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2011年7月26日23時52分

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あいまい「生涯100ミリ」、放射線基準見通し立たず

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 放射性物質の影響について食品安全委員会が26日にまとめた答申案は、食品だけでなく外部からの被曝(ひばく)を含め「健康影響が見いだされるのは、生涯の累積で100ミリシーベルト以上。平時から浴びている自然由来の放射線量は除く」という具体性に欠けるものになった。今後パブリックコメントを経て、8月下旬にも厚生労働省に答申することになるが、厚労省は「回答になっていない」(幹部)と困惑気味だ。具体的な基準づくりへの見通しが立っていない。

 東京電力福島第一原発事故を受け厚労省は今年3月、放射性物質が含まれる食品の流通を規制するために「暫定基準」を緊急的に設けた。ただ、食品安全政策は厚労省の独断では決められず、科学的な根拠を得るために食品安全委に諮らなければならない。

 細川律夫厚労相が諮問したのは、食品について「放射性物質の指標値を定めること」。厚労省幹部は「食品全体からの被曝が年間何ミリシーベルトという数値を想定していた」という。

 同委も当初、食品だけを考えていた。だが食品からの内部被曝と、外部環境からの被曝を分けた論文はほとんどなかったこともあり、「健康への影響を考えるには、内部と外部は分けられない」と判断した。

 この日の食品安全委員会を終えて小泉直子委員長は「現在の科学では限界がある。100ミリシーベルトをどのように基準に反映させるかは厚労省の判断になるが、放射性物質の検出状況や食品摂取の実態を踏まえて対策をとってほしい」と厚労省にバトンを渡す考えを示した。

 食品だけの数値を期待していた厚労省は、他省庁との協議を迫られそうだ。担当者は「100ミリシーベルトのうち、何割が食品にあたるのか教えてほしかった」とぼやく。

 答申案は内部と外部被曝だけでなく、平時と緊急時も区別していない。一方、食品の暫定基準や計画的避難区域の設定などは、原発事故という緊急時に対応するため国が対策ごとに定めている。生涯に浴びる総量から逆算して定めたものではなく、根拠も様々なため、「生涯100ミリシーベルト」は、今後基準を見直す際に影響を与えそうだ。

 ただ、がれきや海水浴場の放射線量を定めた環境省や、校庭の基準を決めた文部科学省は反応が薄い。文科省の担当者は「まずは厚労省の対応を見守りたい」と、当面は静観の構えだ。

 26日に会見した細野豪志食品安全担当相も「専門家で議論してもらい、どういったものが出てくるか見守りたい」と、基準作りを急がせる考えは示さなかった。

    ◇

 長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)の話 生涯の被曝線量が示されても、実際に個々の食品の基準値にしていくのは大変困難な作業だ。放射線はこの数値以下なら安全でそれ以上は危険というものではなく国際放射線防護委員会(ICRP)も総合的に影響を論議して基準を決めてきた。本来は食品安全委員会だけでなく政府全体で総合的に現状に即して国民の被曝線量をどう減らすかを考えるべきだ。それに住民も参加して論議したらいい。まず食品汚染の現状を正確に把握し、農地除染を含めて被曝低減策を立ててほしい。

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