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診察室のワルツ:/13 相談窓口、上手に利用=岡本左和子

 「胃カメラ検査の後、のどがおかしい。どこか傷つけたのではないか」「足が痛くて困っているのに、異常がないの一点ばりで説明が簡単すぎる」など、医療にまつわる苦情は年々増えているようです。医師不足などの課題を克服しながら、大変な思いで頑張っている医療者の皆さんには申し訳ないのですが、具合が悪くてつらいのに、期待する対応がなければ、患者は腹も立つし、文句の一つも言いたくなるのだと思います。それをまた医療者から「クレーマー」と呼ばれたり、「面倒くさい患者」と思われては、憤まんやるかたないといったところでしょう。

 患者の持つ不安は、病気のことだけでなく、仕事や家庭など生活への影響を含めたものですから、治療の話だけではなく、複雑な気持ちや状況をくみ取った対応が必要です。その複雑でデリケートな気持ちを患者がうまく表現できない、医療側にその環境が整っていないと、患者にフラストレーションがたまり、医療者への暴言や粗暴な態度の引き金になります。

 病院には相談窓口が設置されています。特定機能病院には必ず窓口があり、他の病院も日本医療機能評価機構による評価対象になるため窓口や担当者を置いているところは多いと思います。困ったことや不満は、このような窓口を上手に利用して病院や医療者に伝え、患者自身は不満をためないようにすることも大切です。思いを伝えることは患者の権利ですし、治療のため気持ち良く病院にかかるには必要な努力といえます。

 苦情は宝の山です。苦情には、医療や病院の仕組みを向上するためのエッセンスがたくさん含まれます。一方、人の不満を聞くことは簡単ではありません。私は相談窓口で働く病院スタッフのコミュニケーション・トレーニングをしていますが、患者を支えるために一生懸命働いている皆さんでも、語気の強い患者の言葉に心がなえるという訴えを聞きます。患者は敬意を示しながら不満や苦情を伝え、改善に結びつける態度が必要です。医療者は「クレーマーだ」と及び腰になる前に、「何かうまく表現できないことがあるのではないか」と考えながら患者の話を聞くことを心がけてください。(おかもと・さわこ=医療コミュニケーション研究者)

毎日新聞 2011年11月23日 東京朝刊

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