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きょうの社説 2011年11月20日
◎無人島に命名 領土意識を高める契機に
輪島市の舳倉島沖にある無名の小島に名前がつけられることになった。海洋権益の保護
と防衛上必要な無人島の管理強化策の一環であり、離島の重要性を認識し、領土意識を高める契機としたい。政府は、排他的経済水域(EEZ)の基点となる重要な無人島99島のうち、舳倉島沖 の小島など名称のない49島の命名作業を優先的に進めているが、日本の領土を構成する多数の離島は、登記や所有状況がまだ十分に把握されていない。命名作業だけでなく、登記簿や国有財産台帳などでの離島の公的記録を確実なものにし、日本のEEZや領海、領土であることを明確にする取り組みも着実に進めてもらいたい。 日本の領土は北海道、本州、四国、九州、沖縄本島のほかに約6800の島々で構成さ れる。有人島が400、無人島が6400という内訳で、約2200の離島は名前がついていない。離島が多いため、海洋権益の範囲が広大な海洋国でありながら、権益保護の法整備は遅く、海洋基本法の施行が2007年、海洋基本計画の決定は08年である。この中でEEZや領海の範囲の根拠となる離島の重要性が明記され、保全・管理の基本方針も策定された。 基本方針では、離島の価値について啓発活動を行い、島名が不明確な場合は名称を決定 し、地図や海図に明示することが盛り込まれた。こうした方針の明記は、離島に関する国民の認識や領土意識がまだまだ薄いことの裏返しでもある。離島に名称をつけて管理することは、海洋管轄の基本であり、EEZに続き、領海の根拠となる離島の名称の確認、命名に取り組む必要もある。 財務省によると、国有財産台帳に現在登載されている離島の国有地は約4900件(有 人島4500件、無人島400件)に上る。私有地も含めた登記の全体状況は把握していないという。国土交通省の調査では、舳倉島など離島振興法指定の261の有人島も人口が減り続け、無人化が懸念されている。一方、私有の無人島を売買する会社も現われている。政府、自治体は変化する離島の現状に注意を怠ってはならない。
◎憲法審査会 国民の関心広げる議論を
2007年に設置された衆院憲法審査会が初の審議を行い、月内に審議を開始する参院
の審査会と合わせ、憲法論議がようやく動き出すことになった。憲法改正手続きを定めた国民投票法成立により、審査会が国会に置かれながら、4年以上も休眠状態が続いてきたのは、立法府の怠慢と言われても仕方あるまい。各種世論調査で憲法論議への関心が低下してきたのは、政治の意思が見えないことに大 きな原因がある。国会に憲法を論じる場が存在するのは、本来の在るべき姿だろう。審査会の始動を形式にとどめず、各党が憲法課題に真摯に向き合い、国民の関心を広げるような実質的な議論を望みたい。 憲法審査会をめぐっては、当時の安倍政権が国民投票法を強行採決したことから民主党 が反発し、政権交代後も社民党や党内の護憲派への配慮を優先し、審査会に背を向けてきた。方針を転換したのは、衆参ねじれ国会の打開へ向け、自公両党に配慮を示す必要に迫られたからである。これから議論を進めるにしても、まず問われるのは民主党の姿勢である。 衆院憲法審査会の意見表明で、民主党は「東日本大震災への復旧、復興の中で(改正論 議の)優先順位は相対的に下がる」と述べた。震災復興や原発事故の対応に最優先で取り組むのは当然のことだが、憲法論議を並行して進めることは不可能ではない。審査会を動かし、いきなりブレーキをかけるような姿勢には違和感がある。 自衛隊の役割、日米同盟、地域主権など、むしろ憲法の理念に照らして議論すべきテー マは少なくない。自民、国民新党は意見表明で、非常事態に関する規定を設けることを主張したが、政府の対応が遅れた大震災を教訓にすれば、最高法規の憲法で規定するか、それとも現行法制で十分なのか、議論を深める国家的な課題である。 国民投票法の付則では、選挙権年齢の18歳への引き下げなど検討課題が明記されたが 、これらも手付かずのままである。これ以上、宿題を先送りしないためにも、立法府の責任において、まず議論を進める道筋を明確にしてほしい。
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