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社説

コメ出荷停止 検査強化し安全確立を(11月18日)

 政府は、福島市大波地区で今年収穫されたコメの出荷停止を指示した。

 同地区の農家が生産した新米から、初めて国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたためだ。

 福島第1原発事故による食の放射能汚染がコメにまで及んだことになる。農家はその被害者だ。怒りのやり場もないだろう。

 とはいえ、主食の安全が脅かされ、甚大な影響が懸念される以上、厳格な措置はやむを得ない。

 政府と東京電力は被害の補償と同時に、農家が営農の展望を持てるように手だてを尽くすべきだ。

 問題のコメは出荷前の玄米だったが、同じ地区で生産されたコメの一部は既に地元の米穀店などに販売されたという。

 政府と地元自治体は徹底的な追跡調査を行い、疑わしいコメが出回るのを防がねばならない。

 汚染が判明したきっかけは、農家の依頼で農協が独自に実施した簡易検査だった。

 福島第1原発の事故を受け、農林水産省は、収穫前後の2段階に分けた検査を17都県に要請した。この検査で基準値を上回るコメがなかったため、福島県は10月12日に安全宣言を出していた。

 汚染米は二重のチェックをすり抜けたことになり、検査への信頼を揺るがしかねない。

 大波地区は福島第1原発から約60キロ離れた山あいの地域で、局地的に放射線量の高いホットスポットが近くにあった。

 政府や福島県は、早急に同地区の土壌などを調査し、基準値を超えるセシウムが取り込まれた原因を突き止める必要がある。

 今回の事例が特殊なものなのか、検査の方法に不備はなかったか、入念な検証が欠かせない。

 人員や予算面で検査能力には限界がある。

 コメを全量調べるのは困難だとしても、関係機関が協力して、サンプル数や抽出地点を増やし検査の精度を高めてもらいたい。

 セシウムが検出されていないコメまで売れなくなる風評被害を防ぐのは当然だが、低線量被ばくの影響は専門家でも意見が分かれる。

 日常的に食べるコメに微量でも放射性物質が含まれていれば、敬遠する消費者もいるだろう。

 基準値以下でもセシウムが出たコメは、農家への補償を条件に、市場から隔離することも検討すべきではないか。

 消費者と生産者の不安を解消するには、情報公開を徹底し、安全なものだけを流通させる体制を確立するしかない。

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