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風邪完治!!!という訳で投稿しました。


半月さん、αさん、なおぽんさん、七夜和さん、ケルベルスさん有難うございます。


麻帆良
side





「あれ? 木乃香、今日どこかいくの?」



麻帆良学園、早朝。



その女子寮の一室で、神楽坂明日菜は自分の親友―――近衛木乃香の見慣れない姿に気が付いた。


近衛木乃香は、毎朝早くから新聞配達にいく自分のために朝食を作ってくれているのだが、いつもは朝早いということもありパジャマのまま作り終わった後は再びベッドに戻る。


だがらその木乃香が、今日はいつものようなパジャマではなく、かなりオシャレなよそ行きの服装をしている。


それに昨日からソワソワしているなど、挙動不審だ。

まるで思い人とデートに行くような。木乃香が?

―――――誰と?


「え、えっとなー///。今日はお父様から、昔ウチがお世話になった人が来るからお出迎えしてっていわれとるんよ」


「………だからそんなにオシャレしてるの?」


「うん。ウチが生まれる前にお母様の病気を治してもらったらしいみたいでね。それに、小さい頃はよー一緒に遊んでもろてな。か、可愛がってもろたんやけど、会うんは久しぶりやからちょっと気合い入ってしもて!!」


明らかに入り方が昔の知り合いと会うレベルではない。


「…………彼氏?」

「えっ!?//// いや、違うでッ!レン兄はウチの兄ちゃんみたいのやから決して恋愛感情とかではのうてあのその………」


「(……レン兄か…)フーン、いつ来るの?」


「午前中には来るみたいやで」


木乃香自身の恋愛話はあまり聞かない。精々学園長が勝手に見合いさせるぐらいだ。

勿論、見合いが上手くいった事は無いが。



「じゃあさ、私も行ってみていいかな? その木乃香の彼氏候補がどんなのか気になるし」


もちろん、気になるというのは好奇心だけでなく、『レン兄』という単語が引っ掛かったなだけなのだが。

おそらく名前が似てる他人だと判っていても、『アスナ』は求めずにはいられない。

二十年前に自分を何度も救ってくれた人を。

「ええよ。先に駅前で待ってるえ――――って、彼氏とかちゃうから!!!/////」


「うん。それじゃ私は新聞配達行ってくるね!」


「聞いてへんやろ明日菜!!!/////」


「はははは」


明日菜は気付かない。彼に貰った、肌身離さず付けている指輪に極小の炎が灯っていたことに。



そんな、アスナと『彼』との二十年ぶりの再会の日の朝だった。




――――――――――――――――――――――




麻帆良学園都市は、明治中期に創設され、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関が集まってできた都市。


これらの学術機関を総称して「麻帆良学園」と呼ぶ。

一帯には各学校が複数ずつ存在し、下記の都市機能を含め、大学部の研究所なども同じ敷地内にあるため、敷地面積はとても広い。

年度初めには迷子が出るとのこと。
元々魔法使い達によって建設されたと考えられており、多くの魔法使いが教師・生徒として在籍し、修行や学園の治安維持に従事している。

学園内には学園外の常識では考えられないほど極めて超常的な特殊能力や特殊技術を備えた人材・組織が氾濫しており、しばしばそれらが様々なトラブルや事件等を起こしている。

しかし、それが市民の目に触れることはあってもそのことについて深く気にする人は少ないようで、そういったニュースによる騒ぎなどはほとんど起こっていない。

学園内の異常さが外部に漏れることも少ない、いわば陸の孤島といった様相を呈している。


そんな麻帆良女子中等部領のとある一室。


そこには、後頭部が人間の骨格のソレを上回る大きさを持った、学園長と呼ばれる老人ヌラリヒョンと、タバコが似合う、渋めの白髪の男性がいた。


老人ヌラリヒョンの名は、近衛近右衛門。


関東魔法教会長、そして麻帆良学園の学園長を勤める人間ヌラリヒョンだ。


麻帆良学園の魔法先生の一人。中等部英語科教員、美術部顧問。


学園広域指導員でもあり、たった一人で学園内の幾多の抗争、バカ騒ぎを鎮圧したことから学園中の不良達に恐れられており、ついたアダ名が「死の眼鏡デスメガネ・高畑」こと、


『悠久の翼』所属、タカミチ・T・高畑。



「…三学期にネギ君とアリア君の麻帆良の修業が通達されました。三ヶ月後に彼等は来日予定です」

「フォッフォッフォッ、それは何よりじゃ。彼等には、此処で凄まじい成長を遂げて貰わねばのぅ――――……レン君はどうなっとる?」


「彼等の卒業式に参列し、すぐに姿を消したとの報告がありましたよ」


「フゥ……、アスナ君に続いての百年振りの『魔法無力化能力マジック・キャンセラー』保持者。彼こそ次世代の英雄に相応しいのじゃがなぁ……」


「四歳を境に二年間の行方不明になり、悪魔襲撃事件の際に現れて悪魔達を一掃。村人達に永久石化を難なく解呪し、その時に『魔法無力化能力マジック・キャンセラー』であると判明」


少しだけ、高畑の声が低くなる。

神の再来ザ・セカンド』と呼ばれる存在から、紅き翼へ。

紅き翼達から自分へ。


『彼女』を預かる身としては、彼女と同じ『魔法無力化能力マジック・キャンセラー』であるレンに対して、色々と思うところが彼にはある。

「元老院には?」


「無論、バレてません。村人達を隠れて生活させて、今もまだ石化に侵され続けている様に見せかける……彼の案だそうですね」

「天才……程度で表現してよいのか?六歳でそれほどとはのぅ…今は十歳じゃろ?末恐ろしいわい。しかしそれが何故……」


生まれで確認されている状態で、同じ英雄の子の極東最大魔力保持者の近衛木乃香を遥かに上回る魔力を宿していたレンだからこそ、惜しまれる。


「魔法学校の入学を拒否。戸籍上では飛び級でハーバード大学を特待生として入学、首席で卒業。様々な資格を取得し、現在に至る……ですか」


「……ホントに十歳なのか?レン君は」

「戸籍上、間違いありません」


素晴らしいでも凄まじいでもなく、


恐ろしい。


だが、そのあまりにも異常さが英雄に相応しい。

しかし、レンは『立派な魔法使いマギステル・マギ』になる気が、魔法使いになる気が無い。


「(或いは……)」

「まぁ、しかしじゃ。レン君はいないが、彼等がおる」

「え、えぇ」

そう、ナギの遺児はレンだけではない。

「ネギ君は容姿がナギさんに酷似し、『立派な魔法使いマギステル・マギ』に、ナギの様になることを強く望んでおり、ネギ君程意欲的では無いにしろ、アリカ様の『王家の魔力』を受け継いでいるアリア君」

実際アリアは、『立派な魔法使いマギステル・マギ』など眼中に無い。

ただレンに褒めて貰いたい。その一心で、学術に取り組んでいただけなのだから。


「二人なら、レン君の抜けた穴を充分埋めてくれるじゃろう」


その変わり、31人の女の子が犠牲になるという代償を払い、


英雄を育て上げる為に選ばれた舞台。それがここ、麻帆良学園。


だが、高畑はそれを心の底から喜べない。

『彼女』の保護者として、彼女達の担任として。


だが、この老翁は知らない。

『彼』が身内を利用されるのを、どれほど嫌うのかを。








――――バキンッッッ!!!!


そんな日に、『彼』は現れた。


「「なッ―――!?」」

麻帆良学園都市には、世界樹の魔力と電力を使って結界が張られている。

効力は三つ。


麻帆良全域に対しての認識阻害。

魔物や妖怪などの侵入者の察知。

高位の魔物に対しての侵入阻害、又は弱体化。


麻帆良学園に足を踏み入れた瞬間に、学園結界は反応する。


『彼』がその身に宿す禍々しい黒龍が、学園結界に反応しない訳がない。


「何……じゃッ、この―――!?」


「爵位級――いや、現存すると魔王クラスが全て揃っても……これには――ッ!?」


『彼』は、白昼堂々正々堂々、麻帆良学園に踏みいった。

「高畑君は直ぐに現場へ!エヴァも反応して急行するじゃろう!!決して魔法生徒を出させてはイカンぞ!!!」

「はいッ!!」



幾百の悪魔でも、幾千の魔族でも、幾万の妖怪でも塗り潰す。ただ一人の究極の魔が。


「一体何が――――」


高畑が直ぐ様、学園長室を出ていった後、学園長は遠見の魔法を使って侵入者―――いや、来訪者の姿を観ようとする。


「………何じゃと?」



学園長は、その人物を知っている。ついさっきまで話していた人物なのだから。


真っ白い雪の様な白髪、肩に子狐を乗せている十歳にしてはかなり大きい方の背丈。
そして、まるで此方を観ているように視線を合わせた、血の様な紅眼を持つ少年。

「!?」


そのとき少年の口がゆっくりと動いた。裂ける様な凄惨な笑みで。





―――――――何見てンだよ?





ゾクッ!!!

少年が手を、学園長の視界を遮るように掲げだ瞬間。遠見の魔法が破られた。



「ヌウッ……何故、此処に居るんじゃ――――――――」



「――――レン・スプリングフィールド君……ッ!!」


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