ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
inside Enterprise
【第295回】 2010年7月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
週刊ダイヤモンド編集部

蓮舫議員に仕分けられたスパコン
富士通の“廉価版”が絶好調!

 「2位ではダメなんでしょうか」

 次世代スーパーコンピュータ(スパコン)などの開発予算の仕分け作業中に、あの蓮舫議員(現・行政刷新大臣)が投げかけた質問は、余りにも有名になった。

 実際の仕分け作業においては、次世代スパコン予算は一時、「凍結」判定が下されたこともあったが、その一方で、富士通ではスパコンのノウハウを応用した“廉価版スパコン”の販売が絶好調なのだという。

 スパコンとは、高度な演算能力のあるコンピューターのこと。国家プロジェクトとして使用された、地球環境をシミュレーションするスパコン「地球シミュレータ」は1台当たり60億円もする。

 廉価版スパコンとは、企業向けの高性能コンピュータのことであり、価格を数千万円程度に抑えている。その方式は、「PCクラスタ」と呼ばれ、複数のパソコン(PC)サーバを接続して演算能力を高める仕組みになっている。

富士通のPCサーバPRIMERGY(プライマジー)BX900

 富士通はPCサーバを基幹事業に育成しようとする施策の一環として、昨年12月に、PCクラスタビジネス推進室を発足させた。専門部隊の設置からわずか半年で、「昨年に比べて、商談の数が3倍に増えた」(田中豊久・富士通PCクラスタビジネス推進室室長代理)とホクホク顔だ。

 絶好調ぶりは数字でも明らかだ。PCサーバのシェアで比較すると、2008年度ではヒューレット・パッカード(HP)30%、富士通12%と2位に甘んじていたが、09年度では富士通30%、HP25%と首位の座を獲得した。

 それでは、実際に、このPCクラスタを使って何ができるのだろうか。

 電機メーカーや自動車メーカー、精密機器メーカーなどの製造業が、新製品開発の過程で、実験データの解析を行なうのに向いている。

 富士通が自社で活用した一例を挙げよう。通常、携帯電話端末の新製品を投入する際には、安全性・機能性などの点検のために、1機種あたり1500回の落下実験を行なう。それが、PCクラスタの演算能力を使ってシミュレーションすることで、実験回数は半分に激減したという。

 販売単価5万円程度の携帯電話端末の場合、試作品となると原価ウン十万円もするのがザラである。試作品が半分に減るだけで原材料費の大幅ダウンになるし、実験がスムーズに進捗することで、新製品の開発期間を短縮することも可能なのだ。

 同様に、自動車の衝突実験、薄型テレビや複合機の耐久性実験に使うこともできるし、変り種では、絶対に実験してはならない製品――、たとえば、原子力発電の事故実験などもできてしまうという。汎用性の高さをウリに、“廉価版スパコン”が徐々に、企業へ浸透してきているのである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

週刊ダイヤモンド

 

Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事

DOLSpecial

週刊ダイヤモンド最新号

「世界の空」大争奪戦
エアライン&エアポート

  • Prologue ボーイング787とLCCで変わる空の戦い
  • Part 1 LCC参入の価格破壊
  • 来年は国内LCC元年 日本の空も格安時代に
  • Interview 西久保愼一●スカイマーク社長
  • Part 2 ANA vs JAL
  • 業績を劇的に回復させたJAL
  • ライバルの経営破綻でANAの経営環境一変

週刊ダイヤモンド
2011年11月19日号
定価740円(税込)

underline
週刊ダイヤモンド
昨日のランキング
直近1時間のランキング

週刊ダイヤモンド1冊購読

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


inside Enterprise

日々刻々、変化を続ける企業の経営環境。変化の中で各企業が模索する経営戦略とは何か?『週刊ダイヤモンド』編集部が徹底取材します。

「inside Enterprise」

⇒バックナンバー一覧