トップに戻る

特集大学

獨協大学

エコキャンパスの先進的な取り組み

画像
屋上庭園は、憩いと環境についての
「気付き」を与えてくれる

 外国語教育で知られる獨協大学に、近年、環境の獨協ともいうべき新たな顔が加わっている。全学を挙げて環境問題に取り組む獨協大学がめざす未来について、この分野の権威である2人の教授に聞いた。
 「本学では、教育内容と施設の充実という二つの側面から、『省CO2エコキャンパス・プロジェクト』に取り組んでいます。生活や産業を低炭素・省エネ型に切り替えていくことは社会全体の責務ですが、獨協大学ではそうした施策を先導的に進め、成果を地域や全国の大学に発信していきたいと考えています」
 そう語るのは経済学部長の犬井正教授。理学博士であり、飯能名栗エコツーリズム推進協議会会長として、自然や生活文化を生かしたエコツアー企画や地域の活性化に長年取り組んできたこの道のエキスパートだ。
 獨協大学卒業生でノンフィクション作家の山根一眞氏は、低炭素社会をめざす新産業の創造を「環業革命」と名付けるなど、環境問題への提言・著作が多い。現在は獨協大学経済学部特任教授を務める山根氏は、母校の環境への取り組みをこう評価する。
 「僕がすごいと思うのは、これだけの総合的なプロジェクトを、学内で全てプランニングしていることです。普通は外部の専門家に任せるものですが、獨協大学は犬井先生を中心に自分たちで責任を持ち立案・実行している。試行錯誤や失敗も含め、そこで得た知見を社会と共有することで、地元の草加市、ひいては日本を変えていこうとしている。そんな勇気のある取り組みだと僕は見ています」
 「そうですね。本学は理工系の大学ではないので、新しい技術や機械を生み出せるわけではありませんが、環境問題には社会科学や人文科学的問題としての側面もありますから、本学のような文科系の大学だからこそ貢献できることも多いはずです」(犬井教授)


環境意識の高い人材を育てる

画像
犬井正
経済学部長・環境共生研究所長

画像
山根一眞 経済学部特任教授

 獨協大学の省CO2エコキャンパス・プロジェクトは、平成21年度の国交省「住宅・建築物省CO2推進モデル事業」に採択された。
 「昨年完成した新校舎『東棟』は、自然採光・自然換気・断熱などにさまざまなアイデアを凝らし、自然の恵みを生かした快適な学習環境を実現しています。また、日照時間の長い立地の特性を生かした太陽光発電、地中熱や井水の熱を利用した冷暖房、キャンパス内マイクログリッド(小規模な発電・電力供給管理システム)の構築などにより、学内で使用するエネルギーの約10%を自給しています」(犬井教授)
 「災害時にまずなくなるものはエネルギーと水と情報ですから、省エネや低炭素化はイコール防災でもあることを、はからずも今回の大震災が証明しました。こうした取り組みは、これから全国の大学に広がっていくんじゃないでしょうか」(山根特任教授)
 「そうであって欲しいですね。日本はこれまで、コストや効率といった部分合理性だけを追い求めてきましたが、そうした価値観がいずれ行き詰まることを、僕たちはもう知ってしまったのですから」(犬井教授)
 「いってみれば獨協大学は、キャンパスを小さな社会に見立てて先進的な社会モデルの実証試験をしているのだと思います。本学で語学や法学、経済学の知識を身につけ、同時に環境を見る目を養った人たちが企業や地域で活躍することは、日本に環境意識を根付かせる種をまくことに他なりません」(山根特任教授)


環境と経済を学ぶ 新学科の設立を計画

画像
間伐材を利用した「キャレルブース」は
学生にも好評

 さらに特徴的なことは、文科系の大学としては異例ともいえる環境問題専門の研究施設「環境共生研究所」を立ち上げたこと。犬井教授はその所長でもある。
 「大切なことは、省エネ技術やエコプロダクトを生み出すだけでなく、それをどう使うか、使って何をするかを考えることです。本学ではハード面の整備に加え、ソフト面でも全学共通科目『環境学』の開講や、電力使用状況を学内でモニタリングできる『見える化・見せる化』を進めています。さまざまな角度から、学生たちが環境について考えるきっかけを提供したいからです」(犬井教授)
 「僕は環境技術の取材でドイツなどを何度も訪れていますが、そこで求められるものはもちろん語学力です。また、環境の問題は世界経済とも密接に結びついていますから、環境技術に軸足を置いた社会がどんなモノと価値を生み出していくのか、それを考えることは、理工学ではなく経済学のテーマです。企業活動においても環境への取り組みがますます重要になる今後は、CSRの一環として生物多様性への対応を考える、企業の環境行動プランを立案するといった仕事に就く可能性は、どんな分野で働く人にもあります」(山根特任教授)
 創立50周年を間近に控えた再整備が進む獨協大学のキャンパスを歩くと、解体した校舎の石材を利用したベンチや、埼玉県の間伐材を用いた屋内家具などが、いたるところで見られる。日々の学生生活のなかで地域の自然と心地よくつきあうことが、持続可能な社会の創造につながる。「環境の獨協」から学生たちに向けた、そんなメッセージが感じられるようだ。今後は伝統の語学と環境マインドを生かしながら、世界で活躍する経済人を育てるため、2013年から新たな学科をスタートすることも計画されている。


TOPICS 1

環境技術の粋を生かした新校舎「東棟」誕生

画像
さまざまな省エネ・創エネ設備を集めた
新校舎「東棟」

 獨協大学50周年に向けて進むキャンパス再編のなかで、第二次計画の中心的プロジェクトが東棟の新設だ。自然の光や風を取り入れる空間設計、緑陰効果や地中熱を利用した省エネルギー設備などが特徴的な新校舎は、「省CO2エコキャンパス・プロジェクト」の中核施設であり、埼玉県環境建築住宅賞(一般建築部門)の優秀賞も受賞している。
 屋内は木の素材感とガラス張りの開放的な明るさを生かしながら、共用スペースには無線LANも整備。PCを持ち込み自習に励んだり、友人との会話を楽しんだり、思い思いの時間を過ごす学生たちの姿が見られる。16のPC教室から、同時通訳演習室などの特殊教室まで、用途に合わせて利用できる教室は計65あり、さまざまな学習のかたちをサポートしている。

TOPICS 2

光あふれる屋上庭園で 里山の自然と農業を体験

画像
採光のための太陽光追尾システムも設置

 東棟の屋上、廊下と教室に囲まれた庭園部分には、草花や木々が葉を伸ばす里山空間のモデルと、野菜づくり・米づくりなどを体験できる農園がある。
 「学生たちが自分で育てた作物を食べることを通して、食料自給率の問題や、輸入食料とフードマイレージの問題などについて考えることができます。現在は、小・中・高校で自然の中で学ぶ機会が少なく、虫にもほとんどさわったことがないといった若い人が増えていますが、実際に体験したことがある、本物にふれたことがあるというのは、問題への理解と考察を深めるうえで非常に重要です」(犬井教授)

TOPICS 3

学生センターの新設と伝右川の水辺再生計画

画像
伝右川に面した学生センター(完成予想図)

 獨協大学環境共生研究所が立案した「伝右川の水辺再生計画」は、平成22年度埼玉県水辺再生100プラン推進事業に採択され、来春の完成に向けて親水護岸整備が進んでいる。川の水そのものも学内で浄化し川に戻すのだが、くみ上げに使う電力は、川に戻す際の水の落下を利用して発電するなど、自然の循環を生み出すよう計画されている。
 また、並行して進められているのが、来年秋に完成予定の学生センター(仮称)の建設だ。東門から続くプロムナード沿いの1棟跡地に誕生する6階建てのビルは、学友会活動の拠点と、全ての学生が利用できる開放的施設という機能を併せ持ち、教育による人間形成をめざす獨協大学の新たなシンボルとなることが期待されている。


獨協大学のホームページはこちら


このページのトップへ