※小ネタです。一応TF6がわからない人のための解説をいれております。
~とりあえずここは~
「さぁデュエルだぁ!」
「デュエルしましょう!」
そんな声がありとあらゆる光景だった。
俺はいつも通り学校へ登校していた……はずだ。
だが近道をしようと裏路地を抜けて見たらこの有様。
みんながみんな腕に馬鹿でっかい機械を着けて「デュゥエルだぁ!」と吼えている。
いや、腕に着いてる物はわかる。覚えている。
あれはデュエルディスク。TCG『遊戯王』を行うための装置という架空の品物。
……のはずだ。なのに何故か大人から子供までソレを装備し文字通り『決闘』している。
「おいおい、君だめじゃないか」
呆けていた自分に話しかけてきたのはヘルメットを被った厳つい男性。
というか警察……かな。警察の見た目はこんなんじゃなかった気がするんだけど。
一体どうしてこんな人が俺に警察が話しかけているのか。
……いや、現実逃避はやめよう。
この人セキュリティだよ!
というかここ旧サテライトだよ! 画面越しに見たよ!
となるとアレか。ここは遊戯王5D'sの世界なのか!?
勝手に苦悩する俺に(おそらく)セキュリティの人が問いかける。
「おい、君。どうしてデュエルディスクを持ってないんだ?」
あぁ、そういうことか。ですよね、みんな着けてるしデュエル万歳な世界ですもんね!
でもないよ、持ってるわけ無いじゃない。
セキュリティは怪訝な顔をして俺の持つシュルダーバックに眼をつけ、手を伸ばす。
「バックを調べさせてもらうよ」
なんというかあまりに状況に着いていけていない呆然とした俺の鞄をサラッと奪って、鞄を調べるセキュリティさん。
すると。
「おいおい、ちゃんとあるじゃないか。装着義務があるんだから装着しなさい」
……明らかにドラ○もんよろしくバックより大きな物体がニョキッと出てきました。
うん、それは見事なデュエルディスクさんだ。よくわからんがデッキホルダーにデッキも入っている。
怒った顔のセキュリティに俺は平謝りしつつ、
「す、すみません。この辺は来たばっかりで」
「旧サテライトまで? ここまでどうやって来たんだい」
「それが……不明でして」
「不明!?」
「い、いえなんでもないです!」
ここで捕まってなんぞ居られるか。理由はわからんけどとりあえずは憧れのファンタジー(?)だ。
俺だって一応は遊戯王をこよなく愛する男。
とりあえず、つけ方がわからないとどうしようもなかったが、裏面にしっかり記載されていた。
さすが大人から子供まで使える超仕様。付けるまではあまりに単純だ。
「よし、これで問題ないな。次はこういうことのないように」
「は、はい……」
「ところで」
「は、はい!?」
セキュリティさんは俺の身元も聞いてないのに勝手に安心し、ふぅと息を吐くと。
「デュエル……しないかい」
奥さん、これがデュエル脳です。
「えっと。いいですけど……なんで?」
「君は何か急いでいるんだろう? だが私は職務として君の身元を調べなきゃいけない」
「ですよね。お仕事ですし」
「だからデュエルで決めようじゃないか」
怖いわーデュエル脳超怖いわー。
職務<デュエルってどういうことだ。
あれか、デュエルで勝ち続ければ神にだって……なってるな。
とりあえず一つわかったことがある。
周りの状況とか色々を踏まえて1つ。
ここ5D'sじゃなくてTFだ。
そうじゃなきゃここまでデュエルデュエル言ってない……はずだ。
TF、それも6だろう。それなら俺もプレイしている。
ファイナルチェッカーフラグ? 出してるわけ無いじゃないですか。
ならばと、セキュリティさんに待ってもらいデュエルディスクを調べる。
そこに入っていたのは自分がTF6で最後に使用していたデッキだ。
おぉ、これならば戦える。
罠などの使い方も曖昧なままセキュリティさんとのデュエルは始まった。
「君は強いね。さぁ行って良いよ」
職務怠慢ではなかろうか。
罠の発動や魔法の使い方を間違ったりしたが相手のデッキレベルが1くらいだったのか容易に勝てた。
そしてデュエルディスクを見ると、
『892DP』
とポイントが書かれている。これがゲーム内での通貨だ。
これでパックを買ったり、アイテムを得たりするんだが……。
とりあえず周囲を見渡すとセキュリティさんを除けば三名。
だが、今の俺にはもっとすべきことがある。
※DP……デュエルポイント。要はお金。カードやアイテムを買える。
※ファイナルチェッカーフラグ……これが出たらとりあえずTF6はクリア、と言えるような基準的なもの。
~無論そうですよね~
「誰だ貴様は! とっとと失せろ!」
うん、DPから想像はついてた。
便利な移動システムもDホイールもあるわけもなく、全て徒歩で向かい恐ろしく疲弊しポッポタイムに到着。
しかし好感度も0からになっていたらしくジャックさんに話しかけたところ罵倒と共に弾かれた。
というか自分はTF6の主人公、通称コナミ君ですらないようだ。
そうじゃなきゃコナミ君は5D'sの一員だしね。
となると俺はしがない一般人というわけだ。
通常ならアニメキャラを攻略して攻略後にはレアカードをGETという流れなのだけど……。
とりあえずアニメキャラへのコネがない。
更に言うならコミュ力もない。
人相? 普通。
……コナミ君みたいに帽子でも被ろうかしら。
いや、これはアレか。俺も染まってみるべきか。
デュエル脳に。
会話が出来ぬのならデュエルだぁ、なんて言い放ってジャックさんに特攻を駆けてみようかしら。
正直今の俺にはソレしかない気がする。
というかDPがほしい、純粋に。
パックもほしいし、オールリセットだとすれば店でポイントを使うことに意義があるのだ。
だとすれば俺にできることは一つ……。
「俺とデュエルしろぉぉぉぉぉぉぉ!」
遊星さんボイスイメージでお願いします。
その声は響いた。きっとポッポタイム以外にも広範囲に広がったことだろう。
すると、周囲がざわめいた気がした。
ザッザッザッ……
地面を響かせる足音。
その数は想像できない。
自分の声に反応した『者共』がワラワラと、ワラワラと歩いてくる。
TF6をやっているから見たことがある面々もいる。
だけど、これは……ないんじゃないかな?
今からリンチしますと言われても問題なさそうな勢いでポッポタイムの前に人だかり。
中心には俺。わぁ、大人気。
中には明らかにセキュリティさんとゴーストが混じってたりする。
お仕事してください。お願いします。
「えっと……その……ね? 一人ずつ……」
「「「「「「「「「「デュエル!」」」」」」」」」」
勝ち負けに問わず精神的にフルボッコでした。
R+○の広範囲版はやばい。それを強く実感した瞬間でした。
※簡単な解説:TFではR+○で目の前の人にデュエルを申し込むことができます。
~これが絶望だ~
「終わった……」
疲労がヤバイ。このまま倒れてしまいそうなレベルだ。
気付けば夜になっており、回りには眼を黒くした人たちが立っていたりする。
一瞬もう一度叫ぼうかという衝動に駆られたがやめておく。
というか腹が減って仕方ない。
学校登校の際にこっちに来たわけだし、昼食もとってない。
『21934DP』
凄まじいポイントだなぁ。これくらいあれば飯だって……。
そう考えてポッポタイムに背を向け、歩き出そうとして……。
あれ? 飯ってどこで食べればいいんだ?
とりあえず噴水広場に行ってみる。
そう、噴水広場にはカフェがあって食事ができる。
アニメでもそうだった。
だが。
「ひとりだとつまんないでしょ。誰かと一緒に来たら?」
案の定無理でした。
……ですよね。パートナー必須ですよね。
ぼっちには厳しい世の中だなおい。
鳴く腹を我慢し繁華街へ走る。
繁華街なら、きっと飲食店があるに違いない!
※カフェ:TF6では噴水公園にパートナーと来るとカフェで一緒に食べて好感度を変化させられます。一人だと無理です。
しかし繁華街にはカードショップ以外に何もない。
マジでTF6完全再現だ。
つまり、ここは現実でTF6の世界に入り込んだけど。
全てがTF6の仕様なのだ。
つまり、飲食の必要性がない。ゲームだから。
つまり俺は、飲食ができない。
あれ? 人生的に積んだ?
旧サテライトにいた時帰ろうとしても帰れなかったし、少しの間ここで過ごそうかという楽観的な想いだったが。
ここで人間的限界が見えてきた。
となれば今からでもパートナーを作って……。
いや、全てのキャラに好感度0、+口下手な俺に話などできるはずもない。
だとすればどうすればいいのか。
「とりあえずカードショップでパックでも買うか……」
そんな余裕はないのだけど、こっちでカードを買ってみたいのもある。
店内に入ると所狭しとパックが並んでおりそれを適当に取って店員に出す。
まだフィギアを上げてないからか、俺のレベルが低いからか店員のテンションは低い。
ある程度DPを残してカードを買うと、リアルじゃ絶対集まらないようなレアカードが簡単に手に入った。
……持ち帰れないかなぁ。
そう思うと腹がまたグゥと鳴った。
どうすれば良いのか、そう考えにつまった瞬間。
俺の目にそれは映った。
赤い色の長方形のルーレット。
そう、アイテムルーレットだ。
200DPを入れることでルーレットを回し、アイテムをランダムに取得できる。
これのカテゴリで食べ物があったような……。
デュエルディスクをふと見る。
『1242DP』
気付くのが遅すぎた。ポイントがあまりに少ない。
6回しか廻せないじゃないか。
そう思いつつルーレットに200DPを投入。
赤外線か何かなのかデュエルディスクから赤い光が出てチャリンと音を立ててDPが減る。
そして明滅しながらクルクルと廻るルーレットを見ながらボタンを押していく。
その顔は恐らく子供が見たら泣くレベルだったろう。
それほどに俺は必死の形相をしていた。
なんせ生死がかかっているのだ。
本日の収穫:
『ホワイトダイス』
『カードホルダー レッド』
『六武衆の師範フィギア』
『大衆アニメムービー』
『水』
『カミソリ』
残りDP:42DP
水が出ただけ、よかったです。
※続きません。多分。
あとがき:
コメディを書いてみようとして失敗したようなTF6の世界に殴りこみ。
飲食店とかあるんだろうけど、その辺はゲーム世界なのでありません。
主人公のルーレットを廻す仕事が始まります。
デュエルよりもパックよりも、アイテムです。