オウム真理教の一連の事件を巡る公判は21日、元幹部の遠藤誠一被告(51)に対する最高裁判決で終結し、教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(56)ら計13人の死刑判決が確定する。刑事訴訟法の規定に従い法務省は今後、死刑の執行を検討していくとみられるが、松本死刑囚側は精神障害があると主張する。果たして執行に至るのか。その可否が、時期とともに注目される。
06年に死刑が確定した松本死刑囚は現在、東京拘置所の単独室に身を置く。関係者の話を総合すると、最近はほとんど言葉を発せず時折小声でなにかをつぶやく程度。日中はほぼ正座かあぐら姿で身動きしない。拘置所職員が食事を手伝うこともあったが、今は自分で食べている。家族が拘禁反応の治療が不十分として起こした訴訟の確定記録などによると、01年3月から失禁し、トイレを使ったのは07年に1度あるだけだという。逮捕時の長髪は短く切られ、ひげも落とした。
風呂や運動を促せば反応がみられるが、家族らの面会には応じていない。関係当局の間では「いろんな見方はあるが、言葉の意味は理解できており、精神障害ではない」として、死刑執行を停止するケースには当たらないとの見解が一般的だ。
刑訴法は判決確定日から6カ月以内に法相が死刑執行を命じなければならないと定めるが、共犯の被告の裁判や本人の再審請求の期間は6カ月に算入しないとしている。全被告の判決が確定することで「共犯者」というハードルは越えた。ただ、松本死刑囚は2回目となる再審請求審(昨年9月請求、今年5月に東京地裁が棄却)が東京高裁で続いている。他の死刑囚も再審請求の動きが目立つ。
一方、政府は「6カ月規定」について「違反しても直ちに問題とはならない『訓示規定』にとどまる」との見解だ。00~09年に執行された死刑囚の判決確定から執行までの平均期間は5年11カ月。法務省は「極刑の執行には慎重に検討を重ねる必要があるため」と説明する。
執行命令は時の法相の姿勢次第という現実もある。鳩山邦夫元法相は約1年の在任期間中、ほぼ2カ月おきに4回で計13人の死刑を執行したが、在任中に執行を命じなかった法相も少なくない。政府の09年の世論調査では死刑「容認」は85・6%に上り、高い支持率の背景にオウム事件があるといわれるが、民主党政権下での執行はこれまで1回、2人にとどまる。
平岡秀夫法相は「死刑制度を国民的議論にする」として省内の勉強会を続けており、今月11日の閣議後会見でも「個々の事案は、死刑が厳しい重大な罰であることを踏まえ慎重に判断する」と述べるにとどめた。
毎日新聞 2011年11月22日 2時30分
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