大分市が生活保護申請を却下したのは違法として、中国籍の女性(79)が却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。古賀寛裁判長は「永住外国人も生活保護法を準用した法的保護の対象になる」として、外国籍であることを理由に訴えを退けた一審大分地裁判決を取り消し、市の却下処分を取り消した。原告側弁護団によると、行政措置としてなされてきた外国人への生活保護を法的保護の対象と認めた司法判断は全国初。
生活保護法は適用対象を日本国民に限定しているが、古賀裁判長は「一定範囲の外国人も、日本人に準じた生活保護法上の待遇を受ける地位が法的に保護されている」と述べた。
具体的には(1)国は1954年以降、外国人にも生活保護法を準用している(2)難民に対し国民と同じ公的扶助を行う難民条約に加入した81年、政府が国会で「外国人にも生活保護を実施しており法改正は必要ない」と答弁した(3)国は90年、生活保護対象の外国人を永住者に限定した-など、法改正はなくとも通知や指示によって事実上、永住外国人にも生活保護を適用してきたことを挙げた。
その上で女性の生活状況などを検討し「急迫した事情がある」として受給資格があると結論づけた。
判決によると、女性は日本で生まれ育った。2006年から家族に通帳を取り上げられるなど生活に困窮し08年12月に生活保護を申請、市は「多額の預金がある」として却下した。
原告側の弁護士によると、女性は今年9月に4度目の申請をし、市は一転して支給を認めた。判決が確定すれば、市は未支給の08年12月-今年9月の保護費を支給することになる。
■大分市の氏田成人福祉事務所長の話 判決内容を詳しく検討し、厚生労働省、県とも協議して対応する。
■厚生労働省保護課の話 判決内容を精査し、大分市に適切に助言したい。
=2011/11/16付 西日本新聞朝刊=