複雑で硬直的な国の制度や予算編成の過程を納税者が理解する一助にはなった。行政刷新会議が開いた提言型政策仕分けの成果だ。
これまでの失政による意図せざる年金の「もらいすぎ」など、ふだん目につきにくい構造問題を与党議員と学識者で構成する仕分け人があぶり出し、担当閣僚に改革や是正を提言した。ただし提言の実効性が定かでない。実現させる責任を負ったのは、刷新会議の議長である野田佳彦首相だ。
仕分けは民主党政権がつくった刷新会議の目玉だ。過去2年間の事業仕分けや規制仕分けは、政府の事業や予算の使い方の無駄を明るみに出すのに役立った。
半面、埼玉県朝霞市の国家公務員住宅の凍結・着工・再凍結というドタバタ劇は、仕分け結果を軽くみる政府内の空気を浮き彫りにした。またインターネット中継による衆人環視のなかで、一部の仕分け人が受けをねらったパフォーマンスに走る弊害があった。
提言型仕分けはその反省をふまえて野田首相が発案した。ネット中継を保ち、各省の審議会が抱える政策課題をわかりやすく示す。また「原子力ムラ」「年金ムラ」とやゆされるような、既得権益者が主導する政策決定の仕組みにくさびを打つねらいがあった。
主な論点は次のようなものだ。
社会保障分野では(1)年金は物価連動の原則を曲げ、デフレのもとで給付額を十分に下げてこなかった(2)生活保護の医療扶助は患者の窓口負担がなく、過剰な投薬があるのではないか――など。
原子力分野は安全対策に回す予算の乏しさ、情報通信分野は電波利用料の効率的な使い方。教育分野は大学の国際競争力が下がった理由、外交分野は在外公館の果たす役割と予算との関係などを俎上(そじょう)に載せた。
4日間に10分野の仕分けをこなす日程は窮屈で、消化不良の議論もあった。だが、たとえば生活保護など厚生労働省の審議会では正面切って提起しにくい構造問題をあぶり出したのは、評価できる。
数々の提言を言いっぱなしにせず、制度改革につなげ、予算編成に反映させる確約がほしい。
首相は仕分け会場で、国民が議論を見たことが提言に拘束力を持たせるという趣旨の発言をした。世論の高まりは改革を後押しはする。しかし改革に後ろ向きな民主党内の一部勢力や担当官庁を押し切るのは、首相自らの仕事である。
野田佳彦、提言仕分け
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