政治・行政

11月22日(火)

国と町の思惑一致

 与那国自衛隊配備問題 島 賛否二分 防衛省は中国警戒

防衛省が進めている与那国町への自衛隊配備は、17日 の住民説明会で2015年度までに配備完了するスケジュールが明示されるなど、着々と実現に近づいている。安全保障上の要地として国境の八重山を重視し 「防衛上の空白地域」の解消を目指す防衛省と、自衛隊配備に伴うインフラ整備で地域振興を図りたい町の思惑が一致した形だ。


▽安全保障

防衛省によると、陸自沿岸監視部隊の配備は国境の監視機能や、離島が攻撃された場合の対応能力を強化する狙いがある。


住民説明会で防衛省幹部は、町を配備先に選んだ理由として①国境に近い②駐屯地として必要な面積がある②電力、通信、上下水道などの社会基盤が整備されている―の3点を挙げた。


候補地は駐屯地が島南西部の南牧場(久部良地区)、2カ所の沿岸監視施設が南牧場とインビ岳西側周辺。沿岸監視施設の候補地は、電波干渉の影響が少なく、駐屯地との距離が近いことが考慮された。


今年に入り、石垣港に自衛艦の入港が相次いでいるのも、自衛隊配備と軌を一にする動きだ。


9月、防災訓練参加のため石垣市を訪れた海自幹部は、先島諸島に拠点を形成する必要性について「必要な時には、いつでも港に入れる環境づくりをしないと、大 陸からどんどん船が出て跳梁(ちょうりょう)する」と指摘。尖閣など先島諸島周辺で海洋進出の動きを強める中国に対し、警戒感をあらわにした。


与那国町への自衛隊配備は国の安全保障にかかわるため、本来「国が判断すべき問題」(町関係者)。それでも、これまで配備に踏み切れなかったのは、防衛省が「民意」を慎重に見極めていたからだ。


青信号が点灯したのは、09年の町と町議会の自衛隊配備要請、それに応える形での09年、10年の防衛相の2度にわたる来島だった。


町民によると、要請のため防衛省を訪れた町関係者に、幹部の1人は「この時を長年待っていました」と漏らしたという。外間守吉町長は「町長選でも、町議選でも推進派が勝った。これが民意だ」と強調する。


 ▽地域振興

 外間町長は「中国への抑止力うんぬんは関係ない。人口の減少に歯止めを掛けたい。(その手段が)たまたま自衛隊だった」と繰り返す。安全保障と地域振興。本来は異質の政策が、疲弊する国境の島で手を握った。


終戦後は1万2000人超だったという町人口は右肩下がりで、現在は約1600人。過疎化の最大要因は、主要産業が育たず、総合病院と高校もないためだとされる。


 推進派は、隊員や家族の転入に伴う税収増、隊員宿舎などのインフラ整備、自衛隊医官の配置―などが、町活性化の「カンフル剤」になると熱い視線を送る。


町議会は6人中4人が推進派。18日、町役場を訪れた町内3地区の公民館長も「自衛隊誘致は過疎化に悩む町長が決定したこと。われわれも協力したい」と、官民一体で配備を歓迎する構えを示した。


これに対し反対派は、町防衛協会が08年に集めた514人を上回る556人の署名を9月、町議会に提出。19日には初の反対集会、20日にはデモ行進を行った。


反対派住民は「自衛隊が配備されれば、中国や台湾との緊張が高まる」「基地があることで有事の際、攻撃の標的になる」と訴える。配備で地域振興を図る動きを「自衛隊は産業ではない」と批判する。


外間町長は「説得は惜しまずにやっている」と話す一方「反対派は感情で話をしているので、紳士的に話し合いができる状況ではない」と反対運動に対する苛立ちを隠さない。


反対派が求める住民投票にも「島が二分される」と応じない方針で、両派の対立は激化している。

 


西表西部で猪垣設置へ

 竹富町有害鳥獣対策協発足

竹富町有害鳥獣対策協議会が設置された=21日午前、離島ターミナル 竹富町有害鳥獣対策協議会が設置された=21日午前、離島ターミナル

 竹富町有害鳥獣対策協議会が21日、設立された。設立委員会が石垣港離島ターミナル会議室で開かれ、協議会の規約や鳥獣被害防止総合対策について確認。また、県から町に有害鳥獣捕獲許可の権限移譲が行われ、今年度は協議会で西表島西部の中野地区で猪垣設置事業に取り組むことが報告された。

 

 有害鳥獣捕獲許可は県知事許可のため、許可がおりるまで時間を要した。町が鳥獣被害防止計画を作成、県が認めたことで、カラス、イノシシ、カルガモ、インドクジャクの駆除については権限を移譲した。


 鳥獣被害防止計画の作成により、協議会を設置して鳥獣被害防止対策事業に取り組む。今年度はハード事業として、中野地区に5キロの猪垣を設置する。事業費は2500万円。


協議会が資材を提供し、農家に現場で設置してもらう考え。また来年度は西表島東部地区での猪垣設置やカラス捕獲箱の導入の検討などを予定している。


 役員からは「農家の意見も取り入れ、調整を行った方がいい」「捕獲できる人を増やすことも必要。罠免許取得への補助もできないか」などの意見があった。


 川満栄長町長は「1度には出来ないので、長期間での取り組みと考え、1歩でも2歩でも前に進めるよう協力をお願いしたい」と話した。

 協議会の役員は次の通り(敬称略)。


▽会長=川満栄長(竹富町長)▽副会長=河合正憲(町猟友会)▽監事=通事安憲(県八重山農林水産振興センター)▽理事=渥美真次(株式会社はいむるぶし)、兒玉博聖(県病害虫防除技術センター)

 


クジャク防除協も発足

今年度は黒島のクジャク駆除に取り組む町クジャク防除対策協議会=21日午後、離島ターミナル 今年度は黒島のクジャク駆除に取り組む町クジャク防除対策協議会=21日午後、離島ターミナル

 外来種のインドクジャクによる生態系への影響や飼料被害を軽減しようと、竹富町は21日、町クジャク防除対策協議会を設立した。第1回協議会が石垣港離島ターミナル会議室で開かれ、2種類の箱ワナを12基ずつ、合計24基を黒島に設置。地域住民が中心となり罠の巡視を行い、捕獲効率の向上を目指す。


町クジャク防除対策協議会は、環境省の交付金を利用して2年間実施する。町や県、小浜公民館、黒島公民館、黒島肉用牛生産組合、町猟友会で組織。オブザーバーとして環境省石垣自然保護官事務所と、小浜島でクジャク捕獲を実施している(株)はいむるぶしが参加する。


 今年度は、駆除優先地域として黒島に箱ワナを24基設置。小浜島で使用されている従来のものを改良した2種類の箱ワナを導入する。罠は罠免許取得者が設置。罠の巡視は地域住民を中心で実施し、捕獲したクジャクの駆除処理も行う。罠の設置者、巡視者には賃金が支払われる。


 協議会では、箱ワナの設置場所や賃金の支払い方、巡視報告書の作成などについて意見が交わされた。また駆除方法として、猟銃の使用やクジャクの卵取りなどの案も出された。


 今後は関係団体と調整を行いながら、箱ワナを発注し12月ごろに最初の捕獲活動を予定している。

 


11月20日(日)

災害の怖さ紹介

 北部地区フェア 負傷者救出訓練も

※本番さながらの実演に住民は釘付けになり見入っていた。 ※本番さながらの実演に住民は釘付けになり見入っていた。

「自主防災力の向上を目指して」をテーマに北部地区防災フェアが19日、伊原間公民館で開かれた。東日本大震災を教訓に地域住民は地域で守ると、自主防災組織と市消防署伊原間出張所の実演、防災展示コーナーが設置された。会場には100人余の住民が集まり、あらためて災害の恐ろしさを痛感した。


防災フェアでは、市消防署北部出張所署員が、事故車両救出を実施。事故で運転席に閉じ込められた負傷者を特別な機材でドアを切断し、負傷者を救急車まで搬送するまでを実演した。


本番さながらの実演に子どもや大人まで釘付けになるほど見入っていた。


公民館内は、八重山ハザードマップ研究会、石垣島地方気象台などの6機関が、地震で発生する液状化実験や島内の標高地図、防災訓練写真パネルが展示した。


大工嘉広市消防本部消防長は「大災害ほど地域の防災力が重要。普段から、近所とのコミュニケーションを図ってもらいたい」と話した。


明石小の前上里徹校長は「地域で防災に関心が高まっている。学校でも救急講習会を開き、備えたい」と述べた。


 1771年の明和大津波では、北部地区は多くの死者を出し、廃村になった地域が出るほどの被害を受けた。


11月19日(土)

当初予算202億3,000万円見込む

 前年度比減 公共事業は9.7%増

市財政担当部局が100人ほどの職員を前に、予算編成方針を解説した=石垣市市民会館、浜崎町 市財政担当部局が100人ほどの職員を前に、予算編成方針を解説した=石垣市市民会館、浜崎町

中山市政2度目の予算編成となる石垣市の新年度予算編成作業が18日、本格的に始まった。市財政課によると、20012年度の一般会計当初予算は202億3 千万円余で、前年度(11年度)比で0・7%の減少を見込んでいる。中山義隆市長はこの日、市民会館で開かれた予算編成説明会で、「日本一幸せな街づくり を目指し、前例にとらわれない斬新な予算を」と職員にげきを飛ばした。

 

市 は、財政状況について公債費が高水準を維持、扶助費(社会保障)と特別会計への繰出金増額で財政が硬直化していると指摘。財務4指標が県平均を「大きく下 回る水準」と厳しい財務認識を示した。その上で、財政の健全化を目指し市債活用を最小限にする運営が求められているとする。


 新年度予算編成方針では、予算総額の一定割合をあらかじめ各部に配分する「枠配分方式」を採用。限られた予算で効率的な編成を狙う。また、前年度当初予算の経常経費(人件費ほか)を5%減少させた要求額の提出を各課に求め、財政健全化を図る。


 市補助金については廃止も視野に「徹底した整理合理化」を図り、終期設定も原則化。指定管理者制については、各団体の自立実現に取り組むとともに、経費見込み額も産出して要求する、としている。


 多くが予算減を見込む中で、投資的経費(公共事業など)は、給食・食肉センターの建設費で前年度比9・7%増を見積もっている。


この日、市財政部局が、各課の予算担当者を石垣市民会館に集め、編成方針を説明。各課は見積り額をまとめ、12月22日までに予算要求書を財政課に提出する。


来年1月に、ヒアリングと査定、中旬に政策推進枠プレゼンテーションを実施する。2月中旬に予算案を庁議決定する。 

 


子どもの手に「東書」を

 玉津教育長に抗議決議

ガンバロー三唱をする参加者たち=18日夜、市健康福祉センター ガンバロー三唱をする参加者たち=18日夜、市健康福祉センター

 東京書籍版の採択を求める住民大会(実行委主催)が18日夜、石垣市健康福祉センターで開かれ、文科省に9月8日の全員協議の有効性を認め、東京書籍版公民教科書が『同一地区同一教科書』として採択されたことの確認、中川正春文部科学大臣の1026日の衆院文教委員会での発言の撤回を求める決議をした。また、市教育委員会の玉津博克教育長の市内小中学校校長宛に出した通知に対して抗議決議も行った。


決議では、八重山教育問題の解決が遅れているのは、文科省の法的拘束力のない地区協議会の答申を絶対視し、県教委が指導助言を行った9・8全員協議を否認していることにあるとし、中川文科相の衆院文教委員会答弁は義務教育を無償化としている憲法に抵触するとした。


 また抗議決議では、玉津教育長が市小中学校校長に出した通知が表現の自由や請願権を侵害することになるとし、強く抗議するとともに撤回を求めるとした。


この日は約250人の住民が集まり、ビデオ上映での経過報告や佐久間正夫琉球大学教授による講話「八重山の教科書採択に関する問題点」、行政訴訟の原告である保護者2人が意見を発表した。


 佐久間教授は育鵬社版の内容と問題点と八重山教科書採択に関する問題点を挙げ、「八重山地区の教科書採択が子どもの教育にあたる教員の意見、父母や地域住民の意思も反映して行われるよう、教育条件整備を適切に行うことが文部科学省の責務」と指摘した。


 原告の保護者2人は「事の実際を知ることによって、自分事として考えるようになった。今後、多くの市民や保護者の皆さんに事の実際を知ってもらおうことが大事」と訴えた。


 竹富町住民として登壇した仲村貞子さんは、「竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会」が中心となり今月29日、同センターで郡民大会を開催することを発表した。

 


反対署名 校内に持ち込み

 無許可、校長が没収

与那国中学校で、与那国改革会議が作成した自衛隊誘致反対の署名用紙を生徒が無許可で持ち込み、東迎和芳校長が没収していたことが18日分かった。

関係者によると、署名用紙は複数の子どもが校内に持ち込み、17日、昼休みの時間に出回った。校長が気づき、自らの判断で没収したという。


同日夜の自衛隊配備に向けた住民説明会では、署名用紙を持ち込んだ中学生が没収に抗議し、「ぼくたちも住民だ」と述べる場面もあった。


学校内で署名用紙が出回ったことについては、同日中に、保護者から町教委にも連絡があった。崎原用能教育長は「子どもたちを利用して自衛隊に反対させようとしている。これから育つ子どもたちに、間違った教育をされたら大変なことになる」と述べ、不適切だと指摘した。


与那国改革会議の田里千代基町議は「子どもたちの自主的な判断で署名活動した。校長の許可がなかったのは問題だが、教育者としてはいきなり没収するのではなく、子どもたちに説明した上で預かるべきだ」と話した。

 


11月18日(金)

与那国 南牧場に基地

 防衛省幹部が明言

 説明会 反対派が激しく抗議

説明会冒頭、誘致反対派が激しく抗議。賛成派が反論し、一時騒然とした=17日夜、嶋仲公民館 説明会冒頭、誘致反対派が激しく抗議。賛成派が反論し、一時騒然とした=17日夜、嶋仲公民館

 与那国町への自衛隊配備に向けた住民説明会(主催・防衛省、町)が17日夜、嶋仲公民館で開かれた。誘致反対派が激しく抗議し、冒頭、集団で退席するなど荒れ模様の展開。質疑でも配備に対する賛否が二分した。防衛省幹部は、部隊の駐屯地として島南西部の南牧場(久部良地区)が候補地であることを正式に表明した。


 冒頭で防衛省側が説明に入ろうとすると、反対派の住民が次々と立ち上がり「やり方が間違っている」などと大声を上げた。賛成派の住民が「説明を聞くべきだ」と反論。会場は一時、騒然とした雰囲気になった。


 反対派が退席したあと、防衛省幹部が部隊配備計画を説明。国境周辺で航空機や船舶を監視する陸自沿岸監視部隊と、移動式警戒管制レーダーを装備する空自移 動警戒隊を配備する方針を示した。沿岸監視施設などは南牧場と島南部のインビ岳周辺、駐屯地は南牧場への配備を検討する。来年度中に用地を取得して造成工 事に入り、現在の中期防衛力整備計画の期限である2015年度までに部隊配置を完了させるスケジュールを明示した。


 質疑で賛成派からは、中国の軍事力拡大を念頭に「危機はそこまで迫っている。知らないのは国民と町民だけだ」と指摘する声や、配備による漁業の安全、医療環境の向上などに期待する意見が相次いだ。


 これに対し、反対派は「備えがあるところに弾丸は来る。他国を刺激しないことも重要」「住民投票するべきだ」などと主張。1人の男子中学生は「自衛隊がいると帰って来たくないという人がいる。中学生の意見も聞いてほしい」と反対をアピールした。


 説明会後、外間守吉町長は「反対派は冒頭から暴れ、会場を壊す雰囲気作りをした。真摯に質問するならいいが、こんな状況では説明会をする必要はない」と反対派を強く批判。誘致の是非を問う住民投票については「もう次年度に向けて(用地取得費として)国が15億円を予算要求している。住民投票をすると島を二分し、大変なことになる」と述べ、拒否する姿勢を明確にした。

 

実現へ着々と前進  防衛省「基地は住民にプラス」

 「駐屯地には体育館やグラウンドも整備」―。17日夜の住民説明会では、防衛省側による配備計画の説明がより具体的になり、実現へ着々と前進していることをうかがわせた。防衛省側は説明の中で、間接的ながら、配備が住民生活にとってメリットになるという考えも示した。


 防衛省側の出席者は、防衛計画課の青柳肇課長ら5人。説明によると、駐屯地には隊員が勤務する庁舎や、独身の隊員が生活する隊舎などが整備される。グラウンドには400㍍のトラックがあり、防衛省側は「町民も利用できる」とした。


 部隊の人数は未定だが、同じ任務を担う北海道の沿岸監視部隊は「100人程度」。住民からは、町内で災害が発生した場合の対応について質問があり、防衛省側は「沖縄本島からは準備を含め、大型輸送ヘリで5~6時間ほどかかる。部隊が(町内に)配備されていれば当然、即、出動という形になる」と強調した。


 防衛省側が参加者に配布した資料では、各地に駐屯する部隊が、夏祭りや植樹祭などの地域行事に参加していることも紹介された。防衛省側は「地域に根ざした自衛隊を目指し、住民の安全安心を守る」とアピールした。


 住民からは、漁業者が国境付近で武装した他国の船舶に遭遇する例を挙げ「与那国の漁師を守ってほしい」と訴える声も。防衛省側は「自衛隊がいることで(他国の船舶に対する)抑止的な効果になる」と述べた。 


 一方、反対派の住民の多くが説明を聞かず、早々に退席。会場外で「防衛省は帰れ」などと叫び、気勢を上げた。与那国改革会議の崎原正吉議長は「町民の合意もないまま説明するやり方が通るのか」とはき捨てた。

 


八重山は一つ 誘客へ

 来年度から組織効率化

※来年3月、海びらきを与那国で初開催を決めた=市商工会館= ※来年3月、海びらきを与那国で初開催を決めた=市商工会館=

八重山ビジターズビューロー(YVB、会長・中山義隆石垣市長)は効率的な組織運営を図り、来年度から観光誘客活動などを強化することを17日までに決めた。

 

YVBは独自の予算がなく、専任職員も不在。事業は実質的に市観光協会が担っている状況。宮平康弘理事長(市観光協会長)は「宮古の入域客数が増える中、八重山は前年比10%減の状態。官民一体で効率的に運営できるようにすべきだ」と強調した。

 


YVBは、八重山観光感謝のつどい、八重山教育旅行誘致活動、ミス八重山派遣と事業を抱えているが、市観光協会がほぼ実質的な運営を担っている状態だ。


予算も3市町観光協会からの負担金、観光振興を目的にしたオークス提携カードからの利用額の一部寄付で賄っている。


 八重山地域の観光入域客数が、減少傾向の中、2013年3月の新空港開港に向けて3市町が連携した取り組みが重要になっている。そのため、組織の効率的な運営のあり方を検討し、来年度から実施していく。


 大松宏昭市観光協会副会長は「エージェントは八重山を1つのエリアとして見ている。3市町がチグハグでは効果的な誘客が期待できない」と改善を求めた。


 YVB副会長の川満栄長竹富町長は「八重山は1つ。3市町長が腹を割って話し合えば、より効果的な運営体制が構築できるのではないか」と話した。


 YVBは、2002年4月、市町村合併の協議される中、設立された。


YVB以前にも八重山観光協会が1963年に設立され、3市町で運営されたが、独自路線をとった竹富町(1981年)、与那国町(1989年)が観光協会設立。八重山観光協会は名称を石垣市観光協会に変更した経緯がある。

 


与那国で初の「海開き」決定

※来年度から効率的な運営を図るYVB(今年3月の海びらき) ※来年度から効率的な運営を図るYVB(今年3月の海びらき)

八重山ビジターズビューロー(YVB)の通常総会が17日、市商工会館で開かれた。

 

事業計画では、来年3月に開かれる「八重山の海びらき」は与那国町で初開催することを決めた。


台風時の観光客へのフォローを目的にした八重山観光台風対策事業は、携帯電話やラジオの情報で空港を訪れる観光客が減り、新空港も開港することから、11年度分の負担納入までにすることにした。


会長の中山義隆石垣市長は「厳しい状況だが、新空港開港までに道筋を作りたい」とあいさつした。


11月17日(木)

 TPPぜったいダメ

 「離島の生活破壊」 決議採択 200人 デモ行進

TPP参加反対を訴えデモ行進する参加者=16日夕、JA八重山支店前 TPP参加反対を訴えデモ行進する参加者=16日夕、JA八重山支店前

TPPぜったいダメ!働くなかまのTPP参加反対集会(八重山地区労主催)が16日、JA八重山支店構内で開かれた。農業や労組関係者約200人が参加。TPP(環太平洋連携協定)参加で、安い農産物が海外から流入すると「人口の流出、産 業構造、雇用の悪化など、圏域経済や生活基盤を根本から破壊する」などとする参加反対決議を採択し、市街地をデモ行進した。


地区労の波照間忠議長は「農業、医療、雇用など多くの分野において、離島住民が抱える懸念材料に対し、何ら手当することなく交渉に参加することは許せない」とあいさつ。


JAおきなわの下地義次支店長、石垣島製糖の山田忠弘社長社長が交渉参加反対を訴えたあと、労組メンバーが一人ひとり決意表明し「TPPに参加すると、地産地消や食の安全と全く反対の方向に進む」などと述べた。


参加者は「日本の農業を守ろう」などと記されたプラカードを手に、TPP交渉参加反対を訴えながら、市街地を練り歩いた。

 

きょう自衛隊配備説明会

 反対派は19日に集会

与那国町への沿岸監視部隊の配備計画を進める防衛省はきょう17日午後7時半から、嶋仲公民館で住民説明会を開催し、配備に理解を求める。これに対し、自衛隊誘致に反対する与那国改革会議(崎原正吉議長)は19日夜に反対集会を計画。住民投票の実施などを求める考えだ。町が今後、根強い反対運動にどう向き合い、自衛隊誘致による地域活性化を模索していくのかが問われる。


同省は来年度予算編成の概算要求で沿岸開監視部隊の配備に向けた用地取得費15億円を計上した。予定地としては町南部の「南牧場」が有力視されている。町によると、ほぼ全部が町有地。配備計画の町民説明会は7月以来2回目。


政府は昨年決定した防衛計画大綱で中国の急速な軍事力拡大に懸念を表明。中期防衛力整備計画(中期防)では「南西地域の島しょ部に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配置する」と明記した。


特に尖閣問題では、執拗に領有権を主張し、周辺海域に漁業監視船を送り込む中国の「脅威」が八重山住民に大きな不安を与えている現状がある。


一方、自衛隊誘致を推進する外間守吉町長は11日、八重山日報社の取材に対し「中国の脅威に対する抑止力という考えは全く持っていない」と強調。最大の課題は1600人余まで落ち込んだ人口の回復だとし「人口減少に歯止めを掛ける方法は自衛隊誘致以外にない」と述べた。


町は自衛隊誘致による地域活性化策として、隊員の移住による税収の増加や、インフラ整備などを挙げる。特に自衛隊の医官が常駐すれば、医師不足問題にも対応できると期待している。


誘致反対派は島内外の2331人分の署名を集めるなど、依然として活発な運動を展開している。しかし外間町長は「(自衛隊誘致の)スイッチは入っている。今から引き返すのはいかがなものか」と述べ、誘致撤回は不可能と指摘した。


これに対し与那国改革会議の田里千代基町議は「首長として、こういう発言が通るのか。町長は逃げている」と反発。「行政は民意を把握しなくてはならない。住民投票を求める」と述べた。


11月16日(水)

〝読めない〟主張委員は東京書籍版

 イメージ、事実とは逆 教科書情報公開

一般公開された「会議録」と録音のCD 一般公開された「会議録」と録音のCD

八重山地区の公民教科書問題で、八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の「会議録」と録音が一般公開された。「教科書を全部は読めない」と訴え、調査員(教員)の「順位付け」を求める一部の委員。教科書を読むよう求める玉津教育長。両者のせめぎ合いが見えてくる。


「教科書を見なくても見たと言えばいい」と発言したと報道された玉津氏。自ら教科書を読みもしなければ、委員に読ませもせず、育鵬社の公民教科書ありきで議事を主導したというイメージができてしまった。ところが会議録や録音から、事実は逆だと判明する。


問題の「発言」があったとされたのは7月19日の協議会連絡会。会議録と録音から確認すると、次のようなやり取りがあった。

 

A委員「(教科書を)全部はどうせ見れないので、ぼくは、調査員の意見を参考にしながらやりたい」


玉津氏「最初から、全部は見れないとか、あんな話はしないでください。建て前上、基本的には、全部の教科書は見るということでの話し合いなので、やりますけれども、それは、裏の話で、全部は見れないということであれば…」


B委員「全部これ(教科書)を評価するというのは、とっても私は…」


玉津氏「だから、そういうことはおっしゃらないでください」


B委員「厳しいです」

 

玉津氏は渋る委員に対し、教科書を読むよう必死に説得していることが分かる。これに対し一部の委員は、読めないとして譲らない。


このやり取りでは、玉津氏の「見たと言えばいい」という発言は存在しない。玉津氏が会長として委員に「他人には見たと言えばいいんだ」と高圧的に指示するようなニュアンスも全くない。


協議会は教科書を選定する役割があり、玉津氏は、委員は教科書を読まなくてはいけない、という原則論を強調しているのだ。この発言を、委員の1人が「見たと言えばいい」という趣旨に受け取った、というのが真相だった。


しかし、存在しない「見たと言えばいい」発言が一人歩きした結果、育鵬社の公民教科書は「教科書を読んでもいない委員が選定した」というイメージが定着してしまう。ところがこの批判も、事実は逆であることが判明する。


この日以外も含めたすべての会議録や録音を調べると、一貫して教科書を「読めない」と主張しているのは、8人の委員中3人であることが分かる。いずれも、公民教科書の選定で東京書籍版に投票したと推定される委員だ。つまり、教科書を読んでいない委員が選んだのは育鵬社版ではなく、東京書籍版だということにな る。


「教科書を読んでいない委員が選んだ教科書だから疑問がある」という論理を突き詰めると、東京書籍版を採択した9月8日の全教育委員による協議の正当性こそ疑われるだろう。


実際には、これだけ世間の注目を集めた以上、どの委員も公民と歴史教科書には目を通したはずで「教科書を読んでもいない委員が選定した」という言い方は極論でしかあるまい。


会議録によると、委員の1人は「従来の教科書は教材研究をしないで済むから(教員は)現在の教科書を選ぶことが多い」と発言している。八重山地区で、公民教科書は10年以上、東京書籍版が使用されてきた。


玉津氏の「協議会の責任と権限を取り戻す」改革がなければ、向こう10年以上も同じ教科書が使用された可能性がある。もちろん、そのことは自体は悪ではない。


会議録と録音の一般公開によって、教科書選定をめぐる「本当のこと」を検証することが可能になった。時代の変化に即応した内容だと評価されれば、どの社の教科書であれ、先入観にとらわれず選定できる。それが「玉津改革」だということだ。


    (仲新城誠)


11月15日(火)

メールで児童安否確認

 システム導入へきょう業者公募 来春共用開始

石垣市は、災害時などに携帯電話のメールで児童の安否を確認できるシステムの導入に向け、15日から25日まで業者を公募する。東日本大震災をきっかけに、住民の防災意識が高まっていることを受けた取り組み。保護者と児童が別々に避難する場合などに活用されそうだ。来年4月の供用開始を目指す。


市、竹富町が総務省から委託を受け、10年度から導入した「子育て支援ICT基盤整備事業」の一環。事業費約3400万円。


新たに導入するシステムでは、災害発生時、小学校側が在校する児童の安否を確認し、その結果を保護者にメールで配信、またはメールに記載されたリンク先から安否情報にアクセスできるようにする。


同事業で大浜小学校は、すでに災害情報を保護者にメールで一斉送信するシステムを構築している。今年度はシステムの機能を拡張する形になる。市は今後、各学校にシステムの周知を図り、希望する全小学校に導入を進めたい考え。


市企画政策課の大得英信課長は「災害時だけでなく、不審者情報があった場合など、児童の安全を守る面から活用できる」と期待した。


公募業者にプレゼンテーションを行わせ、庁内の選定委員会で業者を決定する。11月中に契約し、年度内にシステムを導入するスケジュール。


同事業では①市役所ロビーに設置したデジタルサイネージ(電子看板)に災害情報を緊急配信する機能②前年度に整備された遠隔相談システムの多角的利用―も進める。公募について問い合わせは同課℡82―1350

 


11月13日(日)

今年度は500万円規模

 アトム通貨 流通順調

来年度から本格的な導入に取り組むアトム通貨 来年度から本格的な導入に取り組むアトム通貨

 石垣市商工会(宮城隆会長)のいしがきブランディングプロジェクトが推進するアトム通貨がこれまでに100万円の取り扱いとなっていることが12日までに分かった。市商工会の平田睦事務局長によると「社会実験としては順調な滑り出し」と評価。石垣島マラソン後に行われる交流会での配布(400万円分)も決定しており、今年度は500万円分の取り扱いが確定。来年度以降は本格的に地域通貨としての普及に取り組む。しかし、利用者からは、「利用できる店舗が分からない」との声があり、通貨の広報活動や加盟店の明確化に課題がありそうだ。

 

 

 アトム通貨は、イベントの主催者が、ボランティアで参加した人々にお礼として配布するいわば商品券のような制度。事業者は、来店者への特典のような形でも配布できる。配布者は、商工会に申請を行い、現金分のアトム通貨(1円=1馬力)を受け取る。

 

通貨が使える店舗は、事業者がアトム通貨加盟店としての登録が必要。使用された通貨は商工会で換金する。レートは配布者と同じ1馬力=1円。

 

平田事務局長によると、アトム通貨の配布は7日現在で約100万円。石垣島まつりのボランティアに会場での食事用に配布したものが大部分を占める。また、来年1月に開催予定の石垣島マラソンでも出場者に配布。これまでの交流会会場で使われていた食事券をアトム通貨に切り替えることが決まり、今年度は、500万円分が流通する。「社会実験としては、順調な滑り出し」との評価だ。

 

当初、市役所通りの36店舗でスタートした加盟店も70店舗余に増加。来年度以降は本格的に地域通貨としての普及に取り組む。

 

しかし、順調さをアピールするアトム通貨は、配布者が行政機関が行うイベントに頼っている面がある。加盟店主も「これまでは、ほとんど見ることがなかったが、石垣島まつり後に、やっと見るようになった」と話す。

 

石垣島ビール(株)の塩谷篤代表取締役は「社会実験としては順調。本格的な取り組みとなれば、年間1億円規模の流通額が欲しい」との考えを示している。

 

さらに、加盟店の経営者のなかでもアトム通貨への理解が違う。買い物をする際、アトム通貨で足りない分を現金で支払ってもらう仕組みだが、「通貨と称しているからには、お金と同じようにおつりは渡せるはずだ」と話す経営者もいて、認識の統一がされていない。

 

また、利用者からは、「利用できる店舗が分からない」との声もある。加盟店となっているコンビニエンスストア関係者からも「加盟店であることを明確に示すものがない」との声。先日交付された「まちの駅のぼり旗」のようにアピールする物が必要と指摘。広報活動や加盟店の明確化に課題がありそうだ。

 

11月12日(土)

ケーキも作れた

 真栄里公民館で高齢者料理教室

カラフルケーキづくりに取り組む男性の受講者=11日午前、真栄里公民館 カラフルケーキづくりに取り組む男性の受講者=11日午前、真栄里公民館

石垣市地域包括支援センターによる食生活改善推進事業「高齢者調理教室」が11日、真栄里公民館で行われ、真栄里老人クラブ若竹会(仲山忠篤会長)の23人が調理実習に取り組んだ。


 事業は、高齢者やその家族を対象に食生活改善を支援することが目的。食生活の重要性をはじめ、低栄養予防や転倒予防も学ぶ。若竹会はこのほかに転倒予防教室も実施し、健康増進に取り組んでいる。


この日は真栄里地区の市食生活改善推進員(ヘルスメイト)が講師を務め、塩分控えめで多くの食材を取れるよう献立された「くりご飯」「秋刀魚の南蛮煮」「カラフルケーキ」など5品目を調理した。


受講生には男性の姿も見られ、グループ内で役割分担しながら料理に取り組んでいた。


 

11月11日(金)

きょうから公開

 協議会議事録 採択過程明らかに

教科用図書八重山採択地区協議会は今年の中学校教科書採択に関する公文書を11日から一般公開する。協議会の議事録のほか、通知文などの資料も公開の対象になる。育鵬社の公民教科書採択をめぐり反対運動が激化する中、教科書採択の過程を明らかにすることで、教科書がルールに従って適正に採択されたことをアピールしたい考えだ。


一般公開の対象となるのは①協議会の総会、教科書選定の会合、役員会の議事録②音声データ③協議会調査員が作成した教科書の報告書④通知文―など。30日まで市役所の市政情報センター内で公開する。


9月8日に開かれ、東京書籍の公民教科書を採択した全教育委員による協議については「事務局がどこかはっきりしない」(市教委)ため、議事録を作成していない。


協議会は当初、3市町が同一の教科書を採択したあとに議事録を公開することを申し合わせていたが、公民教科書を一本化できない状況が長期化している。


一方で議事録などの情報公開請求が相次いだことから、協議会事務局の市教委は1019日、協議会委員に対し、文書で公開の是非を問い合わせ、委員の意見を踏まえ、同31日に公開を決定した。


10日に記者会見し、文書の一般公開を発表した玉津教育長は「これまでは市の情報公開条例に基づいた請求に対応して公開してきたが、今後は一般の市民や町民にも公開する」と述べた。

 


 教科書議事録公開 以前は記録なし

教科書問題で、八重山採択地区協議会が公文書などの一般公開を決定。関心のある住民は、誰でも議事録を閲覧でき、教科書採択に至る過程を知ることができるよ うになった。一方で昨年以前の教科書選定では、議事録が作成された形跡もなく、密室性や不透明さが改めて浮き彫りになっている。


今回の一般公開の対象は議事録だけでなく、音声データや通知文なども含む。委員名などの個人情報を除き、徹底した情報公開に踏み切った。会長の玉津博克石垣市教育長は「情報公開に関しては、従来とは全く比較にならないほど進歩した」と強調する。


育鵬社の公民教科書採択に反対する側からは、教科書選定の会合が非公開だったことや、無記名投票を採用したことに対する批判がいまだに根強い。しかし協議会は従来から非公開だった。


市教委によると、過去の教科書選定でどういう審議があったかに関しては、議事録ではなく、事務局が話し合いの結果をまとめたA4のメモ1枚が見つかっただけだという。


議事録が作成されなかった大きな理由は「議事そのものがなかったため」(玉津教育長)だと見られる。


形だけの協議会を開き、調査員(教員)が行った各社の教科書の「順位付け」「絞り込み」を安易に追認していた実態が浮かび上がる。それが情報公開や、説明責任に対する意識の低さにもつながった。


崎原用能与那国町教育長は、こうした従来の手法を「旧態依然としていた」と批判する。


県内でも八重山以外の他地区では、調査員の「順位付け」が現在でも行われている。玉津教育長の主導で「協議会に責任と権限を取り戻す」改革を断行した八重山は、むしろ「先進例」だった。


「周囲の無理解」との闘いが続く玉津教育長。記者会見で「なぜ八重山だけを(批判の)ターゲットにするのか。他の協議会がどうなっているのか、客観的な調査をしてほしい」と訴えた。

 

 教育長、改めて発言否定 「教科書読んだと言えばいい」

教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が「教科書を読んでいなくても読んだと言えばいい」と発言したと一部マスコミで報じられたことについて、玉津教育長は10日の記者会見で「(発言は)存在しない」と述べ、報道を否定した。


協議会会合の議事録では、玉津教育長に該当する発言はなかったことが確認された。ただ「建前上、基本的には、全部の教科書は見るということでの話し合い」「裏の話で、全部は見れないということであれば…」と述べており、この発言が誤認され、一部報道につながったと見られる。


玉津教育長は、当時の経緯について「教科書を読めないという委員がいるので、読まないといけないですよ、とアピールする気持ちだった。『読まなくてもいい』とは言えない。私のつらい気持ちも分かっていただけると思う」と訴えた。


「教科書を読めなない」と主張する委員が出たことについては「これまでの協議会では、委員が教科書を読まなくても(調査員が)順位を付ければ役割を果たせるという流れがあった」と指摘。


今後に向け「教科書をしっかり読むという意識を高めたい。(選定手法を)改善し、子どもたちに、いい教科書が届くよう努力を続けたい」と強調した。

また「読んだと言えばいい」発言を報じたマスコミ各社に対し「発言は確認できなかったと県民、市民に伝えるべきだ」と報道の訂正を要請。これに対し、報道陣からは「発言があったかどうかは問題ではない」と反発する声が相次いだ。


11月10日(木)

生産者の生活守る

 母親2人「東書版を」

国民の権利を行使して司法の場で教科書問題を明らかにしたいと言う原告(写真右から2人)と井口弁護士=石垣市役所 国民の権利を行使して司法の場で教科書問題を明らかにしたいと言う原告(写真右から2人)と井口弁護士=石垣市役所

 八重山地区の中学校公民教科書採択問題で、石垣市の公立校に子ども通わせる母親2人が、石垣市教育委員会を相手取り、東京書籍版教科書の無償配布を求め9日、那覇地裁に提訴した。


国、県、八重山の教育委員会を巻き込んだ教科書問題は、提訴によって司法の場で争われることになり新たな段階を迎えた。原告代理人によると、年末から年明けにかけ、第1回口頭弁論が開かれる見込み。

 教科書の採択手続をめぐる訴訟は全国初という。


 訴状によると、公立校の教科書は、地方教育行政法と教科書無償措置法によって、地域内で同一の図書を利用し、無償で提供しなくてはならない法的義務があると指摘。


 その上で、教科書採択の経緯を時系列で記述し、育鵬社版を選定した協議会(8月23日)は無効と主張。東京書籍版を採択した地区の全員協議会(9月8日)が有効としている。


 原告の母親は、親権者として法的に有効な選定を経た、子どもの教科書(東書版)を無償で受けとる権利があるとして、石垣市教育委員会に権利の確認を求めている。


 市役所で会見した原告の母親2人は匿名を希望し「新聞を読んでも教科書選定の経緯が分からない。思想にとらわれず法廷の場で明らかにしたい。家族も応援してくれる」とそれぞれの言葉で語った。


 代理人の井口博弁護士は「教科書の内容は裁判では問わない。どの協議会の採択が法的に有効かと、原告の訴えの利益の存在が争点。原告は今後増える可能性がある」と述べた。


 原告団は、玉津博克市教育長と与那国町の崎原用能教育長、県と文科省の教科書担当者を証人要請していく。


 市教育委員会は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。


 

11月9日(水)

医師派遣を要請

 中山市長、石原都知事に

県立八重山病院が慢性的な医師不足に悩んでいる現状を受け、石垣市の中山義隆市長が東京都の石原慎太郎都知事に対し、同病院への医師派遣を要請していたことが8日分かった。石原都知事は、担当部局に検討させる意向を示したという。



中山市長は「石原都知事は国境離島の厳しい状況について理解がある。年1人くらい安定的に医師を派遣してもらえないかお願いした」と話し、医師派遣の実現に向け、今後、改めて都へ要請に出向く考えを示した。


都は、将来地域医療に従事する医師を養成するため「地域医療医師奨学金制度」で、毎年、3大学医学部の学生25人に奨学金を貸与している。


中山市長は取材に対し「都が医師を養成していると聞いたので、1人でも2人でも、職員として医師を派遣してもらえないかと考えた」と説明した。都議を通じて 水面下で打診し、2日に石原知事と東京で面会する約束を取り付けた。当日は石原氏の都合で直接は会えなかったが、秘書官と面会し、市の要望事項を伝えた。


知事からはのちに、中山市長に電話があり「都も医師不足だが(市の要請は)担当部局に検討させる」と回答したという。


八重山病院の松本廣嗣院長は「眼科や小児科、外科も医師不足。ルートを作ってコンスタントに医師を回してもらえるのであれば、ありがたい」と期待した。


中山市長は「医師不足問題では八重山病院だけが頑張るのではなく、行政も動かなくてはならない」と強調した。

 


ギネス記録に手応え

 串焼き試作会19.9m

ギネス世界記録に挑戦する串焼きを試作する参加者=8日夜、県建設業協会八重山支部事務所 ギネス世界記録に挑戦する串焼きを試作する参加者=8日夜、県建設業協会八重山支部事務所

27日の石垣牛大バーベキュー大会(主催・同実行委員会)に向け、ギネス世界記録に挑戦する串(くし)焼きの試作会が8日夜、市内で開かれた。ギネス世界記録の8・74㍍を上回る19・9㍍の串焼きで、記録を「非公認達成」。実行委員長の中山義隆市長は「本番で成功できるという確信を得た。石垣牛を世界に発信したい」と笑顔を見せた。


本番ではギネス世界記録挑戦に500人の参加を見込んでいるが、この日は実行委関係者70人が参加。51㌔の牛肉を手のひらほどのサイズに切り分けたあと、長さ32㍍のステンレス製の串に一つずつ差し込んだ。


焼き台に乗せて、あぶると出来上がり。参加者は、記録達成への期待に胸をふくらませながら、舌鼓を打った。

 


11月8日(火)

石垣市商工会と犬山市商工会議所 提携30年

 行政レベルも友好を

姉妹提携30周年式典で握手する宮城会長と日比野会頭(7日午前) 姉妹提携30周年式典で握手する宮城会長と日比野会頭(7日午前)

石垣市商工会(宮城隆会長)と愛知県犬山市商工会議所(日比野良太郎会頭)の姉妹提携30周年記念式典が7日、市内ホテルで開かれた。犬山市から32人が参加し、節目の年を盛大に祝った。犬山市側からは、民間レベルだけでなく、行政レベルでの友好関係締結についてもラブコールがあった。


市商工会と犬山市商工会(当時)は1981年6月、両市に縁が深い名古屋鉄道㈱を通じて姉妹提携。親善友好団や少年少女合唱団の派遣、物産展開催などを通じて交流を推進してきた。4月には犬山市で提携30周年記念式典が開かれていた。


この日の式典で宮城会長は「いっそう友好の絆を深め、商工業の振興と地域経済の発展へ歩みたい」と式辞。日比野会頭は「石垣の皆さんには、いつも優しく親切に接していただいている。そういう心を勉強して帰る」と応じた。宮城会長と日比野会頭は、30周年記念誌を交換した。


犬山市の田中志典市長は「行政間でも何らかの交流をする機が熟した」と述べ、来年の石垣市政65周年に向けて交流開始を要望した。


中山義隆市長は、行政レベルでの交流について「ありがたく受け止めている。友好関係締結を進めたい」と前向きな姿勢を示した。式典後は祝賀会が開かれた。


11月7日(月)

八重山で修学旅行を

 台湾側「水産校 実習も」

林蘇澳鎮長と八重山の3市町が会談した=6日午前、市役所 林蘇澳鎮長と八重山の3市町が会談した=6日午前、市役所

石垣市を訪れている市の姉妹都市、台湾蘇澳鎮の林騰煌(リン・トンファン)鎮長らを迎え、中山義隆石垣市長、川満栄長竹富町長、外間守吉与那国町長は6日、 市役所で会談し、今後の交流推進について意見交換した。台湾側からは、八重山へ修学旅行生を送りたいという要望などが出た。

 


与那国町は昨年から、中学生の修学旅行を台湾で実施しているが、八重山が台湾の修学旅行を受け入れた例はない。蘇澳鎮の漁協長、陳春生氏は「水産学校の卒業旅行や、実習の受け入れに協力してもらえれば幸い」と求めた。


一方、川満町長は「竹富町も台湾に修学旅行を送りたい。着々と準備を進めており、ぜひ実現したい」と述べ、竹富町から台湾へ修学旅行生を送る考えを明らかにした。


石垣市は蘇澳鎮、与那国町は花蓮市と姉妹都市提携しているが、竹富町と台湾の地域間交流は進んでいない。林鎮長は「どこかと提携してはどうか」と述べ、台東県東部の成功鎮などの名前を挙げ、仲介を検討する考えを示した。


川満町長は「まず視察をするところから始めたい。前進させたい」と前向きな考えを強調した。


中山市長は「台湾と八重山の交流推進が両地域の発展につながる」と述べた。外間町長は、台湾から3市町を観光する日帰りまたは1泊の観光ルート開発を提案した。

 


11月5日(土)

教科書問題で全国・県紙社説の比較

 文科省批判は共通 提言も国方針変わらず

八重山地区の公民教科書問題で、中川正春文科相が竹富町を教科書無償給与の対象外とする方針を示したことを受け、県紙、全国紙が社説で批判を展開している。


▽国は早急な法改正を―沖縄タイムス

沖縄タイムスは文科省方針を「あまりにも稚拙で愚かな収拾案としか言いようがない」と苦言を呈した。


義務教育の無償を規定した憲法26条に抵触する可能性が指摘されているとし「『なぜ子どもにペナルティー(罰)を与えるのか』という慶田盛安三竹富町教育長の憤りはもっともだ」と竹富町教委に共感。


教科書無償措置法と、地方教育行政の矛盾を「国が放置してきたことが問題の長期化、混乱の一要因だ」として、国は早急に関係法の矛盾を検証し、新たな採択ルールを示すべきだとしている。


▽文科相の解釈は身勝手だ―琉球新報

琉球新報は、文科省方針が憲法違反、教科書無償措置法違反だという指摘に「真摯に向き合うことが先決」とし「文科省は今後、こんな手前勝手な解釈で教育行政を進めるのか」と疑問視する。


混迷の発端は、八重山採択地区協議会の玉津博克会長が「(教科書の)順位付け廃止、調査員の独断選定、協議会を非公開とし選定を無記名投票とするなど、不公正な手続きで採択方法を次々と変更したことにある」と指摘。


「何よりも文科省は、一本化に向けた道筋を明確に示す義務がある」とした。


▽町に矛盾押しつけるな―朝日新聞

朝日新聞は「国が放置してきた制度の矛盾のつけを、小さな町に押しつける。そんなやり方ではないか…これでは、小中学校で学ぶ子どもの教科書は国の費用でまかなうという制度に、穴があく」と文科省を批判する。


その上で、複数の自治体が同じ教科書を使用する「広域採択制度」が混乱のもとだとし「地域や子どもの事情に合わせ、教科書も色とりどりであっていい。多様な学びを国が財政的に支える。それがあるべき姿だろう」と提言。

「広域採択のしくみはただちに見直す。将来は学校ごとに選べるよう、道をつける」べきだとした。


▽有償は制度を崩壊させる―産経新聞

産経新聞は文科省方針について「法律を破って不当に決められた教科書を有償で容認するのは、金を出せばルール無視が許されるかのような危険な判断である。…文科省は方針を即時撤回し、県や竹富町に適正な指導をすべきだ」と求める。


東京書籍版を採択した全教育委員の協議を有効とする県教委の見解は「到底認められない」とした。


教科書採択制度の見直しを求める声があることについて「竹富町の問題を現行ルールで解決することとは次元の異なる話」として、国はまず、竹富町の決定を正すべきだとした。

 


教科書問題提訴へ

  八重山地区の中学校公民教科書採択問題で、住民の視点で教科書をえらぶ会が4日、9月8日の3市町教育委員で行った全員協議が有効であるとし、石垣市教育 委員会を相手取って行政訴訟を起こすことを発表した。来週中には那覇地裁へ訴状を提出する。提訴によって教科書問題は、司法の場で争われることになり、新 たな段階に入る。


 大浜信泉記念館で開かれた同会主催の「緊急!教科書問題勉強会Ⅲ教科書無償制度を法的に考える」で明らかにした。


原告は小学生をもつ保護者2人をはじめ、同会のメンバー。3市町教育委員で行った全員協議が有効であることの確認を求め、証人尋問を要求する。


この日の勉強会では、行政訴訟に向けた八重山教科書裁判原告団へ参加呼びかけも行われた。

 

 

11月3日(木)

「工事 環境に配慮」

 竹富南航路しゅんせつ 関係者が海域視察

試験工事の現場を視察した関係者たち=2日午後 試験工事の現場を視察した関係者たち=2日午後

 来年6月から予定されている石垣市と竹富町の島々を結ぶ竹富南航路整備事業の試験工事が先月25日から始まっている。2日午後、しゅんせつ試験工事海域の視察が行われ、高速船運航業者や漁業者、関係機関、団体から29人が参加。しゅんせつ試験工事の様子やろ過システムによる濁水対策などを確認した。


試験工事は、小浜―大原間の第2基準経路上と小浜航路上の2カ所で実施され、約1カ月前後の日程を予定。来年の本施工に向けて、汚濁防止枠と汚濁防止膜による2重の汚濁防止対策、強制排水によるろ過システムや汚れを沈殿させる凝集剤での濁水対策の効果を検証していく。


  同日は、小浜―大原間の第2基準経路上の試験工事海域へダイビング船で向かった。参加者らは工事用船舶に乗り換えて、石垣港湾事務所の職員から説明を受け ながら、グラブバケットによるしゅんせつや土砂の積み込みの様子、高分子マイクロフィルターを使ったろ過システムの流れを見学した。


 参加した竹富町の勝連松一企画財政課長は「大がかりなもので驚いたが、環境に配慮している工事。30数年間、要望してきたことが実現して嬉しい。漁業者や船舶会社など関係者に感謝しており、今後も協力してもらいたい」と述べた

 


11月2日(水)

伊良皆氏「出馬」口に

 自民党石垣常任総務会 一本化方針で一致

来年6月の県議選石垣市区(定数2)に向け、自民党石垣支部(支部長・砂川利勝市議)は1日、市役所内で常任総務会を開いた。砂川支部長(48)、市議会議長の伊良皆高信氏(51)が出馬に意欲を示し、今後、支部として候補者の一本化を図る方針で一致した。ただ市議からは、支部とは別に出馬を検討している八重山経済人会議代表幹事の大浜一郎氏(49)を支持する声が上がっており、大浜氏が出馬すれば、分裂選挙となる可能性が高まる。

 


支部が県議選に向けて会合を持つのは初めて。与党のうち公明党市議と石垣涼子氏を除く市議10人が出席した。砂川支部長は「分裂せず、一枚岩で戦っていこう」と結束を訴えた。「出馬できれば、八重山のために一生懸命やりたい」と自身の意欲も強調した。


伊良皆氏は市議団を前に初めて出馬への意欲を明言。「ぜひ立候補したい。一本化に向けて話をしていきたい」と述べた。


仲間均幹事長は、候補者は市議から出すべきだという考えを示したが、大浜氏を支持する砥板芳行氏は「大浜氏も含めて一本化を図るべきだ」と主張した。今後、執行部と大浜氏を支持する若手市議の間で亀裂が生じる可能性がある。


竹富町議会議長の西大舛高旬氏(63)も出馬に意欲的な発言を繰り返していることを受け、候補者の一本化に向けた調整では、竹富町、与那国町の保守系町議らの意向も尊重していくことを確認した。


県議選には革新陣営から、県議会議長の高嶺善伸氏(61)が出馬する。

 


自主納税アピール

 税の滞納一掃キャンペーン

税の滞納一掃キャンペーン」の出発式に参加する職員ら=1日午後、市役所前 税の滞納一掃キャンペーン」の出発式に参加する職員ら=1日午後、市役所前

 八重山地区個人住民税徴収対策協議会と八重山地区税務協議会による2011年度「税の滞納一掃キャンペーン」の出発式が1日午後、石垣市役所で開かれた。同キャンペーンは1231日まで実施され、納期内納付の自主納税を呼びかけるほか、差押えやタイヤロックの滞納処分が集中的に行われる。


同キャンペーンは今年で4年目。全県的な取り組みの「県税・市町村税滞納整理強化月間」と同一期間で実施される。


 出発式には関係機関の職員らが参加。主催者を代表して、八重山地区個人住民税徴収対策協議会会長の漢那政弘副市長は「市では滞納額は年々減少しているが、滞納が一掃するよう一緒になって頑張っていきたい」とあいさつ。

 

八重山地区税務協議会会長の岡村盛良石垣税務署長も「期限内納税の推進を図り、自主納税する意識を持ってもらいたい」と滞納一掃を呼び掛けた。


 このあと、大型店舗前でポケットティッシュやチラシを配布した。


 八重山事務所県税課によると、10年度の地方税の滞納総額は約7億1800万円。滞納者1613人に対し、預貯金、給与、不動産などの差し押さえを実施。また自動車7台のタイヤロック、民芸品など動産や不動産11件の公売も行った。


11月1日(火)

大浜一郎氏 出馬へ

 友の会要請に「大いに名誉」

県議選に向け、大浜氏に出馬要請する同期生たち(31日午後) 県議選に向け、大浜氏に出馬要請する同期生たち(31日午後)

来年6月の県議選石垣市区(定数2)に向け、八重山経済人会議代表幹事で㈱石垣エスエスグループ代表取締役社長、大浜一郎氏(49)を推す「同期友の会」(大浜透代表)、建設産業関連事業者有志の会(黒嶋克史代表)のメンバーは31日、市内の同社事務所で大浜氏に出馬要請した。大浜氏は「熱い要請を受けたので、重く受け止める」と述べ、前向きに検討する考えを示した。


出馬要請に訪れたのは同期生など約20人。大浜代表は、離島の経済状況は大変厳しいとした上で「新しい発想と経済感覚を政治に反映させなくてはならない」と大浜氏の手腕に期待を寄せた。


大浜氏は「要請を受け止め、しっかりした答えを発表できるのではないかと思う」と述べ、今後、家族など関係者と話し合う考えを示した。


要請後、報道陣に対し大浜氏は「地域のためにお役に立てればと、これまで民間人の立場でやってきた。皆さんのお力で(出馬)させていただけるのであれば、大いに名誉なことだと思う」と、前向きな姿勢を強調した。


出馬する場合、県政にどう臨むかについては「仲井真弘多知事をしっかり支える立場」と言明。過去2回の市長選で出馬の打診を受けながら、固辞したことについては「そのときには、どうしてもできない事情があった」と説明した。


大浜氏は2010年の市長選で中山義隆氏の選対副本部長、知事選で仲井真氏の八重山後援会支部長を務めた。


県議選には保守陣営から、自民党石垣支部から支部長で市議の砂川利勝氏(48)、市議会議長の伊良皆高信氏(51)が名乗りを上げており、竹富町議会の西大舛高旬議長(63)も意欲的な発言を繰り返している。革新陣営からは県議会議長の高嶺善伸氏(61)が出馬する。


無償除外 慎重に

 県教育長ら 文科省に要請

森裕子副大臣と面会する県教委の大城教育長、狩俣義務教育課長=31日午後、文科省 森裕子副大臣と面会する県教委の大城教育長、狩俣義務教育課長=31日午後、文科省

沖縄県八重山地方(石垣市、竹富町、与那国町)の中学公民教科書採択問題で、同県の大城浩教育長らが31日、文部科学省を訪れ、採択地区協議会の決定に反 し、東京書籍版の採択を決めた竹富町に教科書の無償措置を適用しないとする同省の判断に、慎重な対応を求めた。大城教育長は報道陣に対し、文科省の考えは 「あまりに飛躍しすぎている」と述べ、引き続き3市町教委の合意形成を図る考えを示した。


東京書籍版を多数決で決定した3市町の全教育委員による協議が有効とした上で「竹富だけ無償としないのは憲法違反との意見もある」と述べた。

 文科省側は森裕子副大臣らが対応。石垣市、与那国町の両教育長がこの協議を無効と訴えていることを受け、協議より前に採択地区協議会が育鵬社版を選んだ決 定が有効との認識を示した。さらに、このまま一本化できなければ、竹富町に無償措置を適用できないとの方針を重ねて伝えた。


県教委が作成した資料では、育鵬社を選定した八重山採択地区協議会の答申について「法的拘束力を有しない答申を守るか否かによって、教科書の無償か否かが決まるとする考えは理解しがたい」と、文科省方針を批判。


3市町の教育委員全員による協議が「法にのっとった唯一の手段」だとし、県教委が竹富町教委に対し「答申通りに採択するよう求めることにはかなりの無理がある」としている。


各教委の採択が答申と異なった場合、「3市町教委の教育委員全員の投票で決する」などとあらかじめ定めておけば、今のような事態は起きなかったとした。


混乱の収束先送り

  「合意形成」困難な状況

教科書問題で県教委は31日、 育鵬社の公民教科書を選んだ石垣市、与那国町教委を支持する文科省の方針に従わない考えを改めて示した。県教委が作成した資料では、教科書の一本化が遅れ ている原因は「3市町教育委員会が協議を行わないことであり、是正すべきはその点にある」と、責任を3市町教委に押しつけるような主張を展開。「開き直り」とも取れる対応に終始し、混乱の収束は、さらに先送りされる結果になった。


今回の事態について県教委は、3市町教委の採択が分かれる事態をあらかじめ想定し、対応策を明確化すべきだったと総括。


しかし市教委幹部は「6月に玉津博克教育長が県教委に出向き、3市町教委の採択が分かれた場合の対応について相談していた」と明かす。「その時は何の指導助言もなく、今になって後出しじゃんけんのように、自分がジャッジ(審判)だと言うのか」と県教委の主張を疑問視した。


大城教育長は報道陣に対し、育鵬社版を選定した採択地区協議会の答申について「あくまでも答申。それが即結論と言うのはあまりに飛躍し過ぎている」と文科省の方針を批判した。


しかし文科省は、3市町教委が協議して、答申以外の教科書を採択することは可能だとしており、答申が「即結論」だとは説明していない。


文科省が示した法解釈などに対する理解の浅さも見え隠れするが、市教委幹部は「(育鵬社版に反対する)世論に突き上げられて、挙げたこぶしを下ろせない」と 冷ややかな見方を示す。市教委、与那国町教委の不信感は募る一方で、県教委が強調する「合意形成」は極めて困難な状況だ。

 

10月31日(月)

大浜一郎氏が出馬検討

 県議選石垣市区  同期生あす要請

大浜一郎氏 大浜一郎氏

来年の県議選石垣市区(定数2)に、八重山経済人会議代表幹事で㈱石垣エスエスグループ代表取締役社長の大浜一郎氏(49)を推す声が強まっている。同期生のグループが31日、大浜氏に出馬要請する予定だ。大浜氏は29日、八重山日報社の取材に対し「要請書をもらってみないと分からない」と述べ、出馬要請があれば検討する考えを示した。

 

 

大浜氏が出馬すれば、保守陣営は分裂選挙となる可能性が高まる。

大浜氏を推す同期生は、出馬に向けた環境づくりを推進。同期生の1人は「経済界のトップを走っている人で、県政にもパイプがある。離島振興にも力を発揮できる。出馬要請に賛同する同期生は現時点で100人以上いる」と述べており、一両日中に組織を構築した上で、出馬を求める文書を作り、本人に手渡す考えを示 した。

 

大浜氏は政財界に人脈を持っており、地元の企業経営者を中心に待望論が根強い。昨年の知事選では当選した仲井真弘多氏の八重山後援会支部長を務めた。過去2回の市長選で自民から出馬を打診されたが、いずれも本人が固辞してきた。

 

企業グループの代表として多忙な日々を送っているだけに、関係者からは「本当に出馬できるのか」と危ぶむ声もある。

 

2012年6月に予定されている県議選では保守陣営の辻野ヒロ子氏が引退し、市議で自民党石垣支部長の砂川利勝氏(48)、市議会議長の伊良皆高信氏(51)が出馬に意欲を示している。革新陣営から県議会議長の高嶺善伸氏(61)も出馬する。

 

自民党支部「大浜氏推さず」

 保守分裂の可能性も

県議選に八重山経済人会議代表幹事の大浜一郎氏を推す声が強まっていることについて、自民党石垣支部の仲間均幹事長(市議)は29日、「自民党として大浜氏を推薦することはない」と述べ、支部が今後進める候補者選考で、大浜氏を対象外とする考えを示した。

 

理由として「自民党は過去2回の市長選で出馬を打診したが『政治家にはならない』と言ってはっきり断られた。今になって(大浜氏の出馬を)のむことは有り得ない」としている。

 

支部からは市議の砂川利勝支部長と伊良皆高信市議会議長が出馬に意欲を示している。支部は今後、竹富町、与那国町の保守系議員とも人選を調整し、候補者を一人に絞り込む考え。

 

仲間支部長は「八重山圏域のために、経験と実績を踏まえて判断せざるを得ない」と話し、今回の県議選の候補者には政治家が望ましいという考えを示した。

 

 

廃止反対の声噴出

 県立図書館八重山分館  県「上の判断必要」

自由討論会で八重山分館の廃止反対を訴える参加者=29日午後、市立図書館 自由討論会で八重山分館の廃止反対を訴える参加者=29日午後、市立図書館

県が県立図書館八重山分館の廃止を検討している問題などを受け、県教育委員会と石垣市、竹富町、与那国町の教育委員会は29日、「八重山全体の図書館サービスを考える自由討論会」を市立図書館で開き、約30人が参加した。廃止に反対する声が相次ぎ、会合後、県教委生涯学習振興課の親川實課長は「皆さんの存続の意思は固いものがあると認識した」と述べた。

 

 

会合で親川課長は「存続、廃止を前提とせず、幅広く意見交換する」と述べたが、参加者からは「答えになっていない」などと、県の対応を批判する声が相次いだ。

 

県立図書館八重山分館の存続を求める会の大田静男世話人は、県の2月補正予算で、本館の修繕事業などに国の補助事業で4億円余の予算が投じられたことについて「分館の建物が老朽化しているから、一刻も早く壊さないといけないと言っていたのに(修繕などは)本館だけやっている。分館には何も予算がついていない」と怒りをあらわにした。

 

さらに「分館をつぶすのか、つぶさないのか、本音を出してほしい」と問いただした。親川課長は「もっと上の判断が必要だ。持ち帰って検討する」と答えた。

 

県教委の説明では、分館の貸し出し冊数が減少傾向にあることなどが示されたが、参加者の1人は「図書館は利用者数、貸し出し冊数だけでは計れない価値がある。病院のようなもので、きょうは必要ないが、あすは必要になるかもしれないインフラだ」と訴えた。「図書館があるだけで住民は安心する」と存続を求める声もあった。

 

従来、分館が竹富町の離島や与那国町を対象に実施していた移動図書館が、2010年度から本館の事業に位置づけされたことについて「分館の廃止を前提として、本館で対応しているのではないか」「分館のほうが、きめ細かくニーズを把握できる」と疑問視する声が出た。

 

県立図書館の島袋道男館長は「館外協力用図書の蔵書数は本館が多く、新しい本も提供できる」と述べ、本館の重点事業として実施していると強調した。

大田世話人は、自由討論会の開催について「県は同じようなことを何回もやっている。廃止の話はこれ以上出してほしくない」と抗議。

 

県教委側は「話し合いを重ねていこうというのが県の結論。市民レベルの意見を幅広く聞きたい」と趣旨を説明し、理解を求めた。

 

 

10月29日(土)

介護保険料アップ

 12年度以降 給付見込み6億円上回る

介護保健事業計画を審議した策定委員会のメンバー=28日午後、市役所 介護保健事業計画を審議した策定委員会のメンバー=28日午後、市役所

石垣市高齢者福祉・第5期介護保険事業計画策定委員会(川平永光委員長)の第3回会合が28日、市役所で開かれた。事務局の市側は、2009年度から3年間(今年度は8月まで)の介護給付費が、現行の第4期介護保険事業計画の見込みを約6億円上回る30億8319万円に達したことを報告した。


介護給付費が見込みを上回ったことによる介護保険料の不足額は7000万円以上に上る見込み。策定委は次回以降で12年度以降の新たな介護保険料額を審議するが、市側は「(不足分は)第5期介護保険事業計画の保険料に加味させていただく」と言明。介護保険料の値上げは不可避という見方を改めて示した。


市介護長寿課によると、保険料の不足額は、国、県、市町村が積み立てた財政安定化基金を取り崩して穴埋めするため、赤字にはならないという。


介護給付費が見込みを上回ったのは、通所介護事業所の増加や、介護報酬改定に伴う国の特例交付金の減などが要因。


 介護給付費とは逆に、介護予防事業費は見込みを約5450万円下回った。委員からは介護予防事業の強化を求める声が上がり、事務局は「専門職などのマンパワーの確保ができず、事業推進に支障をきたしているところがあった。昨年度から徐々に体制を整えつつある」と説明した。次回会合は11月の予定。


 

来週にも県教委に伝達

 竹富町の無償除外 文科省「結論は育鵬」

中川正春文部科学相は28日の記者会見で、沖縄県八重山地方(石垣市、竹富町、与那国町)の中学公民教科書採択問題について、竹富町に教科書の自費購入を求めるという文科省の判断を、来週中にも県教育委員会に伝えると明らかにした。


採択地区内で同一の教科書を採択するよう求めた教科書無償措置法と、採択権は教委にあると定めた地教行法について「こういうことが何回も起こってはならない。2つの法律をどう見直していくかという議論はしていかないといけない」と述べ、法改正を検討する考えも改めて示した。


竹富町に教科書の自費購入を求める方針は、文科省を訪れる予定の県教委の担当者に直接伝える。中川文科相は「県教委のリーダーシップで、何とかコンセンサスを作る努力をやってほしいと言ってきた。その結果どうなったか、報告を聞かせてほしい」と述べた。


竹富町教委に自費購入を求めた理由については「(教科書選定の)手続きに従った結論は育鵬社」とした上で「教委の採択権をしんしゃくすると、強制的に育鵬社を使えというわけにはいかない」と述べた。


竹富町教委は8月、八重山採択地区協議会が選定した育鵬社版とは異なる東京書籍版の採択を決定。中川文科相は今月26日の衆院文部科学委員会で、一本化できなければ教科書の無償措置を竹富町に適用しない考えを表明した。

中川文科相は「まだ地域で議論があるだろうから、まとめる努力をしてほしい」と重ねて求めた。


 

10月28日(金)

「東書」版採択 署名活動へ

 住民の会 文科相発言に抗議

[写真説明]「軽はずみで絶対許せない」など、中川文科大臣発言に批判が続出した会見=石垣市役所   [写真説明]「軽はずみで絶対許せない」など、中川文科大臣発言に批判が続出した会見=石垣市役所  

竹富町への公民教科書無償給付を停止するとの中川文科相発言を受け、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会(村田栄正ら共同代表)は27日、発言への抗 議と撤回を求める声明を出した。住民の会は近く市内で、八重山地区の公民教科書に東京書籍版採用を求める署名活動とチラシ配布を展開する。声明文はこの日、中川大臣あてに送付された。

 

 

声明で、中川大臣発言は「一般法と特別法の観点からも誤っている」と指摘。県教委の見解も踏まえ、東京書籍版が採択された全員協議会(9月8日)が合法的な決定であると主張する。


さらに発言は、竹富町の教科書採択権を認めてはいるものの、東京書籍版を自治体が購入して生徒に配布するのは、国に対し義務教育の無償化を定める憲法26条に違反すると断じている。


 石垣市役所で会見した村田共同代表は「軽はずみで、絶対許せない発言だ。国に代わり町が教科書費用を負担するのは問題。自治体が費用負担を拒否したらどうなるのか」と疑問を投げ掛けた。


出席者からは「試合の途中で突然ルールを変えられた」「私たちを愚ろうしている」「日替わり発言でそのつど(関係者が)振り回される」など、文科相発言に批判が続出した。


 地域の関心を高め、八重山地区で東京書籍版の統一採択を実現させるため、住民会は準備が整い次第、市内で署名活動とチラシ配布を行う。さらに、全国的な連帯を図るため、マスコミ大手への働き掛けも強化するという。 


 大浜敏夫事務局長は「保護者を含め、住民の力を合わせて、一日も早く問題の解決を図りたい」と強調した。


10月27日(木)

竹富町に自費購入促す

 石垣、与那国は無償支給

竹富町の公民教科書は無償給与の対象にならない、と言明した中川文科相=衆院文部科学委員会(ネットテレビから) 竹富町の公民教科書は無償給与の対象にならない、と言明した中川文科相=衆院文部科学委員会(ネットテレビから)

八重山地区の公民教科書問題で、中川正春文部科学相は26日、 八重山採択地区協議会の答申に従わず、東京書籍版を採択した竹富町について「(公民教科書は)国の無償給与の対象にならない」と明言した。答申通り育鵬社 版を採択した石垣市、竹富町には公民教科書を無償給与する。竹富町が自費で東京書籍版を購入することは認めた。衆院文部科学委員会で答弁した。

 


 教科書の無償給与について定めた教科書無償措置法を適用しない自治体が出れば、1963年の同法制定後初めてとなる。


中川文科相は、協議会の答申について「法の手続きに従ってなされた協議の結果、育鵬社が決まった。竹富町がそれを受けてくれたらいいが、別個の判断をするといまだに言っておられる」と述べ、竹富町の姿勢を批判した。


竹富町に対し「子どもに支障がない対応を考えた場合、竹富町自身の判断でそこを解決してもらう」と指摘、町が自費で東京書籍版を購入することについて「法令上禁止されるものではないという解釈が法制局からも出てきた。これに従って、淡々とやっていきたい」と容認した。


石垣市、与那国町に対しては「教科書の無償給与をすることになる」と述べた。


文科省は近く県教委に教科書一本化の経緯報告を求めた上で、県教委に対し、竹富町が教科書の無償給与対象にならないことを伝える。


衆院文部科学委では瑞慶覧長敏氏(民主)、宮本岳志氏(共産)が教科書問題を質問。


八重山採択地区協議会は8月23日、育鵬社の公民教科書を選定し、3市町に答申。石垣市、与那国町は答申通り教科書を採択したが、竹富町教委は育鵬社版を拒否した。これを受け、9月8日に3市町の教育委員全員が集まって協議し、多数決で東京書籍版を採択した。


しかし石垣市、与那国町は協議の結果を認めず、同省も協議は無効という見解を示していた。