任天堂が危機に直面している。今期、連結決算を公表して以来初となる200億円の最終赤字に転落する見込みだ。10月27日に下方修正が発表されると英タブロイド紙が「ゲームオーバー?」と題するなど各国メディアは辛辣(らつ)な見出しで苦境を大きく伝えた。だが、そう悪い話ばかりでもない。「マリオの逆襲」が始まったのだ。
11月3日、販売が振るわない携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」にとって、最大のカンフル剤とでもいうべきキラーソフトが発売された。「スーパーマリオ 3Dランド」である。
マリオを操りクリボーやクッパといった敵をかわしながらピーチ姫を助けるという、おなじみのシリーズ。左から右へのスクロールではなく、3次元の空間を縦横、上下と無尽に駆けめぐるこのソフトは今のところ、3DS最大の特徴である「裸眼立体視」機能を最も生かし、最も「驚き」を感じられる出来に仕上がっている。
「本体を半年ほど放置していて正直3DSを買ったことを後悔していましたが、今回マリオをやってみてこれからの3DSに期待が持てるようなソフトの出来だと思いました」「『とにかく面白い』としかいいようがありません」「老舗のメーカーが本気を出すとこれほどすごい物ができるとは……」
■マリオ効果で3DS本体の販売が約2.5倍
3Dランドが発売された直後の週末、通販サイト「アマゾン・ジャパン」のレビュー欄に激賞の嵐が吹いた。5段階で4つ星以上の評価をつけた購入者は、全体の約85%(18日時点)。発売後1週間は、断続的に在庫が切れた。
ゲームソフトも扱う大手レンタルチェーン「TSUTAYA」では、想定していた2週間分の売り上げをわずか4日間で達成したという。ゲームリサイクル企画グループの松尾武人リーダーは「3DS本体の売り上げも約2.5倍にはね上がっており、動きが変わった」と話す。
任天堂も経営指標に利用するシンクタンクのメディアクリエイト(東京・千代田)によると、国内において3Dランドは発売から4日間で約34万3500本が売れ、家庭用ゲーム機向けソフト全体の週間販売ランキング(10月31日~11月6日)で首位に立った。同週に販売された3DS本体は約14万5300台。週間販売台数としては今年2月の発売直後と8月の値下げ時に次ぐ数字だ。翌週(11月7日~13日)も約10万4000台と好調を維持。国内での累計販売台数は約246万台(13日時点)となった。
任天堂は、今期の業績やソフトの販売見込みを下方修正する一方、「世界で1600万台」という3DS本体の年度目標は据え置いた。4月からの半期で世界307万台と目標の2割にも届かなかったことから「達成困難」といぶかしむ向きが多いが、年末商戦を控えたスーパーマリオの勢いを見ると、強気姿勢も理解できるような気がする。
悲観論が渦巻く中、久々に光明をもたらしたスーパーマリオ。任天堂はもうゲームオーバーなのか。3DS不振の本当の理由と復活のカギを探った。
■そもそも「ゲーム離れ」は始まっていた
任天堂の苦境を伝える記事にはおきまりのように「スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)」と「ソーシャルゲーム」という文字がならぶ。3DSの販売がふるわず、任天堂の業績が悪化した背景には、スマホの普及とソーシャルゲームの隆盛があるのだという。しかし、歴史をたどり俯瞰(ふかん)してみると、異なった理由も浮かび上がる。たぶんスマホやソーシャルゲームがなくとも、3DSの立ち上がりはこんなものだっただろう。
そもそも「ゲーム離れ」は、スマホやソーシャルゲームが登場する前から始まっていた。ハードは売れるがソフトは売れない。97年ごろからゲームソフトの販売はかつての勢いを完全に失い、とうの昔に家庭用ゲーム機市場は冬の時代を迎えていた。
スーパーマリオ、任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント、プレイステーション、TSUTAYA、岩田聡
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