貸しビル、ゲーム業や観光施設などを営む別府市の開世通商社長で在日韓国人2世の金世中(キムセジュン)さん(67)が自伝「はぐれものセジュン伝」を出版した。学生時代のけんかや家出、朝鮮学校の思い出や北朝鮮に渡った恋人との別れと再会などをつづる中で、在日韓国・朝鮮人が置かれてきた状況を淡々と振り返っている。
両親は全羅北道鎮安郡出身。生活のため日本に渡り、北部九州を転々とし、金さんの生後に移り住んだ同市天満の自宅に密造焼酎の蒸留器を設置。近所の在日朝鮮人らが利用し、母は使用料として受け取る焼酎を売りに地域を回り、生活費を稼いだ。教育熱は高く、兄弟は優秀だったが、金さんは家族が集まっている時も離れたところで寝そべる「はぐれもの」だったという。
北九州市の九州朝鮮高級学校ではケンカに巻き込まれ、友人の罪をかぶり退学処分。転校した東京朝高でも駆け落ちしてきた友人を寮でかくまったのがばれ、退寮させられた。
卒業後に北九州市で出会い、結婚まで考えた女性は北朝鮮に帰国。25年後に平壌で再会した後、経済的に支援したことも記した。
ゲーム機リース業を興し、04年には豊後大野市三重町の稲積水中鍾乳洞を買収し、観光業にも乗り出した。パチンコ店や焼き肉店などを営んで生き抜いてきた在日韓国・朝鮮人の大半が自らの歩みを記録していないことに気付き、「自伝出版に応じよう」と開世通商に出版事業部を設置。第1号として「セジュン伝」を出版した。
B5判251ページ。近く発売する。開世通商0977・25・1755。【祝部幹雄】
毎日新聞 2011年10月30日 地方版
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