日本経済新聞

11月20日(日曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

「ソーシャル革命」の裏側

任天堂の危機に立ち向かう「マリオの逆襲」
「3DS」不振、本当の理由と復活のカギ

(1/6ページ)
2011/11/19 7:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加

 任天堂が危機に直面している。今期、連結決算を公表して以来初となる200億円の最終赤字に転落する見込みだ。10月27日に下方修正が発表されると英タブロイド紙が「ゲームオーバー?」と題するなど各国メディアは辛辣(らつ)な見出しで苦境を大きく伝えた。だが、そう悪い話ばかりでもない。「マリオの逆襲」が始まったのだ。

「スーパーマリオ 3Dランド」の画面例(任天堂のホームページから)
画像の拡大

「スーパーマリオ 3Dランド」の画面例(任天堂のホームページから)

 11月3日、販売が振るわない携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」にとって、最大のカンフル剤とでもいうべきキラーソフトが発売された。「スーパーマリオ 3Dランド」である。

 マリオを操りクリボーやクッパといった敵をかわしながらピーチ姫を助けるという、おなじみのシリーズ。左から右へのスクロールではなく、3次元の空間を縦横、上下と無尽に駆けめぐるこのソフトは今のところ、3DS最大の特徴である「裸眼立体視」機能を最も生かし、最も「驚き」を感じられる出来に仕上がっている。

 「本体を半年ほど放置していて正直3DSを買ったことを後悔していましたが、今回マリオをやってみてこれからの3DSに期待が持てるようなソフトの出来だと思いました」「『とにかく面白い』としかいいようがありません」「老舗のメーカーが本気を出すとこれほどすごい物ができるとは……」

■マリオ効果で3DS本体の販売が約2.5倍

 3Dランドが発売された直後の週末、通販サイト「アマゾン・ジャパン」のレビュー欄に激賞の嵐が吹いた。5段階で4つ星以上の評価をつけた購入者は、全体の約85%(18日時点)。発売後1週間は、断続的に在庫が切れた。

 ゲームソフトも扱う大手レンタルチェーン「TSUTAYA」では、想定していた2週間分の売り上げをわずか4日間で達成したという。ゲームリサイクル企画グループの松尾武人リーダーは「3DS本体の売り上げも約2.5倍にはね上がっており、動きが変わった」と話す。

 任天堂も経営指標に利用するシンクタンクのメディアクリエイト(東京・千代田)によると、国内において3Dランドは発売から4日間で約34万3500本が売れ、家庭用ゲーム機向けソフト全体の週間販売ランキング(10月31日~11月6日)で首位に立った。同週に販売された3DS本体は約14万5300台。週間販売台数としては今年2月の発売直後と8月の値下げ時に次ぐ数字だ。翌週(11月7日~13日)も約10万4000台と好調を維持。国内での累計販売台数は約246万台(13日時点)となった。

画像の拡大

 任天堂は、今期の業績やソフトの販売見込みを下方修正する一方、「世界で1600万台」という3DS本体の年度目標は据え置いた。4月からの半期で世界307万台と目標の2割にも届かなかったことから「達成困難」といぶかしむ向きが多いが、年末商戦を控えたスーパーマリオの勢いを見ると、強気姿勢も理解できるような気がする。

 悲観論が渦巻く中、久々に光明をもたらしたスーパーマリオ。任天堂はもうゲームオーバーなのか。3DS不振の本当の理由と復活のカギを探った。

■そもそも「ゲーム離れ」は始まっていた

 任天堂の苦境を伝える記事にはおきまりのように「スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)」と「ソーシャルゲーム」という文字がならぶ。3DSの販売がふるわず、任天堂の業績が悪化した背景には、スマホの普及とソーシャルゲームの隆盛があるのだという。しかし、歴史をたどり俯瞰(ふかん)してみると、異なった理由も浮かび上がる。たぶんスマホやソーシャルゲームがなくとも、3DSの立ち上がりはこんなものだっただろう。

 そもそも「ゲーム離れ」は、スマホやソーシャルゲームが登場する前から始まっていた。ハードは売れるがソフトは売れない。97年ごろからゲームソフトの販売はかつての勢いを完全に失い、とうの昔に家庭用ゲーム機市場は冬の時代を迎えていた。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 5ページ
  • 6ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加
関連キーワード

スーパーマリオ、任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント、プレイステーション、TSUTAYA、岩田聡

「ゲーム読解」で読む任天堂

東京ゲームショウからみる業界動向

【PR】

【PR】

「ソーシャル革命」の裏側 一覧

「スーパーマリオ 3Dランド」の画面例(任天堂のホームページから)

任天堂の危機に立ち向かう「マリオの逆襲」

 任天堂が危機に直面している。今期(2012年3月期)は連結決算を公表して以来、初となる200億円の最終赤字に転落する見込みだ。10月27日に下方修正が…続き (11/19)

著者の斉藤徹氏(中央上)と「ソーシャルシフトの会」のメンバー

出版新潮流 1800人で書籍の「ソーシャル編集」

 11月7日夜、東京・六本木のしゃぶしゃぶ店で、ある著作の出版記念パーティーが開かれていた。来場者は総勢80人。出版記念パーティーといえば通常、著者の友人知人や出版業界関係者が集まるもの。確かにそうし…続き (11/18)

一般公開でグリーのコンパニオンはひときわ高い人気を誇っていた

激動のゲーム市場をめぐる3つの誤解
「スマホ・ソーシャル躍進」の裏側で

 ゲームの秋。国内最大のビデオゲーム展示会「東京ゲームショウ(TGS)2011」が終わり、大型イベントラッシュが一巡した。ゲームをめぐる市場は激動の…続き (9/30)

新着記事一覧

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

日経・JBIC 11/14更新

742.6 ▲+39.4 単位:円/トン

買気配708.0 売気配777.2

日経産業新聞 ピックアップ2011年11月18日付

2011年11月18日付

・節電の冬、家庭を動かせ
・日本IBM、書類・図面ネットで交換
・メッセージ、訪問介護拠点を10カ所開設
・川重、高速搬送ロボの小型機を来年にも投入
・アサヒ、缶ビール製造に3D解析活用…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について