文部科学省は東日本大震災の経験を未来に生かす「復興教育」に取り組む方針を固めた。非常時にも自ら判断し行動できる「生き抜く力」を育むこと、地域の絆を強めることが柱で、復興に貢献できる人材を育てるキャリア教育も行う。近く省内にタスクフォースを設置。再来年度から実施する教育振興基本計画のメーンテーマとする方針だ。
震災後に文科省が設けた有識者会議では被災地の教訓が話し合われた。一人ひとりが迷わず高台に逃げる「津波てんでんこ」の教えをもとに防災教育に取り組んでいた学校は、助かった子が多かった。生徒らの逃げる姿を見て住民も逃げ、防災教育が地域全体の被害減少につながった例も。住民の絆が強い地域ほど学校の避難所運営がスムーズだったとの指摘もあった。
そこで文科省は「困難を生き抜く力」や「絆づくり」を復興教育の柱に据えることにした。学習指導要領で掲げている「生きる力」にも通じる考え方だ。
岩手県教委が来年度から取り組む「いわての復興教育プログラム」や宮城県教委が打ち出した「志教育」は、震災体験に学びプラスに変える教育や、ふるさと復興を担う人材育成が柱だ。文科省はまずこうした被災地の未来志向の教育を財政支援し、他の各地でも地域の実情に合った防災教育を支援していく方針だ。
幹部7人からなる中川正春文科相直属のタスクフォースを22日にも設置。「地域コミュニティーとの協働」を掲げ、実践的な防災マニュアルづくり▽ボランティアによる放課後学習支援▽復興教育に取り組む大学やPTA、NPO法人への活動費支給を進める。こうしたソフト事業に第3次補正予算と来年度概算要求で計約128億円を計上し、復興教育への取り組みを促す。(花野雄太)