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文筆における単価の謎

 デジタル時代に入って久しいのに、現在も出版業界で「1枚」といえば400 字詰め原稿用紙のことを言います。「ペラ」という場合には200字詰めのことです。ただし、グラビア系の雑誌では「1ページあたり何万何千円」という計算の仕方が普通で、しばしば「企画全体でいくら」という提示がなされる場合もあります。


 かつての名残で原稿料も「1枚あたりいくら」と換算しますが、18世紀に発明され19世紀に実用化したタイプライターをもつ欧米では、発注分量も稿料も、たいていワード(単語)数で計算しています。日本では「400字あたり」の計算は今後もしばらく慣習として残るでしょう。


 最近は原稿依頼時に、例えば18字×560行で、などと提示されるケースが増えてきているのですが、原稿用紙を使っている書き手もパソコン画面で横書きしている人も、それを20や40といった桝目(字詰め)の数で割り算しているはずです。


 ともかくこうして、原稿料の単価というものが存在します。単価がなければ、支払いのとき困ってしまいます。布の売買だってそうでしょう。


 しかし考えようによっては、文章が長ければ長いほど原稿料が高くなる、というのは不思議な気がしないでもありません。1時間半の映画は1,800円で3時間の長編は3,600円というわけでもないし、同じ取材をして3枚のコラムなら3万円なのに30枚書いたら30万円というのは、ちょっと理不尽な感じすらします。そこに10倍もの労力差があるわけでもなく、むしろ3枚に凝縮するほうが大変なくらいです。


 しかも、布の単価や映画の入場料は「売る」側が決めるのに、原稿料は「買う」側が決めています。

「ガッキィファイター」2005年01月09日号に掲載

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