公務中の米軍軍属 日本で刑事裁判
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公務中の米軍軍属 日本で刑事裁判

11月24日 19時10分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

日米両政府は、在日アメリカ軍の軍属が公務中に起こした事件・事故で、被害者が死亡した事案などについては、アメリカ側が裁判を行わない場合、日本で裁判を行うことができるよう、日米地位協定の運用を見直すことで合意しました。これに関連して、玄葉外務大臣は、ことし1月、24歳のアメリカ軍の軍属の男性が、沖縄市で交通事故を起こして会社員を死亡させたものの、公務中だったことを理由に日米地位協定に基づき不起訴になった事案について、日米両政府が「この新たな枠組みによって処理することが適切だ」という考えで一致し、日本側が裁判権を行使したいと要請し、アメリカ側から同意する旨の回答があったことを明らかにしました。

在日アメリカ軍の軍属・軍が雇用している兵士以外の人たちが起こした事件・事故で、軍が「公務中」と認めた事案については、日米地位協定に基づき、アメリカ側に優先的に裁判権を認めていますが、2006年以降は、裁判が行われないまま、軍の懲戒処分のみが決まる状況が続いています。玄葉外務大臣は、24日、記者団に対し、こうした状況を改善するため、23日に開かれた日米合同委員会で、地位協定の運用上の新たな枠組みを設けることで合意したことを明らかにしました。具体的には、軍属が公務中に起こした事件・事故のうち、被害者が死亡、または重傷を負った事案で、アメリカ側が裁判を行わない場合には、日本側が要請すれば、裁判を行うことができるよう、地位協定の運用を見直すとしています。アメリカ軍の軍属とは、基地の中で働く、スーパーの従業員や学校の教師など、軍に雇用されている、軍人以外のアメリカ人のことです。日本国内にはおよそ5000人の軍属がいて、県によりますと沖縄県にはおととし9月時点で、およそ1400人が住んでいるということです。法務省によりますと、軍属が犯罪を犯しても公務中を理由に不起訴となったケースは、日本人が被害に遭ったものだけで、去年までの5年間に62件に上ります。しかし、このうち日本で不起訴になった軍属をアメリカ側が軍事裁判にかけたケースは1件もありません。これはアメリカの連邦最高裁判所が「平時に軍属を軍事裁判にかけるのは憲法違反だ」とする判決を出しているためとみられています。また、懲戒などの処分を受けなかったケースも27件と、およそ40%に上っています。

一方、沖縄市で交通事故を起こして会社員の男性を死亡させたものの、公務中だったことを理由に日米地位協定に基づいていったん不起訴になった24歳のアメリカ軍の男の軍属について、那覇地方検察庁は、裁判権について見直すとした日米両政府の合意を受けて、この軍属を一転、起訴する方向で最終協議を進めることを明らかにしました。この事故はことし1月、沖縄市の国道で、アメリカ軍基地内のスーパーに勤めるアメリカ人の24歳の男の軍属が、車を運転中に軽乗用車に衝突し、軽乗用車を運転していた当時19歳の会社員が死亡したものです。那覇地方検察庁は、自動車運転過失致死の疑いで書類送検されたこの軍属について「自宅に戻る途中の公務上の事故で、日米地位協定上、日本側には最初に裁く権利がない」と不起訴にしました。アメリカ軍は、この軍属を5年間の運転禁止処分にしましたが、遺族の申し立てを受けた検察審査会は、ことし5月、公務中であることを裏付ける捜査が不十分なうえ、公務中であったとしても処分は軽く、日本が裁判権を行使すべきだなどとして「起訴すべき」と議決したため、那覇地検が再捜査していました。その結果、那覇地検は「公務中だが死亡事故という重大なケースであり、日本が裁判権を行使する必要がある」と判断し、アメリカ軍の軍属の裁判権について見直すとした日米両政府の合意を受けて、この軍属を一転、起訴する方向で高等検察庁や最高検察庁と最終協議を進めることを明らかにしました。事故で亡くなった会社員の母親の神谷真奈美さんは「母として、起訴されるのは当然のことと受け止めています。皆さんに支えられてやっとここまで来ることができたという思いです。裁判所は、人ひとりの命が奪われた事故についてきちんと裁いてほしい」と代理人を通じてコメントしました。沖縄県の与世田副知事は、NHKの取材に対して「日本で不起訴になった軍属をアメリカ側が軍事裁判にかけたケースがこれまでになかったことを考えれば、事件の事実を明らかにする意味からも、日本側で裁判が行えるようになることが望ましい」として、県としても今回の方針を評価する考えを示しました。玄葉外務大臣は、「沖縄を訪問した際、県知事から、事件事故、基地周辺の環境や騒音について非常に不満があると聞いていた。刑事分野という日米地位協定の根幹に関わり、難易度の高い交渉だったが、新しい枠組みができたのは一定の前進ではないか」と述べました。そのうえで、玄葉大臣は、普天間基地の移設問題について「沖縄に基地問題への理解を求めると同時に、負担軽減について、できることを精いっぱいやって実現していかないと、信頼してもらえないと感じた。一つ一つ努力して、県民の皆さんや、知事はじめ関係者の信頼を得ていきたい」と述べました。