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ブータン:国王来日に感慨深く 亡夫が農業指導、最高称号 妻、宮中晩さん会へ

 ヒマラヤの王国ブータンで農業指導に尽力し、同国民にもよく知られている故西岡京治さんの妻里子さん(75)が16日、来日中のワンチュク国王夫妻とともに宮中晩さん会に出席する。金銭的な豊かさの指標となる国民総生産(GNP)ではなく「国民総幸福量(GNH)」を提唱する同国。里子さんは「経済の価値だけが全てじゃない。日本はもう少し、本当に不幸な人を減らせるのでは」と感じている。【池田知広】

 互いに山が好きだった西岡さんと里子さんは1961年に結婚。64年、西岡さんは海外技術協力事業団(現国際協力機構)による最貧国支援計画の一環で里子さんとブータンに行き、高収量をあげる野菜栽培の指導や米の品種改良に努めた。59歳だった92年に現地で病死するまでいかに農民が豊かになるかを考え、実行してきた西岡さん。生前の80年には、英国の「サー」にあたるブータン最高峰の称号「ダショー」が与えられた。外国人への授与は初めてだった。

 「お金の使い方がわからなくて食べ物を手に入れるにも苦労しました」という里子さんも、子供ができて帰国するまでの11年間、現地で暮らした。驚いたのは自給自足と物々交換の生活が成立していたこと。人々は勤勉で、秩序が保たれていた。

 外務省によると、ブータンの1人当たり国民総所得は2000ドル(約15万4000円)足らずだが、05年の国勢調査では国民の97%が「幸せ」と回答した。

 GNHは当時の国王だったワンチュク国王の父が72年に提唱した。日本では最近になってその考え方をもてはやす声がある一方、「貧しい国特有の理論」という意見もある。里子さんは「GNHはドル支配の世界で『お金はなくても豊かに生活している』という国王の世界へのメッセージだった。経済成長を経た日本は今、『お金のない人はだめな人』になっているのでは」と指摘する。

 西岡さんの死後、西岡さんらがまとめたブータンの植物や農業についての書籍に加筆し、15日に改訂版が完成した。国王が日本にいる間に届けるとともに、宮中晩さん会にはブータンの民族衣装「キラ」を着ていくつもりだ。里子さんは「この50年でブータンが立派に変わって国王が日本の宮廷に招かれるのは、ちょっとうれしい気持ちです」と笑った。

毎日新聞 2011年11月16日 東京夕刊

 
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