日本経済新聞

11月24日(木曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

トップ > 社説・春秋 > 記事

上場会社の自覚はあったのか

2011/11/23付
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷

 大王製紙の井川意高前会長による巨額借り入れ問題は、前会長が会社法違反(特別背任)容疑で逮捕され、刑事事件に発展した。

 この問題は同族会社のトップの暴走というだけで済ませるわけにはいかない。取締役や監査役のチェックや対応がきちんとしていれば、借入額が膨れあがるのを防げた可能性があるからだ。上場会社は投資家の利益を念頭に置かなければならない。その自覚が大王製紙の役員にあったのだろうか。

 同社の特別調査委員会によると、創業家出身の井川前会長は昨年5月から今年9月までに、子会社7社の役員に自分の銀行口座への振り込みを指示するなどで、26回にわたり計106億8000万円を無担保で借り入れた。

 そのほとんどをカジノで使ったと前会長本人は認めている。資金の私的な流用、会社の私物化にはあきれるばかりだ。

 同時に、グループに損害を与えるおそれのある行為を制止できなかった大王製紙の役員は、監督責任を厳しく問われる。多額の貸し付けを知りうる立場にあった経理担当取締役だけではない。前会長の借り入れの一部は今年3月期の有価証券報告書に記されていた。取締役や監査役が適切な対応をとっていれば、資金の流出に歯止めをかけられたのではないか。

 大王製紙は創業者の長男で前会長の父の井川高雄前顧問が、社長や会長を退いてからも役員人事などの実権を握ってきたとされる。社内には井川家に異を唱えにくい雰囲気が以前からあったという。

 だが株主に代わって経営をみるという取締役の本分や、経営のお目付け役という監査役の役割がなおざりにされていたことは、上場会社として見過ごせない問題だ。

 監査法人も前会長への貸し付けに気づきながら、深く追及しなかった。監査法人も役割を果たしていたとは言いがたい。

 今回の問題は同族会社のワンマン体質だけが原因ではない。企業統治が機能不全だった点を、ほかの企業は反面教師とすべきだ。

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
関連キーワード

井川意高、大王製紙、井川高雄、上場会社

【PR】

【PR】



主な市場指標

日経平均(円) 8,314.74 -33.53 22日 大引
NYダウ(ドル) 11,257.55 -236.17 23日 16:03
英FTSE100 5,139.78 -67.04 23日 16:35
ドル/円 77.30 - .32 +0.32円安 24日 6:07
ユーロ/円 103.10 - .14 -1.02円高 24日 6:08
長期金利(%) 0.965 +0.015 22日 16:53
NY原油(ドル) 98.01 +1.09 22日 終値

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

[PR]

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について