけでもヤバイ気がするけど、横目に見える皆の表情はドリームランドへ旅立っていないからまだ大丈夫だろう。いつまで持つかはわからないが。


「イカ娘、そちらのお客さんの注文がまだではないあ。聞き逃してはイカん」

「おおっ、すまなかったでゲソ! それでは改めて、ご注文はなんにするでゲソ?」


 そういって俺の正面に回りこむ女の子。笑顔が可愛くて癒されると同時、うっかり忘れていた注文をイカ師匠とやらが直接聞こうとしないでくれて本当に助かった。
 とはいえ、そのときの俺にまともな判断力が無いのもまた事実。適当にメニューから二つほど指差して注文しておくことにした。




 そして、それをすぐに後悔することになる。


「お待たせしましたでゲソ! ご注文の、『ウミガメとソイレント・グリーンと両脚羊入りチキンブロス、バーガディシュ少尉風』でゲソ!」

「…………………………………………」


 なんで海の家のメニューにチキンブロスがあるんだとか、名前が長いだとか、入っているものの名前を考えると明らかに黒だとかそんな考えが俺の頭の中を駆け抜ける。
 皿の中にはごく普通のチキンブロスにしか見えないもの。
 良い匂いもするのだがこれは、アレ、だよね?


「うぉー! やっぱりイカ師匠のチキンブロスは本当にうめーですね! 真尋さんもどうですか、ほらあーん」

「いらないっつってんだろ近づくなニャル子」


 隣のテーブルから嫌な意味で懐かしい声が聞こえてきたような気もしたけど、同じメニューを食ってるだろうと予想される客の素性を考えると振り向いて確かめる余裕もSAN値も残っちゃいない俺なのだった。


 結局、もう一つ頼んだメニュー――幸い、光学異性体たんぱく質製じゃないただのカレーだった――を食べて誤魔化すことが出来たので何とかなったが、それでもかなり危ないことが起きたのは間違いない。


 ……海は危険である。間違いなく。
 みんなも気をつけようね!




 ま、まあそんなハプニングもあったりしたが、一日目はわりかし平穏に終わった。
 途中で優人と緋鞠がふらりといなくなり、戻ってきたら緋鞠が足を怪我していたりもしたが、大方蛇幼女とのフラグでも立ててきたのだろうから気にしない。
 なにせ、この大所帯は人間の女の子ならば上条さんがフラグを立て、妖怪の女の子ならば優人がフラグを立て、物騒な妖怪ならばうしおがフラグを立ててくれるのだからして、俺が直接ファーストコンタクトしたりすることはほとんどないのである。


 そして、その後は適当に海で遊んでおいた。
 何せここはしっかりと整備された海水浴場。浅瀬に出てくるような妖怪変化の類は(多分)いないから、何もかも忘れ去るために遊び呆けるのが一番なのだ。


「いやー、よかったよかった。鵺は見れたし、危ないところもアマ公が助けてくれたし、なんか途中で漂流して鬼が島みたいなところに行ったりできたし」


 ちょうど海から引き揚げようとしたころ、いつの間にやら船を調達していたらしい経島先輩達も帰ってきた。どうやら狙い通り鵺ウォッチングをすることができ、危険なこともイタチさんやアマ公が大体なんとかしてくれたらしい。
 アマ公をえらいえらいとガシガシ撫でてやったらエライ喜んでくれた。ホント可愛い奴だなこいつは。


「ねえねえ、あんたは鵺って知ってるかしら?」

「知ってますよ。えーと、たしか鷹の頭、虎の胴体、バッタの足を持つキメラみたいな妖怪で胴体のトラ部分がそれはもう情けないくらい弱点だとか」

「……絶対何か別な物のこと言ってるわよね」


 そして、旅行一日目が終わるのでした。




「おっ、起きるのが早いね少年。おはよう、シュッ!」

「……オハヨウゴザイマス」


 翌日起きるなり、響鬼さんと出くわしました。
 ……響鬼さん、だよな。シュッってやるし。
 なんか昨日見たときと比べると随分背が縮みましたねぇ。しかも井坂先生みたいな声した指揮者のお父さんを持つケーキ大好きな女子中学生みたいになってるじゃないですかあっはっは。


「おはよう。真一たちももうすぐ起きてくるよ」


 そして次に起きてきたのは、喋り方と内容からするにおそらくイタチさんだろう。
 どっからどう見ても一億稼ごうとしている、戦うお医者さんという二つ名を持つおっさんにしか見えないけれど。名字の伊達違いじゃないだろうかひょっとして。
 ……上条さんと海という時点で覚悟はしていたけど、世界規模なだけあってやはり凄まじい破壊力だな、エンジェルフォール。


「おおっ、お前は元と変わってないな? 変わってないな!?」


 朝食を取るために続々とメンバーが集まるにつれてカオスが増しに増したところでいつもと変わらぬ上条さんがやってきた。
 なんだかんだで俺をこのカオスに巻き込んだ元凶と言えなくもないのだけれど、今この状況では普段と変わらぬ姿でいてくれることがこの上なく心強いから困る。


 後に誰が誰だかわからなくなると困るだろうから、ここでエンジェルフォールによって起きた入れ替えを説明しておこう。
 響鬼さんとイタチさんはさっき説明したとおりだが、他のみんなも当然入れ替わっている。
 例えば、刃牙は筋肉隆々の青年姿から、頭の後ろで髪を括った少年に変わっている。
 さっき朝の運動をしているのを見たが、あからさまに中国拳法な動きであった。


「天に竹林、地に少林寺! 目に物見せよう最終秘伝!」


 これこのように大きく変わった人たちがいる一方、緋鞠やインデックスはあまり変わっていなかった。
 緋鞠は亜麻色の髪に犬っぽい耳と先端だけ白い尻尾を生やした狼っぽい姿になっていたし、インデックスなんて最初変わっているのに気付かないくらいだったが、よくよく見たら昨日海の家にいた白い服に青い髪の女の子になっていた。


「朝食か……りんごはあるかの?」

「わーい、朝ごはんでゲソ!」


 ……むしろ中身は一番変わっている気がしなくもないのだが。
 あとで確認したら海の家の女の子はインデックスになっていました。何この入れ替わり。


 ちなみにそんな中でも特に姿が跡形もなくなっていたのは、うしおととらである。


「わーい、朝ごはんだバウ!」

「おいうしお、わしにもよこせ!」

「……」


 えーとね、なんかね、宿の一室に赤くて四角いシルエットした犬っぽいロボットがいました。声から判断するとうしおなんだろうけど、正直すごく信じたくない気分です。
 そしてそんなうしお(?)の頭に乗っているとらは昨日海の家でみた五人組みたいな、そこはかとなく海賊っぽい衣装になってたし。以前沈黙屋でよく似た親子4人組を見たけど、あのときの親父さんにとても似ている気がするのはなぜなんだろうか。
 なんにせよ、ロボットの頭におっさんがしがみついている絵というのは異常極まりない。


 これまでの経緯からして、多分俺はエンジェルフォールによる異常を感知できると考えていた。その際普段とは姿が異なる人たちを目にして頭を抱えることになるだろとは思っていたが、こうまで常識はずれな変身をされると悪酔いでもしたような気分になってくる。


「とりあえず、この事態を何とかしよう上条さん」

「ああ、もちろんだ!」


 とにかく、早く何とかしなければ。
 その思いで上条さんとともにさっそく宿を飛び出し、事件解決のために奮闘するのでありました。


 ……その際の行動諸々については、敢えて記すまい。
 合流した上条さんのお母さんがことあるごとに「最優先事項よ!」と言う17歳っぽい女教師風の格好した人になっていたり、アマ公がチビテラスになっていたりもしたけれど、私は元気です。


 幸いにも神裂さんと土御門は原作に合った通り姿を変えることがなく事態に協力してくれ、今回のカギにしてロシアから来た拘束シスターであるミーシャさんと神裂さんが戦ったりとか色々あったりしつつ、最終的に土御門がなんとかしてくれたのだった。




 そんなこんなでいつにもまして俺が何もしないうちにエンジェルフォール事件が終わり、旅行最後の日となりました。


 今日は本当に最後の最後の自由時間。
 なんかもうズタボロになった精神は放っておいて遊びまくるぜ!


「バナージさん、リリウムとの約束は覚えておいでですね。背中にオイルを塗ってください」

「う、うんわかったよ、リリウム」

「あら、バナージさん。そちらにばかりかまうのはいただけませんわ」

「留、留美さん!? ちょっと近いよ!」


 ……なんか砂浜のちょっと離れたところにいる一団がラブコメオーラを放っていたけど、男の方は上条さん並に女難の気配がするから近づかないように気をつけておくとしよう。




 よーし、ひとまずはボート借りてきたから、ちょっと沖の方まで出てみるか。
 そうすれば変な奴らと関わることもないはずだ!


「……なんて、そりゃ淡い夢だよな。ははっ」


 そして現在、なんか巨大な生き物の腹の中に入ってしまいました。


 急に空が暗くなったと思って、気付いたらこのありさまですよ。
 正直なにがなにやらよくわからないところではあるが、俺の仲間のメンツと状況から考えるにおそらくここは、あやかしの腹の中だろう。


 いやー、まさか俺がこんなところに放りこまれることになるとはね。ホント最悪。せめてアマ公連れてくればよかったよ!


 とまあ、そんな風に嘆いていても始まらないのはこの世界に生まれついてから何度となく経験していること。
 ここは一つ手っ取り早く、助けを求めるとしましょうか。
 確か原作では無線機かなにかであやかしのなかにいることを伝えていたから、俺も何とか連絡とってみますかね。


プルルルルッ

「あっ、もしもしうしおか? ……いや、色々説明し辛いんだけど今妖怪の腹の中にいるみたいでね?」


 きょろきょろとあたりを見回してみれば、あやかしが呑み込んだであろう船の数々。
 そして、あやかしの胃壁から生えてくる妖怪共である。


「……かなりヤバいんで、できれば早めに助けにきてくれ。マジで」


 しゃぎゃあああ! とかそいつらが叫んいでるのを見るにつけ、俺の寿命があとどのくらい残っているのか甚だ疑問である。


「おいっ、そこの小僧! お前いまうしおを呼んだか!?」

「おお、とら。助かったよ、割とギリギリで」


 そんな疑問を胃壁妖怪ごと吹き飛ばしてくれたのこそ、我らがとらである。エンジェルフォールの事件が解決したあたりから姿を見ないと思っていたら、どうやら一足早くあやかしに呑み込まれていたらしい。


 とらはまだ気を抜いていると喰われそうなほど怖い妖怪ではあるのだが、息を吸うだけで命の危機に直面するのなんて俺にとっては日常茶飯事。今さらそんな程度で大げさな反応はしないのである。


 だから、しつこく胃壁妖怪がちょっかいを出してきても気にしないし、あやかしが身をよじった反動でタンカーとかの船が動いて押しつぶされそうになっても平然としているし、あやかしの奥の方から本体が俺達を吸い込もうとしても菩薩のような表情を浮かべていることができたのだ。


「……なんか、今日は今までの人生の中でも特に危ないなぁ」

「……小僧、お前結構大変だったんだな」


 それはもう、とらですら同情してくれるくらいに穏やかな表情をしてました。しくしく。




「おーいっ、大丈夫か!?」

「助けに来たよ!」


 と、そんな風に軽く絶体絶命になっていた俺達を助けに、うしおとシャウタコンボに変身した映司が来てくれた。
 え、映司?


「いやあ、クスクシエが今日からこの海岸にちょっとの間出店することになってね。そしたら大変なことになってるみたいだったから助けに来たんだ」


 だ、そうである。ホント、この世界では人と知り合うと漏れなく頭が痛くなるカオスが必ずセットになってくるんだけど、同時にこうして頼れる仲間も増えるからたまらない。


 そして、うしおととらがあやかしを内側から倒すために体内に残り、俺はシャウタコンボの力で液状化した映司に連れられてあやかしの外へと一足先に飛び出した。




 そして、仲間達の戦いを目にする。




「絶対に許さない! 音撃打! 火炎連打の型!!」

「えぇいっ、じたばたするなでゲソ!」

「イカは甘いの……こんな奴、周りの海ごと凍らせてやれば手っ取り早い……なの」


 ……なんということでしょう。
 そこには、体の表面が油でぎとっているから攻撃が効かないとかなんとかそういうあやかしの特性を軽く無視するような光景が!


 響鬼さんは普通に頭のほうで音撃しているし、暴れるあやかしの体にはイカ娘の触手が巻きついて押さえ込んでいるし、いつのまにやら仲間になったらしいシズクが海水を凍らせてあやかしの動きを制限していた。
 ってーか響鬼さんなんか昨日のエンジェルフォールの影響残ってませんかね。


「わんわんわんっ!」

ズバババッ!

ボォォォッ!


 そして、当たり前のように水上を走るアマ公があっちこっちであやかしを斬りつけ、火をつけ、水郷で作り出した蓮の葉の上に俺達を乗せてくれた。


「やー、あやかしに食われるなんて稀有な経験したもんねぇ」

「経島先輩! 危ないから下がりましょうよ!」

「そうだよ御崎! あやかしの相手は私に任せて!」

パチンっ!


 美術部ご一行もどうやらこの場に駆けつけてくれていたようだ。
 なんか、イタチさんがカマイタチでアマ公と一緒にあやかしを斬りつけているようなのだけれど、どうして指パッチンしながらカマイタチ出してるんですかね?


「なんだかね、この方が出しやすいんだよ!」

パチン、パチン、パチチンッ!


 くるくると踊るように回りながら素晴らしきカマイタチであやかしの表面をずたずたにしていくイタチさん。
 ……いやホント、頼もしい仲間達がいっぱいだねー。


 そして、あやかしがくたばるのが先か目の前の事実に俺の精神が崩壊するのが先かと真剣に思案し出した頃、あやかしの胴体に裂け目が生じた。
 尻尾の方に現れたその裂け目は顔の側に向かって一直線に伸びて行く。体内から獣の槍であやかしの体が切り裂かれているんだ。
 巻き込まれないようにイカ娘の触手が一本一本外れ、響鬼さんが最後の一打を叩きこみ、口からうしおととらが飛び出して、あやかしの体が真っ二つに切り裂かれた。


 それと同時に、あやかしの体を形作っていた海で亡くなった人たちの魂が解放され、夏の海に幻想的な光景を作り出す。
 ……ふぅ、今回もなんとか生き残れたか。




「いやあ、あやかしは強敵でしたね」

「……いや、俺は知らないんだけどな」

「俺もだな」


 命からがらといった感じで陸に戻った俺を出迎えてくれたのは、上条さんと刃牙だった。そういや見なかったなこの二人。


 なんでも、さすがに海の上での戦いに戦闘手段が生身の人間のものでしかない二人は置いていかれることになったらしい。
 まあ多分君たちは今後も活躍の場がたくさんあると思うから、そっちで勘弁してくれぃ。




 ……なんにせよ、二泊三日のうち一日として平和な日がなかった旅行もこれで終わり。なんとか生き抜くことができた。


 多分これから先はますます危険でヤバくて死にそうな事件ばっかりだろうけど、かつてない密度で事件が起きたこのイベントを乗り越えられたことでなんか自信がついた気がする。


 ようし、この調子でこれから先も生き残るぞ!


 前向きなのか後ろ向きなのかわからない決意を込めて、家路に着く俺と仲間達。
 比喩でもヒーロー物のお約束でもなく一片の嘘もなく本気でみんなが頼りなんで、この縁は絶対大切にしようと改めて思った旅行でありました。まる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今回の話を書いていての感想。

 宇宙って怖い。
 そして海も怖い。


 皆様から頂いた感想とネタは大変嬉しく読ませていただき、特にネタに関して使えるものは、作者が知っていてなおかつ織り込めそうなものはできる限り作中に登場させようと思っておりますが、さすがに知らないネタであれば不用意に使うわけにいきませんのでその辺はご容赦のほどを。


 それはそれとして、前回八針来夏様からの感想をいただいたのを見てしばらく呆然としました。最近大人気の「IS VS OF」には別の名義で何度か感想書かせていただき、私がこれとは別にISのSSを書こうと思ったきっかけを与えてくださった方だけになおのこと。

 さて次の話はどうするか。まだあまり決めていませんが、なんとかこっちも大団円に持って行きたい次第。
 もし気が向かれましたらお付き合いをよろしくお願いいたします。



[20003] スーパー超人大戦J
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:73c09695
Date: 2011/10/12 22:35
 新しい朝が来た。
 だが俺にとっては必ずしも希望の朝だと言えないのがすごーく悲しいよね、うん。


 さて、日々変わらぬ生活を送る……ということがコズミックエナジーの満ちる宇宙のかなたまですっ飛んでいった俺の朝は、目覚める瞬間から緊張が絶えない。
 以前のように鳥の鳴き声にへんなのが混じっていることもあるだろうし。窓の外を見るのなんて夕焼けが綺麗な時くらいで、そういうときに限って人間サイズの蝙蝠のような未確認生命体が飛んでいたりするなんて、ザラにある。
 多分五感が一つでも生きている限りそこからカオスが侵入してくるだろうから、乙女座のセンチメンタリズムな金ぴか戦士に第六感まで破壊されなければ逃げても無駄です。




 そんな諦めとセットになった俺がまず朝目覚めて最初にすること、それは。


「おはよう、アマ公」

「わんっ」


 何より先にアマ公への挨拶だ。同室に住んでいるペットだからというのももちろんあるが、日に日に命の危険度が増していくこの世界において、アマ公はまさしく俺の生命線。そりゃあ丁重に扱おうというものさ。


「さて、それじゃあ散歩に行くか」

「わんわんっ」


 だから当然朝晩の散歩は欠かさない。学園都市はかなり広いからいくらでも散歩コースの選びようはあって、刃牙やら明日菜ちゃんやらと出会うコースもあれば合わないコースもあってバリエーションは豊か。アマ公も満足してくれているらしい。
 せっかくだから、今日は市街地を巡るルートでも選んでみようかね。


「いけっ、メタビー!」

「迎え撃て、アキレス!」

「――っ!」


 ……そして、さっそく何か出くわした。
 道端で、最近話題のおもちゃを戦わせる少年達である。
 反応兵器を頭の角に備えていそうなカブトムシっぽいロボットに、携帯電話的なもので操縦されるてのひらサイズのロボット、そして意識失った子供がぼーっと突っ立っている前で銃やらボムやらポッドやらを吐きまくっている同じくてのひらサイズのロボットだ。
 あー、そういえば最近メダロットやらLBXやらカスタムロボやらが人気と聞いたな。まさかこんな形で異種格闘技戦が繰り広げられるほどとは知らなかったけど。


「いけっ! シャイニングソードブレイカー!」

「負けるかぁっ! マグナムトルネード!!」


 道の反対側では、地面に突き刺さった金色の剣から飛び上がったガルーダだかフェニックスだかな名前をしたクラッシュギアと、コースを飛び出たミニ四駆がぐるぐる回りつつ真正面からぶち当たろうとしている。
 ……いやはや、最近のおもちゃはすごいね。




 それらのおもちゃにじゃれつこうとするアマ公をなだめつつ、なんとか家路へと向かう俺。今日だってこれから学校なんだから、朝っぱらから面倒に巻き込まれるのはごめんなんだよ。
 ああいうのに関わると、そういうおもちゃで世界征服しようとしてる組織とぶつかることがあるんだから。子供の頃に流行ったビーダマンやらヨーヨーやらベイブレードでも似たようなことあったし。昔よく一緒に遊んだタマゴ達、元気かなあ……。


「……お、誰かと思ったらお前か」

「うわあ。……お久しぶりですね、門矢さん」


 とか何とか思っていたのに、平和な散歩道になぜかいつぞやトイカメラを下げて最終決戦の場に駆けつけてくれたディケイドの中の人がいるんですが! あんたなんでこんなところに!?


「なに、旅の途中だ。……ああ、紹介しよう。最近一緒に旅をしているペットの黒猫だ」

「誰が黒猫だっ! 僕にはクロノアって名前があるんだよ!」

「……ヘー、ヨロシクネ」

「わんわんっ」


 あーなるほど、かどやんもペットの散歩中だったのかー。猫というには耳が長いし、二本足で立ってるし、人の言葉までしゃべるんだけどね。まあでも君たちなら旅の道連れにちょうどよかろうよ、色んな意味で。


 そんなわけで懐かしい人たちとも再会したりしつつ、軽い会話で別れてようやく寮へと戻ってくる。本当に気が抜けないったらありゃしねえ。
 だがそれは忘れて、今度は朝食の支度だ。つい先日までは自分の分だけ用意すればよかったのだが、今では実に量だけ見ても八倍に膨れ上がっている。なにせ、一階下に住んでいる上条さんは甲斐性無しなくせにインデックスを部屋に置いているから、どうしても金欠気味になっているので俺が朝食だけは出してやっているのであった。
 そして俺と上条さんは一人前しか食べないのだが、アマ公とインデックスは三人前ずつ食べる。これでも遠慮しているとのたまうインデックスと、その後も隙あらば異袋に次々食べ物を収めていくアマ公がいるので、これでも十分ではないのかもしれないが。
 ともあれ次々パンを焼いてマーガリンを塗り、ジャムを出して卵を焼いてウィンナーを茹でてレタスやキュウリやトマトを洗っては放り投げてアマ公に一閃で切ってもらってサラダにする。
 ふむ、せっかくだから近所に住んでるヴァンプ様に教わったトマトトーストも用意しておこうかな。あの人見た目は怖いというかよくわからない生き物だけど、色々料理教えてくれるすごいいい人なんだよねー。


「さあ、欠食児童ども。朝飯の宅配だよー」

「わーい、朝ごはんー!」

「ううっ……、いつもすまねえなあ」


 そして元気に出てくるインデックスと疲れ果てた上条さん。……ホント、いつも大変ですね。などと相変わらずの苦労体質を観察しながらの朝食タイム。インデックスがパンやらサラダやら貪り食うのを横目にしつつ、テレビをつける。人の部屋でもなんのその。この時間のテレビはニュースといつも決まっているのだ。
……ええもう、当然ニュースも日々カオスなんすけどね。


『今朝のニュースです。先日、某国にて勃発した紛争についてですが、政府軍のアーマードトルーパー部隊と反政府勢力の雇った傭兵達が駆るアーマードコアが首都近郊で激突。大規模な戦闘が起こったとのことです。ごらんください、映像ではATとACが双方とっつきでクロスカウンターをしております。……しかし、この戦闘は隣の国を訪れていたマイケル・ウィルソンJr大統領のメタルウルフとお供をしていたスターク・インダストリーズ社長のトニー・スターク氏のアイアンマンが30分で鎮圧しましたので、現在落ち着いております』

「……」


 そして画面にはとっつきあうATとACをボッコボコにしていく二機の等身大よりちょっと大きいくらいのパワードスーツ達が。さすがアメリカ、半端じゃないぜ。


「……やっべえ、のんびりメシ食ってる場合じゃない! 遅刻するぞ!」

「おぉ、もうそんな時間か。それじゃあ、行ってくるよ。アマ公は留守番よろしくね」

「いってらっしゃ~い」

「わん」


 とか何とかやってるうちに学校へ行かねばならない時間となった。今日は大丈夫だったが、上条さんといると普通に時計が遅れていたりするから、なんだかんだでいつもこうなるんだよね。
 テレビを見たままひらひらと手を振るインデックスに対し、こっちにやってきてひとしきり撫でまわされてくれるアマ公の愛らしさを見て上条さんがうらやましそうな視線を向けてきているのがわかる。……あげないよ?




「う~ん、初春は別にイメチェン……してないよね? この前ライオンとトラとチーターが合体した怪人みたいになってなかった?」

「なんですかそれ!? なるわけないです! それを言うなら佐天さんだって、襟のすごいマント羽織って白目剥いて顔の周りに包帯巻いてませんでしたか!?」


 そんな会話を耳に入れながら突っ走る通学路。どうやら以前のエンジェルフォールの影響はあまねくこのあたりにまで及んでいたらしいが、もう終わったことだから振り返らない。考えるだけ無駄と言うものだ。


 いやね、そもそも俺と上条さんがいて、まともに学校に着くことなんてできるわけないんだから。


「さあ行けネガトーン! 不幸のメロディーを撒き散らしてやるのだ!」

「ネーガトーン!」


 ほらさっそく、なんか向こうのほうにやたらガタイのいいおっさんとそいつに率いられたでっかい怪物が不協和音撒き散らしてるし。……あー、なんかこの音聞いてると力が抜けてくるなあ。


「……不幸だorz」

「ああっ、上条さんがさっそく堂に入った不幸っぷりを!?」


 いかん、元々不幸体質な上条さんにとってこの攻撃は致命的だ!? このままでは遅刻してしまうっ!
 ……しかしながら、ここは天下の学園都市。この程度の事件など日常茶飯事であり、それらに対抗する術もまた掃いて捨てるほどある。


「待てぇい!」

「ぬぅっ、この声! 森羅の連中か!」

「そのとーりじゃ! むさいオヤジどもがまた悪さをしておるな、この零児が成敗するぞい!」


「おっと、今は俺達もいるぜ!」

「焦らないでくださいよ、虎徹さん。それと、ポイントは譲ってくださいね森羅のエージェントさん達」


 例えば、厳密には超能力者と言えないやつらの起こした事件を担当する特務機関「森羅」のエージェント。白黒髪のにーちゃんと合法ロリババアと評判の狐っぽい人(?)がいつもセットで行動して、こういう事件のときにはよく出張ってくる。
 もう一方は、これまでアメリカのシュテルンビルトシティで活動していた、向こうさんの超能力者――NEXTと呼ばれているらしい――のヒーロー、タイガー&バーナビーの二人だ。こちらは超能力を使うと言う関係上ジャッジメントと協力して、事件が起きるたびに色々と出張ってきて活躍しているらしい。くっついてきたスタッフがリアルタイムで放映しているヒーロー番組ともども、すでにファンが定着しつつあると言うのだからすごい話だ。


「……えーと、それじゃあここはお願いしまーす」

「おう、気をつけて逃げたまえ、少年!」

「気取ってないで行きますよ虎徹さん!」


 何にせよ、頼れる人たちがいるというのはいいことです。そう思いながら、俺は不幸だ不幸だ呟いている上条さんを担いで学校へと再び走るのでありましたとさ。


「何をしておるのじゃ、お主ら」

「ああ、緋鞠。イヤなに、上条さんを学校へ担いで行かなきゃいけなくなってね」

「ふむ、大変そうじゃの」


「ぬぅっ、その声はプリキュア……か?」

「……貴様はなにを行っておるのじゃ? 人を間違えるとは、絶対に許さんっ!」

「やはりプリキュアではないのか貴様!?」


 なにやら緋鞠を誰かと間違えたらしいおっさんがひっかかれているが、まあどうでもいいや。ほらほら上条さん、行きますよ。


「ねえねえさやかちゃん、この前の定期テストどうだった?」

「あたしはさっぱりだわー。まどかはよかったんでしょ? 小さい頃から流星塾に通ってるし、確かGUTSに勤めてる親戚のお兄さんにも勉強見てもらってるんでしょ」

「鹿目さんは確かギンガマンとガオレンジャーにも会ったことがあるんでしたわよね。案外波乱万丈の人生ですのね」


 途中、女子中学生の一団がそんな会話をしているのを聞いたけど気にしない。
 特にピンクの髪をした女の子の後ろを白いクロノアみたいな謎の小動物が追いかけていくのが見えたけど、もっと気にしない。
 ……うん、後々色々大変なことになりそうな気もするけど、今は友達のことが大事だよね!




「おはよーう」

「おう、おはよう。……ほら、そんなもんかケンイチ」

「ま、まだまだですっ!」

「ケンイチさ~ん、がんばってですわ~」


 そして教室に入ると、刃牙が白浜ケンイチと組み手をしていた。ちなみに観戦者は風林寺美羽。結構強いらしいのに、それでも凡人代表みたいなオーラをまとうケンイチを刃牙が軽くあしらっているらしい。なぜ「らしい」などという言い方になるかというと、二人の手やら足やらの動きが速すぎて良く見えないから。うわー、近づきたくねえ。ていうか近くの席の人たちはどうして平然としてられるのか。俺なら即座に射程圏内というか制空圏内から逃げるのだが。


「おはよう。……上条はどうしたんだ?」

「ああ、夏目か。おはよう。上条さんはいつも通りの不幸だよ」


 刃牙達から可能な限り距離を取りつついまだぐったりしたままの上条さんを席に放りこむと、刃牙やケンイチとは対照的にひょろっとして白アスパラみたいに儚げな奴が声をかけてきた。
 こいつの名前は、夏目貴志。ときどき見えない何かと戦っている俺の友人だ。
 ……と言うと危ない人にしか思えないのだが、実のところこいつが戦っている手合いは妖怪と呼ばれる物の類で、最初とらが教室に入ってきたときなんかすげー驚いていた。こいつのペットのブサイクな猫はニャンコ先生と呼ばれていて、たまにアマ公と一緒にいるのを見るし、案外似た物同士なのかもしれないね、こいつと俺は。




「やあみんな、おはよう。……今日は転校生を紹介するぞ!」


 朝のHRの時間になると、矢的先生がいつものよーに元気いっぱいの挨拶をして、さらには転校生が来ると告げた。
 ……なるほどそう来たか。いいぜ、なんでも来いよ。上条さんを筆頭とするハーレム属性を持った奴らの元に空から降ってきた美少女でも超能力者でもなんでもありだチクショウ。今さらそんな程度で驚くものか。




 しかしながら、みなさんご存じの通り。


 そういう覚悟は大抵の場合無駄になる。




「俺の名は如月弦太朗。俺の夢は、この学園都市の連中全員と友達になることだ!! とりあえず、さっそく隣人部って奴に入部してみたぜ!」


 Oops。なんか宇宙キターな感じの不良風男がキター!?
 しかも夢がでかすぎないかそれ! あと、ぼっちと不良モドキと残念肉のたまり場と噂されている、時々インデックスも遊びに行くあの教会の中の一室は色々と終わってしまうのではなかろうか。




 ……まあ、大体いつもこんな感じだ。朝起きて学校行くだけでも常々何かしらの事件が起こる、フラグとネタの過密世界。そんなところで俺は、これから先もどう生きていけばいいんだろうね?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なんやかやと事件の多かった海行きを終えて、学園都市へと帰ってきた俺達。どーせこれからもまた色々あるんだろうなと思っていると、さっそく一つ大きな動きがあった。


「旅に出るって……北海道へ?」

「ああ。あの海にいた妖怪に……聞いたんだ」


 それは、うしおが旅に出るということ。なんでもあやかし退治を頼んできた海座頭という妖怪の口ぶりからして、死んだと聞かされていた母親が生きているらしいことがわかり、親父殿にも問い詰めた結果北海道まで手掛かり探しに行くことになったのだとか。


「そう……か。道中色々大変だろうが、気をつけろよ。特に行きの飛行機とか、帰りの青函トンネルとか」

「ああ、ありがとう。……こんなときに俺だけ、ごめんな」

「なにも悪いことなんてないさ。道中気をつけて、しっかり母親のこと調べて来い」


 色々と妖怪事件の多い昨今、うしおが行ってしまうのは学園都市的にもうしお自身の旅路的にも不安がいっぱいなのだが、これはうしおにとっては絶対に為さねばならないことだ。


 だから俺も含めて仲間一同で旅の無事を祈りつつ見送ったうしおの笑顔と、また会えると信じたい。……遠野とか通るときは、さりげなく仲間を増やして来てくれよー。








 などと状況の変化もあったりしたのだが、それだけで収まるくらいならば俺の心はもっと平穏になっている。
 まるでうしおがこの地から旅立つのを待っていたかのように、入れ替わりで現れた新しい奴らが騒動の原因になるだろうことは、多分俺でなくてもわかるだろう。


「みなさん、私が今日から転任してきた稲葉前ですわ。よろしく」

「……転校生とか転任してきた先生とか、妙に多いなオイ」


 なんと言えばいいんだろうね? うしおがいなくなったと思ったら急に割とヤバい背景持った人が現れたんですが。いやそりゃまあ、イタチさんたちがいる時点で大体予想できてはいたけどさぁ! ただでさえうしおがいる以上「奴」が最後に出てくるのは確実だってのに、これ以上どうしろっての!?




 そして、それだけでは終わらないからこそのこの世界。


「それから、保健医の先生も変わりましたわ。玉藻京介先生です」

「やあ、こんにちは。普段は学園都市第七学区の病院で冥土帰し先生の助手をしています。これからよろしく」


 うーわー、金髪の美男美女が並ぶと壮観デスネー。傾国って言葉が自然と浮かんでくるよこの野郎。あとついでにどうでもいいことなんだけど、以前上条さんが小学校時代に鵺野とかいう先生にお世話になったとか言ってたなあ。
 なんだっていうんだ、一体。本当に、シャレにならないくらい危なくね?




 などと思っていたその日のうちに、さっそく事件は起きた。




 イヤね、妙な気配を感じてはいたんだよ。
 授業終わるなり夏目が青い顔して教室を出ていくし、イタチさんはそわそわと不安そうな雰囲気で、緋鞠もどこかピリピリとしているときた。反応している面子的に考えても妖怪周りの事件なのは間違いなく、さらに言うなら今日現れたばかりの二人。あの二人が大事件を起こすとは考えにくいのだが、それでも油断などできようはずもない。しっかり注意しておかねばならないだろう。




「……うん、わかってた。それが無駄だってことは、これまでの人生でよーくわかってたよ」


 かつての決意を思い起こしつつ、夕暮れ時の空を見上げて公園のベンチに腰を落とす俺。


 インデックスとアマ公がいるから日々大量の食材が必要となることもあってよく寄るスーパーからの帰り道、なぜ俺はこんなところで、金髪ドリルヘアーに着物っぽい服を着た幼女に買ってきたお惣菜のコロッケを振舞っているのだろう?


「はむはむ」

「そうか、おいしいか。よかったねー」


 ずーっと認めたくないと思ってきたけど、やっぱり俺って色々と引きつける体質なのかなあ。いつの間にやらアマ公もやってきて、一足早く二人と一匹というか一人と二匹というかな状況で並んでコロッケをかじってるし。なにしてるんだ俺達。


「よぉ……久しぶりじゃねえか。どうしたんだ、こんなところで羨ましいくらいカワイらしいガキ侍らせてよぉ」

「あれま久しぶり。人聞きの悪いことを言わんで欲しいな。……そういう一方通行こそ、どーせまたぞろ例の妹達を追いかけていたんだろうに。今度は何人目だ?」

「おう、つい昨日10031人目までを俺の妹にしたところでな、目標の2万人まで半分切ったぜぇぇええ」


 そんな俺に話しかけてくるのなんて、空気を読まないか、読んでも無視できるくらいマイペースな人、と相場が決まっている。そのテの知り合いには割と事欠かない人生を送って来てはいるのだが、この学園都市におけるそういう人の筆頭はこの一方通行アクセラレータだ。


 こいつとの出会いは学園都市に転校してきてしばらくしたころのこと。帰りが遅くなった日に外が暗くなってからアマ公の散歩に行って、中学生くらいの女の子を追いまわしているこいつに出くわしたのであった。


 今の会話を聞くだけでは単なる変態にしか思えないが、当時はまだ絶対能力進化実験に与していて、その実験をばっちり目撃してしまった俺はそのままだと都合の悪い物を見た一般人として当たり前のようにズンバラりされるはずだった。


「わんっ」

「痛てえっ!?」


 そんな俺を救ってくれたのは、なんか神の威光的な奇跡で一方通行の能力をあっさり無視したアマ公だった。思えば、あの頃から俺のアマ公頼りは始まったのかもしれない。
 夜道で出会うととらに匹敵するくらいアブない上に、見た目も怖い人に出会っちゃったから死ぬかと思ったけど、やはりこういうときはホント頼りになるよアマ公って。


 そして、ここまでならばごく普通の厨二病をこじらせた最強の超能力者に過ぎないのだが、それがなぜ前述のセリフみたいなことを口走るようになったかと言うと。


「ダメだよ女の子をいじめちゃ。女の子の扱いは……こういうので勉強しないと」

「……あん?」


 ……とまあ、後に打ち止めラストオーダーを可愛がる以上素養はあるだろうと思い、ここで少しでも性格が丸くなればとかの有名な「シスタープリンセス」というギャルゲなど渡したのが間違いだったのかもしれない。この世界の場合はどこぞの島にモデルとなった兄妹達が実在するという話だし、大した影響もないと思ったのだが……。


「よお、お前か! 妹ってのは……いいもんだなぁ」

「……あれー?」


 一晩で、こんなんなりました。
 これにより、ミサカシスターズを狩る人から突如として守る人にクラスチェンジですよ。なんでも例の絶対能力進化実験を続けつつ、実験材料として襲い来る妹達を無力化して実験の通り殺したと思い込ませ、その実冥土帰しの先生のところに担ぎこんで保護しているのだとか。
 「妹にした」と言ってはいるが、単にそうやって保護したあとにちょっとした援助なんかもしているというあしながおじさん的な立場にあるらしい。原作的に考えて妹物を好む素養があるとは思っていたけど、まさかこんなことになるとは。しかも10031人妹にしたということは、ひょっとしてあの日最初に出会ったときが第一次実験だったのか。その後の短期間で10000人以上保護するとか、すげーなこの人。


「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ。……もうじき次の実験だからな、色々と準備しねぇと」

「さようで」


 ……これは少し平和になったのか、それともとんでもない変態を生み出してしまったのか、恍惚と白目剥きかけてる一方通行の表情を見てると判断つかなくなるよ、まったく。




「むっ……!? お前、そやつから離れろ!」

「アマ公も、はやくこっちへ! その子、最近このあたりの妖怪をたくさん食べてる九尾の狐だよ!」


 そんな一方通行に頭を痛めているところにようやくやってきてくれたのが、妖怪の気配を察知してきたらしい緋鞠とイタチさんだった。
 だったのだが、せめてもうちょっと早く来てくれなかっただろうか。この子に見つかった時点で、俺のような一般人はファーストクラスの客にキャビンアテンダントが酒とキャビアをサービスするよーに食い物献上するぐらいしか生き残れる道は無かったのだから。
 アマ公だってさー、来てくれた時は助かったかと思ったのに完全にスルーして一緒にコロッケ食べてるし。まあおいしいんだけどね、これ。もぐもぐ。




 そして、上条さんにくっついて来た神裂さんとステイルが人払いしてくれたお陰で心おきなく戦えるようになったみんなと、九尾の金髪幼女の助太刀にやってきた酒呑童子のバトルが始まった。よーしアマ公、ちょっと頑張ってきてくれ。俺は必死に逃げ隠れしてるから。


 例によって、これだけの仲間がいてあれだけの敵を相手にするとシャレにならない。九尾の子は半ば実体化させた尻尾を振り回し、刃牙にはあっさり避けられ一部を上条さんにそげぶされ、九尾側の援軍として自身満々なドヤ顔で現れた酒呑童子の方は、いつの間にやら加わっていた響鬼さんと殴り合いをしている。


「はあああああああ、たあっ!」

「くっ、貴様も鬼であろうに!?」


 なんかすげー光景だな。妖怪大決戦というかなんというか。でも不思議と不安はまったくない。イタチさんと緋鞠とアマ公という九尾に因縁のあるメンバーがばしばし尻尾を斬り落としていっているし、この調子なら心配はないだろう。



「音撃打、灼熱深紅の型!」

「その幻想をぶち殺す!」

「真一、剣をっ!」

「アマ公、月を頼む! 童子斬の切れ味、とくと味わえい!」

「わんっ!」


「なぜだ……バカなぁぁぁああああっ!?」


 なぜだと言われても、こんな面子にケンカ売った方が悪いとしか言いようがない。
 色んな必殺技を受けてあっさりとやられた酒呑童子はご愁傷様以外に言葉がないが、自業自得な面もあるから気にしないことにしよう。


「ってーか、なんで君はここにいるのさね」

「はむはむ」


 ……それよりむしろ問題は、いつの間にやらまた俺の隣でコロッケに続いて肉まんまで食べている九尾の幼女のほうなのだが。


 いやね、さすがに自慢の尻尾を緋鞠、イタチさん、アマ公の三匹が斬る状態では対処のしようもなかったらしく、あっという間に九本全て斬り落とされてその後のどたばたしてる隙にいつの間にやら俺の隣に現れて、またしてもコロッケを食べ始めたのだ。
 なんか見た感じは、もう戦おうという意思はないように思える。もっとも、これまでの所業を考えるに多分またすぐに腹を空かせて暴れ出すだろうから放っておくことはできないのだが。……この子の食べっぷり見てると、なんとなくセイバー思い出すな。




「……どうにか、できないかな?」

「若殿……」


 そこで出てくるのがハーレム系主人公ズ。今回は特に因縁がある優人を中心として、一度とはいえ脅威の消えたっぽいこの子を何とか助命できないか、という意見が上がってきたのだ。さすが、安定の主人公クオリティ。ちなみにその間も変わらず今度は肉まんかじり続けてる幼女マジすごい。
 まあ、ついさっきまで戦ってたアマ公も一緒になって肉まん食べてるところからするに、もう心配はなさそうなのだが。




 で、どうなったかというと。


「なぜ……なぜわたくしがこんなのの面倒を見なければならないのです?」

「まったくです。私など、狐ということくらいしか共通点がないではありませんか……」

「ママ……パパ」

「「誰がかっ!!」」


 ちょうどいいところに狐の人たちがいたので、引き取ってもらうことにしました。
 いやなに、実のところ稲葉先生は予想通りと言うべきか経島先輩の彼氏でもある生徒会長にちょっかいかけたところをイタチさんたちに邪魔され、なんか残念な感じのキャラに落ち着いたらしいから。
 一方の玉藻先生、こちらは昔こそ色々やんちゃしていたらしいけど最近は落ち着いて、人の愛とかについて色々考えを巡らせているのだとかなんとか。この二人は元々狐繋がりで一緒に住んでるらしいから、ついでに一人増やしてくださいな。


「まったく……しかたないですわね。ほら、あなたも。いつまでも食べてばかりいてはいけませんわよ、はしたない」

「そうです、もっと栄養を考えなくては。最近では人間や妖怪よりも人間の作るものの方がおいしいくらいなのですから、そちらの方が良いですよ。」


 ……とまあこんな感じで、なんだかんだで面倒見のいい人たちだからこの子も割と普通に更生できるんじゃないかね?


「ところで稲葉先生。先生の出自って……いや、なんでもないです」

「あぁ……私ですか。昔は白面とか名乗っている下品な手合いの尻尾のうちの一本であった時期もありますが、鳴き声がうるさいので家出したのが……何百年前でしたか?」


 わあ、やっぱりこの人もそっち系か。白面とはあんまり合わなそうな性格だと思ってはいたけど、まさか白面の尻尾出身でしかもそっから出てきたクチだったとは。ホント世間は狭いね。
 ……そういえば、冬木にいるときに凛がナインテイルズどうこうと言ってたけど、うしおのことも考えるにやっぱりそろそろ、なんだろうなあ。




 この世界におけるあいつがどんな存在になってるのか、正直想像もつかない。
 もちろん仲間達が頼れるのはいつものことなのだが、そういう場合敵はそれ以上にシャレにならないことになっているというのもまたいつものことなわけで。




 なんだかんだと丸く収まりつつあるこの一件のことを思いつつ、うしおの旅立った北と、決戦の舞台となりそうな南西へと視線を向ける俺。
 ……よりにもよって確実に妖怪大戦争になることが確定している話に関わることになったわが身の不幸を、今だけは呪うとしよう。


「不幸だ……」

「おい、それ俺のセリフだろ!?」


 うっさい、今だけは言わせて下さいな。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 どーも、こちらではお久しぶりの葉川です。

 ISの方を書いている間もネタは色々集めておりましたが、いざ再び書くとなると色々忘れていて、思うように進みませんでした。気に入っていただけるか正直不安でございます。
 最終決戦でやりたいことはいくつか候補があり、以前と同じように候補と言わず全部ぶちこむ勢いでやっていきたいと思っていますので、なんとか完結させたいところ。もうしばらくだけ、お付き合いください。



[20003] DとJのネタ
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:73c09695
Date: 2011/10/16 12:22
スーパー超人大戦D

宇宙の鬼族

 「うる星やつら」より、鬼の人々。宇宙人だろうが空を飛ぼうが雷を出そうが、そんな程度この世界では日常茶飯事。ちょっと昔の宇宙人ネタは無いかと探して、ちょうどよくこれを思い出しました。


宇宙刑事のギャバン、シャリバン、シャイダー

 「メタルヒーローシリーズ」より、宇宙刑事三人。多分みんな宇宙警察で出世して、デカレンジャーの上司とかになっているはず。とあるヒーローショーではデカレンジャーのボスとギャバンは親友だということになっておりましたし、長谷川裕一の御大も「すごい科学で守ります」シリーズで積極的に支持してたんだから真実に違いない。


宇宙帝国ザンギャック

 「海賊戦隊ゴーカイジャー」より、ザンギャック。そろそろ半分を過ぎましたが、未だに我らが愛しのバカ王子ワルズ・ギル様の父上が出てこない。ずっと楽しみにしてるのにー。


オタンコナス社とエメラルドカンパニー

 「住めば都のコスモス荘」より、ドッコイダーとネルロイドガールの開発元。書いてる人はとてもアレなコメディばかり書く人なのに、この作品は小説・アニメ・マンガどのラストも感動物でした。


龍守さんちの忠介

 「タツモリ家の食卓」より、主人公ズ。ミュウミュウは正体を現すと超銀河レベルの怪獣なのですが。書く作品はとても面白いのにイマイチ人気的にはパッとしない古橋秀之先生の作品。私は大好きなんですけどね。……とりあえず、ケルベロスの続きまだですか。


巨大星間連合国家デビルーク

 「To Loveる」より、宇宙ヒロインズの故郷。掲載誌を移してからは外れちゃいけないタガが外れてしまったらしく、下手な青年漫画よりもエロスを追い求めているその姿勢、嫌いじゃありません。人が踏み込まない道を敢えて無駄に突き進むところ、真似はしたくないですが見習いたいです。


キャーティアなる猫っぽい宇宙人

 「あそびにいくヨ!」より、猫耳宇宙人。沖縄に猫耳と宇宙人……いいものですね。私沖縄行ったことありませんけど。


ワるきゅーレ

 「円盤皇女ワるきゅーレ」より、時の湯御一行。宇宙人が降ってきて、命を分け与えてくれるというところだけ見ればウルトラマンのオマージュっぽいのに、それがきれいなおねーちゃんだというだけで途端にラブコメになる辺りステキ。アニメのOPとED曲が秀逸でした。


成恵ちゃん

 「成恵の世界」より、成恵と和人のカップル。当初SFの皮を被ったラブコメだと思っていたら、むしろラブコメの皮をかなぐり捨てたSFでした。な、なにを言ってるのか以下略。近年稀に見る骨太な雰囲気が好きです。内容は難しくて理解できてるのかわかりませんが。


メタトロン

 「ANUBIS Zone of the Enders」より、不思議鉱物メタトロン。空間を圧縮したり、魔法みたいな現象を起こしたり、ホモっぽい人に世界を破壊させようとしたりするハタ迷惑な代物です。亜光速飛行をさせてくれたりもするようですが。


チューリップ

 「機動戦艦ナデシコ」より、チューリップ。火星あたりまで探査の手はのびているのですから、この世界ならこういうのも出てくるでしょう。多分見つけたのはジャック・シンドーあたりです。


亜光速実験宇宙船「イザナギ」

 「ウルトラマンメビウス」より、同名機。サコミズ隊長がかつて率いていた実験船。彼はそこで、信じられない物を目にしました。メタトロン技術を応用して作ったんだろうなーとか考えながら書いてました。


QB星人とマーキンド星人

 「魔法少女まどかマギカ」よりキュゥべえと、「ULTRA SEVEN X」よりマーキンド星人。あくどい語りで人からエネルギーを奪うという共通点のある宇宙人達。キュゥべえは言わずもがなですし、マーキンド星人の方はニートを誘って給料を払い、寿命をエネルギーとして吸い取っていました。寿命を吸われきった人に対して「あーあ、遊ぶ分は残しとけって言ったのに」と言っていたのが、今も忘れられません。


黒くて平べったくて目だけ光ってる変なもの

 「うしおととら」より、山魚。地中を決まったルートで巡回し、途中巡り合った人やら何やらを割と無差別に食って行く厄介な妖怪。もうしばらくしたら今度は青函トンネルの辺りのルートに差し掛かり、北海道帰りのうしおにボコられることでしょう。


響鬼さん

 「仮面ライダー響鬼」より、響鬼さん。今回は妖怪やら本物の超人やらがメインですので、平成ライダーの中でもスペックずば抜けた響鬼さんにもご登場願いました。きっと原作よりもあわただしく魔化魍やら妖怪やら狩っていることでしょう。


ゴーカイなガレオン船

 「海賊戦隊ゴーカイジャー」より、ゴーカイガレオン。このあと海の家でカレー食べてる人たちもゴーカイジャーの面々です。34の歴代スーパー戦隊の力を受け継ぐなんて、ネタにしやすいことこの上なし。今後ももうちょっと出てくることになると思います。


海の家「れもん」

 「侵略! イカ娘」より、イカ娘が居候している海の家。海と言えば海の家。そして最近海の家と言ったらこれしかなかろう、と。むしろ後のイカ師匠のために出した気もしますが。原作にせよアニメにせよ、時々びっくりするくらいオチが無くてわけがわからなくなります。


ウミガメとソイレント・グリーンと両脚羊入りチキンブロス、バーガディシュ少尉風

 「ウミガメのスープ」、「ソイレント・グリーン」、「三国志」、「戦闘妖精雪風」より、材料が「アレ」な料理の数々。イカ師匠ならこのくらい作ってくれるでしょう。ちなみに私、バーガディシュ少尉のアレですげービビりました。さすがに予想外だっただけに、特に。後で出てくる光学異性体たんぱく質というのは、バーガディシュ少尉関連のネタです。


鷹の頭、虎の胴体、バッタの足を持つキメラ

 「仮面ライダーオーズ」より、タトバコンボ。実際鵺はキメラ的な妖怪と描かれることが多いので。トラ部分が弱いのはトラメダルさんの不遇っぷりから。……とか思いながら書いていたら、この話を投稿する直前に大活躍かましてくれてアチャーと思った記憶があります。そのあたりも含め、さすがはトラメダルさん。


ケーキ大好きな女子中学生

 「スイートプリキュア」より、北条響。名前が響鬼さんと音一緒なので、エンジェルフォールで見た目入れ替わってもらいました。ちなみにこの子について一番驚いたのは、父親の中の人が井坂先生だということです。


戦うお医者さんという二つ名を持つおっさん

 「仮面ライダーオーズ」より、伊達さん。イタチさんの人としての名が伊達クズリなので。実際伊達さんが控えめな女の子のように優しく微笑みながら朝の挨拶とかしてきたら、とりあえずカンドロイドけしかけたくなるでしょう。


天に竹林、地に少林寺

 「機動武闘伝Gガンダム」より、サイ・サイシー。刃牙との中の人ネタ。らんま(女のほう)とどっちにしようか割と真剣に悩みました。


緋鞠の変わった姿

 「狼と香辛料」より、ホロ。中の人ネタ。インデックスの方は見た目が似ている、というだけですが。ここで出てきたことからもわかる通り、この世界においてホロは現在も生きています。多分昔夏目礼子さんに名を奪われて、今は白アスパラのほうの夏目の友達でしょう。


四角いシルエットした犬っぽいロボ

 「鉄腕探偵ロボタック」より、ロボタック。中の人ネタ。佐々木望さんも、役幅の広い人だと思います。変身前後が同じ声だとは思えねえ。


とらの変わった姿

 「ワンピース」より、海賊王ゴールド・ロジャー。中の人ネタ。大塚さんの場合色々と候補があったのですが、中でも一番ロボタックに似合わなそうなの、と考えてこの人にしました。


上条さんのお母さん

 「おねがいティーチャー」より、みずほ先生。上条さんのお母さんの中の人ネタ。井上喜久子さんがお姉さんキャラをやっていると、それだけで安心できます。エンジェルフォールは基本的に中の人ネタでやってみました。


リリウムと留美

 ACfAよりリリウム・ウォルコットと「機動戦士ガンダム00」より、王留美。どっちもこの世界のIS学園の生徒です。リリウムは以前も出ましたが、せっかくなので中国からも出してやろう、と。


指パッチンしながらカマイタチ

 「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」より、BF団十傑衆、素晴らしきヒィッツカラルドさん。指パッチンしながら歩いてきて、その先にあるもの全てぶった切る素晴らしい人。初めて見たときは衝撃的でした。以来、カマイタチを使う人を見ると真っ先にこの人を連想します。




スーパー超人大戦J

人間サイズの蝙蝠のような未確認生命体

 「仮面ライダークウガ」より、ズ・ゴウマ・グ。作中色々情けない目にあってばかりだった彼の顛末はさておき、警察の定点カメラ(?)に映る影、という姿が異様に不気味で記憶に残っております。


乙女座のセンチメンタリズムな金ぴか戦士

 「星闘士星矢」より、乙女座のシャカ。センチメンタリズムなのはガンダム00のグラハムさんですが。味覚を断つと喋れなくなり、触角を断つと動けなくなると言う謎理論を繰り出してくれたゴールドセイント。ジャンプマンガの敵はかくあれかしってくらい強い人です。


こどもたちのおもちゃ

 「メダロット」よりメタビー、「ダンボール戦機」よりアキレス、「カスタムロボ」よりカスタムロボ、「激闘! クラッシュギアTURBO」よりクラッシュギア、「爆走兄弟烈&豪」よりマグナムセイバー。道端でこれらが原作その物のパワーで戦っていた場合、それは本物の戦場と何が違うのか。ちなみに、前半三つは普通のメダロットサイズのメタビーに対しててのひらサイズのちびロボたちが挑んでいます。
 その後出てくるタマゴとは、ビーダマンのマンガの主人公です。足で押さえつけるシメ打ちは一度はやったはず。


一緒に旅をしているペットの黒猫

 「風のクロノア」より、クロノア。……よくよく考えたらある種のネタバレではなかろうか、これ。境遇的にはディケイドに近いと思うんですよね。あとクロノアって、黒いキュゥべえみたいじゃないですか、あの耳。


ヴァンプ様

 「天体戦士サンレッド」より、ヴァンプ様。アフリカの戦士みたいな見た目なのに中身は優しい近所のおばさん風。うちのオリ主もさっと一品を直伝されたのでありましょう。


アーマードトルーパーとアーマードコア

 「装甲騎兵ボトムズ」よりATと、おなじみAC。多分どっちも傭兵が乗っている。この世界レベルだと、世界中の紛争地帯ではこういうのが飛びまわっているに違いありません。


 アイアンマン

 「アイアンマン」より、まんま。アメリカはさりげなくすごい国です。アイアンマンスーツだと、多分性能はメタルウルフ並、しかし大統領魂がある分メタルウルフが戦果的にはぶっちぎり、というくらいでしょうか。きっとアイアンマンがメタルウルフを抱えて飛んで来たのでしょう。


ライオンとトラとチーターが合体した怪人

 「仮面ライダーオーズ」より、グリードの一人たるカザリ。初春飾利さんはエンジェルフォールの影響でカザリになっていたようです。頭が装飾品的な意味でお花畑になったカザリというのはとてもシュールでしょう。


襟のすごいマント羽織って~

 「NEEDLESS」より、左天さん。佐天さんはエンジェルフォールの影響で以下略。初春=カザリを思いついたので、ならば佐天さんも同じように名前つながりにしなければなるまいよ、と。ただでさえ怪しいあの格好の人がスカートめくり常習犯とか、想像したくないです。


森羅

 「NAMCO×CAPCOM」より、特務機関森羅のエージェントお二人。ラブラブ百叩きカップル。最近はむしろ無限のフロンティアでの活動がメインなようです。ナムカプ2もしくはPSPかVitaへの移植を切に希望しております。


タイガー&バーナビー

 「TIGER&BUNNY」より、NEXT能力者のヒーロー。アメリカから出張してきてくれているらしいです。この世界には超能力者くらいゴロゴロしてますからね。ちなみに私が一番好きなのは牛角さん。重装甲だしドリルだし、中の人がウヴァさんの人間バージョンにそこはかとなく似てるところも含めて大好きです。


絶対に許さんっ!

 「スイートプリキュア」より、北条響。緋鞠の中の人ネタ。緋鞠の場合、見た目的には東京ミュウミュウのほうが似合いそうですが。ナージャがプリキュアとしてあの時間に帰ってきた、というのがまた感慨深いですねー。


流星塾、GUTS、ギンガマン、ガオレンジャー

 「魔法少女まどかマギカ」より、まどか役悠木碧さんネタ。かつて仮面ライダー555にてヒロインの幼少時代役として出ていたらしいので、この世界では普通の学習塾である流星塾に通っていることにしようと思いつつ、Wikipediaで詳しい経歴みてみたらギンガマンとガオレンジャーにも出演してらしたらしいので。
 GUTSは「ウルトラマンティガ」より。公式ラジオでまどかが「GUTSで働いている従兄弟のお兄さん」がいると言っていたらしいので。ティガのほうはマドカ・ダイゴと言う名前なんですけどね。……このつながり、覚えておくといいかもしれません。


白浜ケンイチ

 「史上最強の弟子ケンイチ」より、白浜ケンイチ。ついでに風林寺美羽。凡人代表なのに、師匠が良かったのか悪かったのかゆっくり着実に強くなっている少年。刃牙と比べたら足元にも及ばないくらい、のはず。美羽のじーさんレベルなら、勇次郎とも本気でやりあえるでしょう。周辺地域が壊滅するのと引き換えに。


夏目貴志

 「夏目友人帳」より、夏目貴志。妖怪が見えることで苦悩に次ぐ苦悩の人生を送っていたのですが、この世界ならあんまりそういう心配いらないだろうに。とはいえ友人帳はばっちり持っているので、周りの人間がそういう事件に巻き込まれないよう気を使っているらしい。あとニャンコ先生は本当の姿がアマ公と似ているので、それなりに仲も良いようです。


如月弦太朗

 「仮面ライダーフォーゼ」より、弦ちゃん。なんか、弦ちゃん出すだけで色々なものに決着付くと思いますよ。学校全員と友達になる、という善性の強いインパクトが今年のライダーをこの上なく明るい物にしてくれる予感がします。……少なくとも、どうしてそういう野望を持つに至ったのか、が明らかになるまでは。


隣人部

 「僕は友達が少ない」より、隣人部。弦ちゃんがやってきたら瞬く間に活動が終了しそうな部活。設立の本当の理由を別とすれば、の話ですが。あとインデックス云々は、この部の顧問がシスターで、中の人もインデックスと同じだからです。


玉藻京介

 「地獄先生ぬ~べ~」より、狐の人。今回は狐特集なので、ほうかご百物語の稲葉先生とセットで狐にして先生的立場なこの人にも出てきてもらいました。ラストに待ち構えてる白面がどんなものになるかは、もうしばらくお待ちを。


ファーストクラスの客に~

 「ジョジョの奇妙な冒険」第三部より、DIO様のセリフ。血まみれで落っこちた先にいた女の人にすぐこんなセリフを投げかけられるあたり、DIO様のセンスの良さがわかろうという物。一生のうちに一度くらいは言ってみたい。でもその前にファーストクラスに乗らなきゃいけない気もするのが難点です。


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 これで大体網羅した……かな? 半年放っといただけでもブランクというか、どういう感じで書いていたかというのを割と忘れているものです。
 でも大丈夫、そういうのはネタを過積載すれば乗り切れる。そう信じてもうちょっとだけ頑張ります。完結まで、多分もう少し。



[20003] スーパー超人大戦W
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:73c09695
Date: 2011/10/24 21:59
 時には、昔のことを思い出す。


 俺がこの世界に生まれてより十数年、特に立てこんでいるここ最近に限ることなく、昔から色々な人に会ってきた。
 例えば子供の頃のこと。当時の俺は、いまよりもっと楽天的に世界を楽しんでいた。
 なにせヒーローやらなにやら実在するとはいってもテレビの向こうのことなわけだし、おもちゃの性能は高い世界なわけだからして。
 近所の子供達はベイブレードから青竜やら朱雀やら白虎やら玄武やらのビジョンを出すなんて日常茶飯事だったし、ビーダマンはただのビーダマを撃ってるだけなのに岩をも砕く威力があった。デュエルモンスターズもデュエルマスターズもソリッドビジョンシステムを標準搭載していたし、気付いたら明らかに地球の物ではない景色の中で本物のモンスター達に遊んでもらっている、などということも当たり前のことだった。
 ……いや、当時からおかしいと気付いておけよ、俺。


 それらに加え、あの頃からして既に色んな事が起きていた。


 例えば特に何も考えずに道を歩いていると、ほぼ百パーセント迷ったりとか。
 山のあたりを散歩しているときに迷い込んだ立派な家にいた、やたら鼻の長いじーちゃんと胡散臭い金髪のねーさんはいまも呑気に茶を飲んでいるのだろうか。ちょくちょく迷いこんだあの家で遊んだ黒猫と、その猫を実の娘か何かのように甘やかしていた狐にもまた会いたいと思う。


 あと、直接俺との関係はなかったが、近所にはある日突然女の子が住みつくという家も何件かあったな。微妙に頼りない太助のにーちゃんのところには銀色の髪が綺麗なシャオリンねーちゃんやらルーアンさんやらキリュウやらが来ていたし、夜知さんちにはしょっちゅう奇妙な物が届けられていたらしく、今にして思えばなのはちゃんに似た声をした胸の小さいねーちゃんに「呪うぞ!」とか言われた覚えもある。
 一時、ツヅラオという綺麗でボインな尼さんがいた他力本願時にいつの間にやら住みついていた森里蛍一さんとこのベル姉さんには、良く遊んでもらったりお菓子をもらったりしたもんだ。確か蛍一さんはバイク屋で働いてるってことだったけど、今もバイク整備とかやってるのだろうか。


 他にはある時、角(?)があって気付くといなくなってなんかこたぷーんな小鬼が近所に出るという噂が立ったこともあったっけか。あのときは近所の友達と一緒に山の中を探してみたりして、なんかその小鬼らしき物を見つけたと思ったら、次の瞬間には視界が歪み、気付いたらアフリカのサバンナに飛ばされていたっけなあ。
 ……迷子どころじゃない現象の起きたあの時は、さすがに気が遠くなったね。


 幸いにしてその時はなぜか白いライオンが野生動物から俺を守ってくれて、その後アフリカ在住のジャングルの王者、ターちゃんが保護してくれたのでなんとかなったのだが。そうでなければ確実にあの地で骨になっていたことだろう。あそこ、山のようにデカイ象とか普通にいた人外魔境だし。そういえばいつぞや沈黙屋にいた刃牙の父ちゃんたる勇次郎さんが、バカでかい象を倒したとか言ってたなあ。


 ……うん、こうして考えてみると、子供の頃の俺は案外道に迷うことが多かったかもしれない。なんか賢そうなカラスを見つけて追いかけて、その度に迷い込んだ池の近くに住んでたキタロウと、よくキタロウの家に遊びに来ていた麻倉葉と遊んだりもしてたし。あの時教えてもらったキタロウへの手紙の送り先はいまだに有効で、時々手紙のやり取りをしたりもしている。
 葉の方も、帰りが遅くなると迎えに来て一発泣かせてから引きずって帰っていた杏奈ちゃんと結婚したとかいう話を風の噂に聞いたから、おそらく今も尻に敷かれていることだろう。


 カリカリと、現代においては珍しく便箋に自筆で手紙などかいているとついついそんな物思いにふけってしまう。
 ……ふう、書けた。ここ数カ月は手紙のやり取りなどしてなかったのにこんな用事を頼むのはどうかと思うのだが、キタロウ――……いいやもう鬼太郎で。多分あいつまさにソレだし――の力を借りたい状況になりつつあるからね。
 あと、それとは別にちょっと時候の挨拶なんかにも気をつけて書いた手紙は京極堂へ。事件が事件なわけだし、せっかくだから協力を頼もうと思ってね。戦力的には期待できないだろうが、あの人がバックについてくれたら色々と理論的に助けてくれそうだ。


「さて次は……ADA、久しぶりだけど安藤さんのところに繋いでもらえるか?」

『了解。回線を開きます』


 さて、そうしたら今度はもう一件。今でも時々連絡を取っている安藤さんへの頼み事だ。


「お久しぶりです安藤さん。その後闘真くんとはどうですか」

『なっ!? き、君は開口一番何を言う! ……ま、まあ良好だ、とだけ言っておこう。それよりもどうした。君のことだから、また何か頼み事なのだろう?』


 さすが、いつものごとく察しが良くていらっしゃる。
 実は、安藤さんに研究手伝ってあげて欲しい人たちがいましてね?




 ……と、昔からの人脈を駆使して連絡を取っていく。こうやって見ると、本当に自分の歩んできた人生にめまいを覚えそうになる。
 こんなことをしようと思いたったのはほかでもない、先日うしおから旅の進捗を伝える電話がかかってきたからだ。


『そっちはみんな元気か? ……俺は、さっそく乗ってた飛行機が衾って妖怪に襲われて北海道まで一度では行けなかったよ』

「そういえばそんなニュースやってたな。原因不明の事故で不時着した、とかなんとか」

『ああ、車輪がほとんどでなくなって、とらと国際救助隊のエレベーターカーが無かったら大変なことになってたよ』


 とまあそんなレベルの大事件もあったようだ。
 もちろん俺とてそれを放置していたわけはなく、この事件については色々と調べてみた。うしおはいまだに携帯電話の一つも持たないアナログ人間なので直接連絡を取ることはできなかったのだが、飛行機の乗員乗客は全員無事だったし、その無事な乗客の中にうしおの名前があることもしっかりと確認した。
 ……ちなみにそのさなか、乗客の中に夏目智春やらジョセフ・ジョースターやら千秋真一やらの名前があるのを見つけたりもしました。むしろよく衾に襲われるだけで済んだもんだ。この面子が乗った飛行機なんぞ、確実に墜落しそうなのだが。


 ちなみに衾を撃墜した空自のイーグルを操縦していた自衛隊員の名前は、真木舜一と倉島剛というらしい。思わず空を見上げて赤い光の珠を探した俺は間違っていない。


『そういえば……アマ公はそっちにいるか?』

「アマ公? 今も俺の隣で撫でられてるけど、どうかしたか」

『いや、北海道でモシレチクとコタネチクって妖怪……? と戦ったんだけど、その時アマ公にすごくよく似たやつが助けてくれたんだよ』

「……へー」


 うしおが語るところによると、一閃したら敵がみじん切りになり、輝玉を出したらキノコ雲が上がるレベルの破壊力を見せつけてくれたのだとか。うん、まあいいんだけどね。ちなみに北海道と言えばあいつと言える妖怪のシュムナはそのときついでにグリッターアマ公にさっくり燃やされたらしいです。


『あ、そうそう。忘れちゃいけなかった。遠野でも色んな妖怪と会ったんだよ』

「遠野と言えば妖怪で有名だからな、そういうこともあるだろうよ」


『イタチさんとは違うカマイタチの兄弟とか、迷い家に住んでる天狗のじーちゃんと金髪の胡散臭い紫さんていう妖怪とも仲良くなったし……あ、鬼太郎っていう子供みたいな奴もいたんだぜ。あと、崖の中に大きな人型の像みたいなのが埋まってるところと、光でできたピラミッドみたいな山の中に立ってる三体の巨人像も見せてもらったし』

「そうかー……」


 ちなみに一応言っておくと、俺は生まれも育ちも日本の西の方の冬木市であり遠野に行ったことはない。……まあ、知らず知らずのうちにアフリカまで行ったりしてたんだから信憑性は皆無なのだが。


 と、とにかく。そんなわけでうしおも色々と諸国漫遊の旅を頑張ってくれているらしい。多分このあとは逆に南の方へも行くことになるだろうから、その間は学園都市にいる仲間達にしっかりとここを守ってもらわなければならない。
 ……え、俺は守らないのかって?
 はっはっは、いやだなあ。俺はむしろ守ってもらう方に決まってるじゃないですか。


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 さて、狐一族が学園都市の住人となった前回の事件、わりかし事件の規模自体は小さく、被害の対象が妖怪に限定されていたため日常に対する影響はさほどなく済んだ。もちろん、俺は日常寄りな人のはずなのにばっちり巻き込まれたがな!




 ……なんでこんな話をするかというと、簡単なこと。
 まるでその揺り返しのように、今度は現実に対する影響バリバリな事件が起きたからさ。


『ニュースをお伝えします。各国で死刑を言い渡された凶悪犯5人が、シンクロニシティでも発揮したかのように同時多発的に学園都市に侵入したという情報が入っています。学園都市住人の皆さんはくれぐれも注意の上、ジャッジメントの指示に従ってください』


 朝っぱらからこんな感じのニュースが流れているのだからして。スペック、ドリアン、ドイル、シコルスキー、柳の5人のしれっとしつつもただもんじゃない感じの顔写真が画面に映され、アマ公がそれを見て静かに唸り声を上げている。
 あー、刃牙ってちょうどこのあたりのあいつなんだーなどと思うのは間違いなく現実逃避。だがそうでもしなきゃ精神の均衡が保てないでしょ。この人たち小細工とか通じない……ていうかむしろ積極的に小細工してくる方だし。
 俺なんかひとひねりですよ? ある意味今までで一番死の危険を身近に感じるわ。




「ん……? 今日は範馬は休みだったか」


 となれば、当然刃牙は学校に来ている暇などないわけで。まあ心配しなくてもそのうち登校してくるだろうけどね。柳のおっさんと渋川じーちゃんのセットで。紐つきの鎌で俺まで襲われるのとか勘弁だぞ、おい。




 そんなわけで、いまごろ死刑囚共と多分ケンイチのお師匠達やらとも顔を合わせているような気がする刃牙について思いを巡らせるとともに、俺は今とても大きな不安を感じていた。


 本来ならば、最凶死刑囚といえどさほど恐れることはない。なんだかアマ公は今日から送り迎えしてくれるみたいだし。登校時もついてきてくれて、今も校庭の隅で夏目がよくつれているブサイクな猫と一緒にぷーすかひょーと寝こけている。休み時間には珍しがった生徒達に撫でられるがままに愛想を振りまいていたが、多分この調子で俺を守ってくれるんだろう。マジでありがとうアマ公。今夜の夕飯は肉だ。


 そんなわけで頼れる仲間もたくさんいるんだが……実は、今回の一件ではあまり頼れなかったりする。


「無論、若殿に刃を向けるならば切る。じゃが、そうでないならいかに死刑囚とはいえ人間をのう……」

「う、うん。私も、妖怪じゃないから、この力を使うのはどうかなって……」


 と、緋鞠とイタチさんはこういうスタンスなのである。もちろん死刑囚がうろついてるわけだから十分に気をつけるとは言っていたし、さすがにあの人たちでもガチの人外たる緋鞠達なら自衛くらいは……できると信じたいところだ。
 まずこれで、戦力が大体半減。アマ公も俺やら上条さんやらの仲間をしっかり守ってくれるとは思うが、だからと言って積極的に関わったりはしないだろう。


 そして、もう一つはこの世界のお約束。


 大抵事件は一つじゃ済まないのである。




『よぉ、聞いてくれよ! 昨日10032人目の妹……じゃなかった、10032次実験の日取りが決まったんだけどよ、なんだかその相手に変な虫が付いてるらしぃんだよ!』

「あーそうかい。そんなことで電話かけてきやがったのかい学園最強」


 その日の夜に、そんな電話がかかってきた。
 こんなトチ狂った内容の電話をかけてくることができるのは、一方通行しかいない。あいつは最近スーパーコンピューター並の頭脳を妹のことにしか使っていないらしい。俺が渡したあのゲーム、直接脳内にぶっこんだりしてないだろうな。


 とにかく、大体そんな感じでどうやら一方通行関連の事件も始まったようだ。言われてみれば、確かに昨日は上条さんが学校から帰ってくる途中妙におとなしいビリビリに会ったと言っていたし。おそらくそれが御坂妹なのだろう。


 事件は、確実に進行している。




 つまりは、そういうこと。最凶死刑囚というガチの危険人物と、一方通行というガチの不審人物が大手を振って学園都市を練り回り、我らが妖怪組の手が出ない状況で好き勝手暴れ回る、と言うことだ。色んな意味でシャレにならん。




 そんな状況で俺に出来ることは、例によってそう多くない。せいぜいが仲間たちと一緒に行動することを心がけたり……あとは、ちょっといつもとは違う人に相談してみたりするくらいだ。


「……というわけで、なんか良い手ありませんかね、侑子さん」

「なんでそこで私に聞きにくるのよ」

「いいじゃねぇかよ、侑子。ああいうガキは今のうちに甘やかしておいた方が後々面白いぜ?」


 そして俺がやってきたのは、上条さんなど割とまともなメンタルを持ってる人には見えないらしい「ミセ」を営んでいる(?)、侑子さんのところだ。
 普段は四月一日わたぬきという名前のメガネ男子がこき使われているのだが、今日は侑子さんの友人の自称黄金の魔女ベアトリーチェが遊びに来て酒盛りを繰り広げているから、次々平らげられる料理を補充するために台所へ缶詰状態になっているらしい。あいつも宴会時の士郎のように大変だな。
 ……しかも、そんな濃い女性二人に囲まれている渋い貴方は京極堂ではあるまいか。なにしてんですか。


「……わからん。どうにもこの二人に気に入られているようで、時々こうして無理矢理誘われる」

「無理矢理とは失礼ねえ」

「そうだとも、京極堂。両手に花なのだから喜ぶがいい」


 うーん、この世界でハーレム的なモテ方をしている奴は何人かみてきたけど、あんた一番苦労してませんかねこの悪女二人で。あ、とりあえずお願いしたいことあるんで、この手紙読んでください。詳しいこと書いてあるから、口で説明するより速いと思います。


 でもま、そっちの話は今は関係ないんで、早く何かいいものくださいな侑子さん。


「まったく、あんたはこのミセに来れるような精神してないでしょうに……。でもちょうどいいのがあるからこれあげるわ。どうせ誰かに渡すんでしょう? なら中身を見ちゃだめよ。その方が面白いから」

「ありがたくもそこはかとなく不安を抱かせるモノをありがとうございます。対価はこれで」チャリーン

「セルメダルで支払いとは……貴様本当に人間か?」


 いいじゃないですか、欲望は全ての根源なのですよ?


「やはり君は実に興味深いね。因果の糸もこの世界の人間とは思えないほどに絡まり合っているし……僕と契約して、魔法少女に……」

「あらモコナじゃない。いつの間に帰って来たのよー!」

「なんだい、君は? 僕は魔法少女には興味があるけど年増にはきゅっぷい!?」

「……なあ侑子、今何か聞こえたか?」

「……まさか。モコナは旅に出てるんだから、こんなところにいるはずないじゃない」


 ああそうですね、口は災いの門ってことですね魔女のお二人さん。ついでにそのときふしぎなことが起こった的な感じで、キュゥべえも滅ぼしてくれませんかね。


「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」

「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ」

「誰が関口君だ。あと案外仲いいですねあんたたち」


 などとやって、とにかく俺は今回の一件に対抗するための準備を整えた。とはいえ具体的にこの品がなんなのかはわからないから、そのまま上条さんにあげるだけなんだけどね。
 ともあれ、せっかくだ。侑子さんの店まで来たんだから、久々に夕飯は外で食べて帰ろうかな。アマ公の分の夕飯はちゃんと用意してきてあるし。


「ということで、おでんくださいな。特に油揚げ」

「はいまいど。また来てくれたのかい、うれしいねえ」


 侑子さんの店のあたりに来て食べる物と言えば、この屋台のおでんしかないだろう。
 この屋台は具もつゆもおいしいからねー。店主のおじさんの顔がどう見ても狐なんだけど、まあいまさら人外程度でビビる俺じゃないから気にしない、と。


「あら、あなたですか。ここはまともな人間が来るような店ではないでしょうに」

「まったくです、常識はずれですね。……ほら、こぼしてはいけません」

「はふはふ」


 そんな屋台で出会ったのは、稲葉先生を筆頭とする狐一家であった。この前戦った九尾の子を真ん中に、甲斐甲斐しく世話を焼いてあげる玉藻先生もいるからまるで本当に家族のようだ。


「そう言わないでくださいな。ここの油揚げおいしいんですから」

「それはそうですわね」

「ならしかたありません」

「うまうま」


 さすが狐のおじさん。同胞もめろめろになる味か。


「ね、美味しいでしょ夏目!」

「あ、ああ……ていうか、俺はむしろ同級生がいることが気になるんだが」

「気にするな、夏目」


「そうだぞ少年達! いやー、大将ホント美味いねこのおでん! 俺気に入っちゃったよ!」


 それになんだかんだで、人間の客は俺だけじゃない。
 狐っぽい耳をはやした男の子なのか女の子なのかわからないくらい可愛らしい狐っ子にすごい勢いで懐かれている夏目に、いつぞやエンジェルフォールのときにイタチさんが変身していたのとよく似ているがっつりした体型のヒゲのおっさん。おでん好きそうですね。


「いやはや、今日は珍しく繁盛だ。皆、たくさん食べて行ってくれ」

「……まあいいや、色々いいや。あ、あとでお土産お願いします。何もないと、ニャン子先生が拗ねそうだ」

「それじゃあ俺も、上条さんとインデックスとアマ公に。おやつになるくらいでいいかな」

「はい、まいど」


「まったく。古なじみの匂いに導かれてこんな店に出会うとはのう。相変わらず妙に間のいい奴じゃな、夏目」

「って、ホロ!? お前日本に戻ってたのか!」


 おや、そんな風におでんの味を楽しんでいたら、夏目のところに友人が来たらしい。声とシルエットが似てるから一瞬緋鞠かと思ったが、よくよく見ると耳は猫というより狼っぽいし、尻尾も太いから微妙に別人なようだ。……夏目が口にした名前が、昔図書館で目にした北欧のあたりにいたという麦の神様の名前と同じなことは、スルーしておくか。


 いやはや、屋台というのは人生の交差点だねえ。


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 ともあれ、そういうふうに呑気に構えていられたのもこの夜までだ。
 次の日からは、割と大変なことになった。


 まず第一に、町中を闊歩する死刑囚共。
 学内のネットワークを駆け巡る噂によれば、学園都市内のあっちこっちで超能力も使わないおっさんたちが肉弾戦を繰り広げているという話であった。
 科学技術が高度に発展しているだけに、この学園都市内で起きた珍事件の数々は大抵調べればわかる。特に、ADAに頼むとなおのこと。学園都市の住人ならば荒事にも慣れているから、いつぞやはアンクを観察するカザリを完璧に補足してのけたくらいだしな。実績は十分と言うものだ。




 だが、ぶっちゃけこの件に関して俺ができることはなにもない。




 ……イヤだって、死刑囚ですよ? しかも生身の人間だからこっちも妖怪的な人たちが出張るわけにはいかない事件。となれば対抗できるのなど刃牙レベルで鍛えてる人たちくらいなもので、基本妖怪やら魔化魍やら専門の響鬼さんもギリギリアウト、とのこと。
 となれば、俺としては可能なかぎりこの人たちに出会わないようにするぐらいしかできることはない。


 だから、あとはもう一件の方だ。


「……ということで一方通行よ、君がこれまで助けた妹達も大手を振って外を歩けるようになる策があるんだけど、乗らない?」

「乗ったぁ!」


 ……ま、相手は妹バカと化した一方通行だから、仕込みは簡単なんだがね?




 さて、今回俺がしたのは何かと言うと、例によって大したことではない。妹達を学園都市にバレないように、あるいはバレても手出しできないように冥土帰しを介して学園都市の外へと逃がすことにヤバいくらいの悦びを感じている一方通行に、今のように囁いてやっただけだ。


 もちろん、口から出まかせなどではなく実際に妹達を開放する手立てはある。


 いやさ、手立てなどと俺が言うのもおこがましい程度の物なのだが。
 結局のところ、妹達を使ったこの実験は「一方通行をレベル6に引き上げる」ことを目的としているから、それを無駄だと学園都市に認識させればいい。つまりレベル0の上条さんにボコられろ、という原作おなじみのアレを提案しただけだ。


「つーわけで、多分そろそろうちの上条さんがお前にケンカ売りに行くだろうから、買え。そして本気で戦え。多分上条さんならお前ボコってくれるから」

「ヘェ……面白いじゃねぇか、俺に勝つだってェ……? ……いいぜ、そいつが俺の妹達の未来を託すに足るヤツかどうか、試してやろうじゃねえか!」

「趣旨変わってるぞオイ」


 手を抜いて戦ったのだなどと学園都市側に思われた場合は作戦が破綻するかもしれないが、「妹は嫁にやらん」とばかりのオーラを漂わせるこいつならば、問題はないだろう。
 本当に、どうしてこいつはこうなった。……俺のせい?




 ……ま、むしろ問題は上条さんが無事現地に辿り着けるか、ということだったりするのだが。




『すまん、ビリビリに頼まれて奴の妹達を助けに行こうとしたんだけど……今なんかニュースに出てた死刑囚達に襲われてるんだ! なんとか妹達のところには行く。他の奴にも声かけたから、お前も先に行っててくれないか!?』

「……さすが上条さん、マジパネェ。とりあえずなんとか頑張って。あと来るときは前に渡したアレ、忘れずにね」


 犬も歩けば棒に当たるということわざがあるが、上条さんが歩くと死刑囚にあたるらしい。しかも口ぶりからして5人全員。電話はこのセリフの直後にぶつりと切れたことからして、多分携帯を破壊されたのだろう。俺が知る限りで何台目になるのやら。


 ともあれ、現状割とマズイことになっているのは間違いない。
 多分上条さんが御坂妹10032号と一方通行との戦いの場に到着するのは遅れることになる。一方通行がうっかり妹を殺してしまうなどということは既にありえないこととなっているが、あまり放っておくと奴が焦れて10032人目の妹を作ってしまうかもしれない。
 ……それに、「他の奴にも声かけた」というのが恐ろしすぎる。上条さん、変な知り合いに頼んだりしてないだろうな!?




「いくぜ御坂、俺に合わせろ! ライダービリビリ100億ボルトブレーイク!」

「あたし10億ボルトまでしか出せないわよ!?」




「……案の定だよ、おい」


 そこには、一方通行にケンカ売ってるキンキラキンの仮面ライダーとビリビリ中学生の姿が!


 わー、すごい光景。あちこちに雷落ちたり電撃が飛んだりと、特撮もかくやな大バトルだよ。市街地だったら確実に大惨事になってるね。しかし弦ちゃんいつの間にビリビリと知り合ったのだろう。またいつもの友情パワーか。


「ちィッ! 何だテメェらは!」

「おっと、俺も忘れるな……よっ!」


 しかも、なんか刃牙までいるし。お前むしろ例の死刑囚どもとケンカするべき男であろうに。アレか、オヤジさんと似た最強の肩書を持つ一方通行に引き寄せられたか。


 とはいえ、戦況は圧倒的に一方通行有利だ。相手の攻撃を反射すると言う特性は電気にも刃牙の格闘にも余すところなく発揮され、電撃はあちらこちらに跳ね跳び、刃牙はパンチを妙な感触で弾かれて首を捻っている。
 ……ちなみに電撃の一部は狙いすましたかのように俺のところに飛んできた。ちょっとビリっとするじゃねーか。


 現実を目の前にいつものごとく呆然自失となっていた俺なのだが、やはり状況はあまりよろしくない。いかに弦ちゃんや刃牙が頼りになるからといって、いくらなんでもあの一方通行相手にまともにダメージを与えられるとは……。


「よくわからないけど、すごいなお前。でも、多分……こうすれ、ばっ!」

「は? ……げぼふっ!」


 ……なんて思わない方がいいんだったよね、そういえば。
 俺の考えを半ば物理的に捻じ曲げてくれたのは、刃牙に顔面殴られて思いっきりぶっ飛んでいく一方通行の姿であった。


 ちなみに、それに追撃をかける電撃の類は絶賛反射中。ということはあれは一方通行の能力が切れたりしたからではない。多分物理的には上条さんのそげぶパンチの数十倍の威力はあるだろう刃牙のパンチはかーなーり痛いだろうが、今まさに一番わけがわからないのは一方通行であろう。


「すごいな、刃牙。何やったんだ」

「おう、お前か。……いやなに、あいつを殴ってもなんか跳ね返されるみたいだったから、その感触が来る寸前に手首をこう……くいっとな?」

「……」


 その理由、びくびくしながらも刃牙に近づいて行って聞いてみたら、お聞きの通りである。……いやまさか、一方通行と交戦するなり一発で木ィ原クゥゥン流体術に目覚めるとは思わなかったなオイ。さすがすぎるだろ、刃牙。


 だが、これならこれでいいだろう。刃牙は肉体的には人間を軽く超越しているとしか思えないが、超能力的にはレベル0。このまま一方通行が刃牙にボコられれば、それでも実験は中止になるかもしれない。
 ……もっとも、その場合一方通行が生きていられる保証はないが。




「すまねえみんな……待たせた!」


「おおっ、当麻! 待ってたぜ! ……て、なんだその格好」

「へっ、それじゃあこっちは主役に譲って……俺は、あっちを片づけるかな。……こっちは妙な格好の上条に任せるか」


 そんな俺の懸念を吹き飛ばしてくれたのは、ばっちり死刑囚共を引き連れ……珍妙な格好をした、上条さんだった。


 色々とカオスになりつつある状況を快刀、乱麻を断つがごとく最高のタイミングで颯爽と現れたまでは良かったのだが……その格好自体がまたカオスなのだから、困ったものだ。




 一言で表現するならば、今の上条さんは「上条当麻・ハッピーモード」と言ったところであろうか。普段のツンツンヘアーは「開」「運」と書かれたワッペン的なものがついた開運麦わら帽子に隠され、襟元では幸運を呼ぶスカーフが風にたなびき、羽織ったハッピー法被の袖から伸びる腕には上条さんに対してどれほど効果があるのかはなはだ疑問な厄除けブレスレットがついていて、ベルトにはラッキーふさふさ尻尾がもさもさしている。
 ナニあれ、思わずチーフとか呼びたくなるんですけど。


 ……あ、そうか。あれが侑子さんから買った物の中身だったのか。言われた通り見ることもなしに上条さんへ渡したけど、まさかあんなのだったとは。そしてそれを渡されたからって着てくるとは。さすが上条さん。
 ……いや、あの上条さんに触られたはずなのにインデックスの服のようにちぎれ飛んだりしてない時点で、効果のほどは疑問なのだがね?


 ま、それでも大丈夫か。


「あいつが用意してくれたものだからな、効果があるに決まってるっ。今の鉄骨を避けられたのは、このラッキーふさふさ尻尾のお陰だっ……!」


「こ、この程度の痛さで済んだのは、この厄除けブレスレットがあったからだ……!」


 気は心というか病は気からというか、さっそく一方通行に挑んでいった上条さんは必死に幸運アイテムの効果をアピール……と言うか思いこみながら突撃して行ってるし。渡した方としては冥利に尽きると言いたいところだが、あれはむしろ申し訳ない気持ちになるわ。


「ちっ、なんなんだよさっきのムキムキの野郎といいよぉ!」


 しかし、実のところ現状は俺が当初想定した通りのものとなりつつある。
 開運グッズを全身に身に付けるという異常に締まらない格好ではあるものの、上条さんが持ち前のそげぶパンチで着実にアクセラレータを追い詰めており、このままならば勝利は揺らぐまい。
 一方通行も悔しそうではあるが、多分アレだ、あいつは既に妹を嫁に出す兄のような心境になっているだろう。表情を見ているだけだと、いつものごとくちょっとトチ狂った笑いを浮かべているようにしか見えないが。




「歯をくいしばれよ最強――、俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ!」

「……ホント……何やってンだ、俺……」




 ……多分、妹達のためになることをしたんだよ、一方通行。
 でもマジごめん。名台詞がなんかすごい残念なことになったし。








 今回の事件を一言でまとめよう。
 妹バカと化した一方通行が、上条さん・ハッピーモードにそげぶされた。


 ……しかも両陣営のこの変化に関わっているのが俺と来た。いやホント、マジすいません。




 ちなみに割とスルーされていた死刑囚の方だが、あっちはなんか気付いたら片付いていたみたいだ。


「アーパパパパパパパパッ!」

「多少は中国拳法の心得があるようだけど……おいちゃんに言わせればまだまだね」

「空手の正拳突きってのはなぁ……こうするんだよっ!」

「私は寒いのが苦手なのでね……君はすぐに沈んでもらおう」

「武器に頼りす……ぎ」


 なんかね、こんな声と肉やら骨やらの砕ける音が聞こえてきました。
 刃牙といい勝負程度の人たちだと、梁山泊の師匠連合には敵わない、と。あの人たち基本的に正義の味方だから、その辺の補正があったのかもしれないけどさ。


 色々と納得しがたいカオスもあった気がするけど、結果として俺は無事で、上条さんと一方通行は妹達を助けられ、死刑囚も再び捕まったんだから、それでよしとしよう。
 ……させてくれ、頼むから。








 こうして、また一つの事件が終わりを告げる。例によって頭が痛くなることばかりではあったものの、ともかく何とか今度も生き延びた。
 仲間はいつになくたくさんいるし、誰もが頼りになる奴らばかり。しかし、最後に待ち受けるだろうあいつだけは……あいつだけは、どんなに仲間が強くても安心することなんてできやしない。
 ……うしおの旅路を考えるに、決してそのときまで時間があるとも言えないだろう。
 俺も、そろそろ覚悟を決めるべきなのかね?


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 ロストヒーローズ……実に素晴らしいっ。これでまた一歩3DSを買いたくなりましたよ。神ゲーになってくれなんて言いません。ただ面白カッコよく、あるいはネタになるものであってくれれば、私は満足です。

 さて、そろそろいい加減話の風呂敷畳み始めないと。至るべき最終決戦に向けて、敵も味方も戦力揃えていきますよー。
 しかしアレですね、奇しくも現行の任天堂携帯機スパロボのナンバリングぴったりで終わりそうです。前のαまでのときも、別に意識して終わりを揃えようとしたわけではないと言うのに、一体どういう運命なのでしょう。

 とりあえず最後に一つ。死刑囚のみなさん割とスルーしてごめんなさい。



[20003] スーパー超人大戦K
Name: 葉川柚介◆9ddbfd91 ID:73c09695
Date: 2011/11/23 22:11
「よーう、やってるかーい」

「あ、久々に来た」


 呼吸と同じ数だけSAN値を削られて長いこと生きてきた俺は最近になって、少しだがそういう生活にも慣れてきたような気がする。
 これまではニュースで報道されるカオスな事件に腹を痛め、次々出会うなんか知ってる人たちの名前に頭を抱えていたのだが、なんかもうね……ふっきれたというか、その辺割と受け流せるようになってきたので、逆に少し楽しみになってきた気がするんだよ。


 そうなると余裕というのも出るもので、久々に美術部に顔を出してみようという気にもなったのだ。相変わらずこの美術部は部員も少ないが、真一達いつものメンバーに加えて今はうしおも帰ってきたため少しだけ賑やかだ。


「おっしゃー、美術部はここかー!」

「ここかー!」

「ち、違いますよノダちゃん、トモカネさん!」

「あたしらが行くのは芸術科のほうだろ!」

「ここは普通科の美術部だ。最近発足したばかりだという」


 ……さっそくどっか別の美術部と間違えたらしき少女達の一団が乱入してきたりもするんだから、ホント賑やかだよね。


「で、また描いて行かないんだ」

「どうもそういう感性が足りてないみたいでね。気が向いたら道具貸してくれ」

「その時は俺が教えてやるよ」

「……いや、うしおはな」

「……うん」

「なんでだよっ!?」


 しかし、俺はあくまで幽霊部員。時々顔を出しては様子を見たりするくらいが関の山だから、今回もうしおのいじられっぷりに大爆笑して槍でぶったたかれているとらの悲鳴を聞き流しながら美術室を出た。




 部活をやっていることからもわかる通り、今は放課後。
 たとえどんなにカオスな学校であろうとも、生徒達が部活や委員会といった課外活動にいそしむ時間帯である。


 ……ちなみに当然夕方だから、逢魔が時とも言えるかもしれないな。


「うわあああああっ、サッカーボールが着弾して部室が燃えたー!?」

「体育倉庫もやられた! こっちはテニスボールだ!」


 ふとグラウンドの方を見てみれば、そこには空から流星のように振ってきた火の玉が直撃して燃え上がる野球部部室と、波動を放ちながらほぼ水平に飛んできたテニスボールに発泡スチロールのごとく吹き飛ばされる体育倉庫という光景が見られた。
 あー、どうやら超次元サッカーを駆使するサッカー部とテニヌ……じゃなかったテニス部の餌食になってしまったようだ。あの二つの部活、かなり強豪だっていう噂だし。
 ちなみにこの学校ではバスケットボール部も割と強かったらしいのだが、部長がロリコン事件を起こして現在休部中とのこと。そんなバスケ部の新入部員の一人がどこぞの小学校で女子バスケットのコーチをしているという噂もまことしやかに囁かれているが、真偽のほどは定かではない。


「ちくしょう……俺たちだって、もうすぐ必殺技の一つや二つ……っ」


 野球部もかなり災難だな。……なんか、やたらと頭の大きい二頭身の体型で、野球の練習してるより女の子と仲良くすることに尽力したほうが上達しそうな体の部員ばっかりだけど。パワフルな野球をしているせいでそうなってしまったのだろう、きっと。




 相変わらず部活も例外なくカオスだというのを改めて目にして、さっきまで心の隅にあった余裕を消し飛ばされた気分だ。死んだ魚のようになりつつある目でそれらを見ながら家路につく。校庭の一角で炎のマークがついたボールでドッジボールをしている一団がいたり、剣道場からブレイバーがどうのと聞こえてくるのなど、もう慣れた。


「おっしゃあいくぜ! まずは青春らしく夕日に向かって走る!」

「ちょっ、待ちなさいよ!」

「あー、そういえば昔住んでたあたりにも青春ポイントを数えてる男の子がいたなぁ」


 転校してきたばかりの弦太朗はさっそく馴染んでいるようで、仮面ライダー部と隣人部をかけ持ちして大暴れしているらしい。弦太朗の宇宙好きの幼馴染、城島ユウキも楽しそうだし結構なことだ。……そういえばあの子、昔住んでいた町には妖怪布団女が出るとか言ってたのを聞いたことがある。やっぱり宇宙人って結構身近なんだねえ。


「すいません、ちょっと危ないから離れてくださいっ!」

「はいは~い」


 そして校門を出るときは注意しないと、学校に続く坂道をとんでもない勢いで上がってくる自転車競技部の小柄なメガネくんに引きつぶされそうになる。坂ならまだましなんだけど、平地で肉弾スプリンターさんがすぐそば通っていくとかなり怖いよホント。
 ……アレでこの学園の中ではマシな方だというのだから、それはそれで別の意味で恐ろしい。




「さて、今日の夕飯はなににするか」


 道中も色々と気をつけて、なんだかんだで養っている奴らが多い俺の日課、夕飯の食材調達にやってきた。
 通っている学校から大きな川にかかっている橋を渡り、河童と星とリクルートっぽい雰囲気のあんちゃんと金髪の金星人がコントを繰り広げているのを少し眺めて歩くのはなかなかに楽しいものだ。


 学園都市はさすがに都市化が進んでいるせいか、大きな商業施設があるので買い物をするのにも楽でいい。普段から食料を買う店の候補は複数あるのだが、今日はせっかくなので最近出来たばかりのジュネスに来てみた。
 この時間帯だと、総菜コーナーでは半額になる弁当を巡って熾烈な戦いが繰り広げられているので、刃牙あたりを連れてきたとき以外は絶対に近づけないのだが。それ以外の場所を見てもやっぱり品揃えはいい。アマ公やらインデックスやらの欠食児童を抱えている俺としては、士郎や凛達から教わったレシピを生かせるこの店の商品の数々は大変助かるところだ。
 ……いやしかし、少し買い込み過ぎたかな。疲れたから、ちょっと屋上のフードコートで休憩していくか。


 ジュネスは田舎のデパートみたいな感じの店だから、敷地は広く屋上にも軽い遊園地的な遊具など色々ある。安っぽいプラスチックの机に座って買い食いするのはたまらないね。


「鳴神、昨日のマヨナカテレビは見たか?」

「ああ」

「昨日映ってたのは誰なのかな」

「雪子も見覚えないのか~、私もわかんなかったんだよね」


「……」


 ここは学園都市なのだから、こういうところには当然同年代でつるんでいる学生達も色々いるわけで、たまにはこういう会話が漏れ聞こえてきたりもするんだよね。敢えて聞き耳を立てる気はないけど。そんなことしようものなら即座にげっそりするから。
 ……そういえばこのまえつぼみ達と連絡を取った時、デザトリアンになった人たちの一部が気合でトラウマに打ち勝って心の花を取り戻し、ついでにペルソナなる力に目覚めたとかなんとか言ってたな。








 いくぞカオス世界。SAN値の貯蔵は十分か。
 ……ごめん、俺はそろそろ尽きそうになってきた。


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 頭が痛くなるネタに関しては尽きることを知らないこの世界での日々。
 こういうところで長く生きていると、なんというか妙な勘のような物が育ってくる。
 例えば、なんとなくだけど道を歩いていてなんか景色に見覚えがあるなと思うとうしおの実家の寺にいたり、転校してきてすぐのころ、部活紹介を眺めつつ校内を練り歩いていたらいつの間にか美術部の幽霊部員になっていたり。




 そういう類のカオスへの接触を知らせる勘が、ここのところ妙にざわざわと俺に囁きかけてくるのだった。
 その予兆はちょうどうしおが長い旅から帰ってきた辺りから感じられている。
 日本中をあちこち回る羽目になった結果、一回り成長してきたように見えるのはいいんだが、それはすなわちヤツの復活が着実に近づいているということに他ならない。あるいは、そんな事情が影響しているのかもしれない。


 最近俺が自発的に色んな人と連絡を取るようになったのも、その勘が騒ぐのに促されてのことだったのかもしれない。日々強くなる違和感はとどまるところを知らずに膨らみ続け……そして今日、ついに不安が現実に形を成した。




「お前、誰だ?」

「――えっ?」


「……ついに、か」


 天を仰いで呟いた俺の小さな声は、誰かに聞こえていたのだろうか。


 学校にやってきたうしおの顔を、まるで初めて会う見ず知らずの他人の顔のように見ている優人の反応を前に、心臓の鼓動が一段階早まるのを感じざるを得なかった。








 人々がうしおのことを忘れ始めた。
 現象のみを見れば冬木にいたころ侑斗の身に降りかかったものとほとんど同じなのだが、その原因に底なしの悪意があるとなれば話は大きく変わってくる。


「なあ、一体どうしたんだよ……っ?」

「まずは落ち着け。幸い、俺だけじゃなくて上条さんもうしおのことは忘れてないみたいだから」

「あぁ、なんとかな。……前に三沢塾の一件があったときの感覚に似てるな」


 冷静になって状況を観察するまでもなくわかる、異常過ぎる事態。さすがのうしおも混乱を隠せないようだ。
 なにせ昨日まで仲良くしていた友達が軒並み自分のことを忘れているのだから無理もない。幸い、例によって何故かこういうときに影響を受けない俺と、時々右手で頭を触ることで記憶を失くす度に取り戻している上条さんは無事だった。記憶を失くす、ということにはひと際強い思いのある上条さんだ。友達であるうしおのことを忘れてしまうなど許せるはずもなく、必死に記憶を繋ぎとめている。


「原因はおそらく一つ。……たしか、そろそろ白面との決着が近いんだろ」

「……っ! じゃあ、これも白面の仕業!?」

「戦いに行くんならみんなの力もいるよな……よし、俺がみんなの頭を触ればっ」


 白面の名にざわりと恐れが走ったのは、わずかに一瞬。
 この主人公体質な頼れる友人たちはそれでもすぐに気合を入れ直し、白面打倒の決意を新たにした。


 だが。


「でも、根本的な解決になりませんよね」


 こんなことを言いだして出鼻をくじく男が一人。
 ……まあ、俺なんだけどね?


 だが実際のところ、そう的外れな意見ではないと自認している。


「根本的な解決って……! それならどうしたらいいんだよ!」

「決まってる。みんなの記憶をなんてまだるっこしいこと言ってないで、白面を倒す。……もうあんまり時間はないんだろ、うしお」

「……っ!」


 確かに上条さんの右手をもってすれば、人の頭の中に巣食った碑妖をそげぶして記憶を取り戻させることも可能だろう。しかしそんなことをしたとしても、碑妖の数はほぼ無数であり、対する上条さんの右手は一本。到底捌き切れるものではない。
 もちろん俺達の仲間なら、事情さえ知れば対抗手段を取ることも不可能ではないかもしれないが今はなにより時間が惜しい。


 白面がこういう行動に出たということは本当に最後の時が近づいているということだろうし、うしおがこれまで出会ってきた妖怪たちまで記憶を消されていた場合、うしおの女友達である麻子と真由子の身柄が狙われかねない。
 もはや一刻の猶予もない。うしおにはあちこち行って貰わなければならないし、俺だってもたもたしている余裕は失われている。


「というわけで、うしお。ひとまずお前は光覇明宗の親父さんのところに行ってみてくれ。俺と上条さんは先に沖縄の方へ行っておくから」

「わんわんっ」

「……もちろん、アマ公も一緒にな」


 それが、俺の結論だ。
 とにかくこの場に残っていてもできることはほとんどない。だからこそ今できることだけは、大急ぎでやって行かないと。


 そんなわけで、俺はうしおの無事を祈るお守り代わりにまだ持ってたアズュールを渡しておいた。これならたぶん、燃えたぎる溶鉱炉へ身を投げる麻子を助けるときにも役に立つだろう。そんな心配ごとの片付けと、それとは別にアマ公に一つ頼み事をして、沖縄へと向かって行った。




 沖縄への旅路事態は、さほどの問題が起きなかった。
 さすがに俺と上条さんというロクに金もない学生二人にアマ公というペットもくっついての旅だったために快適とは言い難かったが、それでも交通機関の発達した日本で、白面復活という大混乱が発生していない分まだマシな旅路だっただろう。


「……一体どういうこと? ワルプルギスの夜の出現位置が……大きく南にズレている?」


 ただまあ、完全になにもないとは言えないわけで。
 道中、最近勢力を増して近づきつつある台風情報を見ながら深刻そうな顔で首を傾げている黒い女子中学生がいたり。沖縄へ向かうさなか何度かあったので名前を聞いてみたら、暁美ほむらちゃんというんだってさー。


「あれ……君達は旅行かな」


 さらには同じく貧乏旅行……というより、何か目的があって南へ向かっているらしい映司に遭遇したり。いくらライドベンダー使えば旅費はただ同然だからといえ、ここって既に学園都市からかなり離れてないか……?


 なんにせよ、本当に色々と佳境に入ってきたらしい。


 どうやら目的地が同じ方向らしいそんな人たちの姿を見るにつけ、おそらく今回もとんでもない決戦になるんだろうなーという嫌で嫌でしょうがない予感がむくらむくらと膨らんでくるのであった。




「……実は俺って海にはあんまりいい思い出ないんだよね」

「……奇遇だな。俺もこの前の夏を思い出すよ」


 ざざーん、と。
 空模様がどんよりと怪しく、波は高い。南の海だからか湿気も強く、海上に浮かぶ浮きドックに並んで立つ俺と上条さんは、手持無沙汰に海を眺めていた。
 ここは既に沖縄の海。電車やら新幹線やら乗り継いでここまでやってきた俺と上条さんは、色々と俺が蓄えたコネやら何やら使ってどうにかこうにか潜り込むことに成功したのだった。……いや、さすがに自衛隊といえどあの大統領の名前だしたら割とすんなり通してくれました。いまだに時々メールのやり取りしてるから、ホント頼りになります。


 とまあ今回の鍵になるだろう場所まで来たのはいいんだが、こんなところに海上ドックが来ていることからもわかる通り、既に自衛隊は白面にだまくらかされてうしおの母親がいる石柱に白面の力が溜めこんであるとみなし、破壊作戦の準備を着々と進めて行っている。ここから見ているだけでもクジラの群れが寄って来たかと錯覚するほどの数の潜水艦が集結し、ちょっと離れたところにある貨物船改造型の浮きドック「サザンクロス」で続々と整備を受けているらしい。
 こんなときでなければある種の絶景と感心していられたのだろうが、今の俺達はひたすらに気が重い。


 何せ白面復活という大事件だ。
 上条さんには道中白面というのがどういうものなのか、ビビって白面に力を与えることにならない程度に教えておいたのだが、そりゃああいつのことを考えればどれだけ事実をかいつまんで教えたとしても暗澹たる気持ちにはなる。
 しかも、そんなとき対白面の切り札となるうしおは仲間達から記憶を消されて孤立無援に近くい。うしおの近くにいながら記憶を失っていない二人のうちの一人である上条さんは、幻想殺しこそ持っているが空を飛んだりはできないから白面戦にどれほど有効な戦力となるかは微妙であり、俺に至ってはそもそも戦うなんてできやしない。あれだけの人生やら戦いやらをなんとかかんとかくぐり抜けて来ても、それだけはどうしても変わらないんだよ、情けないことに。


「わんっ」

「ああ、そうだなアマ公。お前が一番の頼りだよ」


 だから、今の状態で一番頼りになるのはやっぱりアマ公だ。もちろんとらも記憶を失ったりせずうしおについて行ってくれているのだが……さっきから浮きドッグ甲板の隅ですごくうれしそうに殺気を放っているにーちゃんの後姿を見るに、波乱なくうしおと一緒に戦えるとは思えない。


 いやもうホント、マジでシャレにならんて。


「なるほどな。それで、俺達に話を持ってきたってわけか」

「賢明だ。私たちならば、君の望む通りのこともできるだろう」

「それはどうも。うしおが来たら、一芝居よろしくお願いします」


 シャレにならないからこそ、できることはやっておかなきゃなるまいて。
 具体的には、すぐに石柱まで行けるよう足となる潜水艦を確保しておくとか、ね。


 この浮きドックに着くなり、自分の潜水艦の整備が終わってヒマしてるということで俺達の見張り役に付けられたのが、この潜水艦「たつなみ」艦長の深町二等海佐と「やまなみ」艦長の海江田二等海佐だった。
 ……うん、正面に立つのが怖い感じの人たちだったんだけど、だからこそ隠し立てなど無駄なこと。虚勢もなにもなくひたすら真正直にうしおが来たら運んでやってほしいと頼み込んで、結果うしおの到着と同時に適当に一芝居打って石柱へ連れて行ってくれることになったのだった。


 さあ、これまでのことも合わせて、俺のできることはほぼ全部やった。あとはただ、時が来るのを待つだけだ。








――おぎゃああああああっ


「……ま、こーなるよなー」


 そんなもろもろの工作も、しょせんは一時しのぎにすぎなかったのだろうか。結局蓋を開けてみれば、ご覧の通り海を割って現れる大怪獣のごとき白面の威容と、赤ん坊の泣き声を不気味にしたような白面の叫びが天に海にどこまでも広がっていた。




 結論からいえば、ことの顛末は俺の知る物語とたいした違いはなかった。いかに上条さんといえど海の底で岩にめり込んでいる白面を殴りに行く手段はなく、うしおを深町さん達に頼んで送り出したのだが白面の復活は止まらなかった。この世界では色々とでっかい生き物も見たりしたが、これまた格別だなオイ。
 白面が海面をぶち破ってきたせいでかなり揺れるようになった浮きドックの上でそんな状況を眺めながら、完全に現実逃避していた。


「グルルル……っ」

「アマ公、気をつけろ。多分今の奴は……シャレにならん」


 九尾の狐には因縁があるからだろうか、普段温厚なアマ公も珍しく毛を逆立てて低いうなり声をあげている。今のアマ公はほとんどの筆しらべを使えるいろいろと便利な体質であるようだが、相手が相手だけにどうなるかは俺もさっぱり想像がつかない。




 それになにより。


 大抵この手の決戦というのは、単純な様相にはならないものなのだ。




「アレは……っ!? ワルプルギスの夜も近付いているっていうのに、一体何なのよ!」

「……俺としてはなんで君がここにいるかが聞きたいんだけどね?」


 例えば、沖縄へ向かう道中ちょくちょく見かけたほむらちゃんがいたりとか。
 何かを追いかけてここまで来たうえどうやってか浮きドックに忍び込んだらしく、今はぐだぐだになりつつある俺の胸倉引っ掴んで必死の形相を浮かべている。
 ……うんまあ、この子の境遇考えればそれもうなずけるけどね。


「なるほど、あれが白面の者。……あの存在ならば、必ずや世界に終わりをもたらしてくれるでしょう」

「……そーですね」


「おいドクター、この縄をほどけ!」


 しかも、その隣には頑として人形にしか話しかけないおっさんもいるし。さらに加えて、そのおっさんはなんかクワガタだかカマキリだかバッタだかわからない謎の怪人を簀巻きにして抱えている。
 うん、何をしようとしているのかまるわかりなのがいやだね。しかもさっき携帯電話でちらりと気象情報を確認してみたら、すさまじい台風が絶賛近付いてるらしいし。多分あの中にいるのがワルプルギスの夜とやらなのだろう。


 ……どうやら、本当に色々な最終決戦が一斉に迫ってきているようだ。




「あああああああっ!!」

「いけません、うしお! 憎しみの心で戦っては!」


「ワルプルギスの夜……っ! こんなところであってもまどかなら、そしてインキュベーターなら現れるかもしれない! だから、倒すわ!」


「真木博士ッ!」

「おや、日野映司くん。……少し、遅かったようですね」

「やめろドクター! 俺は暴走する気はない!!」




 目の前で繰り広げられている光景を、俺は何と表現したらいいのだろう。
 片や大怪獣・白面の者に、怒りもあらわに立ち向かっていくうしお。
 片や台風の中から姿を現した逆さま魔女に対し、浮きドックやその他近場の自衛隊基地やなんかからちょろまかしてきたらしい現代兵器を駆使して爆撃しまくるほむらちゃん。
 そして最後に、簀巻きのままメダルを大量投入されて◆になってしまったウヴァさんと、変身して真木博士に戦いを挑む映司とアンクである。


 もう言葉も湧かねーよ。




 戦況は悪いというよりない。
 うしおは合流こそ果たしたものの、浮きドックでの戦いで秋葉流を殺さざるを得なかったとらと決別し、暁美ほむらはワルプルギスの夜が予想外の動きをしていたせいか武器が揃っておらず、映司達のほうはプトティラコンボの力で海面を一部凍らせ、放っておけば水中を泳いででも陸へ向かいそうな屑ヤミー達を片付けるのに精いっぱいで空に浮かぶ真木博士と暴走ウヴァさんをどうにかする余裕が無い。
 そして、等しくどの陣営の戦いも押されている。何せ、相手はいずれ劣らぬ世界を滅ぼしかねないラスボスレベル。それに対してこちらは、白面の相手をできるのはうしおしかおらず、ほむらちゃんは因縁の相手たるワルプルギスの夜以外を気にする余裕が無く、映司とアンクは立った二人で無数の屑ヤミーを抑えるのが限度。


「わんわんわんっ!」

「くそっ、俺があそこまで行けば、一発で倒せるかもしれないのに!」


 もちろん、この場に居合わせるアマ公と上条さんも一緒に戦っている。アマ公は水捌けの石簡でも使っているのか平然と海上を突っ走って白面を斬りつけワルプルギスの夜を風で流し屑ヤミーをまとめて燃やすなどなど大活躍をしているし、上条さんも右手一本で屑ヤミーたちを触れる端から消し飛ばしている。
 それぞれの力はとても強く、決して敵に劣ってなどいない。
 しかし。




――人間……ではないな、貴様。だが、我に似ている

「あなたと似ているかは知りません。しかし、貴方も私と同じようにこの世界に終わりをもたらしてくれるのでしょう」

――アハハハハハハハハ


 連携など取りようもないこちら陣営に対して、敵側はなんか仲よさそうだ。コミュニケーションとりようもないワルプルさんは別として。


 ……イヤこれはかなりヤバいね。ワルプルギスの夜が近くにいる影響で空を飛ぶのは難しいし、白面は普通に強いし屑ヤミーは大量発生中で、近くの島は白面の吐く炎かなんかで燃やされる端から暴走ウヴァさんの力が働いてセルメダルになっていく。
 紛れもなく、世界の終わりが近い状況だ。


 そんな事態になってなお、一緒に戦ってくれる者達は少ない。
 自衛隊も、なんか小さい頃に会ったことある気がする天狗のじーちゃんと耳の長いおっさん妖怪に率いられた東西妖怪連合も、白面復活の時に大打撃を受けてしまった以上戦線復帰にはまだ時間がかかる。
 うしおのことを忘れられてしまったことが結束を砕き、とてもとてもマズイ状況になりつつあった。


 だからこそ。




――獣の槍の使い手よ、我が憎いか。実にぶざ……ぶべッ!?


 突如飛んできた火の玉に横っ面を張り倒される白面の顔を見て、とても清々しい気分になる。
 ……まったく、仕込んでおいてよかったよ。




「あれは……っ、響鬼さん!?」

「すまない、待たせたな少年っ!」


 プトティラコンボやら白面の妖気やらが放つ冷気で凍った海面に続々と集結する、学園都市で出会った響鬼さんやイタチさん、緋鞠達の姿を見て、心の底からそう思う。


『よぉ兄ちゃん。言われた通り、あいつらの頭ン中の妖怪をまとめてたたっ斬ってきてやったぜぇ。渡されたきるりあん振動機とやらも置いてきたからもうあいつらの記憶が食われることはねぇ。安心しなぁ』

「ああ、ありがとうイッスン。タイミングもばっちりですごく助かった」


 そんな俺の肩に飛び乗って、ぴょんぴょこ跳ねている玉虫色の光の塊。
 耳元に来てくれたからようやくほにゃほにゃと喋っているのが聞こえる彼こそが、アマ公の相棒たる旅絵師イッスンだ。前に見せてもらったアマ公の絵はすっごい上手でした。




 俺がイッスンに頼んだのはほかでもない、せめて学園都市の仲間達だけでも頭の中に巣食って記憶を封じている碑妖を退治してもらうこと。さりげなくアマ公並に強い上に虫サイズのこいつならやってくれるということで、ちょっと手伝って貰った次第だ。イッスンなら体のサイズを変えられる打ち出の小づちも持ってるし。
 しかもこの話をする直前、ちょうど安藤さんに頼んでおいたものが届いていた。それこそが、キルリアン振動機。いつぞやうしおにちょっかいかけた博士たちのキルリアン振動機に関する研究を手伝ってあげて下さいと頼んだら、やたら性能上げたてくれるだけにとどまらず、ちょっとした暇つぶしがてらナノマシンサイズのものまで作ってきてくれたので、イッスンには碑妖を斬り捨てたあとにそれを置いてきてもらった。これでもう碑妖の心配はいるまいよ。


――面白くなし……っ、面白くなし!


「あなた達は……?」

「話はあとっ。今は手伝わせて!」


「響鬼さん! 来てくれたんですか!」

「ああ、海の時以来だったかな。……まあいいや、ライダーは助け合いでしょ」

「それ俺のセリフ!?」


 そして盛り返しつつある戦況をあれだけ高くから見渡していれば、白面の悔しそうな言葉も当然のこと。いまだ白面と相対して怒り狂う槍に引っ張られ偽身なうしおの憎しみこそ尽きないが、それでも戦況は五分かそれ以上になりつつある。
 ワルプルギスの夜が出す使い魔的なザコだとか屑ヤミーなんかはそれはもう触れる端からという勢いで薙ぎ払われていき、刃牙も氷の上に裸足で立ってるのに平然として屑ヤミーやらワルプルギスの使い魔やらを薙ぎ払っている。すげえな、あっちこっちで無双乱舞状態だ。


 ……が、一つだけ気にかかるのは。


――……などと


 いまだ、誰ひとりとして敵の本体に辿り着いていないこと、だろうか。




――言うと思ったかぁっ!!

「う、うおおおおっ!?」


「……アレはっ!?」


 不安は的中する。
 それも、限りなく最悪に近い形で。


 一見押されているかに見えた白面が、牙だらけの禍々しい口を裂けんばかりに広げて叫び、繰り出したのは数多ある尻尾のうちの一本であり……先端にはさみのような何かをつけた、触手にも似た十本目の尻尾であった。


「十本目……!? しかもあの触手……まさか、十年前の!?」


 それを知っているのは、おそらくこの場で俺一人。
 だが忘れるものか。デンライナーで訪れた十年前の第四次聖杯戦争。あの冬木大橋で見た邪神ガタノゾーアの触手と全く同じものが、白面の尾の一つとなっていた。


「おいおい……、どういうことだよ!?」

――ほう、貴様はこれを知っているか。……いまより10年前、受肉もままならずどこぞへ逃げようと我の近くまでやってきたのだが……


 俺がその正体を知っていると気付いたか、白面がこちらをギロリと睨む。
 そして語りかけてくるその声は一体に響き渡るのだが、その内容。……まさか。


 考えたくない予想にわずかに顔を青ざめる俺の様子を見てさも嬉しそうに、白面は言う。


 さっきの不意打ちの時より以上に口を裂けさせ、にたりと笑い。








――美味かったぞ








 ゾクリとするほど嬉しそうに、そう言った。
 ぞろりと口をなぞる舌の動きは限りなく不気味で、愉悦の形に歪んだ目からはひたすらに悪意のみを放出していた。


「ひょっとして……沖縄の海底遺跡ッ!?」


 そういえば、沖縄の与那国島近くには海底遺跡っぽい謎の地形があったはず。しかも幸か不幸か10年前に召喚された神戸と沖縄トラフ、海底遺跡はほぼ一直線上に並んでいる。アレか、単なる自然の神秘が生み出した妙な造型だという噂も会ったけど、ガタノゾーアが向かったということはクトゥルーなアレだったのか。そういやルルイエも沈んだ古代都市だもんなあ!
 あのときほうほうの体で逃げたガタノゾーアはルルイエよりも近い海底遺跡に向かって、その道中白面に食われたって? ……どういうオチだ畜生!


 そこからの展開は、ひどいものだった。


 白面により振るわれる九本の尾と、一本の触腕。尾は一つ一つが別の妖怪へと姿を変えて力をふるい、こちらはひっかきまわされて連携も取れず、ワルプルギスの夜はますます高笑いを上げ、映司の大量メダルガブリュー切りをくらっても暴走ウヴァさんに回復してもらった真木博士も健在で、状況は悪化の一途をたどっている。




 そして。


「白面んんんんんんんんんんんんっ!!」




 ここに一人、どんな状況になろうとも関係ないとばかりの怒りにまかせて槍を振るうバカがいる。


 長々と伸びた髪を振り乱し、その隙間から獣のごとく血走った目を光らせて、どれほどの障害があろうとも白面へと挑みかかるうしお。
 その後ろ姿からは怒りしか感じられず、叫ぶ声は嘆きのよう。白面に母との時間を奪われ、戦う宿命を強いられた者としては至極当然のもので……それこそが、白面の思うつぼなのに。




「くらえええええええっ!」

――!




 そんなうしおの突き出した槍が、ついに白面を捕える。
 ボロボロになりながらもなお逸らさなかった切っ先が深々と白面の額に突き刺さり。




――しょうことも、なし


「なっ……!?」



 どうしたって力及ばず、またしてもニタリと笑った白面に弾かれ、獣の槍が――砕け散った。


「アレは……っ!?」

「そんな……うそ……っ」


 その光景は、こちらの士気を砕くに十分すぎる光景だったろう。
 獣の槍の力をよく知る緋鞠やイタチさんなど妖怪陣営は言うに及ばず、これまでワルプルギスや暴走ウヴァさんの力を借りた真木博士と同等以上の力を示していた白面に対する唯一の対抗力であった槍が砕かれたのだから、仕方のないことだ。


――これでもはや、ここに用はない。……さあ、手始めにこの国を滅ぼすか

「くそ……っ、くそぉっ……!」




 そして白面にしてみれば、この状況はもはや自分が関わる価値もあるまい。
 獣の槍さえ破壊してしまえば、あとはワルプルギスの夜も真木博士もいる。むしろ真木博士なんかはこれこそ世界の終わりと歓迎し、この場で俺達の相手を引き受ける始末。
 その包囲網を抜けられたのはとらとアマ公だけで、おそらく二匹は白面を追っていった。


 白面が沖縄トラフから抜け出したことで、大地震が頻発して沈みゆく、恐怖に支配された日本を縦断して。
 あの二匹がいて、そのまま北海道まで行きついたとしても白面までは届くかどうか。確証は心の中のどこを探しても見つからなかった。




 膨れ上がる恐怖は際限なしに白面の力となり、荒れ狂う嵐の轟風に高笑いを響かせるワルプルギスの夜は衰えを見せず、なんか浮きドックには白くて可愛いようで憎たらしい小動物に率いられてほむらちゃんが来ていたのと同じ制服を着た少女が現れ、映司は渾身の一撃をしのがれてあとが無い。




「……ある意味前の時よりひどいな」


 絶望に打ちひしがれる仲間達を、海面に立つなんてことすらできない俺は波に踊らされる浮きドックにしがみついて遠目に見ていることしかできはしない。
 いつか感じた無力感と同じ虚しさを抱えながら、空を見上げる。
 不安になるほどの速さで雲が流れるのを目に映し、白面を追って行ったアマ公ととらの無事を祈る。


 どうやら、逆転の時はまだまだ遠いようだった。


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 別に意図したわけではないですが、前回といい今回といい凍った海上での決戦になりそうです。世界レベルでの被害で言えば、確実に今回の奴らのほうが上でしょうが。

 というわけで本作もクライマックスに近づいてまいりました、葉川です。
 よもや二部に相当する話しまでかけるほどのネタストックがあるとは自分でも思っておりませんでしたが、皆様の温かいお言葉とツッコミがここまでやらせてくれました。ありがとうございます。
 ネタ解説も含めた最終回は、ちょっとオーズ回りのネタを確認してからにしたいので映画見た後になるかもしれません。間にISのほうの番外編もう一個はさめばちょうどいいくらいですかね。

 それではこの世界とあのオリ主の行きつく終点を、どうぞお楽しみに。


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