長崎原爆の投下直後に降った放射性物質を含んだ「黒い雨」について、長崎県保険医協会は21日、爆心地から10キロの広範囲にわたって降った可能性があると発表した。同協会が放射線影響研究所(広島市・長崎市、放影研)から入手した資料で分かった。
長崎の黒い雨は、爆心地から東に約3キロの長崎市の西山地区を中心に降ったとされてきた。それ以外の地域でも目撃証言はあったが、まとまった資料の存在が知られていなかった。
資料は、放影研の前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)が、1950年代に長崎、広島両市に住んでいた約12万人を対象に調査したもの。うち約1万3千人が黒い雨に遭ったと回答していた。放影研も21日、この約1万3千人分のデータを保有していることを初めて公表し、詳しく解析する方針を示した。
保険医協会によると、先月下旬に放影研から資料を入手。約1万3千人のうち約800人が長崎分で、それぞれ黒い雨に遭った地点を分析した。これまで知られていた西山地区のほか、爆心地から南に約10キロの旧香焼村(現長崎市香焼町)、同約8キロ西の旧式見村(現同市式見町)でも黒い雨に遭ったとする回答があった。
保険医協会の本田孝也副会長は「今後の解析によっては被爆地域の拡大や、黒い雨の健康被害の解明につながる可能性がある」と指摘している。(江崎憲一)