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フォーリン・アフェアーズ日本語版 公開論文

CFRブリーフィング
穀物価格の上昇は今後も続く
――何が価格を上昇させているのか
Stormy Forecast for Food Prices

フォーリン・アフェアーズ リポート 2011年5月


小見出し
新食糧危機の時代
何が食糧価格を高騰させているのか

新食糧危機の時代

 世界各地での天候不順が穀物生産にダメージを与えていることもあって、すでに高値で推移している穀物価格のレベルがさらに押し上げられている。最近の国連食糧農業機関の報告によれば、2010年4月以降、穀物価格は70%以上も上昇している。

 世界の主要な穀物生産国であるアメリカ、中国、ヨーロッパでの穀物生産が、天候不順によって大きな悪影響を受けている。 

 アメリカでもさまざまな悪影響が出ている。干ばつのため、冬季に収穫予定の小麦を早期に収穫せざるをえなくなり、一方、耕作地にダメージを与えたミシシッピ川流域の洪水によって、トウモロコシの作付け時期が先送りされてしまっている。例年、5月15日までに87%は進んでいるはずのトウモロコシの作付けが、今年は63%しか終わっていない。

 アメリカの穀物アナリストのなかには、「今後8週間から10週間の間に適切な雨と太陽に恵まれなければ、主要穀物価格は史上最高値へと上昇するおそれがある」と言う者さえいる。中国やヨーロッパでの穀物生産も、干ばつや天候不順によってスムーズには進んでいない。世界銀行によれば、2010年6月以降、穀物価格の高騰によって世界で4400万の人々が、すでに貧困ライン以下の生活へと押し戻されている。

 「フォーリン・ポリシー」誌で「2011年には世界は新たな食糧経済学の時代に突入した」と宣言したアース・インスティチュートのレスター・ブラウンは、「価格上昇の衝撃が世界の地域ごとに違っており、今回の価格上昇で、グローバル経済というはしごの一番下にかろうじてつかまっていた人々が、完全に振り落とされてしまう危険がある」と警告している。

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何が食糧価格を高騰させているのか

 2008年の食糧危機の際には、世界30カ国で騒乱が起き、中東とアフリカの一部の諸国は政治的に不安定な状態に陥った。専門家の多くは「カロリーでみると、世界の全ての人々の健康を支えられる十分な規模の食糧が生産されている」と言うが、現実には10億の人々が、食事から最低限の栄養さえ摂取できずにいる。

 エコノミスト誌は「各国は食糧問題を考える場合には、それを構造的問題(需給関係)、一時的な問題(天候不順)、重要でない問題(穀物投機)に区別しなければならない」と指摘する。エコノミスト誌は投機を「重要ではない問題」として片づけているが、投機で価格高騰の多くを説明できると考える専門家も多い。

 実際、ガーディアン紙は次のように現状と今後を描写している。

 「この10年という短期的スパンでみると、主要穀物の価格は必要以上に、つまり、需給関係では説明できないほどに高騰しており、その結果、世界の貧困層はますます深刻な事態に直面している。・・・長期的には、生産から流通までの非効率ゆえに、増大する世界人口に十分な食糧を提供できなくなる」

 トウモロコシを原料にしたエタノール燃料の生産が食糧としての穀物流通を抑え込み、これが価格高騰を刺激しているとみる専門家もいる。特にアメリカの場合、国内で生産されるトウモロコシの40%がエタノール生産に用いられており、必然的に、食糧としての消費が抑え込まれている。

 一方、国連食糧農業機関のシニアエコノミスト、リリアナ・バルビは、「食糧価格の高騰は、食糧の生産と生産性を向上させる政策への資金投資が慢性的に不足していることによって引き起こされている」と状況を分析している。

 2011年の国連リポートによれば、貧困諸国では冷蔵施設が存在せず、穀物を運ぶ道路が整備されていないなど、食糧流通を支えるインフラに不備があるために、人々の手に食糧が届けられる前に腐敗し、廃棄処分にされるという問題も抱えている。

 天候不順、投機、エタノール、貧困国のインフラ、農業生産性の停滞、事実上の補助金として機能していることも多い農業関税など、さまざまな要因が価格高騰を説明する要因として指摘されているが、どうすれば状況を改善させられるか、専門家の間にもコンセンサスはない。一方、比較的明らかなのは、今後、穀物価格が史上最高レベルへと上昇していくと考えられることだ。●

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By Toni Johnson, Senior Staff Writer

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