最終盤の優勝争いが白熱するJリーグだが、海の向こうの欧州サッカーでは、ある舌禍事件が試合そっちのけで話題をさらった▲「(サッカーの試合に)人種差別などはない。不適切な言動があっても試合後に握手すればいい」。ブラッター国際サッカー連盟(FIFA)会長の発言だ。これにイングランド代表のファーディナンド選手が「サッカーが人種差別根絶の先頭に立っていると思ってきた僕は愚かだった」とツイッターで強く反発するなど騒ぎが拡大、英国の閣僚からも批判が出るに及んでブラッター氏は先週末、謝罪に追い込まれた▲世界一の人気スポーツであるサッカーはナショナリズムをあおりやすく、欧州サッカーの試合では有色人種の選手への差別的な言動があとを絶たない。東洋人選手もしばしばあざけりの対象になる。ブラッター氏に悪気はなかったろうが、人種差別主義者を甘やかす問題発言と受け止められた▲人種隔離政策の残る20世紀前半の米国で黒人の地位向上に尽力した黒人女性教育者メアリー・マクロード・ベシューンは「私たちが人種差別に直面した時、それを受け入れたり黙認すれば、私たちが同意したのだと信じる人々を許容することになる」と言った▲どんな小さな差別でも毅然(きぜん)と反論してきた人たちがいたから、肌の色で人を差別するのはいけないという当たり前の世界が生まれた▲国境や人種の壁を超えて感動を呼ぶのがスポーツだが、その美しいスローガンに魂を入れるには不断の努力がいる。「水に流す」ことや「寛容さ」が美徳ではなく悪徳になる時と場合があることを、日本人も知っておいていい。
毎日新聞 2011年11月24日 0時10分
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